緋弾のアリア Ultimativen Waffen 作:清姫
私の名前はイヴ。アリシア様のメイドとして働かせて頂いています。
「やめてくれ! やめぐヴォア!」
「腕が......俺の腕がぁぁァッ!」
「セルゲイがやられた! くそ、弾が切れそうだ」
今私はアリシア様の敷地に無断で入った侵入者達を狩る為に森に来ています。誰に雇われたのかこの侵入者達は定期的に屋敷を襲いに来ます。狙いは当然アリシア様の研究データ。何でも
「それは緋々色金の力は素晴らしいということ」
幼さを残した少女は木の枝に腰を下ろし、足を揺らしながら下に視線を下ろす。
「おい! 今回の仕事は田舎の金持ち一人攫うだけの簡単な仕事じゃなかったのかよ! ッんだよこれ、全員死んじまってるじゃねぇか!」
ばらばらになった四人の死体。その直ぐ後ろに武装した男が二人、森の中でどこを狙うわけでもなくただただ撃っていた。
「俺に聞くな! 喋る暇あったら「ごーにんめーっと」......え?」
目にも留まらぬ速さで男の首を切り落としていく。切り落とされた男の切断面から噴水の様に血が噴出しもう一人の男に降り注いだ。
「これは夢だ......きっとそうに違いない......じゃなきゃありえねぇだろ。こっちは重装備の傭兵六人だぞ! それがガキ一人に殺されるなんて...あは......あはははははは!!」
錯乱した男は笑いながら撃ち続けた。そのうち弾が切れ、サイドアームのハンドガンを取り出すと正面に向かって撃った。
キン!
「あっぶないなー」
「お、まえは」
傭兵は見た。プロの傭兵部隊を壊滅させようと残り一人になった男に毒気の無い笑みを浮かべながら近づいてくるメイド服を纏った小さな天使を。
「弾丸を斬りやがった......く!」
一発、二発と続けて撃つが、たやすく切り伏せられる。とっさに胸に仕舞ってある
「おじさん逃げようとしてるでしょ?」
「ッひ!」
十メートルはあった距離を少女は一瞬のうちに様の目の前に現れる。その刹那、体に一閃が走る。そして傭兵の足は膝から下が綺麗に切り飛ばされ、血の水溜りが完成した。
「何なんだお前はァァァァァァ!!」
「今から死ぬあなたに教えても無駄でしょ?」
「アァァァァァァァアアアァァァッッ!!!」
少女は周りを見渡すとナイフを鞘に仕舞う。そして四肢の無い死体に腰を下ろし、手に装着してある腕時計ででタイマーを確認する。
「6分12秒かーちょっと時間かけすぎたなー」
とボヤキながら空を見上げながら耳に付けたインカムで誰かと話し始めた。
「イリルカ様! 無事に庭の草刈り、完了しました!」
『ご苦労様。あと片づけを終わらせたら屋敷に戻って来なさい』
「分かりました! 失礼します」
通信が終わった途端崩れた。敵の銃弾が当たったわけでもなく、なぜか頬に手を当てながら鼻息を荒くしている。
「はぁはぁ。イリルカ様に。イリルカ様にご苦労様って言われちゃったよぉ。あぁ、なんて甘美な声なんでしょう! このイヴ、イリルカ様の声を聞くだけでもうどおにかなってしまいそうです!」
少女の艶かしい叫び声は幸いにも屋敷には届かなかった。
「なあイリルカ。なんか叫び声聞こえなかったか?」
「気のせいではないでしょうか。それよりアリシア様、そろそろベットに入られた方がよろしいかと思いますが」
「何を言っている、私はまだ負けてはおらんぞ!」
「はいチェックメイト」
「ギャーーーー!!」
夕食後。アリシア様が暇だからチェスに付き合えと命令され、「ッチ! こっちは忙しいんだよ」っと言う言葉を抑えつつ仕方なく付き合って上げるとこの始末。
アリシア様は一回負けると勝つまで止めない性格。かと言ってわざと負けるとその冴え過ぎる頭のせいで手を抜いたことがばれる。だからアリシア様とゲームをすると結果的に何時間も付き合わされる事がある。
「もう一回だ!」
「もう寝てください」
「いやだ! 私は勝つまで床に着く気はない。ほら早く駒を戻せ」
ほら来た。終わる気配がない時は決まってみんな同じ手を使う。
「そういえば」
「ん? なんだ」
「ホームズ卿がこんなことを言っていました。『アリシア君は寝るのが何時もばらばらの様だね。決まった時間に寝ないと大きくなれない。その証拠にほら、アリシア君って色々小さいだろ?』って」
「ムキー!! シャーロックめ誰が幼女だ、誰が! 今に見ていろ、そのうちバインバインのボンッキュッボンになってやるからな!!」
子供みたいに地団駄を踏みながら自分の寝室に戻っていった。これぞイリルカ考案『ホームズ卿が言ってました』の術。これを使うとアリシア様はほぼ100%言うことを聞いてくれる。
「さてと、朝食の仕込みを終わらせないと」
独り言を言っていると突然、携帯電話が鳴る
「はい.........そう、分かりました。戦闘への介入は許可しません。貴方はそのまま監視を続行してください。......はい。ではまた」
電話を切るとゆっくりと溜息を吐き。静かに目を閉じた。
「ホームズ卿が動くという事は―――考えたくありませんが備えはしておきましょう」
席を立つと私はある所へ向かう。アリシアが雇っている使用人は私を含めて六人。一応形式上はアリシアの使用人なのだが、実際この屋敷で使用人として働いているのは私とイブの二人だけ。
残りは研究室で篭っていたり、屋敷を襲った傭兵の
そうしている内に目的の場所に着いてしまった。そこは小さな図書室。普段は掃除され綺麗なのだが今日は何だか埃っぽい。
「イブはまた掃除をサボりましたね。あとでお仕置きです」
手に付いた埃を払いながら棚にある一冊の本を取り出すと本が置いてあった場所に手を差し込む。
ガチャ
鍵の開くような音がすると独りでに本棚が持ち上がる。そこにはドアがあり手早くパネルに暗証番号を打ち込むとドアのロックが解除された。
「侵入者だ! 捕らえろ!」
ドアを開いた瞬間白衣を着た少女が銃をイリルカに突きつける。私はそれを反射的反応してしまい、ふとももに隠し持っていたタクティカルナイフを少女に突きつけてしまった。
「っちょ! 待って! 待って! わたくしですよ。あなた様の忠実なる部下のライラちゃんでーす! マジごめんなさい調子乗りました」
少女はおもちゃの銃を放り投げ両手を高く上げた。
私の目の前にいるメイド服に白衣を着た少女はさっき話した役職を忘れた奴の一人。主にアリシア様と一緒に装備の開発や薬の調合などを担当している。
ヒヒイロカネの研究をしているアリシアの助手もしているらしい。らしいとは私自身殆ど誰が何をやっているのか把握していないのだ。なんせここにスカウトした人たちは一癖も二癖もある連中。私が召集を掛ければ一日で全員集まるが掛けない限り一生集まらない。こればっかりはしょうがないと思っている。彼らも何かしらアリシア様に貢献してくれているので今のところ私も何もするつもりはない。
「それより頼んでおいた
遊んでいる暇は無いので早速本題に入る。ライラも何をしに来たのか分かっていた様でずれていた片眼鏡を掛け直すと右手に持っていたリモコンのボタンを押した。
「はいは~い。ご注文の品はこちらで~す」
地下に続く階段を降り。一番奥にある『整備室』と書かれた分厚い扉の前で立ち止まる。
「エイジ~スl整備室の扉開けてー」
『了解しましたライラ様』
ゴン! っと大きな音が通路に響く。ゆっくり扉が開き中には銃や刀剣、装甲車に戦車といった兵器の数々が所狭しと並んでいた。それを抜ける机が見え、そこには箱のようなものが鎮座していた。
「これが
もうお分かりかと思うが今日ここに足を運んだのは私の兵装を取りに行くためだ。色んな国からスカウトしに行き、
「前と変わった所は幾つかありますが~まず今回は
タブレットを見ながらスペックを報告してくる。
「そんなに?」
「はい! 何てったって私が生んだ最強の
「ほう...つまり私の大切な武器をゲームの片手間にやっていたのですか?」
「え~と.....・そ、そそそそう言う訳ではありませんよ~?。―――そう! これは私が言ったのではないです! エイジスが言えって言いました!」
「問答無用」
「ひぃ!!」
軽くお仕置きをすましてから詳しく説明を聞いた。
「え~さっきも言いましたがエイジスを搭載しています。その利点を最大限生かすために今回は米軍開発の情報インターフェース、テラナを改良して作ったこのグラサンも今回お付けしま~す! さっきコルネリアに聞いたところ、非常に使いやすいと高評ですよ~」
アタッシュケースに入ったサングラスを渡された。
『イリルカ様。これからはエイジスが戦闘時にサポートさせて頂きます』
「...これは」
思わず感嘆の声がもれてしまった。試しにかけてみるとあら不思議、耳元からエイジスの声が聞こえてきた。ライラによるとエイジスのサポート機能や、携帯電話、暗視や望遠鏡、レーダーやネットに無線、その全てがこのグラサン一つで行う事が出来る。戦闘時はこのインターフェースで脳波を読み取ってアームを動かしたり武装を使用したりも可能との事。後壊れにくく耐久性もバッチリ。だけどライラのドヤ顔が腹が立つので誉めるのはやめておこう。
「気に入ってくれましたか? え、気に入った? ライラちゃん天才!? そうでしょそうでしょ。じゃあ早速最終調整をやっちゃいますので試験場もで行きましょうか」
面倒くさいライラを放っておいて。隣の試験場に続く扉を開いた。縦横百メートルの真ん中に立ち箱に入っていたクラーケンを背負い、改良型テラナを装着する。メインアームの日本刀を二刀腰に差して準備完了。
因みに今はメイド服を着ていない。代わり武偵高校の制服を着ている。給仕用のメイド服より戦闘を想定して作られた武偵の制服の方が戦いやすし、アリシア様の趣味で色んな国の武偵の学校の制服が揃っている、それを一着拝借してきたのだ。
『それじゃあいきますね~』
強化ガラスの向こうからデータを取る為にカメラを構えながら無線で話してくる。気のせいかもしれないがあれ鼻血流してないか。
『これより最終調整テストを開始します』
エイジスの声と共にホログラムで作られた十人兵士達が現れ、一斉にイリルカに向かってAK-47自動小銃を連射してきた。
機械的な音を発しながら六本のアームを展開しベルトに埋め込まれているヒヒイロカネが淡い光を放つ。全ての銃口の向きが分かっていれば飛んでくる銃弾の場所が分かる。頭で飛んでいる所を考えているとそこにアームが伸び銃弾を見事に弾いた。
「クラーケンの武装は?」
『近距離武装は
四本のアームで銃弾を防ぎながら武装を7.62mmに選択する。改良型テラナで標的に狙いを定める。
バババババババッ!!!
雨のようにな銃弾が敵を襲う。バタバタと面白いほど次々と倒れ、後には屍の山が残った。勿論生きているはずもなく全員死んでいる。
『いいねぇいいねぇ。この見えそうで見えない感じ。そして何と言ってもスカートとニーソの間の
一通り武装の確認も終わりアリアの方を見るとデータを取るのをそっちのけで私の制服姿を撮っていた。エイジスが代わりにやってくれるから私はどうでもいいけど。あ、倒れた。
『ライラ様の事は放っておいても問題ないので最後にグングニルの確認を行ってください』
「了解」
再びホログラムの敵が現れる。今度は兵士だけではなく、装甲車や戦車までいた。
『グングニル、エネルギー充填率50%、70%、90%、エネルギー充填率が100%に達しました』
今度は刀で弾の嵐を防いでいると。発射が可能になっていた。
一本のアームが徐々に緋色の光が強さを増してくる。
「発射します」
ビィィィイイイイウィンウィンッッ!!
けたたましい音を立てながら緋色のレーザーが目標を文字どうり真っ二つにした......壁と一緒に。
『あ~あ。壁壊しちゃいましたね~』
鼻にティッシュを詰め込んだライラがガラスの向こうから出てきた。
「威力は申し分ないのですがここでテストを行ったのは失敗でしたね」
『ははは......壁、どうしよう。またアリシア様に怒られるよぉ』
ドォン! っとコンクリートで出来た壁が崩れ落ちた。
「......さて私はこれで失礼します。メンテナンスありがとう」
「え! 一緒に謝って下さいよ!」
腰にしがみ付いてくるライラを早速クラーケンで引き剥がすと急いで部屋を後にした。