Fate/シロウ厨二戦争   作:赤石なちる

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更新遅くて重ね重ねすいません


第26話

 自分がかつて通った学園の屋上からグラウンドを霊体化したまま見下ろす赤い弓兵はこの学園で起こした自分の珍事と他人が起こした惨事を思い返し鬱になっていた。

 

(いま、思えばこの学園、呪われてるんじゃないのか? 魔術師の世界に属する遠坂凛に間桐慎二に間桐桜、衛宮士郎にこの学園のOBには間桐臓硯が在籍している。本来、魔術師など日本では一生に一度会えれば凄いだろうにな。挙げ句に確か俺の浅い記憶では教師もマスターだった気がする。更にはここに人食い結界まで張られている。これは学園が呪われてるんじゃなくて冬木市が呪われてるんだな。まったく魔術師はろくでもない奴ばかりだな)

 

 でなければこうなりはしないだろう。しかし己の記憶の都合のよさには呆れがくる。

 

 下らない事は良く覚えているのに必要な事はめっきり何も思い出せない。

 

 できれば凛が自分の代わりに呼んでいたアーチャーを思い出したい。

 

 確か、彼はあのバーサーカーとまずまずの戦いをしていた。

 勝てるかどうかはおいておいてもだが…………少なからず自分の様に抑止の守護者ではなかった。

 凛は持ち前の実力と才覚で有用なサーヴァントを連れていた。

 

 ただ凛の敗因は基本、ジャスティスファンタズムを見捨てられない事だ。

 

 何せジャスティスファンタズムは世に言ういい人で世に言う態度のデカイ足手まといだ。他人の為に動くわりに災厄と最悪を己の恥と共に嵐が如く撒き散らす。

 

 彼の背後に残ったのは血とたくさんの死体と腹を違う意味で押さえつけ転がる無辜の民達だ。

 なぜ転がるかは言いたくもないし知りたくもない。

 

 そしてその様な人生を送るバカは今日も呑気に学園に現れ凛を呆れさせ呑気に学園で中二病やってるんだろう。

 

 愚昧ここに極まれり。救いなしだ。ジャスティスファンタズム。

 

(ん、誰か来る?)

 

 階段をドタドタとかけ上る音がする。おかしい。始業のベルはなった。なぜ屋上にくるのか。

 

 アーチャーは霊体化したまま屋上の貯水槽の上に移動し様子を探る。

 

 その相手はそんなアーチャーの姿に気付くことなく扉を蹴破り正体をアーチャーの前に現した。

 

(ふむ。衛宮士郎か。見慣れた制服を普通に着こなし…………………………ふむ。衛宮士郎か。マトモに制服をきて眼帯はなく包帯もない。異常な格好だな。あれはおかしい。しかし何故、泣いている)

 

「なんでさぁ! なんでさぁ!! なんでさぁ!!! なんでさぁ!!!!」

 

(────何が? おおっ。金網に頭をぶつけ始めたぞ)

 

「なんでさぁ! どうしてさ! 俺いったい!

 じいさんぁあああん!」

 

(おおおっ? 金網をよじ登り飛び降りようと……………ってちょっと待て衛宮士郎! 何処に逝く気だ!」

 

 アーチャーは実体化し衛宮士郎のズボンのベルトをつかみ錯乱している衛宮士郎を取り押さえる。その顔はジャスティスファンタズムではなく只の弱りきった男子高校生だった。

 

「正義の味方になりたかったょおぉ! 次、生まれ変わったらちゃんとするからァァァァあ!!!」

 

「まてまて! 飛び降りてなれるのは正義の味方じゃなくて只の死体だ。復活できんぞ! やめておけ! ここまで壊れたか! 見た目がおかしいのは良いがお前はループ系主人公じゃないぞ!」

 

「あああっ! 止めないでくれ! 俺を死なせてくれ! じいさんっ! じいさんンゥウウウ!!! やり直そう! 全てを! 今こそ再生の時!」

 

 何をしている!? 何があった!? と混乱するアーチャーだったが彼の心は彼に届かず衛宮士郎はジタバタと暴れアーチャーの手から離れようとする。

 

 アーチャーは彼の火事場のバカ力と言わんばかりの力でアーチャーを振り払いまたもや金網をよじ登ろうとする。

 

 それをアーチャーはまたもや引摺りおろし衛宮士郎を押さえつける。

 

「何があった!? 衛宮士郎? お前の身に何がおきた!?」

 

「違うんだ! あれはあれなんだ。俺じゃない! 俺じゃないんだ!? 何かがどこがで狂っただけなんだ!」

 

「狂った? 貴様は最初から頭は狂っていただろう?」

 

 アーチャーはジャスティスファンタズムこと、衛宮士郎に当然の言葉を返す。

 

 それを聞いた衛宮士郎は涙を流した眼をアーチャーに向け無言でシクシクと泣き出した。

 

 その姿にアーチャーは途方もない疑問を覚えながらも話を聞くことを選んだ。

 

「何があった?」

 

「俺、中二病だったんだ!!」

 

「な、なんだって?」

 

 聞き間違えだろうか? 自分の耳は狂ったのか?

 聞き直してしまう。

 

「俺、中二病だったんだ!!!」

 

「ナ、ナ、ナ、ナ、ナ、ナ、ナ、ナンダッテーーーー!?」

 

 アーチャーも壊れた。体をくねらせながらシクシク涙を流す衛宮士郎を突き飛ばし全身で恐ろしい物を見たような表情で叫びだす。

 

「ジャスティスファンタズムが!? 衛宮士郎が中二病だっただと!? いや、知ってるけども解ってたけども! 本人の口からこの言葉が出てくるなんて!」

 

「ジャスティス? グハッ!」

 

 頭を抱えて転がり回る衛宮士郎を驚愕の表情で見詰めるアーチャーの頭には電撃が走る。

 

 中二病卒業だと? 生きている間に卒業しただと? 死んで抑止の守護者になり体感時間で数千年は拗らせていたと言うのに! 中二病と言う呪いを振り払ったのか? 何故だ? どうやって!? いやいい!! これは素晴らしい!

 

 これで俺は幸せだ! やったよ遠坂! 俺、これからも頑張れるよ!

 

 ふっはっ! ふはははっ! 

 

 いや、まて? 何でコイツ急に素面に返った? 俺は生前マトモに素面だった事があっただろうか?

 

 コイツの身に何が?

 

『フー。治療終了よ。全く、いつも妙な真似をしてくれるわね。衛宮君は』

 

『ありがとうございます。凛。シロウの身体は大丈夫ですか?』

 

『ええ。大丈夫よ。セイバー。ただ頭を強く打ったみたいだから記憶に障害がでるかもだけど』

 

『そんな…………』

 

『…………(いや恐らく頭は元から色々、でてるだろう)』

 

『じゃあね。セイバー。明日、また来るわ。衛宮君に同盟の事、伝えておいてね』

 

『はい。わかりました………』

 

 あれか! そうか! 頭をうったのかコイツ! そして今までの記憶をそのままにジャスティスファンタズムがいなくなり只の衛宮士郎になったのだろう。

 

 つまりコイツは今、只の中二病卒業生の衛宮士郎か…………。

 

「衛宮士郎? 貴様、大丈夫か?」

 

 彼の心境を慮り心なしか優しく声をかけるアーチャー。

 彼は今きっと恐らくこの世の誰より彼を理解しているだろう。

 

「何でさ! 大丈夫に見えるのか? 俺は俺はどうしてこんなことに!」

 

「ああ。全くだ。君の気持ちはよく解る」

 

 俺は君より年季、入ってるよ。多分、君より地獄を歩いてる。

 

 よく解る。逃げ場の無いこの気持ち。よく解るよ。これはひどい。

 

「解るもんか! お前に俺の苦しみがぁ!!!!」

 

「わかる!!!!! わかるさ!!!!! 俺の胸で泣け!!! 俺も似たようなもんだ!!コイ! エミヤァァァア!!!」

 

「俺、俺、アーチャーァァァァア!!!!」

 

 涙を流し己を抱き締めるアーチャーに涙を流し己を抱きとめる衛宮士郎。その二人の慟哭の涙は悲しい優しさに満ちていた。

 

 アーチャーがどうして自分に優しくなったのか訳もわからないまま彼の暖かみに衛宮士郎は涙を流し続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────放課後まで。

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