ダンジョンを本気で攻略するのはまちがっているだろうか?   作:虎馬

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やたら弱そうな主人公でしたが、時間が異常にかかったことに対する説明と今後の準備回です。
今回はちょっとした独自解釈を含みます。主にステイタスの上昇に関して。
あと説明ばっかりで辛いかもです。女神サイドは毎回こうかもしれません。



2.明日のために

「女神様、モルド=レンド只今帰還しました!」

意気揚々と帰還の報告をするモルドの声が耳に届き機織りの手を止める。この様子ならきちんと無傷で一階層を一回りする事が出来たのだろう、まず問題ないと見ていたがこちらとしても喜ばしい結果だ。

 第一階層を三カ月かけて突破する。神友であるヘファイウトスから怪訝な目で見られてしまったが、状況を知る私にしてみればそれなりに早いとすら思っている。何せ今まで一度もステイタスの更新を行うことなく純粋な技術の向上のみでここまでこぎつけたのだから。何の変哲もない戦闘未経験者が誰の教えも請うことなく同じ事をするなら丸一年かかっても不思議はない。まあ普通はもっとまめに更新して安全に突破させるのだろうが。

 時間がかかる上に危険な事をしているのは勿論理由がある。情報収集を行った結果、自分より強い相手と戦った方が成長しやすいという事と、能力が高くなるほど成長が鈍るという事が直ぐに解った。ならば能力をあえて低いままにして出来るだけ素の技術と知識で攻略させてやったら少しずつ成長させるよりも格段に早く成長できるのではないだろうか?記念すべき眷族第一号ではあるが、だからこそあえて時間や手間をかけて確認作業を行っている。少なくとも三階層まではそれほど強い魔物が出現しない事をギルドなどの情報で確認している為、無理をさせないように気を使いつつ可能な限り無成長で到達階層を進めている。実際経験値は日々着実に蓄積されている。

 しかし最弱の魔物といわれているゴブリンやそれに準ずるコボルトに手を焼いている現状は中々苦しいものがある。この子にだってそれなりに情報が入っているだろうから自分の進捗が酷く遅いという事は気付いているはずだ。私の指示であえて遅らせているという事はよくよく言い聞かせているものの、腐っていまわないかが現状最大の不安要素と言っていい。今日の探索の内容を聞く限りでは腕力や脚力があと少し高くなっただけで一息に三体のコボルトを倒せるということになるのだが一度成長させておいた方が良いのだろうか。ランクアップのために必要な上位の経験値の獲得法や、ランクアップした後の事を考えると早い段階で能力に頼らない純粋な戦闘技術の習得が必要になるのだが。

 

「一先ず第一階層突破おめでとう。明日から第二階層に挑戦する事になるがそろそろ装備が傷んでいるようだし御祝ついでに買い替えるとしようか」

 

 ステイタスの向上はもう少しだけ先延ばしにして装備を新調することにした。一階層であればすぐに帰還する事が出来るが、二階層から直ぐに戻るのは難しい以上初期の支給品では不安だ。剣を今の戦い方にあった物に変えれば一撃あたりの威力も上がり三階層までは通用するようになるはずだ。これだけ苦労して能力の上昇が並み程度だったらと思うと少々不安になるが、まあいい。これは必要な投資だ。ダンジョンに潜るために必要な経験や戦うための技術は間違いなくついているのだから。

 

 装備の新調と聞いて目を輝かせるモルドを伴い一路バベルへ。武器や防具については紳友であるヘファイストスのところのものを使と決めていた。モルドは一流ファミリアであるヘファイストス・ファミリアの装備と聞いて金などは大丈夫なのかと不安になっていたが、駆け出しの鍛冶師が作品を売るためのスペースだから比較的安価で良質なものが手に入る場所だと説明しておいた。実際ここなら普通に買うよりも安価に売られている事は確認している。自分の作品が人の手に渡る喜びを知ってもらおうという主神の計らいなのだろう、商人としてはあまり儲からないやり方だが鍛冶師を育てようという彼女の姿勢はなかなかに立派だ。眷族を育てようという意気込みを感じる。私も負けてはいられない。

 二人で薄暗い新人用の販売スペースを歩いて行くが、さすがに商品数が多い。探しているのはロングソードとライトアーマーだがどちらもよく使われるものなだけに品数も豊富だ。その中でモルドにあった武器を探していく。戦い方が回避や受け流しを駆使いつつ長剣で一撃必殺を狙うスタイルだからあまり重い物は避けたいところだ。重心が先端部分に偏っていれば主力である振り下ろしの威力も上がり今より戦闘は楽になるはずだが、変な癖がつかないように中央付近に重心があった方がよいのだろうか。今後の鍛練にも関わるため私が探しておこう。ライトアーマーは展示されている商品に目を輝かせているモルドに探させておく。防御の大切さや自分の目指す戦い方も考えながら探すように言っておく。最悪二階層でなら多少の事では命にかかわる事態にはならないだろう。

 約二時間かけて結局重心が先端部分に偏った長剣にすることに決めた私は鎧を吟味するモルドの元へ向かう。こちらはすでに決めていたのだろう、白色のライトアーマーが入った木箱を傍らに置き別の鎧の連結部などを興味深そうに眺めていた。

「すまない、少々遅くなってしまったようだな」

「いえ、俺のためにどれが良いのか考えてくれたのですから。むしろありがとうございます!」

 可愛い奴め。

 一応変な商品を掴んでいないか確認するべく木箱の中身を検める。胸元や手首、腰回りを局所的に守るライトアーマーだが大きさを加味しなくてもかなり軽い。特殊な素材を使っているのだろう、硬度もそれなりにある。なかなかの掘り出し物だ、未熟ながら良い腕をしている。胸甲に書かれた制作者の名前もそれとなく確認して木箱に戻す。名前がぴょんきちでさえなければと少し残念な気もするが、だからこそ売れ残って手に入ったのだろう。名前で性能が変わるわけでもない。

「中々の掘り出し物だな、そなたの戦い方にもあっている。それにしておこう」

「はい!ありがとうございます」

 モルドの稼ぎはダンジョンにこもる時間の少なさも相まって僅かではあったが、趣味で行っている機織りでそれなりの儲けが出ている為収入は余裕がある。申し訳なさそうにしているモルドには投資だから気にするなと言い聞かせておいた。本来ならもっと稼ぐ事が出来るところをあえて稼げないようにしているのはこちらなのだから恐縮されても困る。それに直ぐに稼げるようになるはずだ、予想通りに成長できているなら。

 

 明日からのための買い出しを終えホームに戻った頃にはすでに夕刻。あまり稽古をつけてやる事が出来ないので軽く打ち合うだけにする。動作確認も兼ねて新品のライトアーマーを着込み木剣を構えるモルドに対して今後の戦いに必要になるだろう連撃を織り交ぜつつ攻め立てる。これを苦も無く放てるようになれば三階層まで突破できるだろうが、暫く難しそうだ。日が暮れたがもう少しだけと素振りをする光景を見ながら今後の方針を聞かせて今日の鍛練を切り上げる。

 

明日は初の二階層への挑戦、冒険の新たな1ページにモルドは一体どんな冒険譚を刻んでくれるのだろうか。傍で見ることのできないもどかしさがまた面白い。不自由な下界の生活を楽しむとはどの神が言った言葉だったか。そんな益体も無い事を考えつつ横になる。今日とは違う明日を夢見て。

 




ということで第2話終了です。
色々説明しておきたい事や張っておきたい今後の伏線がありましたが、恐ろしいほど長くなってしまったのでバッサリカットしました。
ポーションの購入先や鍛練風景を打ち込んでいたら5千文字とか行ってしまい、これは読んでいて辛いだろうとまた次回の女神編で書くことにします。
とりあえず書きたかった事は、無成長でどんどん戦えば経験値稼ぎ放題じゃね?って事です。ただし同じ事をすると普通は死んでしまうので誰もやらないという独自解釈です。あくまで自分より強い相手と戦うことで大きく成長し、またその戦いをどれだけ自分で意味を見いだせるかが成長のポイントだと思っています。ベル君もトラウマであるミノタウロスだからこそのランクアップだったようですし。
次回モルド編は一気に四階層あたりまで行けたらと思います。中ボスとして想定しているあの魔物との一騎打ち、うまく書けると良いのですが。

 長々とした説明回でしたが飽きずにまた次回も読んでもらえれば幸いです。
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