私の青春ラブコメも間違っている   作:アリオス@反撃

10 / 28
テニス後の奉仕部部室

 

 

放課後、千尋の脚は擦り傷以外に捻挫だった。保健室で治療してもらったため、5限は丸々サボるはめになり、6限から復帰、今は放課後である。

捻挫と言っても、そんな酷いモノではなかったため、松葉杖はナシ。でも帰りは自転車は押して帰るハメになりそうだ。

そのまめ、優美子や結衣に遊びに誘われたのだが、怪我してるので断った。ハァ……とため息を吐きながら部室に入ると、中には八幡と雪乃がいた。

 

「おーっす」

 

挨拶して入ると、雪乃が振り返った。

 

「あら、あなたは由比ヶ浜さん達と一緒に遊びに行ったのではないの?」

 

「この怪我じゃ行っても気を使わせるだけだよー」

 

「怪我は大丈夫?」

 

「うん。平気。いやー雪乃すごいねー。テニス超上手だったじゃん」

 

「そうね。でもあなたも中々食らいついてたんじゃないかしら?」

 

「おお、雪ノ下が他人を褒めるなんて珍しいこともあるんだな」

 

「あなたが私のことをどう思ってるかよくわかったわ」

 

うふふと微笑む雪乃に心底ビビる八幡。その横を通って、千尋は椅子に腰をかけた。すると、突然ガラッと扉が開いた。

 

「邪魔するぞ」

 

平塚先生だ。すると、「はぁ……」とため息をつく雪乃。

 

「平塚先生、入る時はノックをしてくださいよ」

 

「ん?それは雪ノ下の台詞じゃなかったか?」

 

八幡の台詞に全く関係ないことで返す平塚先生。

 

「おーっす!」

 

「足は大丈夫か早川」

 

「うん。平塚ちゃんこそ婚活大丈夫?」

 

「……教師にナメた口聞くのはこの口か?」

 

「いふぁいれふいふぁいれふ!ふぉふぉを掴まないでくだふぁい!」

 

グイーッと千尋の両頬を摘み上げる平塚先生。

 

「それで平塚先生、ご用件は」

 

「おお、そうだった。例の勝負についてだ」

 

千尋の頬から手を離す平塚先生。

 

「いてえ……勝負?」

 

頬をさすりながら千尋は聞いた。

 

「そうか。早川は知らなかったな。私の独断と偏見で勝敗を決めている。勝者は敗者になんでも言うことを聞かせることができるのだが、参加するか?」

 

「なんでも?します!」

 

「ふむ、了解だ。ただし、途中参加により2人よりやや遅れてのスタートになるが、構わないか?」

 

「大丈夫ですよー。すぐに追い越しますから」

 

「……舐められたものね」

 

千尋に挑戦的な視線を送る雪乃。それを見ながら八幡は少し引いていた。

 

「それで、2人の戦績だが、今の所互いに雪ノ下が3勝、比企谷が2勝といったところだな。うむ、接戦はバトル漫画の華だ。……個人的には比企谷の死を乗り越えて雪ノ下が覚醒、という展開を期待していたんだが」

 

「なぜ俺が死ぬ展開……。ていうか、依頼4人しか来てないんですけど」

 

「私のカウントではちゃんと5人いるんだよ。独断と偏見と言ったろうが」

 

「俺ルールもそこまでいくと清々しいですね」

 

すると、千尋が口を開いた。

 

「で、これはどうすると1勝になるの?」

 

「ふむ、そうだな。悩みという感じはりっしんべん、つまり、心の横に凶の字を書く。さらにその凶という字に蓋をしてしまうんだ」

 

「何年B組だよ」

 

「随分と穴だらけの蓋だね」

 

「いつだって悩みというのは本心の脇に隠されているものだ、相談してくる内容が本当の悩みとは限らない、ということだよ」

 

「最初の説明、まったくいらないですね」

 

「別に上手いこと言ってねぇしな」

 

「で、それなんのパクリ?」

 

雪乃、八幡、千尋とバッサリ切り捨てた。

 

「ぱ、パクリじゃないぞ。自分で少し考えてみたんだ!」

 

年甲斐もなく声を荒げる平塚先生。

 

「まったく、君たちは人を攻撃する時は仲が良いな」

 

「どこが……。この男と友人になるなんてことなんてありえません」

 

「私は八幡と友達だよ。家も隣同士だし」

 

「ね?」とでも言うように微笑みかける千尋に「お、おう……」と八幡は困惑したように返すしかなかった。すると、パサッと音がした。雪乃が本を落とした音だ。

 

「……比企谷くん。洗脳を解きなさい。犯罪よ」

 

「してねぇよ。変に懐かれた」

 

「人を動物みたいに言わないで」

 

ぷいっと千尋はそっぽを向いた。すると、雪乃がその千尋の肩に手を置いた。

 

「考え直しなさい、早川さん。そこの男の友達になるということは、世界を敵に回すようなものよ」

 

「俺は魔神かよ」

 

「大丈夫だよ雪乃。八幡はこう見えて妹いるから」

 

「………それと彼が大丈夫であることの関係を教えてくれる?」

 

「うーん……妹に『お兄ちゃん』って言われるってことは、家ではまともってことだよね?」

 

すると、雪乃は八幡の肩に手を置いた。

 

「良かったじゃない。友達ができて。それも女の子よ。これからもう増えることもないんだから、大切にした方がいいんじゃない?」

 

「増えることないのかよ。いや、あってるんだけどさ」

 

「なに、八幡は私が友達なのが不満なわけ?」

 

「奇跡的に出来た友達なんだから、ありがたく思いなさい」

 

千尋と雪乃に言われて、思わずしょぼくれる八幡。

 

「大丈夫よ。早川さん以外にもきっと、あなたと友達になってくれる昆虫が現れるわ」

 

「虫かよ!せめてもっと可愛い奴にしろよ!」

 

「ていうかそれ、私のこと虫って言ってる⁉︎」

 

2人に反論されても、涼しい顔で雪乃はそれを流した。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。