四人でしばらく回ってると、小動物ゾーンに入った。ここはハムスターとかウサギとかフェレットとかを集めたゾーンで、ふれあいコーナーなるものがある。
「へぇ……ふれあいコーナーかぁ。八幡、行こうよ!」
「ん、おお」
千尋が元気良く指をさして、そのゾーンに足を踏み入れる。子供みたいにはしゃぎながら、たまたま近くにいたフェレットに手を伸ばした。が、ちょこまかと逃げられた。
「…………」
そのまま表情も体も微動だにせずに固まってると、小町がすかさずフォローに来た。
「だ、大丈夫ですよ千尋さん!動物は純粋なだけですから!」
なんのフォローにもなってなかった。ちなみに、雪乃も小動物をこりこりもふもふしていたが、ひとしきり首をかしげると立ち上がった。求めていたものとはやはり違うらしい。
ちなみに八幡が近付くと、ちょこまか逃げる。それを見て千尋は八幡の肩に手を置いた。
「凹むことないよ」
「いや気にしてねぇけど」
「私もだから」
「だから気にしてねぇってば」
「大丈夫ですよー千尋さん。こっちこっち」
小町が明るく千尋の手を引いた。で、一匹のウサギの前で止まる。
「触ってみてくださいよ」
「じ、じゃあ……」
言われるがまま、千尋はそーっと手を伸ばす。指先がウサギのおデコに当たり、そのまま頭をナデナデした。逃げることなく、ウサギは千尋の指先の匂いを嗅ぐ。
「わっ……」
「ね?」
その様子を見ながら八幡は改めて嫌われてるのは自分だけだと認識してしまった。
「なぁ小町、もう行こうぜ」
「えー。千尋さんようやく楽しめてきたところなのに……あ、お兄ちゃん先行ってていいよ。小町、もう少し遊んでく」
「そうか……。じゃ、早川。小町のこと頼むわ」
「うん」
言うと、八幡は先へ進もうとした。だが、その後ろにいつの間にか雪乃の姿がある。
「……おまえも行くの?」
「ええ。確か次の次が猫コーナーよね」
「お前どんだけ猫見たいんだよ……」
そんな会話をしながら二人は行った。一方、小町と千尋はさっきのうさぎを撫で回しながらお話ししていた。
「で、千尋さん。ずばり、兄のことどう思いますか?」
「へ?いきなり何?」
「いやー、なにせ兄が過去に話したことのある女性なんて二桁いかないものでして、気になったんですよ」
「うーん……どう、と言われてもなぁ」
上を向いて考える千尋。
「箇条書き的に表すと、友達、助けてくれた人、隣人、部員、闇に落ちたサスケの目、アホ毛、捻くれ者……ってところかな?」
「ああ、大体わかりました。はい、ありがとうございます」
「何その反応⁉︎」
「ちなみに、男性として見たらどうですか?」
「それは…恋人に考えたらってこと?」
「はい」
「うーん……どうだろう。でも楽しそうではあるよねー。ただ、」
「ただ?」
「なんか、それ以前に八幡って誰とも付き合わ無さそうだなーって。俺と一緒にいるとお前のクラスでの立場が〜みたいな?」
「あー……確かにありそうですねそれ。お兄ちゃんはゴミィちゃんだからなぁ。というか、意外とお兄ちゃんのことよく見てるんですね」
「まぁねー。私の数少ない男友達たからね。なんなら雪乃と結衣は数少ない女友達」
他の女優美子と姫菜と戸塚くんしかいない、と心の中で付け足した。男友達も同じようなもん。
「えっ……千尋さん、友達いないんですか?」
「えっ、うん。いや今は少しはいるけど……知らなかった?」
「はい……。てっきり、お兄ちゃん的に言うとリア充だと……」
「ううん。C組には友達いないよ。なんでか嫌われちゃうんだよねー」
ニコニコしながら重いことをいう千尋だった。すると、小町が真面目な顔で言った。
「お兄ちゃん…千尋さんをもらってあげてください」
「なにいってんの?」