私の青春ラブコメも間違っている   作:アリオス@反撃

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奉仕部と材木座とゲームと煽り

 

 

月曜日、部室には雪乃と千尋が二人でいた。放課後になって既に30分以上、雪乃が今日も由比ヶ浜さんは来ないのかしら……みたいな表情でいると、千尋がそれに言った。

 

「大丈夫だよ、雪乃。今日は来るから」

 

「早川さん……」

 

そう言った通り、ガラッとドアが開いた。八幡の後ろには、結衣の姿がある。

 

「や、やほー。ゆきのん……」

 

「いつまでもそんなところにいないで早く入りなさい。部活、始まってるのよ」

 

家出した子供を迎える母ちゃんのような台詞を言った。

 

「う、うん……」

 

雪乃の隣に結衣が座る。その様子を見て、千尋はおもわず微笑んだ。八幡も椅子に座る。

誰も何も言わなかった。雪乃も結衣も八幡も誰かが話を切り出そうとする挙動は見逃すまいと、耳をすませていた。

緊張感が張り詰める中、千尋が口を開いた。

 

「いやー、聞いてよー。昨日、TSUTAYAでハリポタ借りてきてさぁ、夜中までエキサイトしちゃったよー」

 

空気を読まなかった。すると、雪乃がそれに合わせるように言った。

 

「そ、そう。ハリポタ、というのは?」

 

「ハリー・ポッターの略だよ」

 

「あの、眼鏡の?」

 

「すごい覚え方してるね……。まぁ合ってるけど」

 

「一度だけなら見たことはあるけれど」

 

「面白いから見たほうがいいよー。音声を英語で見れば勉強にもなるし」

 

「そうなの……」

 

「順番に見ないとわからないから……。あ、なら今度うちで一緒に見ようよ。もうすぐ夏休みだしさ」

 

「そうね。時間があれば是非ともそうしたいわね」

 

「結衣もどう?」

 

「へっ⁉︎あ、あたしも⁉︎」

 

「うん。どうせ結衣は暇でしょ?」

 

「どういう意味だっ⁉︎あ、あたしだって予定くらいあるもん!」

 

「ふぅん?例えばどんな?」

 

「ゆ、優美子と遊ぶし!」

 

「いつ?何時?何処で?地球が何周回った時?」

 

「細か過ぎだし!てか、わかるわけないし!」

 

「小学生みたいなこと言ってんなよ……」

 

「ちなみに地球は今、約何周してるでしょうか」

 

「だから分かるわけ……!」

 

「地球の年齢を考えればわかるだろ」

 

「つまり、約46億周ね。まぁ、他にも様々な説はあるみたいだけれど」

 

「なんで分かるの⁉︎3人とも何者⁉︎」

 

そんな会話をしてると、いつの間にか3人とも普段と同じように話せてることに気付いた。この流れなら、キチンとお話しできるかもしれない。

そう思って、口を開きかけた時だ。ダンダン!と焦ったようなノックが聞こえた。

 

「………どうぞ」

 

仕方なさそうに雪乃が言うと、大慌てで材木座が入ってきた。

 

「うおーん!ハチえもーん!」

 

直後、心底イラッとした千尋は自分の椅子を持って殴り掛かろうとしたので、慌てて雪乃と結衣が止めた。

 

「アバダケ……!」

 

「待って!落ち着いてちーちゃん!」

 

「由比ヶ浜さん、インカーセラス」

 

「ゆきのん本当はかなりハリポタ見たことあるでしょ⁉︎」

 

「全作一度ずつ見たことがあるのよ」

 

そんな一幕はともかく、八幡が材木座に応対する。

 

「なんだよ。つーかその呼び方やめろ」

 

「ハチえもん、聞いてよ!あいつらひどいんだよ!」

 

「悪いな材木座、この奉仕部は四人用なんだ。な、ジャイアン?」

 

「なぜ私を見るのかしら……」

 

怪訝そうな顔で八幡を睨む雪乃。それでも、材木座は八幡に声をかけ続ける。

 

「おい、待て八幡。ふざけている場合ではない。ハチえもんが気に入らぬのなら、忍者ハチトリくんでもいいから我の話を聞け」

 

「じゃあ、私達は四人全員ドラえもんになってのび太が死ぬまで徹底教育するー」

 

「おーい、早川落ち着け」

 

八幡も静止に参加し、なんとか千尋を落ち着かせると、ようやく材木座の相談に入った。

 

「先日、我がゲームシナリオライターを目指していることは言ったな?」

 

「ラノなんとかじゃなかったっけ……」

 

結衣が小首を傾げた。

 

「ぬ……。うむ。話すと長くなるのだが、ラノベ作家は収入が安定しないのでやめた。やはり正社員がいいと思ってな」

 

「みじけぇ……。二言で終わったぞ」

 

「つか、なんで私と八幡の方しか見ないわけ?キモいんだけど」

 

「はっ、同類に何を言われても効かぬわ!」

 

「元だって言ってんでしょ⁉︎あんたホントガチで戦争してやろうか‼︎」

 

「落ち着いてちーちゃん!」

 

「これが落ち着けるかぁ‼︎」

 

うきゃームキャーとこれ以上無いレベルで錯乱してる千尋を無視して、八幡は材木座と話を進めた。

 

「………つまり、お前が売った喧嘩をなかったことにするか、お前が確実に勝てるものにしろと?そういうことか?」

 

「そうだ」

 

自信満々のその態度に、八幡はため息をつき、雪乃は頭痛に耐えるようにこめかみを押さえた。

 

「悪いが断る。今回のは明らかにお前に原因があるだろ。刺される覚悟がないなら煽んな」

 

そう言って、さっさと八幡はシャットアウトしようとする。だが、そうもいかなかった。

 

「ほふう、八幡は変わってしまったな。昔の貴様はもっと滾っていた。張り詰めた弓の震える切っ先によく似た横顔をしていたがな」

 

「裏声出すな。そんな横顔はしたことねぇよ。……何が言いたい?」

 

「はむん、奉仕部など片腹痛い。目の前の人間一人救えずになにが奉仕か。本当は救うことなどできぬのだろう?綺麗事を並べ立てるだけでなく、行動で我に示してみろ!」

 

「あ、材木座、バカ……」

 

直後、凍りついたような空気を感じた。八幡も材木座も恐る恐るそっちを見ると、氷の微笑で雪乃が言った。

 

「…………そう、では証明してあげましょう」

 

遊戯部に殴り込みに行くことになった。

 

 

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