――昼休み。
食事を取り終わった初日・佳織・睦月の三人は、屋上に居た。
ぼんやりと空を眺めながら流れる雲を数えている。
「優勝……したんだよね」
「うむ」
「したねー」
「実感……ないね」
「うむ」
「ないねー」
団体戦決勝戦が終わり、時は流れ気が付けば既に金曜日。
実際、県大会で優勝したからといって、学校生活で変わった事がある訳ではない。
授業免除の特例措置がある訳もなく、課題を白紙で提出した初日は英語教師にしこたま叱られたし、最初の二・三日はクラスメイトも騒いだが、今ではそれまでとなんら違いのない対応に戻っている。
普段となんら変わらぬ日々を送っているのだ。
「明日から個人戦だよね」
「うむ」
「だよねー」
「東風二十戦とか残れる気がしないよ……」
「うむ……」
「よゆー」
「うむ?」
佳織は一日一度限りだが、役満を確実に和了れるという団体戦においては強力なカードだった。
しかし、舞台が東風二十戦となると内一戦を高確率で勝てるというだけで、残り十九戦を地力でなんとかしなければならない。
麻雀歴二カ月未満の初級者には明らかに荷が重い。
睦月も、鶴賀学園の麻雀部内では麻雀歴が長い方ではあるが、特別強い訳ではないと自覚しているだけに表情は暗い。
そんな中、初日は自信満々に答えた。
「えいっ」「うむぁ」
「ぐえぇぇ!?」
その態度にイラッと来た佳織と睦月が、初日のお腹を指でぐいっと押した。
「つ……ついてねぇ」
「……という訳で」
「短期間に強くなれる方法を教えて」
「個人戦の前日に言われても……とりあえず臨死体験すれば良いんじゃない? うまくいけば一巡先とか見えるようになるかも」
もちろんうまくいかなければ死ぬ。
妙に具体的な初日の説明に「止めぃ! 私と能力が被るわ!」と、どこからか妙に強気な病弱少女の叫びが聞こえた気がした。
「ていうか、そういうのはあたしより加治木先輩とか部長に聞いた方が良いと思う。あたし普通の麻雀は大して強くないし……」
「加治木先輩はどうみてもオカルトに片足突っ込んでるし……智美ちゃんはアレだもん」
「うむ……部長はアレだしね」
一日に役満を必ず和了れるというオカルトの塊みたいな人が何を。
その内「御無礼、それロンです。48000」とか言ったりしないだろうか。
回想シーンに現在と変わらぬ姿で出演したり、他人の夢に出張してみたり、亡霊と麻雀を打ち始めればもう手遅れである。
「確かに部長はアレだね。でもあたしはオカルトに全身浸かってるんだけど……まあ、阿知賀こども麻雀クラブに通えば誰でもある程度は強くなるよ……」
メンタルが。
ドラ爆と役満地獄が待ち構えている卓に座っていれば、少々の事では動じなくなる。
ちなみに、当のドラ爆本人や役満地獄本人は自分がメンタルを鍛える要因になっているとはこれっぽっちも自覚していない。
お互いに「ドラ爆(役満地獄)があるから大変だね」くらいにしか認識していないのだ。そんなオカルトありえません。
だから、単純に比例するかどうかはともかく初日の感覚の倍は生徒達のメンタルに付加がかかっていた。
「今はもうないんだよね……あったとしても遠すぎるし」
さほど残念そうな様子は見せずに佳織が答える。
実際期待していた訳ではないのだ。急に強くなる方法なんて都合の良い物が転がっている訳がない。
それは自身が異能を持っているからこそわかっていた。
ただ、気を紛らわしたかっただけなのだ。
「うん、そうだね……あっ」
それもそうだと頷く初日が、突然顔を真っ青にして固まった。
不信に思った佳織と睦月は初日の顔を覗き込む。
「どうしたの」
「玄……向こうの友達を二カ月放置してた。こっちに越してから連絡取った記憶がない」
「ええぇぇぇぇ!? それ早く連絡しないと! メールだけでも良いから送らないと可哀想だよ!」
「わ、わかってる! わかってるから頭を揺らさないで!」
「私達以外に友達いたんだ……」
佳織は初日の襟元を掴んで、早くしろと急かす。
その横で地味に睦月が辛辣な言葉を零した。
to:新子憧(ako_cute_gogo@xxx.ne.jp)
sub:久しぶり、玄は元気やった?
[本文]
あたしは元気です
――奈良県、阿太峯中学。
とある教室の一角で、桃色ロングの髪をツーサイドアップにまとめた少女が携帯を取り出した。
「ん? ハツヒ? 何で唐突に……ってクロと間違えたのか。返信するついでに転送しておいてやろう。あたしは優しいからね」
うんうん、と一人頷きながら、憧は眼にも止まらぬ指捌きで携帯に文章を打ち込む。
「……これでよしっと。そう言えば最近クロはおろか、シズとすら連絡とってなかったなー。あの頃が懐かしいや。みんな元気にしてるかなー?」
――三年前、阿知賀こども麻雀クラブでの一幕。
和気藹々といった様子で小学生中学年とおぼしき女子の群れが麻雀を楽しんでいる。
その中に高学年~中学生くらいの少女が数名混じっていた。
「ロン! タンヤオドラ7、24000!」
内一人が、今和了宣言をした黒髪ロングの少女――松実玄。
とても中学一年生のものとは思えないおもちをお持ちの少女である。
「ぬぎゃー! やっぱ勝てないかー」
悔しさを全身で表すのは小学六年生――新子憧。
ショートカットをツーサイドアップにまとめている可愛らしい少女だ。
「私はみんなよりおねーさんですから!」
玄は得意げに胸を張った。
「ドラさえ……ドラさえなければ……」
ぶつぶつと呪詛を吐くように憧は零した。
タンヤオのみ――親で二千点の手がドラにより倍満に化けたのだ。
(悔しい……っ!)
憧は、麻雀というゲームの奥深さに魅了されていた。
その熱の入りようは、進学先に麻雀の強豪校を選んだ程である。
だからこそ、麻雀クラブ最強の座に君臨している玄を何が何でも倒したかった。
(――そうか!)
どうすれば勝てるのか……そう考えているとふとアイデアが降ってきた。
憧は眼を光らせて玄へと向き直る。
「玄、赤なしで勝負しよう!」
「……? 私は良いけど……本当に良いの?」
「フフン! ドラがなければ玄なんか置物だからね! あたしが勝つに決まってるよ!」
何故か憧を心配するようなそぶりすら見せた玄に、憧は自信満々に挑戦状を叩き付けた。
「わ、私は抜けようかなー」
「わ、私も今回は見学する所存ー」
それと同時に、先の半荘で同卓していた中学年の女の子達がそそくさと席を離れた。
まるでこの後悲劇が起こると確信しているかのように。
「ちょっとー卓割れちゃうじゃん! シズと和はさっき違う卓に混ざったところだし……」
「ならあたしが入るよ」
そこに入ってきたのは先程まで玄の後で観戦していた少女。
身長は憧とそれほど違わず、140cm台中盤というところだろうが、その胸部は憧と違い確かな膨らみがあった。
「げっ……ハツヒ」
「げっ?」
「いや、何でもないよー」
(あんたが混じると玄が有利になるでしょーが!)
混ぜるな危険。この一言に全てが集約される。
初日が混じると当たり牌が喰らい尽くされるので、ツモ和了が難しくなる。
だが、その制限に引っかからずに打てる方法が一つだけあった。
初日はドラを引けない――つまりドラ待ちにすれば初日の能力の影響外で麻雀が打てる。
しかし、ドラを独占し他家に一枚も渡さない玄が混じるとその方法も使えなくなるのだ。
必然的にツモ和了が狙えるのは玄と初日だけになり、他二名は出和了りに頼らなければならない。なので、リーチも出来ない(和了率が圧倒的に下がる為)。
ドラなしという低打点の闘いをを強いられる上に、貴重な一翻役であるリーチすらツモれる自信が持てる程の多面張でない限り使用できないのだ。
「私も混ぜてもらおうかな」
「ハルエまで……」
最後の一人には、この教室に存在する唯一の大人――麻雀教室の講師を務めている赤土晴絵が名乗り出た。
東風戦 赤ナシ アリアリ
東一局0本場 ドラ:{西} 親:藤村初日
東家:藤村初日
南家:新子憧
西家:松実玄
北家:赤土晴絵
五巡目憧手牌
{二三四④⑤⑥⑦234588} ツモ{②}
(うしっ! 聴牌)
リーチをすれば満貫になる手。
平場で序盤なら即リーで問題ない。
打{5}
(……だけどダマで。その内ハツヒが零すでしょ)
だが、憧はダマ聴を選択した。
待ちが一種四枚しかない形で初日を相手にリーチするのは無謀。
麻雀教室の生徒達にはそれが良くわかっていた。
無論、憧がそれを理解していない訳がない。
玄 打{2}
晴絵 打{白}
初日 打{③}
「ロン! タンヤオ三色で5200!」
憧手牌
{二三四②④⑤⑥⑦23488} ロン{③}
「まずは軽くリードさせてもらうわ」
むふふ、と憧は不敵に笑った。
東一局終了時点
東家:藤村初日 19800(-5200)
南家:新子憧 30200(+5200)
西家:松実玄 25000
北家:赤土晴絵 25000
東二局0本場 ドラ:{白} 親:新子憧
三巡目憧手牌
{三四五七⑥⑥⑥⑧123東中} ツモ{4}
東か中を重ねられなければ面前にするしかない少し重たい牌姿。
しかし、{4}を引いた事でタンヤオが見える様になった。
(……さくさく連荘と行きますか!)
打{中}
「ポンッ」
玄手牌(憧視点)
{■■■■■■■■■■■} {横中中中}
「へ?」
(玄が……鳴いた?)
憧は今までにない不可解な打牌にしばし呆然とした。
玄はドラを捨てるとその後数局ドラが手元に来なくなってしまうというデメリットを抱えている。
なので、実質ドラは捨てられない。
赤ありだとドラで手牌が都合八枚分埋まってしまうのだ。
副露している状態でカンをされるとドラを捨ててしまう事になる可能性が高い。
だから副露をする事はほとんど無いと言ってよかった。
「……ん?」
そして何かを察しプルプルと震え出す。
(あたし何やってんのー!? よーく考えてみれば玄って赤なしの方が強いじゃん!)
{赤五}・{赤⑤}・{赤5}の内、萬子と索子は玄の手牌を縛る枷となる。
二枚ある{赤⑤}は雀頭候補として使用できるが、{赤五}と{赤5}は周囲の牌がくっつかなければ浮き牌となってしまうからだ。
配牌が明らかに{五}や{5}が必要ない姿だとその局はほぼ和了れない。
ドラは打点を高める武器である反面、手牌を狭める鎖だったのだ。
「カン!」
(あっ……)
玄手牌(憧視点)
{■■■■■■■■} {■白白■} {横中中中}
「憧ちゃ~ん、カンドラめくって~」
「う、うん」
カンドラ:{中}
(ドラ7確定!? やばい……マジでやばい)
――五巡後。
憧手牌
{二三四⑥⑥⑥⑧234} ツモ{⑤} {横六五七}
(……どうしよう)
玄捨て牌 {■■■■■■■} {■白白■} {横中中中}
{四5二九西三}
{③}
{⑧}と{⑤}を入れ替えればタンヤオのみとはいえ三面張で待てる。
しかし、ドラ7、それも筒子の染め手らしきものを相手にするには明らかに打点不足であった。
(……押す)
どうせドラ7を和了られたら逆転の目は薄い。
危険は承知で勝負するしかないと憧は判断した。
打{⑧}
「ロン!」
「ふぇっ!?」
玄手牌
{⑥⑦⑧⑧⑧發發} {■白白■} {横中中中} ロン{⑧}
「ホンイツ小三元ドラ7――32000!」
「{⑤⑧}どっちも当たりかー……どうあがいても役満……反則でしょそれ……」
「憧ちゃんのトビで終了だねー」
「ぐぬぬ……」
一位57000 松実玄(+32000)
二位25000 赤土晴絵
三位19800 藤村初日
四位-1800 新子憧(-32000)
「アハハ! 玄相手に赤なしはダメだぜー、憧」
晴絵がからからと笑う。
「ハルエも知ってたならもっと早く言ってよー」
赤なしだと玄がさらに強くなるのはわかった。
だが、だからと言って赤ありに戻すのは負けを認めたみたいでプライドにさわる。
憧は現行ルールでもう一勝負挑む事にした。
「も……もう一回やるわよ!」
東一局0本場 ドラ:{西} 親:松実玄
東家:松実玄
南家:藤村初日
西家:新子憧
北家:赤土晴絵
「ロン。2000」
憧手牌
{二二五六七⑤⑦333} {横756} ロン{⑥}
「うっ……」
「相変わらず喰い仕掛けに弱いわね……ちゃんと捨て牌見てる?」
「……余裕があれば」
「なくても見ろ!」
東一局終了時点
東家:松実玄 25000
南家:藤村初日 23000(-2000)
西家:新子憧 27000(+2000)
北家:赤土晴絵 25000
東三局0本場 ドラ:{③} 親:藤村初日
「ツモ。リーヅモ一発ドラドラ、2000・4000」
玄手牌
{七八九③④⑤⑥123678} ツモ{③}
「アンタだけ平然とリーチ掛けられるのは何か釈然としないわね……」
「そう言われても……ドラは私の元に集まるから……」
東三局終了時点
東家:藤村初日 19000(-4000)
南家:新子憧 25000(-2000)
西家:赤土晴絵 23000(-2000)
北家:松実玄 33000(+8000)
東三局0本場 ドラ:{西} 親:新子憧
「ツモ。トイトイホンロウはえーと……2000・4000」
初日手牌
{①①①99中中} {横南南南} {横北北北} ツモ{9}
「何よその非常識な手牌は……! もう慣れたけど」
「……そう言われてもあたしはこんなんでしか和了れんし……」
「知ってるわよ!」
東三局終了時点
東家:新子憧 21000(-4000)
南家:赤土晴絵 21000(-2000)
西家:松実玄 31000(-2000)
北家:藤村初日 27000(+8000)
東四局0本場 ドラ:{③} 親:赤土晴絵
東家:赤土晴絵 21000
南家:松実玄 31000
西家:藤村初日 27000
北家:新子憧 21000
一巡目憧手牌
{一二四六七九②④234西北} ツモ{北}
(うにゅ……これはキツイ……ここから4翻を作るのか……)
234の三色が見える牌姿だが、今回のドラは{③}。
玄以外は引く事の出来ない牌なので、そこに向かうのは愚策でしかない。
逆転トップに必要なのは、ツモなら7900、玄からの出和了りなら6400。
後者はチートイ以外では殆ど出現しないので、現実的に可能な30符4翻の和了を目指す事になる。
打{④}
(萬子のホンイツしかないわね……面前なら北とイッツーのどっちか……鳴きを入れたら両方付けないと足りない)
晴絵 打{二}
玄 打{東}
初日 打{五}
「チーッ!」
二巡目憧手牌
{一二七九②234西北北} {横五四六} 打{4}
(一歩前進……とはいえ遠い……ハルエがクロを少し削ってくれれば楽になるんだけど……)
まだまだ形の見えない牌姿。そして聴牌出来たとしても、初日に当たり牌が喰い尽くされる前にツモらなければならない。
前途多難といえる門出だった。
三巡目憧手牌
{一二七九②23西北北} {横五四六} ツモ{八} 打{3}
「ポン」
玄手牌
{■■■■■■■■■■■} {3横33}
(うっ……鳴かれた……でもあたしのツモが増えるから悪くはない。何とか間に合わす)
初日 打{6}
四巡目
{一二七八九②2西北北} {横五四六} ツモ{東} 打{②}
――五巡後。
「カン!」
玄手牌
{■■■■■■■■} {■③③■} {3横33}
玄が手牌から{③}を四枚さらすと同時に、カンドラがめくられる。
そこに眠っていた{2}が表に晒された。
(またポンした牌にモロ乗り!? いい加減にしてよ!)
初日 打{一}
十巡目憧手牌
{一二三七八九東西北北} {横五四六} ツモ{東} 打{西}
(――来た!)
打{西}で{東北}のシャボ待ちでホンイツ一通役牌――30符4翻を注文通り聴牌。
出来過ぎなツモに気を緩めそうになるも、憧はただ真っ直ぐに卓上を見つめる。
(さあ勝負よ……これから三巡、ハツヒが潰す前にあたしが掴むか、クロが掴むか)
晴絵 打{⑥}
「もう一つカン!」
玄手牌
{■■■■■■■} {■③③■} {3横33} ツモ{3}
十一巡目、玄はツモった{3}を加カンしようと自身の右側へと叩き付けた。
「――ッ! ドラ8っていい加減にしなさいよアンタ!」
「むふふ、ドラは恋人なのです」
「とっとと振られてしまいなさい!」
憧と玄はむむむ、ぐぬぬとお互いの視線で火花を散らせる。
「盛り上がっているところ悪いんだが……玄、そのカンは成立しないぜ?」
「……みょ!?」
嶺上牌へと手を伸ばしていた玄の動きが止まった。
そして、晴絵の手牌が倒される。
「ロン――チャンカンだ。タンヤオ三色ドラ1、12000」
晴絵手牌 ドラ:{③} カンドラ:{3}
{七七七⑦⑦⑦2444} {横777} ロン{3}
一位:赤土晴絵 33000(+12000)
二位:藤村初日 27000
三位:新子憧 21000
四位:松実玄 19000(-12000)
「――支配者が必ずしも勝つとは限らない。勉強になっただろ?」
決め顔で晴絵が呟いた。
誰もが信じて疑わなかった玄の勝利。
それが覆えされ、教室は奇妙な静寂に包まれた。
「で、出たー! 赤土さんの『レジェンドロン』! 玄さんの加カンを狙い打つスナイプショットだ!」
その空気を切り裂いたのは、穏乃だった。
「すげー! レジェンドロン!」
「私もレジェンドロンしたい所存ー」
「レジェンドロンすごい」
それにならい、他の子供達も次々に驚嘆の声と憧れの感情を晴絵に向けた。
「恥ずかしいから止めて……ホント無理だから止めて」
その晴絵のお願いは全く聞き入れられず、小一時間程レジェンドコールが鳴り響いた。
「レジェンドロンッ!」
「レジェンドー!」
「ちょ……止め」
「レジェンドツモッ!」
「レジェンドー!」
「マジで……恥ずい」
「グランドマスターもイチコロだぁー!」
「それは無理」
「レジェンドー!」
「ハルちゃんどうしてこんなこと……」
「レジェンドー!」
「玄……穏乃……憧……みんな元気にしとるかな?」
初日は東の空を見上げた。
「初日ちゃん、そっち東京方面だよ」
「うむ」
――そして時間は流れ、五時間目の授業中。
初日の携帯からメールを受信した事を知らせる着信音が流れた。
「藤村さァァァァァン? 授業中、携帯の電源は切るようにッて習ッてなかッたかしらァ?」
「ヒィッ!」
「愉快なオブジェになるのと、廊下に愉快なオブジェとして飾られるの……どッちが好み?」
「ゆ、愉快なオブジェになるのは確定ですか!?」
「うン」
――つ、ついてね……ぎにゃぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁ!
fm:おもちマイスター(omochi_a-z_all.love@xxx.ne.jp)
sub:Re:Fw:久しぶり、元気やった?
[本文]
お久しぶりなのです。
もう! 憧
ちゃんとアドレスを間違えるなんて失礼なのですプンプン!
何でもっと早く連絡くれなかったの? 私は
センチメンタルな気持ちに浸っていたよ・゚・。 。゚(゚´Д`゚)゜。ウァァァン