長野県女子個人戦本戦・一回戦・A卓
東四局0本場 ドラ:{二} 親:龍門渕透華
東家:龍門渕透華 21100
南家:福路美穂子 21200
西家:天江衣 24000
北家:藤村初日 33700
一巡目初日手牌
{二二六②337889南中中} ツモ{6}
(また、ドラがある……)
初日は首を傾げつつ、理牌した。
本来なら初日の元に来るはずのない幸運の象徴。
二局連続で配られてきた以上、間違いなく透華の影響だろう。
(力の無効化? それとも運を平坦にコントロールしてる? まだ材料が少なすぎてわかんない……)
打{南}
(今は普通に進める。わかんないこと考えても仕方ない)
ツモ{二}
打{②}
ツモ{西}
打{西}
ツモ{④}
打{④}
五巡目初日手牌
{二二二六3367889中中} ツモ{八}
(ん、いい感じ……タンヤオか中、どっちにしろリーチかけずに満貫が狙える)
打{9}
しかし、そのタイミングで下家から横やりが入る。
「リーチ」
「ッ……!」
初日は喉まで上がってきたうめき声をどうにか飲む込んだ。
そして、いつものように心の中で呟く。
(ついてねぇ……)
捨牌
東家:龍門渕透華 {■■■■■■■■■■■■■}
{北⑧④九三横8}
南家:福路美穂子 {■■■■■■■■■■■■■}
{北9一西①}
西家:天江衣 {■■■■■■■■■■■■■}
{621一九}
北家:藤村初日 {二二二六八336788中中}
{南②西④9}
美穂子 打{南}
衣 打{發}
(衣が生牌の{發}……? 筒子染めやろか?)
それなりに安牌はありそうに思える親のリーチ。
わざわざ生牌、それも役牌を切ってきてる以上、最低でも一向聴、聴牌の可能性だって十分ある。
六巡目初日手牌
{二二二六八336788中中} ツモ{⑤}
({⑤}――! これが当たり牌? 龍門渕さんには通りそうやけど……)
透華の河には⑧が切られており{⑤⑧}待ちはない。{④}切りが早く{②⑤}の可能性も低い。
だが少なくとも、普段の状態ならこの{⑤}は誰かの当たり牌を掴まされていると判断した方が無難である。
しかし、初日の性質上来るはずのないドラが手元に来ている以上、そうは断定できず初日の頭を悩ました。
(わからない……何も見えない、麻雀ってこんなに難しいものやったっけ)
ゴクリと唾を飲み込み、渋い表情で{8}を打った。
(保留……)
透華 打{南}
美穂子 打{南}
衣 打{一}
七巡目初日手牌
{二二二六八33678中中⑤} ツモ{⑦}
(連続で筒子――! {8}でベタオリ? 中筋の{六}? いや……)
打{中}
(こっち!)
この巡目なら役牌が持ち持ちになっている可能性はそれほど高くないだろう。
読みが当たっていたかどうかはともかく、ロンの発声はかからなかった。
ツモ{4}
打{中}
ツモ{9}
(ぬ、索子は……龍門渕さんに切れない)
打{六}
十巡目初日手牌
{二二二八3346789⑤⑦} ツモ{⑥}
(追いついた! 何もわかんないし、良い待ちでもないけど……!)
今までアテにしてきた自身の性質が、どういう訳が綺麗さっぱり消え去った。
見知らずの土地に放り出されたような孤独感、不安感に襲われる。
自分を奮い立たすために、小さく深呼吸した。
(引いたら勝てない――! それだけはわかる!)
そして、牌を曲げる。
「リーチ」
打{八}
腹をくくった初日のリーチ。
だが、
「ツモ」
透華手牌
{五六七②③④12356中中} ツモ{7}
「1000オール」
――それはあっさりと流された。
(ぐ、空振り……)
東家:龍門渕透華 25100(+4000)
南家:福路美穂子 20200(-1000)
西家:天江衣 23000(-1000)
北家:藤村初日 31700(-2000)
和了った勢いのまま、透華は親番で連荘を続ける。
「ツモ、1300オールは1400オール」
「ツモ、1000オールは1200オール」
「ロン、2900は3800」
打点が高い訳ではない。
特別早い訳でもない。
だが、誰も動けなかった。
淡々と単純作業のように透華が和了りを重ねたのだ。
長野県女子個人戦本戦・一回戦・A卓
東四局4本場 ドラ:{東} 親:龍門渕透華
東家:龍門渕透華 36400
南家:福路美穂子 17700
西家:天江衣 20500
北家:藤村初日 25400
(東三局から龍門渕さんの四連続和了で、あっという間に彼女がトップ……ちょっとまずいわね)
まだ東ラスとはいえ、トップ目の透華と二万点近い差がある美穂子に多少の焦りが生まれた。
一巡目美穂子手牌
{一三六⑤⑥⑨3568西北發} ツモ{③}
(この手で止められるかしら……)
お世辞にも和了りに近いとは言えない牌姿。
とりあえず親の透華が捨てた{北}を合わせ打った。
十一巡目美穂子手牌
{六六①②③⑤⑥335566} ツモ{⑥}
(七対子の一向聴……)
捨牌
東家:龍門渕透華 {■■■■■■■■■■■■■}
{北91白3發
②②4八白}
西家:天江衣 {■■■■■■■■■■■■■}
{南西南發8⑧
2發5五}
北家:藤村初日 {■■■■■■■■■■■■■}
{北中二六南一
二白29}
(二人とも染まってはいないけど、天江さんは萬子に寄った手牌、藤村さんは索子に寄った手牌でドラも持ってる……聴牌は時間の問題。余裕はないわね。そして――)
ちらりと透華に目を向ける。
(龍門渕さん……未だに彼女の手が読めないわ……こんなこと、今までなかったのに)
完全に読み切るというレベルになるとまた話は別であるが、数局も打てばだいたいの打ち手のクセは見抜けた。
それほどの観察眼を持つ美穂子だが、透華のクセは現時点で全く見抜けていない。
(悔しいけど、お手上げね。それでも――)
初日と衣の手牌は読めている。
打{②}
面子から二枚見えている{②}を抜いて七対子へと決め打った。
(龍門渕さんがよほど筒子を固めてない限り、山に眠っているはず!)
十二巡目美穂子手牌
{六六①③⑤⑥⑥335566} ツモ{③}
美穂子の読み通り、筒子はすぐに重なった。
「リーチです!」
そして流れるような動作でリーチをかける。
美穂子捨牌
{北西⑨發西8
一三北9②横⑤}
十二巡目衣手牌
{一二二三三七七八九九456} ツモ{一}
(む、入ったか……ならば)
「リーチ」
(勝負と行こうか)
静かに曲げられる{七}。
まだまだ月が見えるには早すぎる時間帯。
卓の支配権は完全に透華に握られており、衣にはいつもの超常的な勘の働きもない。
恐らく、少し前までの衣ならば、この状態で麻雀を打つことは怖いと感じていただろう。
だが、今は違う。
(ままならぬのもまた一興、それもまた麻雀。初日が思い出させてくれた大切なこと。さあ楽しもうぞ!)
十二巡目初日手牌
{⑦⑦⑨1234777東東東} ツモ{①}
(うぅ……二人に無筋の{①}……だけど、この手は崩したくない。ワンチャンスだしこれくらいは……)
間違いなく自分のことを嫌いであるだろう神様にも祈りつつ、初日は引きつった顔で{①}を河に置く。
が、美穂子の手牌が倒された。
「ロン、6400は7600ですっ!」
美穂子手牌
{六六①③③⑥⑥335566} ロン{①}
「はい……」
知ってた。やっぱり。などとぶつぶつ呟きながら点棒を置いた。
(タンヤオ拒否してワンチャンスの{①}待ち――結果的に一発が付いて打点は同じ……してやられた)
東家:龍門渕透華 36400
南家:福路美穂子 26300(+8600)
西家:天江衣 19500(-1000)
北家:藤村初日 17800(-7600)
長野県女子個人戦本戦・一回戦・A卓
南一局0本場 ドラ:{6} 親:福路美穂子
東家:福路美穂子 26300
南家:天江衣 19500
西家:藤村初日 17800
北家:龍門渕透華 36400
美穂子配牌
{三三四七九①④⑦347東北發}
(五向聴……ドラもないし、ちょっと厳しい配牌ね……)
打{北}
(ん、ドラ……?)
違和感が美穂子の思考に引っかかる。
(そう言えば、東三局以降、ドラのほとんどが藤村さんに流れてるわね……)
透華が四連続和了した際も、ドラを使ったのはただ一度だけ。
初日以外にドラは1枚流れるかどうかという偏りが発生している。
(藤村さんは、ドラを使えない代償として、不思議な和了をする力を持っているかも……なんて仮説を立てていたんだけど)
プロファイリングをやり直す必要があるのかも知れないと締めくくる。
(それにしても静かね……)
牌が卓に置かれる音が、子守唄のように流れ続ける。
不思議な調和が衣の「リーチ」という声に破られるまで続いた。
「ツモ、1000・2000」
衣手牌
{五五九九九②③⑤⑥⑦345} ツモ{④}
(一発だけど、表も裏もなし。やっぱりおかしいわ……牌譜を精査する時間はなかったけれど、天江さんは高火力が自慢の打ち手……)
ドラが来ないはずの初日にドラが集まり、衣からは火力という牙を抜き、美穂子はその目を十全に活かしきれていない。
そして、奇妙な静寂。
その全てが龍門渕透華の変貌を起因としている。
(ああ、何て、何て)
――面白いことになっているのかしら。
親かぶりでトップとの点差が離れてしまったというのに、美穂子の顔は自然と笑みを象っていた。
東家:福路美穂子 24300(-2000)
南家:天江衣 23500(+4000)
西家:藤村初日 16800(-1000)
北家:龍門渕透華 35400(-1000)
長くなりそうなので、A卓決着は二話に分けることにしました。
次話は割と早く投稿できると思います。
あと、美穂子さんはドMだと思います。