本物を探す長い道のり   作:麒麟人間

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対して長くもないのに更新に時間がかかりました。
短いプロローグにも関わらずお気に入りに登録して頂いた5名様には感謝しきれません!
続きに対しての期待に応えるべく頑張りますのでお願い、切らないで!(切実)
今回は雪乃視点→八幡視点→雪乃視点→八幡視点というごちゃごちゃした構成になっていますが、次回からは落ち着くはずです、多分。


困った時は小町におっ任せ〜!

……比企谷くんに一方的な部活動停止を告げてからしばらくして、彼は大人しく帰って行った。

普段から猫背ではあるけれど、心なしかいつもより肩を落としているように見えた。

それも当然かもしれない。なにせ、碌な説明もせずに活動停止を言い渡し、問いただしてきた比企谷くんにも、部長命令の一言で聞く耳すら持たなかった。

 

今回ばかりは彼に愛想を尽かされてしまったかもしれない。しかしそれでも私にはやらなければいけない事がある。

それが、いつも困難な問題を彼に押し付けてしまっていた私に出来る唯一の罪滅ぼしなのだと思う。

由比ヶ浜さんには話すつもりだけれど、なるべく比企谷くんを除く奉仕部の二人で解決しなければならない。

 

「やっはろー! ゆきのん、ヒッキー! ってあれ? ヒッキーは? 先に来てた筈なんだけど……」

 

いつもの太陽の様に眩しい笑顔を見せながら由比ヶ浜さんが部室に入って来た。

これから事情を説明しなければならないのだけれど、この笑顔を曇らせてしまう事は間違いないのでどうしても躊躇してしまう。

 

「……比企谷くんは、その……」

 

「あ、ジュースでも買いに行ってるのかな? ヒッキー好きだもんね、MAXコーヒー。あんなに甘いのによく飲めるよね〜」

 

「いえ、彼は……もう帰ったわ」

 

「ふぇ? あ〜、もしかしてまたいろはちゃんに連れてかれちゃったの? ヒッキーいろはちゃんにはMAXコーヒーくらい甘いもんね」

 

表情をコロコロと変えながら比企谷くんの事を話す由比ヶ浜さんは、彼の事が好きなのだと、直接聞いた事はなくてもその態度で物語っていた。

しかし、そんな彼女だからこそ、悲しい思いをさせる事になっても協力して貰いたいのだ。

彼女も今まで彼に問題を押し付けていた結果、彼が傷付いていくのを見て、歯がゆい思いをしていたに違いないのだから。

 

「由比ヶ浜さん。実は……」

 

 

 

*****************

 

 

 

「うぃー。小町ー。ただいまー」

 

まだ雪こそ降っていないが、それでも外はかなり寒い。こんな時はコタツに篭りながら熱々のマッカンに限る。

 

「おかえり、お兄ちゃん。今日は早くない? 奉仕部はどしたの?」

 

玄関までぴょんぴょんと跳ねるように出迎えてくれる大天使小町。あー心がぴょんぴょんするんじゃー。……しかし、奉仕部、奉仕部か。

 

「いや、それが俺にもよく分からんのだが、雪ノ下に無期限活動停止を言い渡されてな。帰りたいと思ってはいたが、いざ帰れと言われると何だか腑に落ちないというか落ち着かない気分。これが飼い慣らされた社畜の心境か」

 

「またそんなしょーもない事ばっかり言って。どうせゴミいちゃんが気づいてないだけで何かやったんでしょ? いいよ、今夜雪乃さんにメールで聞いといたげる!」

 

「……すまん、助かる」

 

小町は本当によく出来た妹だ。俺には勿体無いが、他の男にやるつもりはない。これからは恩を返すべく、より一層小町に近づく悪い虫を払わねば。特に川崎大志。

 

 

 

*****************

 

 

 

由比ヶ浜さんとの話し合いの後、自宅に帰って来た頃には私の精神は疲れ切ってしまっていて、着替えるのも忘れベッドに突っ伏してしまった。

由比ヶ浜さんは私が比企谷くんを部活動停止にしたと告げると、普段の温厚な彼女とは思えない剣幕で詰め寄ってきた。

しかし詳しく事情を説明すると、今にも涙を浮かべそうな顔をしながらも協力してくれる事、それからこの件を比企谷くんには秘密にする事を約束してくれた。

 

ようやくこれからする事に目処が立った程度ではあるが、ほんの少しだけ肩の荷が下りた気分だ。

 

「いけない、夕食の支度をしないと……」

 

このまま寝てしまいそうになってしまったが、着替えないと制服が皺になってしまうし、食事もしなければならないのでベッドの誘惑を振り切って起き上がる。

 

 

 

食事を済ませた頃、普段あまり使う事のない携帯電話がなった。

 

「小町さんからのメール? ……比企谷くんの事でしょうね。」

 

『雪乃さん、こんばんは!

お兄ちゃんから停部の話を聞きましたよ(=゚ω゚)ノ。

どうせまたゴミいちゃんが何かやらかしたんだと思いますが、どうか許してやってもらえませんかね?(>人<;)』

 

メールにはそんな事が書かれていて、事情を知らないままに比企谷くんが悪いと決めつけている小町さんに苦笑する。

 

「比企谷くんは何も悪くないのよ、小町さん。今回の件は私の我儘みたいなものだから……」

 

小町さんにも全て明かして協力を求めようかとも思ったが、小町さんは最終的には比企谷くんの事を最優先に考えて行動するから、彼に打ち明けてしまうかもしれない。

そうすれば今までのように予想も出来ない手段で解決してしまうのだろう。

しかし、今回の件はそうやって彼にばかり頼っていたツケが回って来た結果が招いてしまった事態だ。

自分たちが逃げ続けた不始末くらいは自分たちで何とかしなければこれから彼に胸を張って合わせる顔がない。

 

とりあえず、小町さんには怒っている訳ではない旨だけを伝えて、内容には触れずに返信しておいた。

 

「それにしてもあの子も由比ヶ浜さんみたいにメールにヒエログリフのようなものを入れるのね。

私も少しは使った方がいいのかしら?」

 

 

 

 

*****************

 

 

 

翌朝、朝飯を食べながら小町に雪ノ下とのメールについて聞く事にした。

普段なら小町の方から切り出してくるのだろうが、このアホ妹は昨日の事など忘れてしまったとばかりにジャムを塗りたくった食パンを美味しそうに貪っている。

えらく幸せそうな所を忍びないが、こちらが一方的に小町に頼み事をしている以上、自分から切り出すのが当然であろう。

 

「あー、小町? 昨日雪ノ下はメールで何か言ってたか?」

 

尋ねた途端、食パンにかぶりつこうとした体勢でピタリと止まり、表情を曇らせた。

ゴメンね、幸せな時間を邪魔しちゃって。ホント誰だよ、俺の小町にこんな顔させた奴は。お兄ちゃんに言ってみろ、とっちめてやる。って俺か。

 

「んあー?あー、……あ、そうだった! ちょっとお兄ちゃんホントに何したの⁉︎ 雪乃さん怒ってないとは言ってたけど詳しい事は全然教えてくれなかったよ」

 

ちょっと小町ちゃん? 俺が言い出さなかったら完全に忘れてましたよね?

 

「雪ノ下が怒ってないって言ってるならそうなんだろうよ。何でいきなり停部扱いにされなきゃいかんのかはわからんが、あいつが意味もなくこんな事言いだしたりはしないだろうしな」

 

「……ほほーぅ?雪乃さんの事、信頼してるんだね!」

 

「バカ、ちげぇよ。あいつが大人しく俺を家に帰らせてくれるとかありえないだろ。何かわからんが言えない事情とかあんだろ、多分。知らんけど」

 

雪ノ下が今更俺を邪魔者扱いした訳ではないだろうし、働きすぎの俺を労って休ませようという粋な計らいでもないだろうから、俺に知られたくない重大な事態が起こっているのだろう。

 

「一応雪乃さんの後に結衣さんにもメールしたけど、雪乃さんと同じで話しては貰えなかったよ。何度も謝られて小町の方が悪い気がしてきちゃった」

 

小町は雪ノ下や由比ヶ浜に懐いてるからな。慕っている年上の先輩に謝られると萎縮してしまうのだろう。

 

「それでお兄ちゃん、これからどうするつもりなの?」

 

「どうって言われてもな……」

 

雪ノ下や由比ヶ浜が俺に隠さなければならない事態。隠されると知りたくなるのが道理ではあるが、好奇心は猫を殺すという言葉もある。知らない方が良いと思って隠されているのならば、わざわざ自分から首を突っ込まない方がいいのではないだろうか。

 

「お兄ちゃん、また一人で色々考えてるんだろうけど、お兄ちゃんはどうしたいの? 雪乃さんと結衣さんには悪いけど、小町はお兄ちゃんがしたい事をするのが一番だと思う。二人が大変なのにただほとぼりが冷めるのを待ってるだけでいいの? まあ、小町はお兄ちゃんがすぐ帰ってきてくれたら、一緒の時間が増えるから嬉しいけど。あ、今の小町的にポイント高い!」

 

ああ、高い高い、最後のがなければな。ホントあざと…いや、あざといと言うと何処かの現生徒会長を思い出してしまうから可愛いでいいや。ホント小町可愛い!

しかし、この妹は本当に俺の事をよく理解してくれている。

このまま雪ノ下と由比ヶ浜を放置して、あの二人が悲しむような事になれば、俺はきっと後悔する。

もう自分だけが傷を負うやり方を続けるつもりはないが、どうしても避けられない傷であれば、同じ傷でも三人で受けて痛みを分け合えばいいのではないか。

自分でも柄ではないが、あの二人だと自然にそう思えてくる。

あの二人が苦しむのを見ているだけになるよりは、全てぶち壊しにしてしまって責められる事になってでも、関わっていた方がましだ。

 

「サンキュな、小町。具体的にどうするかは考えてないが、方針は見えてきた。流石俺の愛する妹だな」

 

「いえいえ〜、困った事があったら小町にお任せだよ、お兄ちゃん! あとその愛は重いから、お礼は帰りにハーゲ○ダッツでいいよ!」

 

「愛が現物支給かよ、俺の愛をハー○ンダッツにすると東京ドームが埋まっちゃうよ?」

 

「うっわぁ、相変わらずシスコンだなぁこのゴミいちゃんは。ってもうこんな時間じゃん! ちょっと急がないと遅刻しちゃうよお兄ちゃん」

 

ドタバタと食器を片づけながら動き回る小町に心の中で感謝する。

小町にはハーゲン○ッツなんかでは返せないくらいに借りを作ってしまっている。

もし小町に困った事が起きたらすぐに全力で力になってやろう。

まず差し当たっては、川崎大志とかいう毒蟲を駆除する事から始めるか。

 




安定の小町によって方針を得る八幡。
次回はいろはすと戸塚といろはすと皆さんお待ちかねのいろはすが出てくる予定です。

小説とか書くの初めてなんで、文法がおかしいとか読みにくいとかあれば指摘お願いします。
でも「クソつまんねぇんだよ、ゴミカスワナビーが!」
とかはやめてね。材木座よりメンタル弱いから。

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