駄文も多々ありますが、精一杯やっていきますので、よろしくお願いします。
西暦2032年。月面に人類のあらゆる叡智を超える物体が発見された。「ムーンセル・オートマトン」と呼ばれるその物体は、あらゆる事象をコントロールすることが可能な力を持つことが後に判明する。意思ある者が持てば世界さえも掌握できる万能の願望機「聖杯」に等しいこの物体を手に入れるため、世界各地の組織・勢力が「ムーンセル・オートマトン」の作り出す霊子虚構世界「SE.RA.PH」にアクセスし、「ムーンセル・オートマトン」が自身に相応しい担い手を選別するために行う「聖杯戦争」へと参戦するのだ。
この物語は、主人公が「岸波 白野」ではなかったらの物語である。
ある一人の少年は、孤独と言う苦悩に満ちていた。
両親を事故で亡くし、引き取られた親戚の家では、毎日のように虐待を受けていた。
そしていつしか、名前も呼ばれなくなっていった。
だかそんな少年に、ある転機が訪れた。
趣味でインターネットをいじっていた時、偶然あるサイトの掲示板を見つけた。
そのサイトの掲示板には。
「 魔術師(ウィザード)達よ、時は来た。聖杯戦争開始まで残り12時間。
参加する物はSE.RA.PHにアクセスし、時を待て。」
と描かれていた。
少年は意味のわからない事を書いている掲示板を見て、最初はなんとも思わなかったが、以前学校で聖杯の事に関した授業をしたことを思い出した。
聖杯とは、万能の杯と呼ばれ、どんな願いも叶えてくれると言う、夢のような物だった。
少年は、今までの自分の孤独に嫌気がさしており、この聖杯なら自分の願いを叶えてくれるんじゃないかと思い、騙されたと思いながらもSE.RA.PHと言う名前で検索をしながら、SE.RA.PHに関するサイトも探し始めた。
そして、偶然SE.RA.PHに関するサイトを見つける事に成功した。
だがそこに描かれていたのは、信じられないような内容だった。
まずSE.RA.PHに入るには、自分の魂の粒子化し、そこからアバターを作りあげて始めてSE.RA.PHことムーンセルに入る事ができるのだと。
だが少年には、そんな事ができるわけがなかった。
ただてさえ騙された気持ちでSE.RA.PHにアクセスするのに、アクセスするのに自分の命を使ってまで入るのには、いささか疑問と不安しか残らなかった。
だが、少年は「聖杯」と言う言葉を思い出し、なんとか自分の魂を粒子化させる方法を探した。
そしてまた偶然が重なり、魂の粒子化の方法が書かれたサイトを見つける事に成功した。
内容はよくわからなかったが、それでもいいと言うばかりに、ついにSE.RA.PHことムーンセルにアクセスするのだった。
だがこの時少年は大きなミスを犯していた。
それは、聖杯戦争のルールを見ていなかった事であった…。
「……い」
「お……?」
「おいったら!」
少年は大きな声を聞き、唐突に目を覚ました。
「あ、あれ…?、僕…」
「お前さあ、僕が話ている途中で寝るとかどういう神経してる訳?」
「あ、ああ、ごめんシンジ.…、なんか最近寝不足でさ…」
シンジ・マトウ。
さっきまで寝ていた少年の親友にして腐れ縁。
言葉使いは荒いが、それでも根はいい奴と言う解釈を少年は勝手にしているが、どう見てもそうは思われないのが事実であった。
「全くさあ、大体お前僕の話の20%は聞いてないよね?、この20%は大体お前が寝ているんだよね、僕の話はお前にとって子守唄かなにかですか?」
「そ、そうじゃないよ、僕は本当に寝不足なだけで…、それにシンジの話っていつも長いし…」
「はあ?それって僕がお前にとっては迷惑な存在だって言う事で解釈していいのかなぁ?ええ?」
キーンコーンカーンコーン
シンジが怒り混じりの声を出している時に、ようやくお昼休みを終えるチャイムが鳴った。
少年はこの時おもわず「ほっ」と胸をなでたのは言うまでもなかった。
「ちっ、もうお昼休み終わりかよ…、ったく、いいか、次はちゃんと僕の話を聞くんだぞ!」
「はいはい…」
だが少年はこの時変な違和感を覚えていた。それは、誰も自分の名前を言ってくれなかったのである。
シンジはいつもお前呼びされてるからまだよしとしたものの、先生や同級生にも名前どころか、苗字も言われなかったのである。
その違和感はとうとう頂点に達してしまい、思わず授業中に声をあげてしまった。
「先生!」
「ん?どうした?なにか質問か?」
「先生、あの、僕の苗字と名前、覚えていますか?」
「?おかしな事を聞く奴だな、________だろ?それがどうかしたのか?」
この時少年はさらに違和感を覚えた。
先生は確かに自分の苗字と名前を言ってくれたが、言った瞬間にノイズのような音が聞こえて、何も聞こえなかったのである。
「せ、先生、あの、度々申し訳ないのですが、もう一度言ってもらえませんか?」
「?聞こえなかったのか?________ 。もう何度も言わせるなよ…」
クラスのみんなはクスクスと笑っていたが、やはり苗字と名前を言った時にノイズが聞こえて何も聞こえなかったのだった。
少年は「何度もすみませんでした」と言って席に座ると、隣にいたシンジが小声で少年に話しかけてきた。
「お前、自分の苗字もわからないとか、ありえなくないか?、まあ僕としては授業が少し短くなったのだと思うと、結構楽だけどね」
そう言ってシンジは授業に集中したかったのか、そのまま先生のいる黒板に目を向け直した。
少年はやはりこの違和感が拭えなくなり、授業が終わるその時まで、消える事はなかった。
やがて放課後となり、少年はシンジと別れると、決まっていつもの場所に行く。
2階の教室前に着くと、少年は静かに声を出した。
「_____今日もいる?…ママ…」
少年がそう言うと、誰もいない教室のドアがひとりでに開かれ、教室の中を少年が覗くと、後ろから優しく包み込まれるように、誰がが少年を抱きしめていた。
『お帰り…、今日の授業はどうだった?』
「いつも通りだよ…、でも、急に僕の苗字と名前がわからなくなっちゃったんだ…。
ママ、僕の名前、わかる?」
『もちろん…、と言いたい所だけど、あなたのその名前がわからない理由は、なにか特別な力によって記憶を封じられているようね…、でも大丈夫、その内きっと記憶が戻るわ…。
だから今は、聖______争に備えて、ゆっくり休みなさい…」
しばらくすると、少年を包みこんでいた優しい腕は消えていた。
少年は母と慕う見ず知らずの人物の言うことを聞き、そのまま家へと帰っていった。
つづく