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『…………ふむ、君もダメか』
『そろそろ刻限だ。君を今度こそ最後の候補とし、その落選をもって、今回の予選を終了しよう』
『――――さらばだ。安らかに消滅したまえ。』
少年は名前以外の記憶を取り戻し、あるべき場所へ戻る為、不思議な形をした人形と共に、この地まで来た。
だが、現実はひどかった。否、酷すぎたが少年にとっては正しい答えだった。
その現実とは、すなわち「死」と言う言葉一つだけだった。
だんだんと少年の体が冷たくなり、とうとうあの世へと向かう準備が整ってきてしまっていた。
いやだ。
いやだ。
いやだ いやだ。
いやだ いやだ いやだ。
僕はまだ 死にたくない…!
動いてよ… 動いてよ僕の体…!
もう嫌だ…!ひとりぼっちは嫌だよ…!
誰か… 誰か… 助けて…
すると少年はあることを思い出した。
それは、あの誰もいない教室で出会った母と呼んでいた「少女の声をした見ず知らずの声」の事であった。
『ねぇボク、もしあなたが誰かに助けて欲しいと思ったら、その時、私に助けてって言ってくれないかしら?』
『…なんで?』
『だって、あなたは、名前も、姿さえ見たことのない私を、「ママ」って呼んでくれたんだもの、母親が息子を助けるのは当然の事でしょう?』
『…そうだね、そうだよね…、わかった、もし僕が誰かに助けて欲しいと思ったら、絶対にママに助けてって言ってみるよ』
『…ありがとう…、名も知らない、私の坊や…』
___て
『…む?』
た__け___
たす___て
たすけて………ママぁ……!。
少年は最後の力を振り絞り、姿も知らない母を呼んだ。
…やっと、呼んでくれたのね、名も知らない私の坊や…
あなたのその言葉、ちゃんとお母さんに伝わったわ
待っててね、すぐにそっちに向かってあげるから…
瞬間、広間に存在するガラスが音を立てて砕け散った。
少年はその音がした方に顔を向けると、そこに立っていたのは。
「マ…マ…、なの…?」
「はじめまして、私の坊や…」
銀色の髪を揺らしながら、とても美しい着物をなびかせている、20代と思わしき女性が立っていた。
少年はその姿を見たら、不思議と安心感が出て、そのまま女性の元へと静かに向かい大泣きしながら女性に抱きついた。
「うぅっ…、うぅわあああああんっ‼︎マァァマァァ‼︎」
「…よしよし、よく頑張ったわね…とても怖かったよね…」
女性は少年を優しく抱きしめると、なんも嫌がりもせず、軽蔑もせずに優しく頭を撫でながら、少年を抱きしめていた。
だが、そんな束の間、少年を殺そうとした人形がまた動きはじめ、少年と女性にむかって、その鋭い手と思わしき物で攻撃した。
「マ、ママ!後ろ!」
「……ちっ」
少年が人形に気づくが、時すでに遅く、人形はもう女性の顔の近くまで迫っていた。
少年はとっさに目をつむると、突然、金属が大きく打ち付けられる音がした。
少年は少しずつ目をあけると、そこには攻撃している人形と、日本刀を持った母の姿だった。
「そういえば、お母さんの名前教えてなかったわね…」
「?」
「サーヴァント アサシン あなたの気持ちに応えて召喚されました、どうかこれからもよろしくね、ボク」
アサシンと名乗る女性が少年に自己紹介すると、少年の右手に激痛が走り、赤い痣のような物ができていた。
「ッ…!、何、これ?」
「それは令呪、それがある限り、お母さんは坊やの側を離れないわ、でも説明は後、まずはこの人形を倒さなくっちゃ」
アサシンがそう言うと、一度人形を微妙に遠くまで吹き飛ばし、態勢を整えた。
「さあ坊や、お母さんに指示を頂戴、お母さんは坊やが思ったとおりに動いてあげるから」
「じ、じゃあ、遠慮なく…、勝って、ママ!」
「OK、坊や(マスター)、とてもいい指示ありがとう!」
マスターからの指示をうけたアサシンは、再び人形の元へ向かい、完全に攻撃パターンを読みきったかのように人形を切り伏せた。
すると少年は、あることに気づいた。
それは、アサシンの周りをウロチョロしている小さな黒い布をまとった妖精のような姿だった。
少年は目をこすってもう一度見てみたが、やがて妖精のような存在はうっすらと透明になっていき、やがてアサシンも透明になっていた。
「あ、あれ?、ママ、どこにいったの?」
少年がアサシンを呼んでも返事はなく、それに気づいた人形が少年に向かってカクカクと音をたてながら近づきはじめた。
「い、嫌だ!ママ!どこにいるの⁉︎、お願いだよ!僕を一人にしないでよ!」
しかし、少年がいくら叫んでもアサシンは現れる事は無く、とうとう人形がすぐ近くまで迫ってしまっていた。
『ミツ、ケタ、我ガ、拠リ所を…』
「?、よりどころ?」
少年が声の元を探すも、それは人形から発しているのだと知ると、警戒を少し解いてしまった。
「君は、一体なんなの?」
『名ハ、無イ…、ダガ、オ前ハ、我ガ、拠リ所、オ前ノ、力二、ナル…』
「それってどういう…」
少年が人形に意味を聞こうとすると、人形の後ろから突然がシャンと音がして、そのまま人形は少年の元へ倒れた。
「ふー、油断させる為とはいえ、ちょっとヒヤヒヤしちゃった、大丈夫?坊や」
「う、うん、ちょっと人形が重いけど、なんとか」
「そう、ならこんなとこ早く抜けましょ?」
アサシンが少年に向けて手を差し伸べると、少年の元へと倒れていた人形が突然光を放ち、その光が粒子となり、少年の体に入っていった。
「う、うわっ⁉︎」
「ぼ、坊や⁉︎」
光の粒子が全て入ると、少年はそのままばたりと倒れてしまった。
「坊や⁉︎、しっかりして!坊や!」
そしてしばらくすると、少年から寝息が聞こえてきて、アサシンは疲れて寝てしまったのだと思った。
「もう…、坊やったら、心配させないでよ…」
そうアサシンが言うと、またどこからか声が聞こえた。
『中々素晴らしい親子愛を見せてもらったよ、君のようなマスターを見るのはこれで3度目だ』
『だが、親子の愛はどうであれ、君は聖杯戦争への参加資格を手に入れられた。」
『喜べ、奇妙親子達よ、君たちの願いはようやく叶う…』
『それと、君達に何者からか祝辞が届いている。”光りあれ”と』
――――では、これより聖杯戦争を始めよう。
――――いかなる時代、いかなる歳月が流れようと、戦いをもって頂点を決するのは人の摂理。
――――月に招かれた、電子の世界の魔術師ウィザードたちよ。汝、自らを以て最強を証明せよ。
それこそは始まりの合図。開戦の狼煙。
今ここに、奇妙な親子の物語が始まる…。
つづく