もっぱら真名をバラすようにしておりますのでご注意ください。
『マスター:シンジ・マトウ
決戦場:一の月想海』
少年心が揺れた。理由は予選で友達となったあのシンジが対戦相手だったからである。
アサシンが少年の表情を見ると、とても不安な顔をしており、微かに震えているのがわかった。
「シン…ジ…」
「坊や、この対戦相手とは知り合いなの?」
「…予選中で友達になった人なんだ…」
「そう…」
アサシンは少年を抱きしめると、少年の頭を撫でながら小さく囁いた。
「大丈夫よ坊や、どんな事があっても、お母さんは坊やの側を離れないから…」
「うん…、ありがとう、ママ」
しばらくすると、後ろから足音と男と思わしき声が聞こえた。
「へぇ〜、こんな可愛いお姫様達が僕の相手だなんて、なんか気が抜けちゃうな〜」
少年とアサシンが声のした方に顔を向けると、そこに立っていたのは海藻類によく似た髪型をした男、シンジ・マトウが立っていた。
しかしシンジは少年の姿をよく見ると、なぜか顔を赤くし始めた。
「おお…、よく見ると結構可愛いじゃないか、ますます気が抜けちゃうじゃないか!。おまけにサーヴァントも中々の美人じゃないか、いや〜、僕はなんて運がいいんだ!」
「…浮かれている所申し訳ないてますけど、私達に何か?」
アサシンが少年を守るかのように前に出ると、シンジは少し機嫌を悪くしたのか、すぐに元の表情と思わしき顔に戻った。
「別に、ただ対戦相手を見に来ただけですよ、それにしても、名前を隠すなんてヒドイじゃあないか、教えてくれたっていいでしょうに。」
「…ぼ、僕の、名前?」
少年は少しだけ顔を出すと、シンジはそれを見逃さず、またすぐに機嫌を直した。
「そうさ、君の名前が知りたいんだよ。別にいいだろ?減るもんじゃないんだしさ?」
「…ママ」
「…わかったわ、ママに任せて」
するとアサシンは、どこからか紙とペンを出し、スラスラと書き終えると、その紙をシンジに渡した。
「これが娘の名前です。これで満足ですか?」
「お、おう、どうもありがとう…」
シンジはいきなりの事でビックリしたが、名前が書いてある紙を受け取ると、また機嫌をよくした。
「へ〜、梨野 ナナちゃんか、可愛い名前じゃあないか!。じゃあ僕はアリーナに行くから、気が向いたら会いに来てね、ナナちゃん?」
そう言うとシンジはルンルンとスキップしながら一階のアリーナまで足を運んだ。
一方で少年は、アサシンがつけてくれた名前に少し喜びながらアサシンに向かって話した。
「ねぇママ、梨野ナナって僕の名前でいいの?」
「ええそうよ、ずーっと坊やって言うのもなんか失礼だしね。だから名前を思い出すまで、坊やの名前はナナちゃんよ?。女の子みたいな名前だけど、いい?」
「うん!それに、今の僕は女の子だしね、それでいいよ」
「よかった、じゃあこれからもよろしくね、ナナちゃん?」
「うん!ママ大好き!」
そう言うと少年ことナナはアサシンに嬉しさのあまり抱きつき、アサシンはそれに答えるかのように笑顔を見せながらナナの頭を撫でた。
その光景を見ていた運営NPCや他のマスター達は、一部にハアハアと変態みたいに息を荒い物を合わせて、皆ニコニコしていた。
しばらくすると、ナナはアサシンを霊体化させずに手を繋ぎ、そのまま校舎を探索する事にした。
それから数十分後、ナナが屋上に上がってみたいとの要望を受けて、アサシンはナナを連れて屋上へと足を運んだ。
屋上に着くと、ナナは早速と言わんばかりに走りだし、景色を見ようとはしゃぎだした。
「ママ!早く早く!」
「はいはい、慌てなくても景色は逃げませんよ?」
すると突然、ナナの前に人が出てきて、そのままぶつかってしまった。
ナナはぶつかった衝撃で尻もちをつくと、すぐ様アサシンが駆け寄った。
「いたた…!」
「大丈夫ナナちゃん?」
「ご、ごめんなさい!大丈夫?」
ナナの前にしゃがみながら駆け寄ってきたのは髪がロングの少女で、隣にはサーヴァントと思わしき赤い外装を見にまとっている男がいた。
その男をナナが見ると、ナナは思わず意外な一言を言った。
「…お兄ちゃん?」
「!」
赤い外装の男はナナが言った一言に若干驚き、すぐに目をそらしてしまう。
「よかった、怪我は大丈夫みたいですね、お名前はなんて言うの?」
「な、梨野ナナ、です…」
「ナナちゃん…か、いいお名前ね、私は岸波白野っ言うの、気軽にはくのんって呼んでね、ナナちゃん」
そう白野が言うと、ナナに手を差し伸べ、ナナはそれに応えて白野の手を握って、そのまま身を起こした。
しばらくすると、白野のサーヴァントもナナに近づき、ナナに話しかけた。
「…先ほど私の事を兄と呼んだみたいだが、私の聞き間違いか?」
「え?、ああ…ごめんなさい、なぜがそう言ってしまって、ご迷惑でしたら謝ります…ごめんなさい。」
「いや…、ただ少し気になっただけだ、気にしないでくれ」
「?変なアーチャー」
その後ナナと白野は屋上でしばらく雑談しながら話し終えると、白野とアーチャーはマイルームに戻ると言って屋上を後にした。
ナナも少し疲れたのか眠くなってきてしまい、アサシンとまた手をつないで、自分達もマイルームへと向かった。
マイルームのある教室につくと、言峰から渡されていたマイルームキーが光り、ロックが解除される事を確認すると、ナナはドアを開けた。
普通のマイルームであらば教室の一環に椅子やら机やらを並べただけなのだが、ナナのマイルームだけは違っていた。
「マ、ママ、ここ、教室だよね?」
「そ、その筈だけど…、これじゃあまるで…」
一言で言い表すなら、一軒家の家の玄関そのものだった。
アサシンとナナが一応靴を脱いでリビングと思わしき所まで歩き、ドアを開けると、やはりそこには少ししか家具はなかったが、一軒家のリビングがまるまると広がっていた。
一応確認の為にナナとアサシンはマイルームキーを見ると、裏に何か小さな紙がセロハンテープで止められていた。中を見て見ると、「朝食の礼だ、ゆっくりとくつろいでくれたまえ 神父より」と書かれており、恐らくは言峰のおかげであると理解した二人は、そのお言葉に甘えてしばらくゆったりとマイルームで過ごす事にした。
夕方になると、アサシンが「そろそろアリーナにいきましょ?」と言ったので、ナナはマイルームを後にし、アサシンと再び手を繋ぎながらアリーナへと向かった。
一階に降りるてしばらくすると、突然赤い服を着た少女に止められた。
「ちょっと、そこのマスターとサーヴァント、少しだけお時間いいかしら?」
すると赤い少女は、アサシンをジロジロと見ると、なぜかため息をついた。
「ちょっとあなた、なぜ霊体化しないの?それじゃあ自分の正体をバラしているようなものよ?」
「娘が手を繋ぎたがっていた為よ、何か問題あって?」
「娘?その女の子があなたの?でもあなたサーヴァントでしょ?なんであなたの娘なのよ?」
「…娘が私をママと呼んでいるからです。だから私はこの子の母親でいるのです、それも何か問題あるのですか?」
そうアサシンが言うと、少女はぐぬぬと言いながら「邪魔して悪かったわね、もう行っていいわ」と言ってナナ達の前から姿を消した。
そしてようやくアリーナの前につくとナナは扉を開き、アリーナの中へと入った。
アリーナに入ってしばらくすると、ナナ達の前にエネミーと思わしき物体が浮かんでいた。
「ナナちゃん、これがエネミーよ。
お母さん達サーヴァントは、このエネミーを倒す事で経験値が増えて、より一層強くなれるの、だからナナちゃんは指示か援護に集中してくれるとありがたいんだけど、いい?」
「うん、わかった、気をつけてね、ママ」
すると、敵性エネミーがアサシンに気づくと攻撃しようと近づくが、アサシンはそれに気づき、腰にある日本刀を抜いた。
「ナナちゃん、早速指示をお願いね」
「うん、ママ前に出てエネミーを攻撃して!」
「りょーかい!」
ナナからの指示をうけたアサシンはすぐ様敵性エネミーを持っていた日本刀で両断させると、敵性エネミーは霧のように消えた。
「やっぱりね、ナナちゃんから送られてくる魔力がかなりいいわ、おかけでお母さんは本来の力を出しながら戦えそうね」
ナナからの魔力供給によって本来の力を出しながら戦うアサシンは、その調子でナナと共にどんどんエネミーを倒してゆき、20体目のエネミーを倒した時、ナナはある違和感を覚えた。
それは視線。何故かは知らないが、ナナは二人の視線に見られている感じがした。
そして違和感は嫌な予感へと変わり、その予感が的中してしまう。
「くくく…、本当にのこのこやってくるなんてね。まあいい、僕のサーヴァントの情報を見る前に、悪いけど消えてもらよ」
一発の銃声が聞こえ、その銃弾は恐らくアサシンに向けられたと思い、ナナはとっさにアサシンを庇おうとした。
「ママ!」
「え?」
すると、ナナの体が光りはじめ、ナナの後ろから聖杯戦争予選で使われていたあの人形が出てきて、その人形が銃弾を跳ね返した。
跳ね返った銃弾は、そのまま使用者に帰っていったが、使用者はそれをマスターと思わしき人物を抱えながらよけた。
「ナ、ナナちゃん…!今のって…」
「あ、あれ?なんで予選で使われてた人形が…?」
人形に気がついたナナは驚くも、早々驚いてもいられなかった。
何故なら、もう近くに敵マスターとサーヴァントがいたからであった。
「へ、へぇ〜、驚いたな〜、まさか君、うちのサーヴァントと同じ物が使えるなんてね」
「シンジ…」
「ま、まあいいさ!、こういう事もあるよね!。お詫びと言ってはなんだけど、僕のサーヴァントを見せてあげるよ!」
ナナはシンジのサーヴァントをよく見てみると、上半身をタイツと網で合わせたような服装で、片手には武器と思わしき拳銃が握られていた。
「…あんた、スタンド使いだったんだな、正直驚いたが、見た所だと全然使いこなせてないみたいだな。
先程は奇襲をかけて悪かったな。
俺のボス(マスター)は随分と卑怯なやり方を好むんでね、これじゃあ俺が生前にやってた事となんの変わりもないな」
「ま、待って下さい、スタンド使い?スタンドって何の事なんですか?」
「悪いが、そう以上は言えないな。
ボス(マスター)の命令なんで、ここで倒させてもらうぞ」
そう言い終えると、シンジのサーヴァントは拳銃をナナに向けた。
それを庇うようにアサシンが前に出た。
「…あんた」
「ママ?」
「…ナナちゃん、お母さんにしっかり捕まってて、今のナナちゃんは混乱状態にあるから、あのサーヴァントに立ち向かうのは死にに行くような物よ。だから、ここは…」
「…ここは?」
「お、おい?何話してんだあんたら?」
ナナはとっさにアサシンの背中にのり、おんぶされた状態になると、アサシンは意外な事をした。
「にぃぃげるのよぉぉぉぉ‼︎ナ〜ナちゃぁぁぁん‼︎」
『えええええええええええええ⁉︎』
これにはナナどころかシンジとそのサーヴァントも驚き、思わず呆気にとられてしまった。
「はっ!し、しまった!おいアーチ
ャー!何やってんだよ!さっさと
お前のスタンドって奴で始末しろよ!」
「…ちっ、逃げてる奴に使うのもどうかと思うが…、いけ!セックス・ピストルズ!」
「っておいぃ⁉︎、お前なに正体バラすような真似してんだよ⁉︎」
サーヴァントが銃を撃つと、その銃弾から声が聞こえた。
『野郎共!行くぜぇぇぇぇ‼︎』
『イィィィィッはああああ‼︎」
銃弾は壁や床など色々な所に当たりながら徐々にナナ達に迫っていた。
「マ、ママ!なんか銃弾が迫ってきたよ⁉︎」
「あらあら、やっぱり思った通りの行動してくれるわね、彼は、ナナちゃん、しっかり捕まってて!」
するとアサシンは、ナナを抱えると、後ろから黒い布に包んだ小さい妖精のような物体が出てきた。
「幽霊姿の影(ゴースト・シャドー)」
そうアサシンが言うと、アサシンとナナの姿が透明になっていき、やがて全身が透明になった。
それを見ていたシンジは、驚きを隠せていなかった。
「き、消えた?、もしかして、お前のスタンドって奴の仕業か?」
「…いや、逃げられたな。おまけにトリガーまでとっさに取りやがった。こりゃあしてやられたなボス」
「な、なんだって⁉︎。くそっ!あのサーヴァントと言いあのマスターと言い、どいつもこいつと僕をバカにしやがって‼︎。くそっくそっくそぉ‼︎」
シンジは地面を荒々しく踏みながら悔しそうな表情を浮かべていた。
出口に到着し、校舎に戻ったナナ達は、その足でマイルームに戻り、アサシンと情報を整理した。
「まず、あのサーヴァントについてね。あのシンジって子が言ってたけど、まずクラスはアーチャー。
そして他の情報はスタンド使い、セックス・ピストルズ、もうこれは正体バラしているような物ね。ナナちゃんは誰かわかる?」
「…ゴメン、全然わからない。おまけに僕、スタンド使いだなんて言われるし、もうなにがなんだが…」
ナナは頭を抱えながら何がなんだかわからなくなり、混乱していると、アサシンはナナをいつものように抱きしめ、安心させるように頭を撫でた。
「大丈夫、大丈夫よナナちゃん。今はゆっくり休んで、これからの事を考えましょ?」
「…うん」
こうして、ナナとアサシンは寝室に入り、アサシンはナナに寄り添うように抱きしめながら眠りに入った。
つづく…