二年分の想いをあなたに   作:=nana=

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【前回のあらすじ】

 女子手作りのお弁当でお昼ご飯。
 ラブコメには欠かせないお約束のイベントで、出てきたのは「桃のおにぎり」!?

 甘い!甘すぎる!

 でも、どこか間違っているような・・・。


 そんなこんなで、波乱に満ちたお昼ご飯も終わり・・・




第5話 『ほうこく!  \(>▽<)/イェイ!』 (題字:由比ヶ浜結衣)

 お昼ご飯も終え、片付けが済んだところで、

 由比ヶ浜が黒板に

 

『 ほうこく!  \(>▽<)/イェイ! 』

 

 と、書いた。

 

 だから由比ヶ浜。『報告』くらい漢字で――(以下略)

 

 

 

「それじゃあ、あたし達から始めるね!」

 由比ヶ浜がそう切り出すと、塚原さんが完成したばかりの脚本を4部、机の上に置いた。

 

「はい、ヒッキー」

 由比ヶ浜から手渡された脚本を手に取り、さっと目を通す。

 

 話の大筋としては、クラスでも目立たない存在の【男子生徒】に想いを寄せる【女子生徒】が、バレンタインデーに勇気を出して想いを伝える。といった、まぁ王道の内容と呼べるものだった。

 

「結衣ちゃんから聞いたストーリーに合わせて、絵コンテまでは完成しているから月曜日から撮影に取りかかれるよ。」

 塚原さんは完成したばかりの絵コンテを手に説明を続けた。

 

 月曜日から撮影開始?

 待てよ?何かが足りないような・・・そうだ!大切なことを忘れているじゃないか!

 そう思った俺は、その疑問を塚原さんに問いかける。

 

「あの、すみません。月曜から撮影するといっても、出演者が決まっていないのでは?」

 誰が出演するにせよ、まずは出演交渉をする必要があるはず。それで即OKしてくれても、準備等があるはずだから月曜日から撮影は無理なはずだ。

 

「それなら、あたしが出演するから大丈夫!」

 俺の疑問に対して、塚原さんではなく由比ヶ浜が答えた。

 

「由比ヶ浜が?大丈夫か?」

「まぁ、結衣ちゃんが考えたお話だし、私はそれが一番良いと思う。」

 俺の心配に対して、由比ヶ浜の代わりに塚原さんが答える。

 

「でも由比ヶ浜。台詞とか覚えられるのか?」

「むぅ!ゆきのん!ヒッキーがイジワルなこと言ってくるよ!」

 俺の至極まっとうな指摘に対して、由比ヶ浜が雪ノ下に助けを請うたが・・・

 

「確かに、比企谷くんの懸念も一理あるわね。」

「うわぁーん!えーりん!ヒッキーもゆきのんもヒドいよ!」

 雪ノ下に冷たくあしらわれ、今度は塚原さんに泣きついていた。

 

「まぁ、台詞はほとんど無いから、結衣ちゃんでも大丈夫だよ。」

「えーりん!それフォローになってないし!」

 頬を膨らませてむくれる由比ヶ浜をスルーして、次の問題を考える。

 

「まぁ【女子生徒】役は由比ヶ浜で決まりとして、【男子生徒】役をどうするか・・・だな。」

 相手役の【女子生徒】が由比ヶ浜に決まった以上、【男子生徒】役の候補はある程度絞り込むことが出来る。

 由比ヶ浜の日頃の友好関係から考えて、依頼しやすそうな男子となると・・・

 

「葉山、戸部・・・あと、大岡に大和。」

 とりあえず、由比ヶ浜が属しているカーストグループから選ぶのが無難だろう。

 

 映像的に一番見栄えが良いのは、言うまでも無く葉山だろう。

 だが、葉山では『見栄えが良すぎる』為に『クラスで目立たない』という【男子生徒】役の設定には不適切だ。

 同様の理由で、ウザい程目立ってしまう戸部も除外すべきだろう。

 となれば、残る候補は大岡か大和だな。

 俺がそう結論を出したとき、由比ヶ浜は思いも寄らぬ人物の名前を口に出した。

 

 

「出演するのは、あたしと、その・・・ヒッキーがいいかな・・・って」

 

 

「・・・はい?」

「あ!ええと、ほら!ヒッキーだったら、今ここで決められるし、すぐに撮影できるじゃん!」

「いやいやいや・・・。俺とか、まずあり得ないだろ?」

 

 全く想定外の事態に、思考が追いつけずに混乱している俺がいた。

 俺が出演とか誰得なんだよ。いや、マジで。

 

「塚原さんからも言ってやって下さいよ。由比ヶ浜の提案が無謀だってことを。」

「えっ?なんで?」

「いや、なんで?って、塚原さんも2年生なら俺の評判とかご存じでしょ?」

 

 雪ノ下や由比ヶ浜と接していると忘れてしまいそうになるが、一般的な生徒達にとって、俺の評判は文化祭以降依然として非常に悪い状態である。

 そんな俺が、出演なんてしようものなら・・・。

 

「『俺なんか』が出演したら、PRどころか逆効果になってしまいますよ。」

 

「『俺なんか』じゃ無いよ。」

 俺の反論に由比ヶ浜がそう割り込むと、俺の顔をじっと見つめながら言葉を続ける。

 

「あたしは、『ヒッキーだから』この役をやって欲しいの。」

 

「そうね。一度スポットライトを浴びて全身にこびり付いた汚名をそそいでみたらどうかしら?カビヶ谷君」

「おい、人を万年床のカビ布団みたいに言うなよ。雪ノ下。」

 由比ヶ浜の言葉に動揺しつつも、雪ノ下の言葉に苦し紛れのツッコミを入れておく。

 こうなったら、監督である塚原さんの言葉に望みを託すしか無い。

 

「塚原さんなら、俺の言いたいことがわかりますよね?」

「まぁ、初めに比企谷君の名前を聞いたときには、『この人大丈夫かな』と思ったけどね。」

 申し訳なさそうに話し始めた塚原さんであったが・・・。

 

「でも、今日そのことを結衣ちゃんに話したら、結衣ちゃんに延々と説得されちゃって――」

「うわぁぁ!えーりん!ストーップ!それ以上は話しちゃダメ!」

「あ、ごめんごめん。そんなわけで、私も比企谷君に出てもらうことは問題無いと思うよ。」

「・・・わかりました。でも、どうなっても知りませんよ。」

 

 賛成3、反対1。

 

 多数決で負けている上に、監督の塚原さんがOKを出しているので、受け入れる以外の選択肢はあり得ないのだろう。

 

 

  × × ×

 

 

「では、次は私の方から・・・」

 そう言って雪ノ下が幾つかの書類を取り出し、塚原さんに手渡す。

「嘘でしょ?・・・こんなに?」

 書類に目を通す塚原さんの表情がみるみる変わっていく。

 

「生徒会と交渉した結果、撮影予算の増額が認められました。それから、これが使用許可をもらった撮影用機材一覧です。」

「このカメラって、この学校で一番良いビデオカメラじゃ・・・それに、編集用PCの使用許可まで!?」

 書類を見ている塚原さんの目が輝いている。

 

「ええ。生徒会長の一色さんとお話したら、二つ返事で了承してくれました。」

「二つ返事で了承って・・・一色のやつ泣いていたような・・・」

「比企谷くん?何か?」

「いや・・・なんでもない。」

 怖ぇぇ!雪ノ下。怖い!怖すぎるよ! 

 

「結衣ちゃん!これなら衣装とか小道具とか揃えられるよ!それに『あの準備』も自分でしなくて済むかもね。」

「そっか。あたし不器用だし、上手くできる自信なかったから、助かるよ!」

「それじゃあ、結衣ちゃん。まだ時間あるし、この後買い出しに行こうか。」

「そうだね。ゆきのん、いいかな?」

「ええ、そちらは二人にお任せするわね。それと塚原さん。カメラは月曜の放課後に生徒会室に受け取りに来て下さい。」

「ありがとう、雪ノ下さん。それじゃあ、私達はこれで失礼するね。」

「ヒッキー、ゆきのん、頑張ってね。それじゃあ、おつかれ!」

 そう挨拶を残し、由比ヶ浜と塚原さんは連れ立って部室を後にした。

 

 

  × × ×

 

 

 由比ヶ浜と塚原さんが部室を出た後、雪ノ下が後片付けを始めた。

 どうやら、今日の仕事はこれでおしまいと言うことか。

 せっかくの休日、半日分損したが、まぁまだ半日残っているだけマシか・・・。

 そう思い、俺も帰り支度を済ませ、部室を出ようとする。

 

「それじゃあ雪ノ下。お疲れ――」

「待ちなさい。あなたにはまだ付き合ってもらうわよ。」

 そう言って雪ノ下に連れて行かれた先は・・・

 

 ・・・生徒会室だった。

 

 

 相変わらず、仲良さそうに作業をしている副会長と書記ちゃん。昼から出てきていた会計は、一色と打ち合わせをしているようだ。

 俺と雪ノ下が生徒会室に入ると、一色が駆け寄ってきた。

 

「それじゃあ雪ノ下先輩。後のお話は会計とお願いしますね。」

 そして不安そうな顔をしている会計を雪ノ下に押しつけ、今度は俺の腕を引っ張り、

「せんぱいは、こっちで一緒に作業しましょうね。仕事はまだまだ、たーくさんありますから頑張って下さいね。」

 と、あざとく言葉を続けた。

 

「マジかよ・・・。どんだけ仕事させるつもりなんだよ。」

「今日は遅くなりそうですし、『約束通り』せんぱいと食事して家まで送ってもらうまでやってもらいますからね!」

「ちょっと待て、一色。俺はそんな約束した覚えは無いぞ。」

「ええー!忘れたんですか?生徒会長の仕事で遅くなったら、食事して家まで送ってもらうアフターフォローまでしてくれるって言ってたじゃ無いですか!」

 確かに、以前一色を生徒会長にするための説得をしたときにそんな約束をしたような・・・ん?ちょっと待てよ?

 

「おい。それは『葉山に』と言ったはずだぞ。勝手に過去の約束を改竄するんじゃ無い。」

「あれ?そうでしたっけ?・・・やっぱり、覚えていましたか」

 一色さん?最後にボソッと小声で何か言いましたよね?バッチリ聞こえましたよ?

 

「一色さん?ちょっといいかしら?」

 一色に一言言ってやろうと思ったとき、雪ノ下が一色に呼びかける声が聞こえた。

 

「えっと・・・な、なんでしょうか?」

 一色の奴、完全に雪ノ下の放つ冷たい雰囲気に呑まれているようだ。

「責任者である一色さんがいた方が、話し合いがやりやすいのよ。だから、こっちに来てちょうだい。」

「・・・はい。わかりました。」

 がっくりと肩を落とし、とぼとぼと雪ノ下と会計のいる席に向かう一色の背中を見送り、俺は一人PCの前に座る。

 

 生徒会室には、仲良く作業する副会長と書記ちゃん。熱心に打ち合わせを続ける雪ノ下と一色と会計の三人。

 そして、俺は資料を手にPCへの入力作業を一人で黙々と続けた。

 

 

 この後、夜になるまで『滅茶苦茶に働かされた』のは言うまでも無い。

 

 

 

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