学生としての日々が始まり1週間。私はもうこれ以上ないってくらい濃密な毎日を過ごしている。
例えば…
「フィーネはもう少し思い切って魔力使ってごらん」
「そりゃア!」
「わッ、強すぎ!先生ぇーフィーネが爆発しましたー」
「もう、何やってるんですか『ディルミオ』!」
こんな一幕や
「位置について、ヨーイ、ドン!」
「よっし、やるぞ!『リトルエアリア』」
フィーネを中心に細い竜巻が起こる。
「あれ?うわァァァァァァア」
「先生ぇーフィーネが飛んで行きました」
「コラ、フィーネェエ!何、体育で魔法使ってんじゃー」
「そんなことより止めてぇぇえ」
こんな一幕。
どれもこれも毎日楽しくてしょうがない!何故かこっちじゃ魔法の加減が難しいんだけど、それもそれで新鮮だし何より魔法がこんなに楽しく学べるなんて夢みたいだ。
「ね?今日も楽しかったよね、ユウ?」
「う、うん…そうだね。フィーネはいっつも元気そうで羨ましいよ…」
ユウはげっそりとした顔付きでそう言った。
それもそのはず、ユウはあの日からイネア先生と夜な夜な気剣術の特訓中だ。どうもあの人、スパルタみたいでユウくんは毎夜ヘロヘロの三枚下ろしにされたスライムみたいになって帰って来る。ボロボロボロ。
でもユウは日に日に強くなってるのが目に見えて分かるから私としても嬉しいもんだ。うんうん、若人よ斯くあれ。輝いてるぞ16歳。えっへんと私は心の中で先輩風を吹かせてみちゃう。うん流石、私。輝いてるぞ実質16歳。
さっきも言ったけどサークリス魔法学校に入ってから1週間が、このサークリス、いや、惑星エラネルに入ってからおよそ半月が経った。
その中で以前私がいた星『シュラハティア』と比較してわかったことも沢山ある。
まず、何と言っても驚いたのは魔法文化。
繁栄度でいえば『エラネル』は『シュラハティア』に少し劣るといったところだけど、その発達した過程が、魔法を発動させるまでの過程その一切が大違いだ。まずエネラルの人間には『霊晶』というものが入っていない。
シュラハティアの人民は産まれたその日に魔法補助具である『霊晶』という魔石を基にして加工したものを体に埋め込む。
これは大気中の魔素を活性化させ吸収効率を上げ、誰にでも魔法を使えるように、要するに誰でも兵として使える人材にするために開発された。シュラハティアの負の遺産だ。
私が守り神として世界樹に入った後も戦争がなくなったにもかかわらず当時の名残が残っている。
だから、エネラルの人間は魔法の適性がある者ない者まちまちだ。
この星の現状を知った時このどうしようもない平和に喜びを覚えたのはよく覚えている。
そして、これが問題なんだけど…私の中の『霊晶』が逆に活性された魔素で溢れたこの星では邪魔で邪魔で…正直魔素が引っかかるのなんのってホンッとーに厄介。使えはしても加減が出来ない。【ボルク】使おうとしたら2段階上の【ボルアーク】が出る始末だ。その逆もまた然り。
いや、ホントなんでこんな魔素元気なの?私かよ!?
「そう言えば、今日女子寮で歓迎会があるんだってね」
ユウが思い出したかのようにそう言った。
「えっ、そうなの!?歓迎会、楽しみ!」
「寮を挙げてやってくれるらしいよ。豪華な食事と自己紹介の場なんだってさ。まぁ、ちょっとした親睦会だと思えばいいんじゃないかな?」
「おぉ、なんか良心的だね!友達たくさん出来るかな!?」
「フィーネなら大丈夫なんじゃない?むしろ相手の方が心配だよ」
「むむぅ、なによそれ〜」
「弾丸みたいだからねフィーネは」
「だんがん?」
「銃っていう殺人的なスピードで金属の塊を射出する武器があるんだけど、その金属の塊を弾丸っていうんだよ」
「あぁー魔法を使った武器にそんなのもあったなぁ…そっかそれの魔法を使わないバージョンか」
んあれ?弾丸みたいって…
「いや、私そんな殺人的なスピードじゃないし!」
「あっ、発射した」
「だから弾丸じゃないっての!」
「ふふっ」
とユウが笑う。
「あははははははは」
つられて私も笑ってしまう。
「それじゃ、早く帰ろっか。もたもたしてたら遅れちゃうかもしれないし」
「そうだね!可及的速やかに、れっつゴー!」
私たちは手早く買った衣類一式をまとめるとやや早足で帰路についた。
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日が沈み控えめに月が顔を見せ始めた。月夜にはまばらに星が散りばめられ始め、静謐な空とは対称的に女子寮のホールはガヤガヤと女子たちが自分の属する所で談笑していた。
やはり入学から1週間も経つとグループというものが生まれるみたいでちょっと疎外感を感じないでもない。よーし今日で友達作るぞー!
中でも一際目立っているグループがあってそこでは赤髪で快活とした元気少女が中心となって楽しげに笑いあっていた。
よし、あそこに混じろう!長きに巻かれよ!
「あ、ユウだ!ヤッホーこっちこっちー!」
そう思った瞬間、赤髪の彼女の方からユウ目がけて手をブンブン振って近付いてきた。
一気に集団の視線がこちらに集まる。
「あの子、ユウの友達?」
「そう、私がこの星に放り出されて死にかけていた所を助けてくれた女の子、アリスって言うんだ」
何気なく訊くとユウは周りに聞こえない程度にボソボソと私に耳打ちで教えてくれた。つまりはユウの恩人みたい私も感謝しなくっちゃ!
「アリス!初めまして、ユウと相部屋になったフィーネです」
「あ、貴女がフィーネね!ユウから話は聞いたわよ。なんでも貴女も魔力値半端ないんだってね。私はアリス・ラックインよろしくね」
そして私たちは指と指を交わらせシミングを交わした。これはこちら流の挨拶みたいでミリアにみっちり教えられた一般常識の一つだった。
最初は、よく指を間違えて何度もミリアに告白しちゃったんだけどね!
暫くアリスと話し込んでいるとアリスの影響力か色んな人が話に入ってきて私はたくさんたくさんお話をした。
「フィーネはどこから魔法学校に来たの?」
「そういえば編入試験で入ったって聞いたけど本当なの?それに歴史零点だって」
「好きな食べ物は?」
「趣味は?」
「胸のサイズは?」
大体、質問責めで少し困っちゃったけどフェバルについては触れない範囲で正直に色々話した。
和の中にも無事に入れて普通に会話も出来てとても嬉しい。
あ、私に胸のサイズ聞いてきたCカップは後で私の部屋に来い。
あ、そういえばミリアどこだろう?ユウにも紹介しておきたいんだけどなぁ…
「私はユウ・ホシミ。君は?」
ユウの声につられてユウの方向を見ると、案の定人見知りで萎縮してしまっているミリアにユウが声をかけていた。
告白のシミングを胸の前に示しながら。そう告白しながら。
「あぅ…えっと……ミリア…です。ミリア・レマク。……そ、そのシミング…ほ、ほ、本気…ですか…?」
ミリアの人見知り具合に、それともユウの誤ったシミングにもしくはその両方に私はアチャーと額に手を当て、成り行きを見守った。周りからは「ヒュー」だとか「キャー大胆!」「キマシタワー」などと歓声が上がっている。
女子寮元気いっぱいだなぁ…。
暫くしてユウとミリアの誤解が解ける頃
「はーい注目、今回の歓迎会を仕切らせてもらう三年のカルラ・リングラッドよ。それでは正式に新入生歓迎会始めちゃおっか!」
とカールのかかった滑らかな長い茶髪を携えた先輩が溌剌とした声でそう言った。よっし、歓迎会の始まりだ!
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