「さて、揃いましたのでこれより試験を始めます。最初は算術の試験を行います。時間は60分です」
問題用紙が配布される。試験か、緊張するなぁ。
「始め!」
ペラペラとページをめくり問題をざっと確認する。別に算術の分野に関しては独自の文化や問題なんてものはないらしい。それなら簡単だ。私はこんなでも元、神様だ。神たるもの全知全能なのだ。なんの問題もない。私は私の神様的な部分を生かしてサッサッサと筆を動かしペラペラと問題をめくる。
少し隣の子に気を配ると彼女も彼女で凄いスピードで解き上げていく。
なるほどね、彼女も並の子ではなさそうだ。お仲間さんかしら?やだ貴女どこの神様?
「やめ!」
途中、回答欄がズレたり名前の書き忘れに終わり寸前に気付いたりしたものの問題なく算術の試験は終了した。次は20分休憩の後読解の試験だ。
折角の休み時間だし隣の子に話しかけてみよ!
「ねぇねぇ、君、算術得意なの?なんか凄い早さで解いてたよね?」
「うーん、まぁまぁ得意かな?結構自信はあるよ」
「へぇーそっか。私も算術は得意なんだ!私、フィーネ!君は?」
「私はユウ。ユウ・ホシミ」
ユウ・ホシミ。ホシミユウ? ホミュ?
どこかで聞いたような。うーんま、いっか!
「そっかユウね。よろしく!」
私は握手をしようと手を差し出す、するとユウは何かに驚いたかのような顔をしながら、私の握手に応じてくれた。
ふと時計を見ると次の試験まであと5分を切っていた。
「あ、いけない!私トイレ行っときたかったんだった。ちょっと行ってくる」
ダッと私は書け出した。間に合えー!
「次は読解の試験を行います」
「すみません遅れましたー!」
「わかってるから早く席に着け」
私は急いで席に着く。席にはもう問題用紙が置かれていた。試験官の先生は、はぁ…と溜息を零している。
「はい、えーと…次も同じく60分です。始めてください」
フェバルの翻訳能力のお陰で必要以上に簡単になった読解のテストは最初の30分くらいでちゃっちゃと問解き終わってしまった。
ボーッとしてるのも性に合わず、暇つぶしに私は風魔法で手の平に3つ小さな竜巻を起こす。やっぱり魔法が繰り出し難い。何かが引っかかってるそんな印象だ。
「魔素操作『過密化』」
ボソッとつぶやいて、身の回りの魔素濃度を上げる。私だけの特権能力だ。許容性に直接干渉する訳じゃないけど、これで魔素の取り込める絶対量が上がるから魔法の使い勝手は格段に飛躍する。そこまで長時間使える訳じゃないんだけどね。
「《エアリア》」
もう一度、魔力を熾す。さっきよりは思い通りに操れるけど、やっぱりどこか引っかかっている感じは変わらない。なんでかなぁ。
「やめ!」
私を現実に引き戻す声が響く。そう言えば試験中だった。大して難しくもなんともなかったし、問題ないかな。
ユウも清々しい顔をしてるし、問題なかったみたいよかった、よかった。
「んー。大したことないね」
伸びをしながらユウに話しかける。するとユウは苦笑いを浮かべながら「そうだね」と相槌を打ってくれた。いい子だ。飴を上げたいね、持ってないけど。
「ねぇ、フィーネ。なんかテスト中ごそごそやってたアレはなに?」
「えっとーこれのこと?魔法だよ簡単めな風の魔法」
私はさっきと同じように手の平にくるくると空気の渦を作り出す。
「へぇ!それが魔法なんだ。始めて見た」
魔法を始めて見たなんて変わった子だな。パッと見た限りこの星では不足なく魔法文明が広まっているように見えたんだけど、案外そうでもないのかな?
「ユウも魔法学校に通いたくてここにいるんだよね?あはは、変なの」
「むぅ、そんなこと言わなくてもいいじゃん」
ユウが膨れっ面でそう言う。え、なにこの子かわいい。
「あはは、ごめんね。でもこのくらいだったら魔法を習い始めたら直ぐに使えるようになると思うよ!」
「そう…かな?ちなみに魔法ってどうやって使うの?」
本当に魔法に触れたことがないんだろうなユウは。ちょっと目をキラキラさせちゃって。
「えーと…こうやって体の中の霊晶から」
ガラガラガラ
「はい、最後の試験を始めるぞ。早く席に着け」
さっきとは違う先生が入ってきた。どうやら時間のようだ。私はユウにまた後でねと身振り手振りで伝えると自席に戻る。
「最後は歴史だ。時間はこれまでと違って45分と短めだから気をつけてくれよ。それでは問題を配る」
問題用紙が配布される。えっ、なにこの分厚さおかしいんじゃないの?
なんとそれは10ページを超える問題冊子だった。繰り返すけど問題用紙じゃなくて冊子だった。
「始め!」
まぁ、歴史なんて知るはずないから変わんないんだけどね…
記号問題を求めて問題をめくる。……が、ここでも希望は削がれた。記号問題が…ない!
点の取りようがない。そう確信した瞬間。私の意識は夢の中に落ちていた。
******************
星の要、シュラハティアという星を守っていた世界樹。その幹が枝が私を飲み込む。
こうして私は眠りに着く。
星の危機が訪れるその時まで、或いは年に一度の感謝祭が開かれるその日まで私は私の意識の世界にその存在を閉ざす。
退屈かい?
誰かの声が聞こえた。或いは自分の声。
うん、退屈。
声にならないけどそう答えた。
君はどうして此処を望んだの?
淡々とその声は問いかけを続ける。
私は迷わず答える。
みんなを、守りたかったから。
******************
キーンコンカーンコーン。終わりを告げるチャイムの音が響く。私を夢の世界から現実に引き寄せる。
「んむにゃ……」
ふわふわとした意識のまま目を覚ます。何の時間だったっけ。
「はい、回答用紙を回収するぞ。持ってこい」
あ、そうか歴史のテストか。
指示に従い白紙答案を持っていく。あ、ヤダ、涎ついてる!恥ずかしい…。
仕方なくそのまま回答用紙を提出する。すると先生は涎に驚いたのか白紙答案に驚いたのか唖然とした表情を見せていた。しょうがないじゃん!
続いてユウも答案用紙を持って行ったがユウのを貰ったときも同じような顔をしていた。あれ?どうしたんだろ。さてはユウも寝てたな。んもー愛い奴め〜。
「はい、じゃあ少し休憩の時間にするから1時間経ったら職員室に来てくれ。面接をする。2人一緒でいいからな」
時間は1時を過ぎた辺りでお腹も空いてきた頃だ。
「ユウ、ご飯食べに行かない?」
「あ、ごめん私、友達がお弁当持たせてくれてるんだ」
「あ、そうなの?じゃあ少し待ってて私も何か買ってくる!」
何かあったらいけないからとミリアに少しお金を持たされてるし、食費に使って怒られたりはしないだろう。
ということで私はどこか手近なお店を探して歩きだした。
校舎を出て少し行くと第2校舎の辺りに購買があるのを見つけた。近寄ってみると、なにやら営業しているみたいだ。僅かにだけど人がいた。
「いらっしゃい」
購買のお姉さんが簡易的なレジから優しい笑顔で迎えてくれた。それを私は軽く会釈して返すと、手近な所にあったサンドイッチを2つ手にとってレジで会計を済ませる。
「学校始まってないのに営業してるんですね」
「ここ、意外と固定客が多くてね。卒業生とか街の人とかも来てくれるんだよ。だから私が元気なら営業しとかないとね!ちなみにそのサンドイッチも私の手作りだよ!」
「へぇーそうなんですか。じゃあ味わって食べますね」
「うんうん、そうしてくれると嬉しいな。君、特例試験の子でしょ?この時間だと試験が終わった頃かな?」
「はい、そうです」
「この学校いいところだから、安心して入学しておいでね」
「はい、ありがとうございます!」
手を振って送りだしてくれたので私も手を振り返す。優しいお姉さんだったな〜こんなとこまであるんだ。学校生活が楽しみだなぁ。
教室に戻るとユウが机に伏して、うたた寝をしていた。
「おはよう。お待たせユウ」
「あ、おはようフィーネ」
そう声をかけるとユウは直ぐに目を覚ました。
「ねぇねぇ、聞いてよ!ここの学校にね購買があって、今行って来たんだけどね」
こうして2人で話しながらお昼ご飯を一緒に食べた。
******************
職員室に行くと直ぐに面接が行われた。結果は落ち着いた対応をするユウに対して私が1周半くらい空回りをするっていう残念なものになったが中々上手く話せた気もしていた。
それで、今は試験の採点待ちだ。
「そういえば、ユウ。歴史は上手くいった?」
「いや、全然。私、歴史をまだちゃんと学んだことないんだよね」
「あ、一緒だ。私も歴史なんて全然やったことない!」
「フィーネは最初から最後まで寝てたじゃない」
「分からないから寝たんだよ!」
「はい、答案返しますので入って来てください」
採点が終わったようだ。「はい!」と2人で返事をして再び職員室に入る。
「はいこっちがユウ君で、こっちがフィーネ君ね」
結果を見ると算術100点、読解96点、歴史0点だった。歴史…。
「見せてー」
ユウの方を見ると算術100点、読解100点、歴史0点と歴史以外完璧な結果を出していた。
「君たち歴史はどうしたのかね」
やれやれと先生は溜息をつきながらそう言った。驚き呆れているようだ。
「今まで勉強したことがなくて…」
ユウが苦笑いを浮かべて答える。私もそれに続く。
「過去は振り返らない主義なんで」
露骨に嫌な顔をされた。でも知らない。振り返らない。
「歴史は点稼ぎの教科なんだがね…まぁ、合格点は195点だから2人とも合格でいいんだけどさ…」
あ、そういうことなのね。まぁ、それこそしょうがないって話よ。いくら神様が頭が良いと言えど他の星の歴史まで知るはずないもんね!
「はい、じゃあ合格ね。これが入学手続きの書類になってるから入学までに出してちょうだいね。あと、2人とも面接で住むところがないって話らしいからもう明日から寮に入っちゃっていいからね」
弱々しい合格通知を聞かされ書類を受け取る。どうやら寮の問題も心配ないらしい。
「失礼しました!」
職員室を出るとユウと顔を見合わせた。
「やったね!」
「うん!」
そして笑顔でパチンと2人でハイタッチをした。
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