寒さに震えていた。
鉄格子がはめられた窓から差していた光は薄暗くなり、蒼い空が見えていた。
もうじき、夜がやってくる。
冷気と共に死がやってくる。
床、壁、部屋中の全てから温度が消えていくのが分かった。
床で丸くなった僕を守るものはどこにもない。
悴んできた手を必死に息で温めるのが精いっぱいだった。
指先からは既に感覚が失われていた。
冬の牢獄の夜は一度しか味わえない。
なぜなら、一夜にして死ぬからだ。
部屋がゆっくりと闇に包まれていく。
僕は目を閉じる。
ここで凍え死ぬ定めなのだろうか。
笑ってごまかそうとするが、唇が震えて上手く笑えなかった。
仕方ないのかもしれない。
僕は多くの人を革命のために殺めた。
革命は成功したが、僕は全ての人を救えなかった。
革命前後で変わったのは、搾取する側が入れ替わっただけだった。
自分がここで命を失うのはそんな革命に加担してしまった報いなのかもしれない。
でも。
こんなところで命を無意味に失うことが悔しかった。
命は生き物の持つ最後の切り札だ。
せめて誰かのために使って死にたかった。
例えば、自分を恨んでいる人に殺されるとか。
それで気が晴れるなら喜んで命を差し出そうと思ってあの日から今日まで生きてきた。
自分にはそれぐらいの価値しかないのだから。
しかしそれは叶わぬ夢になりそうだ。
息をするのがすっかりしんどくなっていた。
意識がゆっくりと遠のいていく。
弱々しく手を闇に伸ばしたところで、僕はこと切れた。
冷たい牢獄の部屋に音が響いた。
金属音がガチャガチャと鳴っている。
もう目覚めることはないはずなのに、僕はその音で目を開けることになった。
どうやら自分の向いている方向とは逆から音はしているようだった。
身体をそちらに向けたいが、冷たくなった身体は動いてくれやしない。
仕方ないので目を閉じて耳を澄ませることにした。
「早く扉を開けろ」
男の怒声がした。
それから少ししてから、カチンという音が響いてから牢獄の扉が開く音がした。
部屋が明るくなり、人が踏み込んでくる音が聞こえてくる。
そして、自分の背中に強い衝撃が加えられた。
鈍い痛みが走ったが、声一つ上げられなかった。
意識がまた遠のいていく。
「死んでいるか調べろ」
暖かい手が首に当てられた気がした。
「……死んでます」
女の声が自分の上の方から聞こえる。
「これを外へ運べ。終わったら俺のところに来い。いいな」
「わかりました」
男と女の会話していることは分かるが、会話の内容は良く理解できなかった。
やっぱり凍え死ぬんだなということだけがひしひしと実感できた。
今度こそ本当に目覚めることはなさそうだ。
意識はそこで途切れた。