長らくお待たせいたしました。実は私が純粋なオリジナルを書こうとするとぐだる傾向があることがわかり、色々考えた結果、原作に忠実に行くことにしました。
とはいえ、原作との差異は多々あるかとは思いますが、無ければこれを書く意味なんて無いわけで、そのあたりは見逃していただければ幸いです。
なお、方針転換に伴い、第一話の改訂および第二話の削除、タグの改訂を行います。ご了承ください。
では長々と失礼しました。
催しものの行方は?
世界がひっくり返ったみたいだった。さっきまでしっかりと地についていたはずの足はいつの間にか宙に浮いていて、背中よりもワンテンポ遅く床に叩き落とされる。すこし背中が痛い。
さて。これはいったい何事だろう?
まだぼんやりとしている頭を押さえつつ、今の状況を把握しようと先ほどの衝撃で思わず閉じてしまった目を開くと――目の前に仁王立ちでこちらを見下ろすように睨む鬼が居た。
「いい度胸してるじゃない、芳乃。ただでさえ時間が無いってときに居眠りなんて、ねえ?」
「すみません。返す言葉もございません」
一瞬で目が覚めた。同時に、今自分が置かれてる状況だとか、今自分がどこにいて、今なんの時間なのかを思い出し、冷や汗が出てきた。
「LHRなんて授業じゃない、と。そういうわけかしら?」
「いやいやまさか! そんなんじゃないって! というか僕はそんな豪胆な度胸の持ち主じゃないよ! 義之じゃあるまいし!」
「どういう意味だよそれっ!」
どこかで義理の愚弟の声が聞こえた気がしたが多分気のせいだ。まあ、なにはともあれ、ここはかわいい愚弟に矛先を移そう。
「ああ、あんたの愚弟ね。あれならさっき杉並達と騒ぎを起こして話し合いを中断させたわよ」
流石は義之。期待を裏切らない。あとで何かおごってあげるとしよう。
「でもその後はちゃんと話し合いに参加していたわ。寝ていたあんたと違って」
ちくしょう義之。あとで何かおごらせてやる。
こうなればこれからの話し合いで名誉の挽回を――。
「ちなみに、話し合いはとっくに終わって、今は多数決に移行しているわ」
どうやら、天は僕を見放したようだ。くそっ、毎年一月一日に祈りを捧げる熱心な信者だった僕にこの仕打ちか……! 恨むぞ、神様!
神様への呪詛を心の中で唱えていると、深いため息が聞こえた。
いつの間にか下っていた顔を上げ、音のした方を見る。ため息の主は沢井さんだった。漏れた息が怒りを運んで行ってくれたのか、先ほどまで溢れ出していた鬼のようなオーラはすっかりなりをひそめていた。今の彼女はメガネをかけた可愛らしい普通の女の子だ。
「芳乃、そんなところでしゃがみ込んでないで早く席に着いてくれない?」
「不肖、芳乃 雄一。即座に席に着かせて頂きます」
どうやらお許しが出たようだ。僕は素早く倒れた椅子を立て、腰を下ろした。沢井さんはすでに教壇の方に戻っていた。なんというか、無駄のない人である。
「それじゃあ、そこのバカのためにもう一度説明します」
バカですみません。
「ご存知の通り、来週の23日から25日までの三日間。我が校でクリスマスパーティーが開催されます。クリスマスパーティーですが、言ってしまえば文化祭と変わりません。各クラスでの催し物が義務付けられています。ここまではいい?」
「それぐらい一回聞けばわかります」
「寝てた人間がよくそんな口をきけたものね」
「……ごめんなさい、続きをお願いします」
周りから忍んでいない忍び笑いが聞こえた。
ごめんなさい。今、笑うとこじゃないんです。その証拠に沢井さんの眉とか目つきとかが大変なことになってます。だから静かにして下さい。
そんなことを考えながら左隣の席に座る、ウェーブのかかった長い髪が特徴の古馴染み、花咲藍のほうを見る。彼女はすぐ僕の視線に気付いてくれたようで、サムズアップで答えてくれた。彼女の口元は三日月形に吊上がっていた。
どうやらアイコンタクトは正常に行われたようである。ただ、人選を間違えた。
「ごめんなさい!!! 続きをお願いします!!!!」
「……はぁ。まあいいわ。それで現在、人形劇とお化け屋敷の二つの案が出ています。人形劇は雪村さんが、お化け屋敷では杉並が責任者を担当します。なお、選出は多数決で行うことになりました」
なにかをされる前に大声を上げて続きを促した。左隣から舌打ちが聞こえた気がしたが気にしないことにする。
「芳乃、芳乃よ!」
必死に意識を左隣りから逸らそうとしていると、僕の右隣に座っている胡散臭い古馴染の親友が声をかけてきた。
「なんの用さ、杉並。下らない内容だったらはっ倒すよ?」
「いやなに。今回の企画のお誘いだ。どうだ?」
「企画って、お化け屋敷の?」
「表向きはな」
「なるほど、表向きはね」
杉並の口元が吊上がった。たぶん、僕の口元もこんな感じになってると思う。
「詳細は?」
「これから決める」
僕は早速、今の誘いについて思考を巡らせた。なんというか、これは魅力的な提案だと思う。杉並がやることはその大半がはっちゃけた内容で、とても面白い。その上今回は企画段階から関われるのだ。これに乗らない理由はないか。
ところでだけど。
「杉並、なんでお前がそこに?」
そこの席の主は坂本さんだったと思うんだけど。
「なに、彼女は今日休みなのでな。有効活用させてもらった」
さようで。
「では、俺は席に戻る。期待しているぞ、我が同士よ」
そう言うと杉並は立ちあがり自分の席に戻っていった。委員長の鋭利な刃物のような鋭い視線が怖い。
「雄一、雄一!」
委員長の視線の暴力におびえていると、今度は逆サイドからも声をかけられた。正直勘弁してほしい。
「なに? 藍も勧誘?」
「そーゆーことー♪」
そう言うと藍はいたずらっぽく笑い、僕に手招きをした。僕はそれに従い、彼女の近くまで顔を寄せると、藍は僕の耳元でそっと囁いた。
「この人形劇、内容はラブロマンスになる予定なの。そ・こ・で、小恋ちゃんと義之君を主役にすれば、二人の仲を縮めるチャンスになると思わない?」
「だから協力しろってこと?」
近づけていた顔を元に戻しながらそう訊くと、彼女は小さく首を縦に振った。
なるほど、それも悪くないかもしれない。
月島小恋。彼女は藍の友人で僕とも結構長い付き合いになる。で、彼女は小学校の頃からずっと、我が愚弟である桜内義之のことを思い続けているのだ。そんな彼女を見ているとどうしても応援したくなってしまうのは人として当然のことだと思う。とはいえ、義之も義之でまんざらでもないようだし、一歩を踏み出す手助けをするのも悪くないかもしれない。
「まあ、雄一は気分屋だしねー。そのときに決めてくれればいいよ」
そう言って彼女は顔を前に向けた。
僕は改めて二人の提案を思い返しつつ、考える。
どちらも魅力的なのだ。お化け屋敷ならクリパを楽しく過ごすことが出来るのは間違いなし。人形劇なら二人の仲を深める手助けが出来る。両方とも捨てがたい。
「芳乃、そろそろいいかしら?」
不意に、沢井さんが僕にそう尋ねた。
正直なところ、まだ決めかねている。でも、どっちに転んでも僕にメリットがあることはたしかだ。ただでさえみんなを待たせているんだ。これ以上悩んでも時間の無駄だし、ここは多数決で人数が多い方に身を任せることにしよう。
「ごめん、おまたせ。始めてくれて大丈夫だよ」
「始めるってなにを?」
え?
「いや。なにって、多数決をだけど」
「多数決ならもうとっくに終ったわよ?」
え、え?
「残りは芳乃、あんただけ」
「え、なんで?」
「なんでもなにも、綺麗に二つに意見が分かれたのよ。うちのクラスの人数は奇数なんだからあんたが決めてくれないと話が進まないの」
委員長が呆れたようにそう言った。どうやら今日は、とことんツキに見放されているようだ。
「もう少し、時間を下さい」
「はあ……早くしてよね」
クラス全員の視線を一身に受けながら僕はどちらを選択するか頭を抱えながら悩みこんだ。
・人形劇にする
・お化け屋敷にする
・それ以外にする
自分の活動報告にて意見を聞きたいと思っています。
おそらくこの作品を読んでいる人は原作プレイ済みの方がほとんどかと思います。なので、読みたい話がある選択肢を活動報告「今後の展開 1」の方にコメントしてください。
一応期限は8月14日までとします。