こころがぴょんぴょんしそう……しそうじゃない?   作:ほったいもいづんな

5 / 16
前編ですよ前編! 一つにしたらクッソ長くなるから分けました。 前編はちょっとダイジェスト風味になってますが……あれですよ、書籍化したネット小説てきなサムシングです。

時に皆様はBUMP OF CHICKENの飴玉の唄というものを聞いたことがありますか?

別に関係ありませんがね。


最終回 前編 汚れなき記憶 飴玉の唄

 茶々がミルクと出会ったのはとある山の私有地の中だった。 その小高い山はミルクの家、茶温家の私有地で、茶々はそれに気づかずに山に入っていった。 山を登るのにさして苦労をしなかった茶々が辿り着いたのは下の町がよく見える場所、そこでミルクと初めて出会った。

 

 当時9歳だった茶々がミルクを見た時の感想は、明るい茶色の長髪をした可愛い女の子であった。 こんな山の中に女の子がいるとは思わず、戸惑っていると向こうの方から声をかけてきた。 しかもハイテンションで。

 

「あ、あ、あなたは男の子だな!!」

「え、え……」

「夢に見た……いや、淫夢にみた男性……感激なのだ!!」(ホモガキ)

「淫夢……?」(無垢なる瞳)

 

 そこから二人は顔見知りとなった。

 

「何でこんな山にいるの?」

「ふふーん、この山は我が茶温家の私有地なのだ!」

「お金持ちだー!!」

「そうなのだー! はっはっはー!」

 

 時にミルクの話をしたり。

 

「茶々君って一人でここまで登ってきたの?」

「うん」

「すごーい!」

「そうかな? 普通だと思うけど」

 

 時に茶々の話をしたり。 二人は同い年と言うこともあり、自然と仲良くなっていった。 二人が友達になるのはそう遅くはなかった。

 

 もちろん茶々の身の上話もした。 あまり話したくないはずなのに、なぜかミルクには話していた。 そして話を聞いたミルクは茶々のトラウマを克服させるために奮闘するようになった。 ……淫夢を使って。

 

「ヴォエ!!」

 

 もちろん初めは出だしの部分で限界が来たが、彼女が自分のためにこんな汚いビデオを手に入れたのだと、茶々は本気で思っていたため茶々は淫夢を見る努力(?)をした。 少しずつ慣らしていき、半年も経てば本番の絡みを見ることが出来るようになり、1年後になれば……

 

「おはよ↑ございます↓」

 

 立派に成長(堕落)していた。 ちなみにリゼと初めて会ったのはこの頃のこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして会い続けて何年か経ち、二人が16歳になった頃である。 茶々はミルクに対し恋心を抱くようになっていた。 毎日会い、他愛もない話をする仲であり、しかも自身のトラウマを克服させてくれた大切な女性。 特別な感情を抱いて当然だった。

 

 もちろんミルクも茶々事を好いていた。 だが、ミルクの『のっぴきならない事情』が立ち塞がっていた。

 

 ミルクの家系、茶温家は日本で1位2位を争うほど大きな茶畑を持つ家である。 もちろん茶葉に関しては日本のシェアナンバーワン候補で、かなりの財産を保有している。 ミルクはそこの末っ子であった。

 

 だが、茶々に暗い事情があるように、ミルクにも決して良くはない事情があった。

 

 それは重い病気を患っており、そして決して長くは生きることが出来ないのだ。

 

 それを茶々が聞かされたのは夕日が眩しい時間帯の時であった。

 

「お前のことが好きだったんだよ!」

 

茶々が自分の気持ちを正直に伝えた。 だがミルクは断り、その理由を言った。

 

「ごめん……なさい……」

 

 何故か茶々は謝られた。 本人は何故謝られたのか意味が分からなかった。 いくら理由を問いただしても、ミルクは謝るだけだ何も言ってくれなかった。

 

 それからしばらくミルクは茶々に会うことはなく、茶々は一人でいつもの場所にいた。 茶々は考えていた、告白を断られたことに対してではない。 どうやったらミルクに会えるのか、どうやったらミルクに笑顔が戻るのか。

 

 1週間考えた。 でも答えは見つからない。

 

 ……2週間考えた。 でも答えは出てこない。

 

 …………3週間考えた。 でも答えは分からない。

 

 ……………………1ヶ月が経った。 それでも茶々には分からない。

 

 己の無力差に打ちひしがれている茶々。 だが決して諦めなかった。 不思議だった、自分の事はいつも諦めてきた。 殴られようが汚れようが、茶々は諦めてそれを受け入れていた。 だが何故かミルクのことは諦められない。

 

 それに気付いた時、茶々の答えが出た。 ……いや、すでにあった。

 

「俺は……あいつの事が好きなんだよ!」(不屈)

 

 時に男の愛情と言うものは見苦しく惨めだ。

 

 だが、見苦しくて惨めで泥臭いから男は諦めない。

 

 

 

 

 

 

 ミルクは生まれた時から身体が弱く、医者からも長くは生きれないと宣告されていた。 9歳になるまでは外に出ることは叶わなく、常に屋敷の自分の部屋の中にいた。 ベッドにいる時間ばかりで、体調が良いときなど数えるほどしかなかった。 もちろん友達はいなかった。 だがミルクも女の子、男性に対して興味が湧かない訳がない。 部屋に籠る生活の中で、ミルクが男性を学ぶために見ていたビデオ。 ……それが淫夢だった。(元凶)

 

 そして出会った茶々という自分と同じ年齢の男の子。 ミルクは嬉しい気持ちで胸が一杯だった。 茶々は自分が金持ちだと分かっても決して態度を変えず、常に対等に接してくれた。 茶々の過去の出来事を聞いた時、自分よりも辛い事があるとは知らなかった。 それを聞いたミルクは何とかしてやりたい気持ちで一杯だった。 それは初めて出来た同い年の友達だったからだ。

 

 茶々のトラウマを払拭してからも毎日会い続けたミルクは、いつしか自分の中の茶々に対する思いが特別なモノに変わっていたのを理解した。 それが『恋している方の好き』だと気付いた時、恥ずかしいようで嬉しいようで、何とも言えなくて堪らなかった。

 

 しかしミルクは気付く。

 

 医者には20歳頃が限界だと言われていた。

 

 だから自分の恋は叶わないものだと知ってしまった。

 

 それでも毎日茶々と会い続けていたのは茶々の悲しむ顔なんて想像したくなかったから。 でも茶々に会うたびに心が痛んだ。 茶々の笑顔を見るたびに顔を背けてしまう。 茶々と別れるたびに明日も嘘をつき続けることに胸が締め付けられた。

 

 そんな時に茶々に告白された。 ミルクは嬉しかった、だが同時に途方もない悲しみが襲った。

 

(私じゃあ茶々君を幸せに出来ないのだ……)

 

 だから断った。 だから謝ったのか?

 

 それから1ヶ月、ミルクは自室に閉じこもった。 このまま死んでしまえばいいのに、このまま茶々が自分のことを忘れてしまえばいいのに、ミルクは本気で思った。

 

「ごめんなさい……茶々君……ッ!」

 

 今日も涙で枕を濡らしーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 バァン!(大破)、と部屋の扉が開いた。

 

「メソメソしてんじゃねぇよ女のクセにオォン?」(覚悟完了兄貴)

「茶々く……何で……」

 

 茶々は全身が濡れていた。 今日は土砂降りの雨だからだ。 そんな雨の中傘もささずに茶々はミルクの元に訪れた。

 

「つーか客人がずぶ濡れなのに誰もタオルとか持ってこないってどういうこったよ」(半ギレ)

 

 多分空気を読んでいる。

 

「……どうして」

「オォン?」

 

 ずぶ濡れの茶々にミルクが叫ぶ。

 

「どうしてきたのだ!?」

「お、お、どうしたどうした!?」

「私は! ……私は茶々君の告白を断ったのだ……」

「そうだよ」(事実)

「なのに何で! ……こんなに雨に打たれて……! どうして来たの!?」

「お前に会いに来たんだよ、当たり前だよなぁ?」

 

 ミルクは茶々の服を掴みながら食ってかかる。

 

「私だって! 茶々君に会いたかったのだ! でも……私じゃダメなのだ……」

「ミルク……」

「私じゃ……ダメなんだよぉ……」

 

 ミルクは茶々の胸元に顔を預け涙をこぼす。 茶々は黙ってミルクの悲愴の思いを聞いている。

 

「私だって……茶々君の恋人になりたいのだ……」

「……」

「でも私は近い将来必ず死んでしまうのだ……そうしたら茶々君はきっと悲しんでしまうのだ……」

 

 ミルクは茶々を困らせたくなかった。 だから本当の思いを離さずに謝るだけだった。 だが思いが溢れてしまった、止めることなど出来なかった。

 

「それが嫌なのだ!!」

「ミルク……お前……」

「茶々君にはいつも笑顔でいて欲しいから……だから……ッ!!」

 

 茶々はミルクの思いを全て受け止め、その上でミルクに自分の思いを伝える。

 

「ミルク、俺はお前に告白して断られた」

「……うん」

「でもよぉ、俺はお前が好きだ」

「……うん」

 

 ミルクは静かに相槌を打っていた。 茶々の言葉を噛み締めながら。

 

 そして茶々は言う。 自分の気持ちをどんな言葉にするか考えた答えを。

 

「『恋している方の好きだ』」

「!!」

 

 ミルクは驚き、今まで俯いていた顔を上げ茶々を見る。 まさか茶々が自分と同じ思いを、同じ言葉で持っていたとは思わなかったからだ。

 

「お前の笑顔に恋をして、お前の声に恋をして、お前の全てに恋をした」

 

 茶々は考えに考えた。 そしてようやく理解した。 何があってもミルクが好きで好きで堪らないこと。

 

「たとえお前が俺より先に逝こうが、俺はお前を好きになったことに後悔なんてしない」

「……いいの? 私なんかで……」

「何度も言わせんじゃねぇよ恥ずかしい」

 

 茶々は笑う。 その笑顔はミルクが愛してやまない笑顔だ。 ミルクも笑って茶々に告白する。

 

「私も茶々君の事が好き……『恋している方の好き』。 ……両思いだね」

「……そうだな」

 

 そのまま二人はキスをした。 幸せなキスをした。

 

 ……その様子を茶温家の人々はガッツリ見ていた事を後で知る。

 

 

 

 

 

 それからの二人は新婚ホヤホヤレベルでイチャイチャするようになった。 そして『いつか訪れる結末』で悔いが残らないように沢山のことをした。 一緒に素敵な景色を見に行ったり、一緒に不思議な体験をしたり……常に一緒に行動をしていた。

 

 ちなみに出来なかったことが一つ……

 

「赤ちゃんが欲しいのだ!」

「勘弁しちくり〜」

 

 別に『してない訳ではない』。 ただ元々身体が弱いミルクが出産をすれば確実に寿命を減らすからだ。 茶々は素敵なことだが、無理をさせるわけにはいかないと何とか説得した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 終わりが近づいてきた事はすぐに分かった。

 

 その日、ミルクは高熱を出して倒れた。 医者に言われる前から茶々は気付いていた、もう終わりが近いのだと。

 

 茶々は苦しそうに寝ているミルクの手を握りながらずっと側にいた。

 

 看病をしている時、うっかり寝てしまった時に茶々は不思議な夢を見ていた。 夢に出てきたのは子どもの頃のミルクと自分。 夢の中のミルクが茶々にミルクは言った。

 

『ありがとう茶々君!!』

 

 言われた子どもの茶々も笑顔で返す。

 

『どういたしまして!』

 

 そしてこちら(・・・)に振り向いて言う。

 

『僕はね、ミルクちゃんのためなら何でも出来るんだ。 だから……最後の最後、ちゃんとミルクちゃんのお願いを聞いてね?』

 

 

 

 

 そこで夢が覚めた。 何とも不思議な夢に困惑しながら茶々は時間を確認する。 するともうすぐ日の出の時間。 そんな時にいつの間にか目を覚ましていたミルクが茶々に話しかける。

 

「茶々君……お願いがあるのだ……」

 

 苦しそうに、でも笑顔を見せながら……

 

「いつもの……『あの場所』に連れてって……?」

 

 ここで茶々は先ほどの夢の中で子どもの自分が言っていたことを思い出す。

 

『最後の最後、ミルクちゃんのお願いを聞いてね?』

 

 そこまで思い出して茶々はお願いを承諾する。 背中にミルクを背負い、いつもの場所を目指した。

 

 

 

 

 

 

 走る事は出来なかった、でも急がなければいけないと直感していた。 出来る限り早く歩く、その際、背負っているミルクの『重さ』をあまり感じなかった。

 

「……夢の中でね? ……ちぃっちゃい頃の茶々君に会ったのだ……」

 

 ミルクのか細い声が、もうすぐ夜が明ける絶妙な空気に溶ける。 外は夏が近いからか、ほんのり温かく湿っている。

 

「そしたらね? ……小ちゃい君が言うのだ……お願いを聞いてあげるって……」

 

 茶々の見た夢にそっくりの内容を言う。 偶然だろうか?

 

「だからね?……目が覚めて……君がずっと側にいてくれて……嬉しくなちゃって、お願いしたんだぁ……」

 

 照れたように笑うミルク。 だが茶々はミルクの顔を見ることが出来ない。

 

「私ね、分かるんだよ……もうすぐ……死んじゃうのが……」

 

 茶々はミルクの方を向かない。 そして相槌も何故か打たない。

 

「だからね、いつも君といた場所で……終わりたかったのだ……」

 

 茶々は決して振り向かない。

 

 そしてその歩幅が少し小さくなる。 いつもの開けたあの場所に着いたのだ。 茶々はいつも二人でいた崖の近くで……下の街がよく見える場所に向かう。

 

「……っ……!」

 

 茶々は震えていた。 今にも涙が溢れてしまいそうで、今にも崩れてしまいそうで、まるで子どものように泣くのを我慢していた。

 

 突如、茶々の踏み出す一歩が重くなる。 あそこに辿り着くのを邪魔するように、拒むように……。 それを感じ取ったミルクが茶々を励ます。

 

「がんばれ……茶々君……」

「っ!」

 

 ミルクの言葉に励まされ、茶々はゆっくり、ゆっくり前に進む。 足が沼に浸かったみたいに力を込めて足を上げ、沼に沈むように足を静かに落とす。

 

「がんばれ……がんばれ……」

 

 小さな応援を続けるミルク。 今にも消えてしまいそうなのに、力を振り絞り茶々を応援する。

 

「つ……っ……ついた……ぞ……」

 

 永遠にも感じる短い時間をかけて到着する。 もうすぐ日の出を前に、ミルクの最後の言葉が茶々に伝えられる。

 

「もうすぐ日の出なんだね……」

 

 ミルクの目は薄くしか開かれていない。 衰弱しきり、瞼を開く力すらない。 それでも最後の言葉を伝える。

 

「茶々、私ね……ずっと世界で一番不幸だと思っていたの……。 こんなにも早く死んじゃうなんて、世界で一番可愛そうだって……」

 

 ミルクの言葉を聞きながら、茶々は必死に歯を食いしばっていた。 ほんのちょっとでも力を緩めればすぐにでも大粒の涙が溢れ出してしまうから。

 

「でも茶々君の話を聞いて、なんてこの男の子は不幸なんだろう……って思ったのだ……そしたら私なんて全然不幸なんかじゃないって気付いて……」

 

 あと数分で夜が明ける。

 

「そしたら今まで見えていたものがすっごく変わって……そしたらいつの間にか君を好きになっていて……両思いだって知った時は本当に嬉しかったのだ……」

 

 あと数分で日が昇る。

 

「でも……君も男の子……なのだ。 私がいなくなったら……ちょっとは浮気してもいいんだよ? 男の子だもん、女の子を好きになっちゃうのは仕方ないのだ」

 

 あと数分で……『終わる』。

 

「だから、死んであの世に来た時に……私を思いっきり……抱きしめてくれるだけでいいのだ……だって…………だって私ーーーー」

 

 

 

 

 

 

 ーーーー朝日が昇った。

 

「ア゛アあああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 朝日が街を包む、その中で野獣のような雄叫びが一人悲しく響いた。 涙が混じった悲しい叫びだった。

 

 ミルクは茶々の背に掴まりながら…………この世を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミルクの好物はホットミルク、それに甘党が敬遠するくらいの砂糖を入れるのが好きだった。

 

 茶々はいつも砂糖を携帯している。 その姿は、まるで大好きな女の子がいつも舐めている飴玉を持っている子どものようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーだって私

 

ーーーーだって私、茶々君の事が大好きだから

 




はい、後編に続きます!

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。