11 『闇の帝王』とそれぞれの思惑
【???】
「誰だお前は……」
「私めはピーター・ペティグリューと申します。どうか貴方さまに私めの忠誠を捧げる事をお許しください」
「私はもう過去の人間だ。それに貴様は『闇の印』を持ってるな。なればすでに主君がいるはずだ」
「あいつは最早私めにとってどうでもいい存在になりました!どうか、どうか私めをお助け下さい!」
「ハハハハハ!自分のために主人を見捨てるか!しかし、私もかつて同じような事をした……いいだろう、私と共に来い」
「ありがとうございます、ありがとうございます!ご主人様!」
「早速かつてのお前の主人に引導を渡してやろう。と言いたいところだが私も老いた。少し力を蓄えねばなるまい」
「それでしたらいい案がございます!今年ホグワーツで『
「ホグワーツ──ダンブルドアか。それはいい案だ、ペティグリュー。褒めてやろう」
「ありがたき幸せです」
「ダメだ!これは僕でもどうしようもない」
今、僕は『炎のゴブレット』が一体どういった基準で選手を選抜しているか調べていた。
その理由はハリーが『
「これはリリーがハリーに施した『保護呪文』にも匹敵する古の強い呪文が3つほど掛けられてるな。全く困ったよ」
最初から嫌な予感はしていたのだ。『原作』でかのダンブルドアを含めた三大魔法学校の校長や先生が集まってるにも関わらず、ハリーを出場させざるをえなかったのだから。
「これをどうにかするには少なくともダンブルドア校長レベルの魔法使いが5人は居なきゃ無理だ」
しかしバーテミウス・クラウチJr.はよくやった方だ。炎のゴブレットの選手選抜基準はいじる事が不可能だが、選べる人数は選択可能なのだ。
その理由は選手選抜基準は炎のゴブレットの根幹にあり、このゴブレットが作られた時から少しも変わらないものだからだ。
しかし選手の人数や出場校といったものは後から設定できるものであり、100年に一度だが炎のゴブレットに後付け設定ができる
恐らくバーテミウス・クラウチJr.は炎のゴブレットに強力な『錯乱呪文』をかけて、後付け設定する年が来たと思わせたのだろう。
「もういっその事僕がダームストラングかボーバトンを襲って大会を開催出来なくするか?」
そう言いながら、そんな事は欠片も思っていない。
元々僕はこの魔法の世界を楽しみたいのだ。確かに目的はヴォルデモートの復活の阻止、とういうより原作以上のハッピーエンドだ。
しかし、道中楽しみたい、という強い気持ちもある。
そして『
だからと言ってハリーに出場させるのは危険すぎるのだが……
「普通に考えたらセドリックとハーマイオニーかジニーが有力なんだけどなぁ」
魔法力で考えればセドリック、ジニー、ハーマイオニーが間違いなくトップであり、対抗できて双子位だろう。
しかし、炎のゴブレットが魔法力のみを基準に選手を選ぶのだとしたら、わざわざダンブルドア校長が年齢制限などしかずとも上級生が選ばれるはずだ。
つまりダンブルドア校長を持ってしても選考基準が全くの未知数なのだ。
「しかし本当に困ったよ、コレは。ハリーに投票するなってジニーから言ってもらうのも無理だよなあ、あんな事があったんじゃ」
そう、今回の『
バーテミウス・クラウチJr.は僕の強化版『忍びの地図』に登録しているので、もしホグワーツに侵入してくれば一瞬でわかる。だからハリーは絶対に選手に選ばれる事はなかったのだが、状況が変わった。
僕は基本的に自分の計画が全部が全部上手くいくと思ってない。どころか、精々自分の理想の4割でも叶えられたら御の字だと思ってる。
これが相手と僕の一対一の戦いならまだしも、ヴォルデモートやダンブルドアと言った様々な人間が日々己の利益となるような結果にする事を考え、僕が予想できる範囲を超えた活動をしているのだ。加えて僕が存在も知らない様な人々もそれぞれの思惑があって動いている。
例えば味方の陣営の一人が良かれと思って指揮官の予想外の行動をし、そこから全てが破綻するかもしれない。
この場合行動を起こした人間は善意で動いていることが厄介だ。裏切りの場合何らかの証拠を残し、周りが気がつく事が出来るのだが、本人に全く自覚がないと気づきようがない。
今回の件は正にこの場合だ。
あれはクィディッチのナショナルリーグの試合を観に行った日の事である──
クィディッチの試合を観に来ていたのだが、僕はジニー達と別行動していた。というかさせられた。
その理由は僕が日記であり、目がないから試合が見れないとジニーが判断してテントに置いていってしまったのだ。
僕も、原作と違ってハリーにはシリウスが付いているし、実体化してヨルとクロと3人で観るのも悪くないかな、と思って別行動をとるのに反対しなかった。
試合自体はかなり面白かった。
僕は今のところ箒に乗った事がないから素人意見だけど、試合内容は流石プロ、といったところだった。使っている箒だけなら今のホグワーツはそう変わりないのだが、速さや状況判断、チームの連携といった物がホグワーツ生達と全然違うという事がひしひしと伝わってきた。
そして隣では、ヨルはともかくクロは最初『どうせ本気で飛べば私の方が断然速い』と乗り気でなかった。だが試合が始まると『ちょっと!今のはファールでしょ!審判はトロールね!そうでなきゃ『結膜炎の呪い』をかけられてるに違いないわ!』と僕以上に盛り上がっていた。
試合が終わった後僕に『ねえ、箒の訓練しなさいよ。今度、その、一緒に空を飛びましょう?』と言ってきたので今年度からは3人で飛行訓練をするのも良いかもしれない。僕としてもあんな風に空を飛ぶのは中々憧れるものがあった。
問題はこの後だった。
僕はバーテミウス・クラウチJr.がハリーの杖を使って『闇の印』を打ち上げるのを阻止しようと『不可視の呪文』を何重にも唱えて機を窺っていた。するとクラウチがハリーの杖を奪いある程度離れた森の方に走っていたので、ヨルの鼻を頼りに追っていった。
そしていよいよクラウチを捕まえようとした瞬間に『私の息子の杖を返してもらおうか』と言いながらシリウスが現れたのだ。
2人とも天才であり、それなりに場数も踏んでいる熟練の魔法使いだ。その後の戦いは熾烈を極めた。助けに入ろうかとも思ったのだが、出来れば姿を見られたくないのとクラウチが最初から弱っていることもあり、シリウスが優勢だったのでギリギリまで手を出さなかった。
結果としてはシリウスが勝ち、クラウチを捕らえたものの、すんでのところで『闇の印』を打ち上げられてしまった。
そして『死喰い人』が集まってきてしまったのだが、これに最初に遭遇したのはシリウスを探しに来たハリー達だ。
ここからが僕の予測を大きく覆したところなのだ。
正直『死喰い人』が集まってくるとわかった時点でハリーやジニー、セドリック、ハーマイオニー、ジョージ、フレッドの7人が戦うのはわかっていた
しかし、意外な事にロンとマルフォイが真っ先に立ち向かって行ったのだ。実力的にも今までの行動から鑑みてもこれは異常な事だった。
そして『死喰い人』のほとんどが捕まり、事件が落ち着いた頃に闇祓いの大人達がロンとマルフォイに問いかけた。『何故真っ先に向かって行ったのか』と。
ハリー達は新聞に載るほど有能な魔法使いだが、お前達は違うだろうと言外に伝えていた
それを理解した上で2人は答えた。
『僕の親友達と家族はみんな僕とは違って優秀だ。僕にはあんなに上手く箒には乗れないし、勉強だってできない。でもそれが何だって言うんだ?『生き残った男の子』じゃないと立ち向かえない?『最多得点者』でなければ戦えない?僕は『吸魂鬼』に立ち向かった親友と家族を見て決めたんだ。僕は僕なりに出来る事をするって!ハリーとハーマイオニーの対等な友人になる為に!家族に心配させない為に!僕だって“ヴォルデモート”に立ち向かえる人間になるんだ!』
『認めるよ、僕はマグル生まれのグレンジャーと貧乏一家のウィーズリーより劣ってる。けどそれは今の話だ。僕達はまだ学生で伸び代がある。僕は純血の誇り高き一族、『マルフォイ家』の長男で一人息子だ。あいつらに負けるわけにはいかない。本当に負けを認める時は僕が死ぬ気で努力して、それでも勝てなかった時だ。そして『死喰い人』程度に怖がってたんじゃあ『吸魂鬼』にさえ立ち向かっていったあいつらに一生かかっても追いつけない。そう思っただけさ』
この2人の発言は新聞に大々的に報道され『平凡な勇者』として大きな反響を呼んだ。
その後、シリウスが捕らえたバーテミウス・クラウチJr.の発言により息子に『服従の呪文』をかけていた狂人としてバーテミウス・クラウチ・シニアは逮捕、その後はパーシーが後釜として『国際魔法協力部部長』に就任した
そして記事を読み弟と妹の成長を喜んだパーシーは自分の地位を早速利用し、『魔法省ゲーム・スポーツ部部長』ルード・バグマンをはじめとした様々な権力者達に声をかけ、『
ルード・バグマンはもちろんの事シリウスやキングズリーと言った面々もこれに賛成。また、意外な事に息子の成長を喜んだルシウスもパーシー達に力を貸した。
ルシウスは『原作』と違い、未だホグワーツの理事1人であったため、理事会で他の理事達に協力を求めた結果、多くの味方を得ることに成功。
ここまで来るとダンブルドア校長も無下にすることは出来なかった。
しかし、ダンブルドア校長としても安全面から全ての意見を聞くわけにもいかず、折衷案として『上級生一名と下級生一名を各校選出してのタッグマッチ』とする事が決定された。
全員が自分たちの愛する息子や家族のために善意で行動した結果、ハリー達を危険な状況に追い込んでしまったとは皮肉な事だ。
そして僕は裏でこんな事になっているとは全く知らず、全てが決まってから、シリウスの『ハリーが三大魔法学校対抗試合に出れるかもしれない!』と言う報告によって知った。
困った事に上級生で選ばれるのはセドリックでほぼ間違いはないのだが、下級生は誰が選ばれるのか全くわからない。
いや、単純に能力面で選考されない以上、最早誰が選ばれてもおかしくない。それ位今のホグワーツの生徒達はやる気に満ちている。誰もが『平凡な勇者』を目指して日々努力するようになってしまったのだ。
そして炎のゴブレットの選考基準に手を加えようとした結果が冒頭だ。
「最早『原作』通りの試練じゃないだろうし、僕がこっそり裏から手を回すのも難しい…」
『我が主人よ、終わったぞ。迎えに来てくれ』
「了解」
今2人には僕の父、つまりトム・リドル・シニアの墓にある骨を砕いてヨルに食べてもらい、代わりにクロが捕まえてきた鹿の骨を置いてきてもらっていた。
理由はもちろん、ヴォルデモート対策だ。
「やあ、お疲れ様。仕事は順調だったようだね」
「うむ、何の問題もない」
「ついでにお参りもしておいたわ。一応あんたの父親なんでしょ?」
「ありがとうヨル、クロ。しかしお参りかあ、その発想はなかったよ」
「しかし我が主人よ、ここまでやっておいてまだ警戒しているのか?」
「まあね、予感がするんだよ。僕と『僕』は相容れない。2人同時にこの世にいることは出来ないのさ」
「あんたがそう言うのならそうなんでしょ。それより早く帰りましょう、ここあんまり楽しい場所じゃないわ」
「わかった……ん?」
「久しぶりだな、若造」
「へえ、君はその男に着いたのかい、ペティグリュー。それから、久しぶりって言われても僕は『僕』じゃあないからはじめましてだよ」
「ほお…てお前は『闇の帝王』ではないと?」
「『闇の帝王』ではあるよ。ただ『ヴォルデモート』ではないよ」
「不思議な事を言うな、貴様」
「事実だからね、許してくれ。それで、君はどういった立場を取るんだい?」
「お前の敵であり、ダンブルドアの敵だ」
「へえ、それじゃあここで戦う気かい?」
「今日はただ挨拶に来ただけだ、若造」
「これから
「こちらこそ、ゲラート・グリンデルバルド」