よくあるオリ主がどこの寮に入るか?という一大イベンドが出来ないのは残念です。
とてつもなく気持ち悪い。
僕はここ最近、マルフォイ氏に持ち運ばれているのだが、何というか、他人の心というか思考が流れてくる。
この感覚はかなり奇妙で、しかもマルフォイ氏の思考ははっきり言って気持ちの良いものではない。
僕が誰かに持たれると感じるものは主に2つある。
1つはその場その場の考えだ。
例えば今日は何を食べようか、とかあれが欲しい、とかそういった、いわば表面的思考だ。
もう1つは根本的な思考回路、人間性。
説明するのは非常に難しいのだが、日記の持ち主が表面的思考をする際に、その理由というか、プロセスのようなものが感じられる。いってしまえば、その人の根元的な部分だ。
マルフォイ氏の表面的思考は常に誰かを陥れよう、だとかあいつが不愉快だ、とかこれは金儲けに使える、といったものばかりだ。
しかもその根底にある『純血主義』や、汚い自分本位な思考回路を僕はいつも感じなければならない。当たり前だが、つい最近まで魔法界に居なかった僕には、本で読んだ知識としてはあっても、『純血主義』はまったく身近でないものだ。
自分が少しも理解できない思考回路を常に意識させられるというのは、中々にくるものがある。
唯一の救いは家族と接触するときだ。
マルフォイ氏は心から家族を大切にしているようで、表面的思考も根元的思考も非常に穏やか。どころか自分の無表情を気にしているようで、二人を不快にさせないか?なんて考える、心温まる一面も見せる。
マルフォイ氏は僕の正体、というか使い道をわかっていないらしい。
彼にしてみれば、僕は今は亡き『闇の帝王』から渡された謎の日記であり、向けられる感情は、捨てたいが『闇の帝王』が復活したときが怖い、何か呪文がかかっているのはわかるがよくはわからない、といった恐怖と猜疑心のみだ。
間違ってもインクで僕に何か書くという事にはならないだろう。
僕が誰かとコミュニケーションをとるには一度でも日記に何か書いて貰わなければならない。
僕に何か書くとその際にインクだけでなく、魂も消費されていく。僕に魂を渡せば渡すほどコミュニケーション方法は多くなり、最初は文字を通してやり取りをする位だが、次第に夢の中に肉体を持って現れたり、幻聴として話しかけたりすることが出来るようになる。
肝心の魂の消費具合はどれだけ僕を信頼しているか、書く内容がどれだけ自分のなかで強く、純粋か、で決まる。
原作でのジニーは『トム・リドルの日記』を心の拠り所にしていたし、日記以外にハリーへの恋心を話せなかったために気持ちが強くなっていったのだろう。だからすぐに体を操られるまで魂を注ぎ込んでしまったのだと思う。
ここまでが僕の中にあった元からの原作知識とこの日記になったことで得た知識によるものだ。
ここからは仮説になる。
屋敷しもべ妖精のドビーは確か『再び秘密の部屋が開かれようとしているのです』というようなことを言っていた。
つまりマルフォイ氏はどこかのタイミングで、この日記が『秘密の部屋』を開くのに使えると知るのだろう。
それを目の上のタンコブであるウィーズリー家に渡すことで、邪魔な日記を排除し、ウィーズリー家に嫌がらせをし、さらに秘密の部屋を開くことで、あわよくばダンブルドアを解雇しようとするのだろう。
ここで問題となるのは、トム・リドルがマルフォイ氏にこの事件を起こすように命令したのか否かだ。
僕の使命は『闇の帝王』の復活の阻止。今現在考えている方法は2つある。
1つはシンプルに『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』で『闇の帝王』の復活を阻止すればいい。
方法はたくさんある。『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』でピーター・ペティグリューを殺すなり、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』でマッドアイ・ムーディーの正体を暴くなり、先に僕の墓に行って復活用の大鍋に穴を開けとくなりすれば良い。
もう1つは僕が先に『闇の帝王』として復活することだ。
そうすれば誰ももう1人『闇の帝王』を復活させようとは思わないだろう。こちらの方法では僕の負担は増えるが、上手くやれば闇の陣営を全員アズカバン送りにできるかもしれない。
しかしどちらに共通しているのが僕が実体を持たねば難しい、という点だ。
原作でトムが復活しようとする際ジニーを殺すことで復活していた。勿論僕はジニーに限らず誰かを殺して復活する気はない。しかし肉体を得なければならないのも事実
ではどうするか?
僕の出した結論は『恐らく人を殺さずとも復活できる』だ。
順をおって説明しよう。
まず注目したいのが、ジニーがトムが実体化するほどの魂を日記に注いだにも関わらず『トム・リドルの日記』は『ジニー・ウィーズリーのホークラックス』にならなかった、という点だ。
もしジニーのホークラックスに日記がなっているとしたら、日記が破壊された際にジニーは沢山の魂を消されることになり、あんなに簡単に復帰する事は不可能だ。
では、ジニーの魂はどこに行ってしまったのか?魂を使っていないのならなぜトム・リドルは実体化寸前まで行ったのか?
ここで活躍するのが『守護霊の呪文』だ。
ハリー・ポッターシリーズの中でも屈指の知名度を誇るあの呪文は『自身の中の幸福な記憶』を使うことでディメンターを打ち破る強力な呪文になる。つまり高度な呪文は魔法力だけでなく、思い出や魂といった力を何かに変換して使うことができるということだ。
何が言いたいかというと、あの時『トム・リドルの日記』はジニーの魂を直接使ったのではなく、別のエネルギーに変換して使ったのではないか?ということだ。
この仮説が本当ならば様々な人から少しずつ魂を貰ったり、自分で何かしらのエネルギーを得る術を開発すれば死人を出すことなく実体化できる。
恐らくトムもこれを知っていたが、この方法では時間がかかることや協力者もある程度の人数必要とすることなどから、1人の人間を殺し、復活する事を選んだのだろう。
そうすれば日記の事を知る人間は1人でいいし、その1人も死ぬことで誰からも知られることなく復活できる。
はっきり言ってしまえば、僕はジニーを犠牲にすれば間違いなく実体化できる。要はある程度原作通りに進めて、最後に『秘密の部屋で待つ』という書き置きをして、『秘密の部屋』にバジリスクだけ置いておいて僕は禁断の森やかつて賢者の石があった部屋などに隠れていればいいのだ。
そんな汚いやり方はしないが、仮にこの方法をとるにせよ、多くの人の魂を少しずつとるにせよ、新しい術を生み出すにせよ、ホグワーツには絶対に行かなければならない。
様々な事件が起きる場所であり、魂を取れる多くの未熟な魔法使いがいる場所であり、新しい術を開発するための本が多くある場所だ。
そして申し訳ないのだが、簡単に操れることがわかっている、ジニー・ウィーズリーの体を借りることも事を円滑に進めるためには必要不可欠だ。
結局のところ、目下一番大事な事はいかにしてマルフォイ氏がジニー・ウィーズリーに僕を渡す決心をするのか、である。
それ以降はジニーが僕を手に入れてくれれば、いや、最悪ホグワーツにさえ入ればどうにかなる。
つまり、一番最初にして最も難しい問題がこのマルフォイ氏である。作中ではあまり触れられていないが、やはり一人前の英才教育を受けた純血の魔法使いだけあって、慎重であり、狡猾であり、魔法力も中々のものだ。
そんな訳で、僕がうんうんと頭を悩ませていると(といっても頭はないのだが)マルフォイがインクを僕のところに倒してきた。彼がインクが染みない僕を不思議に思って、僕を手に持つと思考が流れてくる。
『父上にしては珍しく薄汚いものを持っておられるな。見た目に目を瞑ってまで持っておきたいものなのだろうか』
というような感じである。
彼は大層父上を信頼しているようで、マルフォイ氏が持っているものなら、絶対に自分に脅威はないと考えているようだ。
僕に興味はあっても恐怖や疑いの心はない、つまりある程度心を開いている。僕が心に入り込める。なので僕は彼に少しばかり手伝ってもらうことにした。
彼は僕が意思を持っている事を知ると、毎日嬉々として僕に話しかけてきた。
僕は父上が君に渡そうとした新たな友人であり、サプライズで渡す予定だから、僕の存在に気づいたことはまだ秘密にしていた方が良い、というとすっかり信じていた。
彼の心に入り込むのは実に簡単で、『純血主義』の深い理解や、ハリーが意味もなくちやほやされていることに同意しているだけでよかった。
そして意外なことだが、マルフォイは家族や友人をかなり大切にしており、休みの間に送る友人へのプレゼントなども聞いてきた。
僕の中にはトム・リドルとしての知識や、ある程度の思考回路もあったので、彼の特技の1つであった『人の好きな物を見極める』があったことや、僕が前世で人を喜ばせるのが得意であったことから的確なアドバイスができた。
流石にただ利用して終わりでは悪い気がしたので、こういった悩みを解決できたのは嬉しいことだった。
マルフォイをある程度操れるようになったところで、僕はマルフォイ氏あてに手紙を出させた。
内容は『純血の敵に闇の帝王の日記を渡せ、さすれば秘密の部屋は再び開かれん』という感じだ。
純血の敵といえばマグル生まれだが、闇の帝王の日記をマグル生まれに渡すのは躊躇われる。そこで純血でありながら、純血主義否定派のウィーズリー家に僕を渡すだろう。
秘密の部屋についても臭わせておいた事でホグワーツに今年から行くジニーを選ぶ可能性は高い。しっかり『闇の印』も手紙に添えておいた。
その後で少し名残惜しい気もしたが、マルフォイから僕に関する記憶を抜き取っておいた。これで問題なく原作通りに進むはずだ。
そうして僕はジニー・ウィーズリーのお古の教科書とともに彼女のカバンに収まった。このときギルデロイ・ロックハートとハリー・ポッターに会える事の喜びで、彼女の心は溢れていた。
というわけで作者の独自解釈でした。
こいつ全然理解してねえな、というような箇所がありましたら、是非ともお教えください
『トム・リドルの日記』つまりホークラックスについては好きに解釈させていただきました