ハリー・ポッターと二人の『闇の帝王』   作:ドラ夫

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33 獣と人

 ドラゴン、ヘビ、狼人間、吸血鬼、吸魂鬼、巨人、水中人、ケンタウロス、屋敷しもべ妖精、小鬼、ありとあらゆる生物が集ってた。

 彼らには共通点があった。

 それは、人間に虐げられてきたこと。

 高い知能を持ち、それぞれの文化を持っていた。だが、人間が勝手に決めた法によって縛られてきて者たちだ。

 魔法使い達はマグルから魔法界を、魔法生物を隠そうとした。だが、人間以外の生物からしてみれば、そんな事はどうでも良いことだ。

 彼等は自由に生きたかった。

 故に、人間が持ちかけてきた法に反発し、虐殺された。

 中には人間の奴隷にされた者もいた。

 力で敵わない事を知った彼等は、我慢してきた。いや、我慢などという言葉では表せないほどの怒りを、屈辱を、堪えてきた。

 

 ドラゴンの血は様々な効能があった。

 故に、人間の生活を豊かにするために乱獲されてきた。時には生け捕りにされ、競技にさえ使われた。

 

 ヘビは勝手に闇の魔法使いの象徴とされた。

 闇の魔法使い達は好んでヘビを使役し、やりたくもない殺しをさせられた。

 他の魔法使いからは忌み嫌われ、虐殺された。

 

 狼人間はほとんど人間と変わらなかった。

 だが、自分達の誰かが少しでも他人を傷つければ、彼等は人間ではなく、危険な狼扱いだった。

 人間の方が明らかに人を殺してきているのに、だ。

 

 吸血鬼は夜を追われた。

 過去、恐怖の象徴だった彼等は、異常な程の虐殺にあった。結果として、人間にへりくだり生きていくか、暗い洞窟の奥底で、蝙蝠として生きていくかを無理矢理選ばされた。

 

 吸魂鬼は人間に協力関係を提案された。

 彼等の食料である魂を供給する代わりに、アズカバンを守ってほしい、と。

 だが、蓋を開けてみればそれは不当な労働だった。夜も朝もなく、彼等は働かせられた。休もうとすれば『守護霊』を容赦無くけしかけられた。

 

 巨人は山に閉じ込められた。

 心優しい彼等は好んで人を傷つけない。だが、その大きさ故に人を傷つけてしまう事がある。それを理由に、彼等は闇の生物に認定された。

 そして、体の大きさを利用して、魔法使いの練習用の的にされた。

 

 水中人は清らかな湖に住んでいた。

 だが、人間がそれを汚し、汚染した。その上彼等は外来種を持ち込み、水中人達の住処を脅かした。

 抗議をした水中人の言葉を、人間は陸地にいたまま聞かなかった。

 

 ケンタウロスは賢かった。

 人よりも多くの物事を知っていた。それは科学や魔法といった事ではなく、森の美しさや生命の営みといったものだ。科学や魔法よりもずっと価値がなく、ずっと素晴らしい物を彼等は知っていた。

 だが、人間は彼等の言葉に耳を傾けず、醜い半獣と罵った。

 

 屋敷しもべ妖精は美しい妖精だった。

 他の妖精と同じく、自然に生きていた。だが、その優秀さから人間に捕獲され、しもべとされた。彼等から文化を、自由を、美しさを奪っていった。

 

 小鬼は人間が嫌いだった。

 だが、小鬼の力に関心を寄せた人間が協力関係を持ちかけてきた。それに小鬼は、渋々応じた。小鬼と人間、双方の発展を信じたからだ。

 小鬼達は人間に力を貸した。だが、人間は終ぞ魔法を小鬼達に授けなかった。

 

 そんな彼等の忌まわしき歴史は終わりを迎えようとしていた。

 本来、協力関係を結ぶことなどしない彼等は、団結し、人間を滅ぼす事を決めた。

 彼等は希望を見たのだ。人間を上回る頭脳と力を持つ、一匹の美しい獣に。

 獣の頂点に立つ、白銀の女王に。

 

「クロ様、この人間でよろしかったでしょうか?」

 

「ありがとう、ルロイ」

 

 そんな彼女の目の前に居るのは、かつてホグワーツに仕えていたルロイ。

 彼等屋敷しもべ妖精達はホグワーツを裏切った。

 ダンブルドアではなく、かつて、教育を施し、戦友として接してくれたトム・リドルの後を継ぐ、クロに仕えることを選んだ。

 当然、ダンブルドアからは解雇に必要な衣服を貰っていない。だが、彼等は自分達で考え、自分達で仕える主人を選んだ。

 そして、ホグワーツを離れる際、一人の女を連れてきた。

 連れられてきた女の名前はシビル・トレローニー。

 かつてハリー・ポッターとヴォルデモートに関する予言をした、ダンブルドアの切り札ともいうべき預言者。

 

「ん、んんん!」

 

 彼女は目隠しをつけ、猿轡を咬まされ、体を拘束されていた。

 クロが杖を振るうと、彼女の身は自由となった。

 シビルがクロを見ると、彼女の身に膨大な魔力が集まり、雰囲気が変わっていく。

 彼女の目と口はありえないほど開き、女性とは思えないほどの野太い声で話し始めた。かつて、ハリー・ポッターに予言を授けた時のように。

 

『汝は──』

 

「そういうの、いいから」

 

 そして、シビルが予言を言い切る前に、クロはシビルを殺した。

 

「これで、新たな予言が生まれる事はない」

 

 クロは、ダンブルドアの狡猾さをそれなりに評価していた。

 故に、無能なシビルを、新たに『占い学』という教科を作ってまで雇ったことに疑問を持っていた。

 そして、僅かなヒントを元に真実に辿り着いた。普段は無能なシビルが、稀に非凡な力を発揮する事を知った。

 クロは、トムと違って不殺を誓ってはいない。真実に辿り着いた彼女が下した結論は、当然殺害であった。

 

「今から全員に魔法を授ける。人間が私達にひた隠しにしていた魔法を」

 

 彼女が取り出したのは『主人を選ばぬ杖』。

 トムが作ったそれを、彼女は作り出すことに成功していた。

 ただ作ったのではない。トムが作り出したそれは、魔力変換効率が6割程度だったが、クロは魔力変換を8割まで引き上げることに成功していた。

 今、屋敷しもべ妖精達がこの『主人を選ばぬ杖』を大量生産している。

 

「それから、人間をはじめとした、いくつかの『動物もどき』になってもらう」

 

 そして、彼女は自分が『動物もどき』になった時の儀式を正確に覚えていた。

 その儀式を頭の中でシュミレートし、改良する事で、複数の『動物もどき』になる算段をつけていた

 

 現在、そんな彼女の頭に浮かんでいるのはトムが死んだ夜のこと。

 彼女は、あの夜トムとヴォルデモート、ダンブルドア、ゲラートが使った魔法をほぼ全て学習していた。

 例外はトムが変身した『死』と、ヴォルデモートが作った『賢者の石』。もっとも、その二つもいずれ物にするつもりではいたが。

 クロは、魔法使い達が長い歴史の中で培ってきた魔法の全てを理解しつつあった。そして、到達してしまえば、後は追い越すだけだ。

 二年半で人類の最高峰に達した彼女が、ドラゴンの途方もない寿命を全て使い切る頃には、一体どれほどの領域に立っているのか、それは誰にも分からない。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 ホグワーツは、最早学校として機能していなかった。

 ヴォルデモートの『死の呪い』により、階段は動かなくなり、大広間の星空はただの天井になり、肖像画はただの絵になった。

 その結果、寮を守護していた、太った淑女などの肖像画が機能しなくなり、他寮に入り放題となってしまった。

 その上、掃除や食事の用意をする屋敷しもべ妖精達が居なくなったことで学校は荒れ、食事をする事も出来なくなった。

 必要の部屋や秘密の部屋はただの部屋に戻り、誰にでも開かれる様になった。

 勿論、絶対の守りが施されていたはずの校長室もだ。

 唯一の例外として、トムが最強の保護を施した【7つ目の部屋】のみが、今も侵入者を拒んでいた。

 そんな誰もいないはずの【7つ目の部屋】に、一人の美しい女性が立っていた。

 彼女の名はダフネ・グリーングラス。

 この部屋の新しい主人だ。

 そして、彼女の足元にはいくつもの小瓶が置かれていた。いずれの小瓶にも、白い靄の様な物が入っている。

 彼女は『みぞの鏡』を暫く見た後、杖をシミひとつない美しいこめかみに当て、新しく白い靄を取り出した。

 そのまま白い靄を小瓶に入れ、足元にある小瓶の群れに追加した。

 トムがいなくなったあの日から、彼女はずっとここでこの作業を行っていた。

 何度も何度も、小瓶でこの部屋の床が埋まるまで。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 ダフネが『みぞの鏡』を見つめている時、その上の階でハーマイオニーは泣いていた。

 彼女の周りには、ハーマイオニーの姿を隠してしまうほどの沢山の本が積まれていた。その本の著者はこの部屋の旧主人。つまり、トム・リドルだ。

 魔術についての論文、物語り集、教科書、果ては料理の本など、トムは実に多くのジャンルの本を書いていた。

 当然、本の中にはトム・リドルは出てこない。だが、どことなく彼を思い出させるのだ。文字の1つ1つが、彼だった。

 ハーマイオニーは本を読み進めるたびに、彼と話している様な気分になれた。そして、彼との本を通しての対話に没頭して後に、本を読み終わると、彼の死を思い出して泣いた。

 そして、その悲しみを紛らわせる為に、再び新たな本を手に取った。

 だが、彼女の胸の奥にはずっとある考えが浮んでいた。

 

『怒りに負けないで、ハリー!憎しみでヴォルデモートと戦っちゃダメ!友情や愛を信じるの!』

 

 あの時、ハリーが私の言葉をもう少し聞いてくれていたら、そう考えずにはいられなかった。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 ハーマイオニーが本に埋もれる中、ネビル・ロングボトムも本の山に埋もれていた。

 彼は強くなる為に、図書室で様々な本を読んでいた。

 彼は自分の頭がそれほど優れていない事を理解してた。故に、ハリーとトムについて考える事を止めた。とにかく、力を蓄える事にした。

 ヴォルデモートの『死の呪い』により、閲覧禁止の棚にあった、呪いがかかった本の数々が読める様になっていた。 ネビルはそれらの本を、熱心に読んでいた。

 様々な言語で書かれているため、その本を読むためにも別の本が必要だった。

 また、技術書特有の難しい言い回しや、古い故の文字の欠落もネビルを大いに苦しめた。

 元々要領が良い方ではないネビルは、一冊読むのにも恐ろしい程の時間と、多大な労力を要した。

 だが、ネビルは諦めなかった。

 普段謙虚な彼は、自身が強くなる事に、誰よりも貪欲だった。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 本を読んでいたのは彼等だけではない。

 ジニー・ウィーズリーもまた本を、いや、日記を読んでいた。

 いや、それは正確ではない。

 正確には日記を読んでいたのではなく、眺めていた。

 日記には、何も書かれていなかったのだ。試しにインクを垂らしてみたが、ただインクが滲むだけで、かつての様に返事はない。

 本当に、ただの日記だ。

 なんの魔法的効力もない、ただの日記。

 だが、何かがジニーを惹きつけた。

 何も書かれていなくても、ジニーはいつまでも日記を眺めていられた。

 それが思い出の品だからか、彼の魂が僅かでも残っているのか、果たして全く別の何かなのか。兎角、ジニーはずっと日記を眺めていた。

 不思議な事に、日記を眺めている間は、心が落ち着いた。

 ハリーに対する激情に蓋をする事が出来た。

 ジニーはハリーが好きだった。異性としてか、友達としてか、家族としてか、それは分からなかったが、ハリーの事は憎からず思っていた。

 だが、それ以上にトムのことも好いていた。

 異性としても、友達としても、家族としても、好きだった。気を紛らわせてないと、ハリーへの憎しみが溢れてきてしまいそうだった。

 トムは常に“愛”や“絆”の大切さを説いていた。ジニーはその事を思い出し、必死に自分の心を抑えていた。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 セドリック・ディゴリーは極めて冷静だった。

 あの遺言とこの遺品。何かあるのは間違いない。そして、それは恐らく、ヴォルデモートに関する事だ。

 ならば、絶対に謎は解けるはず。そうセドリックは結論付けた。

 セドリックは最初、遺贈されたローブをくまなく研究した。

 その結果、ローブはマダム・マルキンが考案した織り方が使われている事が分かった。だが、それだけだった。どの様な効力があり、何の繊維でできているか、などは全く分からなかった。

 そこでセドリックは攻め方を変えた。

 トムの考えをトレースする事にした。

 彼は、解けない問題は出さない。つまり、ヒントはもう出揃っているはずなのだ。

 彼はどの様な形でヒントを出しているのか。

 彼が過去に出したテストを研究する事で、傾向を見出そうとした。

 残念ながら、まだ成果は出ていないが。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 遺贈された品物の事で、最も頭を悩ませているのはロン・ウィーズリーだろう。

 なにせ、ロンに遺贈された箒は飛ばないのだ。

 どんなにロンが『上がれ』と命じても、魔力を込めても、うんともすんとも言わない。しかも、うんともすんとも言わないのは箒だけではなかった。件の親友である、ハリー・ポッターもまた、沈黙を続けていた。

 いや、それどころか姿さえ見せなかった。

 あの後すぐに、ハリーはダンブルドアとグリンデルバルドに連れられて、何処かへ行ってしまった。

 あの場にいた全員、ハリーを問い詰めたかった。

 だが、それは許されなかった。

 そんな理不尽に、ロンの怒りは爆発寸前だった

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

「それで、報告してくれるかの、ハグリッド」

 

 校長室の中にはハグリッド、スネイプ、ダンブルドア、グリンデルバルド、ムーディー、ハリーがいた。

 

「へえ先生。禁じられた森の中にはだあーれも居りませんです。仲の良かったケンタウロスの連中も、手懐けておいたセストラルも、面倒みちょったヒッポグリフなんかも、みーんなです。それに、生徒たちが飼っとったフクロウもみーんな居なくなっちまいました」

 

「やはり、全ての動物達はミス・アイベリーの元へと行ってしもうたか……」

 

 そう、イギリス中のありとあらゆる生物が、あの夜を境に全て消えてしまったのだ。

 手紙を運んでくれるフクロウも、馬車を引いてくれる馬も、ホグワーツの生徒が飼っていたペットも、全て居なくなってしまった。

 唯一の例外は、ダンブルドアとグリンデルバルドの不死鳥だけだ。

 

「これでは警告も出来なんだ」

 

 ヴォルデモートの復活と、魔法省の陥落。

 あの時、ヴォルデモートはホグワーツから離れた後、魔法省へと赴いた。そこで『賢者の石』の力を使い、トムとダンブルドア、グリンデルバルドの3人が施した保護魔法を全て打ち破り、魔法省を乗っ取った。

 魔法省の職員の大半は殺され、生き残った者は闇の陣営に与した者達だ。

 当然、捕縛されていた『死喰い人』たちは解放された。だが、フクロウが居なくなってしまった今、警告する事は出来ない。肖像画も同様に機能しない。

 

「校長、アイベリーの事も結構ですが、そろそろ貴方の事も聞かせてもらいたいですな。吾輩達が命をかけて使命を成し遂げる中、貴方は一体何をしてらっしゃったのですかな?」

 

 スネイプの目の前には、割れたカップと巨大な蛇の頭が並んでいた。

 ハッフルパフのカップは騎士団が、ナギニはスネイプが、それぞれ命がけで破壊した物だ。

 

「ワシらは、ワシらは過去へ行っておったのじゃ」

 

 そう言って、ダンブルドアが取り出したのは『逆転時計』。それも、日単位ではなく、年単位の強力な物。彼等は過去へと行っていたのだ。

 そこで、長年決着のつかなかった事に、どちらがアリアナを殺したのか、という疑問に決着をつけたのだ。

 

「ワシらは長年話し合った。どちらが悪かったのか、どこで間違えたのか、ワシらが輝いていた若者から、萎びた老人になるまでの長い間、話し合ったおったのじゃ」

 

「それでは校長、貴方は議論に夢中で、ハリー・ポッターの危機に気がつかなかったと、そう仰るのですか!?」

 

 スネイプは激怒した。

 過去、自分が闇の帝王を裏切り、全てをダンブルドアに差し出す事で、闇の帝王からリリーを保護して貰おうとした。

 だが、それは失敗した。

 そして再び、その息子で同じ誤ちを繰り返そうとしている。それは許されざる事だ。

 

「その通りじゃ。ワシは信頼しておったのじゃ。トムがいる限り、ハリーに危害はないと、信じておったのじゃ」

 

「ですが、彼は死んでしまった!ポッターを守って!貴方と違い、命を賭して使命を成し遂げた、そうではありませんか?!」

 

「その通りじゃ。ワシらはそれを継がねばなるまい」

 

「いいえ校長、継いでいるのは貴方ではない!アイベリーです!」

 

「セブルス、お主……お主はミス・アイベリーの元へと下る気か?」

 

「校長、吾輩がそうするのではありません。貴方がそうさせたのです」

 

 そう言って、スネイプは校長室を出て行った。

 

「ダンブルドア、スネイプだけじゃない。我々の中からも脱落者が出始めている!手をこまねいていれば、我々は負けるぞ!」

 

「アラスター、分かっておる。次の手はもう打った。今は傍観の時じゃ。ワシが蒔いた種が、芽吹くその時を待つのじゃ」

 

「ふん、あちらの方は早々に花を咲かせたようだがな!」

 

 ムーディーが懐から日刊預言者新聞を取り出し、『バシンッ!』と机に叩きつけた。

 

『新たに魔法省大臣に就任したルシウス・マルフォイ氏は早速、学生達の為に尽力しているようだ。

 ホグワーツ魔法魔術学校理事でもある彼は、優秀な『闇の魔術に対する防衛術』の教師であったトム・マールヴォロ・リドル氏の殺害を重く受け止め、優秀な魔法省の役人であるドローレス・アンブリッジ女史を新たな『闇の魔術に対する防衛術』の教師に就任する事を提案した。

魔法省の役人や、ホグワーツ理事達はこれをすぐさま承認。

 この決定に対し、ルシウス氏は『アンブリッジ女史ならば、生徒達を任せるのに適任でしょうな。また、彼女の存在が抑止力となり、痛ましい事件を防ぐ事を私は確信しています』と心強いコメントを残した』

 

「『闇の帝王』は名実共に魔法界に君臨した!もう我々の喉元に手が掛かっている!幸い、フクロウ共がいなくなったおかげでこの新聞はそれほど出回っとらん。だが、そう長くは持つまい。アンブリッジの侵入を防ぐには今しかないぞ!」

 

「アラスター、今は傍観の時じゃ」

 

 ダンブルドアのエメラルド色の瞳と、ムーディーの狂った様に動く瞳がぶつかり合う事しばし、先に口を開いたのはムーディーだった。

 

「お前の事だ、何か考えがあるのだろう。今は大人しくしといてやる。だが、忘れるな、油断大敵!」

 

 ムーディーは足を引きずりながら、校長室を去っていった。

 

「さて、ハリー。君はどう思っておる?恐らく、君の友人達は君の事を良く思っとらんじゃろう。最悪と言っても良い。他にも、他の生徒には言わぬ様口止めをしておるが、リドル先生の死と君に何らかの関係がある事を皆が察しておる。君はこれから、辛い学校生活を送ることになるじゃろう」

 

「先生、僕は──」

 

 ハリーはゆっくりと口を開いた。


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