ハリー・ポッターと二人の『闇の帝王』   作:ドラ夫

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35 セシリア・ゴーントの異能

 マルフォイ家の巨大な屋敷の中にはいくつもの部屋がある。その中でも、特に大きな一室。そこでは明かりもつけずに、多くの人間が集まっていた。

 彼等はみな『死喰い人』と呼ばれる『闇の帝王』の僕達だ。だが、その中でただ一人、例外として杖作りの老人が招かれていた。

 

「それで、オリバンダー。あの者に俺様の杖をしっかり渡したのだな?」

 

「も、勿論です、闇の帝王様。イチイの木、不死鳥の尾羽、34cm。傲慢で気高い。しかと、お渡ししました」

 

「そうかそうか!して、あの者は何と?」

 

 ヴォルデモートはオリバンダーの言葉に非常に満足し、続きを促した。

 

「ひ、非常に満足しておりました。よく馴染むと、そう申しておりました。わ、私の目から見ても、これ以上ないほどよく馴染んでおいででした」

 

「よくやったオリバンダー。お前のおかげで、あの老いぼれはもう終わりだ」

 

 ヴォルデモートの声に同調して、周りの『死喰い人』達が愉快そうに笑った。

 ヴォルデモートは満足気に僕達を見回した後、机に拳を叩きつけながら怒鳴った。

 

「だが!あのトカゲ!奴をどうにかしなければならん!」

 

 この言葉に、先程まで愉快そうにしてい『死喰い人』達は一転して、怒りに震えた。純血の名家が多い『死喰い人』達は屋敷しもべ妖精を取られた者が多く、クロへの怒りを抱えている者が多い。

 

「お前達の中に、あのトカゲをどうにかする手立てを思いつく者はいるか?」

 

 『死喰い人』はみな、顔を背けた。

 

「俺様があの老いぼれを殺す素晴らしい方法を思いつく中、お前達はそれを眺めるだけで、何も考えていなかった訳だ」

 

 ヴォルデモートは椅子から立ち上がり、ゆっくりと『死喰い人』達の後ろを歩き始めた。

 

「失望した。告白しよう、俺様は大いに失望した。まさか、俺様の部下が獣に劣る頭脳しか持っていなかったとはな」

 

 ヴォルデモートが、時に肩に手を置きながら、『死喰い人』達の後ろを歩いて回る。

 

「これを見ろ」

 

 そう言ってヴォルデモートが取り出したのは、銀のナイフ。

 『死喰い人』達はそのナイフを知っていた。あれはベラトリックスがグリンゴッツに預けていたナイフであり、古の強い魔法がかけられていた物だ、と。

 

「偽物だ。偽物にすり替えられている。非常に精巧だが、俺様の目は誤魔化せない。グリンゴッツの中身がすり替えられ始めている」

 

 それを聞いた『死喰い人』の何人かが慌て始める。

 彼等の金庫には、莫大な財産が眠っている。

 自分達の財産を確かめねば、と慌てているのだ。

 

「もう遅い!お前達の金庫の差し替えは終わっている!俺様が老いぼれを殺す為に、僅かに目を離した隙に、お前達の目と鼻の先で、差し替えられた!」

 

 ヴォルデモートは激昂しながら、銀のナイフをワームテールの方に向かって投げた。

 恐ろしい速度で投げ出されたナイフは、ワームテールの耳を僅かに切り裂き、彼の背後にいたネズミに突き刺さった。

 

「そして、今度はスパイまで招き入れている始末だ!お前達は一体、どれだけ俺様を失望させる?」

 

 ヴォルデモートは大袈裟に肩をすくめながら、席に着いた。

 

「やはり、俺様にはお前しかいない」

 

 ヴォルデモートの目の前には水晶が置いてあった。さっきまでの態度とは一変し、愛おしそうに水晶を覗き込んだ。

 そこにはホグワーツの大広間が写っていた。今は丁度、組み分けが終わった頃の様だ。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

「さて、諸君に辛い知らせをせねばならん。悲しい事に、魔法薬学の先生であり、スリザリンの寮監じゃったスネイプ先生は一時この学校を離れねばならなくなった」

 

 悲しい事にって、スリザリン生以外誰も悲しがってないぞ。

 どれだけ嫌な先生だったんだ、そいつ。

 

「加えて、闇の魔術に対する防衛術の先生であり、グリフィンドールの寮監であったリドル先生が亡くなったという話は本当じゃ。実に、実に痛ましい事じゃ。みな、黙祷を」

 

 今度は大半の生徒が明らかに悲しがっている。

 黙祷の最中だからか、よりすすり泣く声が鮮明に聞こえる。中には本格的に号泣している者までいるな。さっきの教員と比べて、大した慕われ様だ。

 かくゆう私も、実はこのリドルという男を知っている。ダイアゴン横丁には奴の知り合いも多かったしな。そのお陰で、奴の事についてはそれなりに把握しているつもりだ。

 しかし、そうかあいつはグリフィンドールの寮監だったのか。ならば私も、グリフィンドールに入るべきだったのかもしれんな。

 

・・・?

 

 グリフィンドールに二人ほど、奴の死を悼んでいない奴がいるな。

 一人は確か……ハリー・ポッター。魔法界の英雄だったか。

 こいつは明らかに浮いている。寮監が死んだ事に周りの人間が泣いてる中、一人だけ何も考えていない。考えようとしていない。

 私は、こういう人間をよく知っている。触れられたくない過去を突き付けられた時、人間はああなる。

 ポッターはもう限界に近い所にいる。後少しでも突っつかれれば破滅を迎える、という所までな。

 周りの人間によっぽど知られたくない何かを隠しているのだろう。恐らく、リドルの奴に関係のある事だろうな。

 

 もう一人は、ユウ・サクマ。

 サクマはつい最近まで意識不明だった上に、東洋の出だ。リドルを知らないのは仕方がない。だが、あいつはこういった黙祷などはしっかりやるタイプの人間だと思っていた。だが、あいつは……

 

「みな、美しい黙祷じゃった。近くからワシらを見守ってくれておるリドル先生も喜んでくれた事じゃろう」

 

 ダンブルドアのこの言葉に、ついに何人かの女生徒達が過呼吸を起こして倒れてしまった。

 

「悲しい事は続くものじゃ。ヨル・バジリース、クロ・ライナ・アイベリー、ルーナ・ラブグッドの三名が事情により休学する事となった」

 

 今度はアイベリーとかいう奴が居なくなったことに男子生徒が落胆している。

 やはり、魔法使いといえど男子高校生は男子高校生か。というか、脱落者多すぎるだろ、ホグワーツ。

 

「じゃが、去る者だけではない。新しく来る者もおる。新しくスリザリンの寮監になる、ホラス・スラグホーン先生じゃ。担当教科は魔法薬学じゃ。みな、拍手を!」

 

 教員の見た目についてどうこう言う気はない。言う気はないが、この男は少し不安になる容貌をしている。

 スラグホーンと言えば、私と同じ『聖28一族』の1つだ。だというのに、この男は少しみすぼらしいというか、小物感がある。端的に言って、カリスマがない。

 今も生徒の拍手に、照れ笑いの様な顔を浮かべてヘラヘラしている。

 癖の強そうなスリザリンの寮監を勤められるのか、少し不安になるのも仕方がないというものだ。

 

「それから、グリフィンドールの寮監はマクゴナガル先生がなさる。そして、リドル先生に変わって今年から闇の魔術に対する防衛術を担当して下さるのはドローレス・アンブリッジ先生じゃ。みな、拍手を!」

 

 再三言うが、私は教員の見た目についてどうこう言う気はない。だが、こいつの服は流石に景観に合ってなさすぎるだろう。

 全身ショッキングピンクのコーディネートは、センスを疑うとかそういう次元じゃない。人間性を疑うレベルだ。文句の一つでも言いたくなる。

 ハッキリ言って、この城でなくともあまり褒められる物ではない服装だ。それをこの荘厳な城で着ているのだぞ?

 もし百味ビーンズにあのピンク色があったら、私は間違いなくそれを食べないだろう。

 しかもこいつの顔というか仕草というか体型というか、ガマガエルそっくりだ。ピンク色のガマガエルなんて、何という気色の悪さ。魔法界の恐ろしさを今理解したよ、私は。

 先代達がホグワーツに持ち込んで良いペットにガマガエルを入れたのは失敗だな。それがなければ、ガマガエル(アンブリッジ)の侵入を許す事もなかったのに。

 もしこいつの顔の形をしたカエルチョコレートがあったら、私は間違えなくそれを食べないだろう。

 とにかく、この城にもお菓子にも向かないな、こいつは。

 

「それと管理人のフィルチさんからの要請で、これが四百六十三回目となるそうじゃが、全生徒に伝えて欲しいとのことじゃ。授業と授業の間に廊下で魔法をあまり使わんで欲しいとのことじゃ。ある程度は良いが、危険な魔法は使わんでもらいたい。その他もろもろ、幾つかの禁止事例についてはフィルチさんの事務所のドアに張り出しておるそうじゃ。確かめておいて欲しい」

 

 フィルチ、というのはあのさっきからずっと泣いてるやつか。

 他の女生徒に負けず劣らず、リドルの名前を言いながら泣いている。正直、あまり見てて気持ちの良いものではない。痛ましいという事ではなく、気色悪いという意味で。

 というか四百六十三回目って、多すぎるだろ。オリンピックより歴史が深いぞ

 

「それでは──」

 

「ェヘン、ェヘン」

 

「宴を──」

 

「ェヘン、ェヘン!」

 

 どうやら、あの女は人間関係にも向いてないらしい 。

 空気を読まずに、ダンブルドアの言葉を遮った。生徒は勿論、教員連中も不快な顔をしている。

 

「何か仰りたい事があるのかの?アンブリッジ先生」

 

「あら、そう聞こえまして?わたくし、そういったつもりはなかったのですが、折角ですし、一言二言話させていただきますわね」

 

「俺、一言二言で済まない方に五ガリオン」

 

「なら、私は直ぐ終わる方に二十ガリオンかけるわね」

 

 私の右隣に隣に座っている、ジェームズ・プリンダーガストとその奥にいるソフィー・プルエットがそんな事を言っている。

 この短い間に、随分と多くの生徒達がアンブリッジの人柄を理解した様だ。もっとも、理解しない方がおかしいが。

 

「まずは校長先生、歓迎のお言葉恐れ入ります」

 

 こいつは声も不快だな。

 それに比べて、ガマガエルは美しい声をしている。つまりこいつは、ガマガエル以下だな。

 

「ェヘン、ェヘン──さて、ホグワーツに戻ってこられて、本当に嬉しいですわ!」

 

 その気色の悪い咳払いは、ダンブルドアの話を中断させるためにワザと不快にやってたんじゃないのか?

 本当にあの『ェヘン、ェヘン』という咳払いを普段からしているのか?

 

「そして、みなさんの幸せそうなかわいい顔がわたくしを見上げているのは素敵ですわ!」

 

 何ということだ、こいつは目も悪いらしい、ら

 

「みなさんとお知り合いになれるのを、とても楽しみにしております。きっとよいお友達になれますわよ!」

 

「ハハハハハハハハハハ!」

 

 全員が五歳児のような扱いされた事に呆れたり憤ってる中で、一人だけ死ぬほど楽しそうな奴がいた。

 

「何がそんなに可笑しいのです、ミスター・あー、誰です?」

 

「サクマです。サクマ・ユウです。アンブリッジ先生」

 

 ……あの馬鹿は何をしてるんだ?

 

「それで、ミスター・サクマ。何故そんなに笑っているのですか?わたくしのお話に、何か可笑しな事があって?」

 

 可笑しな所が何処かって?それはもう、何もかもだろう。

 

「何もかもです、アンブリッジ先生」

 

 だからって素直に言う奴がいるか。

 

「……点数を引きたい所ですが、未だ各寮に点数は一点もありません。なので、罰則を課します!これから一ヶ月、毎週金曜の夜にわたくしの部屋に来るように!」

 

「ですが、アンブリッジ先生。僕はピンク色のカーディガンを持ってません」

 

 サクマが心底申し訳なさそうに言った。

 

「ピンク色のカーディガンは必要ありません!」

 

「必要ない!?それでは何故アンブリッジ先生は“そんな”服装をしているのですか?魔術的な意味ではないのですか!?」

 

 サクマのその言葉に、アンブリッジの顔がピンクを通り越して真っ赤になった。

 しかしこいつ、ジョークのセンスが無いな。微妙に面白く無い。

 

「二ヶ月にします!」

 

 アンブリッジのその言葉に、サクマの奴は満足そうな顔をしている。あいつは一体、何を考えているんだ?

 まさか、アンブリッジが好きなのか?アンブリッジと二人きりになれて嬉しいのか?

 東洋人はみな幼い女が好きだと聞いていたが……

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

「それではみなさん、黒板は写し終わりましたね?では、実際に呪文を唱えてみましょう。ビューン ヒョイ、ですよ!」

 

 私は頭が良い。

 自惚れでも何でもなく、客観的な事実だ。

 その証拠に、他の人間はただ黒板を書き写しただけだろうが、私は全ての理論を暗記し、理解した。

 とどのつまり、浮遊呪文といっても、所詮は物体と杖とを魔力で繋げて操るだけだ。マリオネットの様な物、と言ったら分かりやすいか?

 繋ぐ魔力線が多ければより複雑な動きをさせる事が出来る。だが、今日行う浮かせるだけの呪文では、魔力線は一本でいい。実に簡単だ。

 人形を巧みに操るのは難しいが、紐でくくって吊るすだけなら簡単だろう?そんな感じだ。

 だが周りの生徒を見る限り、羽と杖とを繋げる魔力線が弱かったり、そもそも魔力線が羽にくっついていなかったりと、お粗末な物だ。

 隣に座っているジェームズ・プリンダーガストなんて、一つ前の席に座っているソフィー・プルエットの後頭部に魔力線をくっつけている。

 それに気づいていないのか、杖をブンブン振ってプリエットの頭をガクガク揺らしている。可哀想に、後少しで吐くぞ。

 まあ今日は記念すべき、初めての授業だ。

 どれ、私の力を見せつける意味でも、手本を見せてやろう!

 

「『ウィンガーディアム・レビオーサ 浮遊せよ』!」

 

「痛あああ!足が、足がぁ!何だ、何だよコレ!ちくしょう、マーリンの髭!」

 

「……少し、失敗してしまった様だな」

 

「少し?これが?君の羽、ファイアボルトも真っ青な速さで天井を突き破って行ったぜ?しかも、上の階にいた誰かに当たっちまったらしい。ほら、君が開けた穴から血が滴ってきてる」

 

「そう大袈裟にするな、プリンダーガスト。きっとかすり傷だ」

 

「大丈夫、ウォンウォン!?ああ、大変!骨が剥き出しになってる!」

 

「……どうやら、かすり傷じゃないみたいだね」

 

「……その様だな。だが、この学校の養護教諭は優秀と聞く。きっと直ぐに治るだろう」

 

「でも、死者は無理だと思うぜ?」

 

「当たったのは足だ。死にはしない」

 

「先生、ウォンウォンが息してないんです!」

 

「何故だ!当たったのは足だろう!?さっきそう言ってただろ!何故息が止まる!」

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

「それでは皆さん。今からこのマッチを針に変えてもらいます。と言っても、変身術は大変難しい分野です。皆さんの中から一人でも成功する者が出れば万々歳でしょう」

 

 確かに、変身呪文はかなり高度な分野だ。

 その上、イメージの強さが大きく関係するこの教科では費やしてきた年期とセンスが物を言う。

 魔法を覚えて一朝一夕の学生が成功させるのは難しいだろう。

 しかし、私は違う!

 変身術の理論は完璧に理解している。

 その上、孤児院で孤独だった私はずっと想像で遊んできた。

 そんな私に死角はない!

 先程の呪文学では少し失敗してしまったが、今度は上手くいくだろう。

 そもそも、呪文学でも別に失敗した訳ではない。一応、浮遊はしていた。少しばかり浮く速度が速すぎただけだ。

 隣の席でマッチではなく、一つ前の席に座っているソフィー・プルエットの髪の毛を針に変えてしまっているジェームズ・プリンダーガストとは違うのだ。

 それを今度こそ教えてやろう!

 

「『ムタレアクス 針に変われ』!」

 

「ッ!みんな逃げろ!セシリア、君もだ!」

 

「離せプリンダーガスト!自分で逃げれる!」

 

「意地を張ってる場合じゃないだろう!」

 

 そうこうしているうちに、私の針が爆発した。

 どうやら、変身した針に中途半端にマッチの性質が残ってしまった様だ。尻に火のついた針が四方八方に飛んで行っている。

 

「一応、針には変身しただろ?」

 

「ああ、見ればわかるよ。他の生徒の皮膚に深々と突き刺さってるあれは、間違いなく針だよ」

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

「やあ、ゴーント。元気かい?今日の授業では大分派手にやったらしいね」

 

「ふん!お前の方こそ、噂になっているぞ。初日で40点も得点したそうだな」

 

 夕食の時間、サクマが気さくに話しかけてきた。

 わざわざグリフィンドール生がスリザリンのテーブルまで来て話しかけてくるとはな。あまり、双方に良い印象を与えないだろうに。

 その証拠に、プリンダーガストはサクマを睨んでいるし、サクマの隣に引っ付いている女生徒は私を睨んでいる。

 だというのに、こいつは全く気にした素振りを見せない。

 

「まあ、偶然にね。それより、少し魔法を見せてくれよ」

 

「いいだろう」

 

 昼間、確かに私は失敗した。

 だが思うに、あれは強要された魔法だったからじゃないだろうか?

 どういう事かというと、魔法というのは精神状態が大きく関わっている。これをやれアレをやれと命令されて呪文を使うのは、私に向いていなかったのだろう。

 思えば、浮遊呪文も変身呪文も一応成功はしている。私に才能があるのは間違いない。

 あの時のあれは、不幸な事故というか、いわば改善されない現代教育論が直接的な被害をもたらしてしまった稀有な事例だ。そう考えると、私は加害者ではなく被害者だな。

 つまり何が言いたいかというと、私が私の意志で私のやりたい呪文を使う今、失敗はありえない、という事だ!

 

「兎の眼、ハープの音色、この水をラム酒に変えよ!」

 

 ゴブレットの中の水がみるみるとラム酒に変わっていく。

 よし、成功だ!

 

「みんな、下がって!」

 

 ラム酒が勢いよく増えて、等身大のドラゴンになっていなければ。

 

「『インセンディオ 燃えよ!』」

 

 私のラム酒をサクマが火で蒸発させた。

 

「流石サクマ!」

 

 サクマに引っ付いてきた女子生徒がウットリした顔でサクマを見つめる。だが、当のサクマは、

 

「まだ終わってない」

 

 まだ真剣な顔だ。

 蒸発したラム酒の霧が集まって行き、巨大なヘビになった。

 そのままサクマに向かって牙を繰り出す。

 

「おっと!『プロテゴ 盾よ』!」

 

 サクマが盾呪文で球体を作りって、霧のヘビを閉じ込めた。そのまま盾は凝縮していき、霧のヘビはどんどん小さくなっていく。

 やがて、盾呪文はゴブレットの形になった。霧のヘビは圧縮されたおかげで、液体に戻った。

 

「まあ、これで一応、ラム酒として飲める様になった訳だ」

 

 今回も成功、と言えなくは無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのラム酒は、明らかに僕を狙っていた。

やはり彼女は──


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