自分では出来るだけ矛盾がないようにしているつもりなのですが……
もし何かございましたら、ご指摘下さい
『秘密の部屋』に入ると1匹の巨大な蛇がいた。
「やあ」
『お前はトム・リドル…… 何故再びここにいる』
今はジニーの体に乗り移って来てるんだけど、僕を見て一瞬で正体を見破ったみたいだ。野生の勘という奴だろうか。
いや、彼はサラザール・スリザリンのペット?だから野生ではないか。兎に角、今は誤解を解かなくてはならない。
「昔来た『僕』と僕は違うんだよ、今は見ての通りに魂だけの存在さ」
『それで、私に何の用だ。また人殺しか?』
「そんなつまらないこと蛇の王にはさせないよ、『僕』と違ってね」
『では何の用だ闇の帝王よ』
「僕に力を貸して欲しいんだよ」
『ふん、どうせ私はスリザリンとの『破れぬ誓い』のせいで後継者には従わざるを得ない』
「そうなのかい?でも僕は君の嫌がる事を強要する気はないよ。嘘かどうかはこれから見ていけばいい」
『その言葉が本当かどうかは私にはどうでもよいことだ、我が主人よ。それで私は何をすればいい』
「我が主人なんて呼ばなくていいのに。とりあえず今日のところは『変身呪文』かけるから、ヘビ皮の栞になってくれる?僕がこの子の体を借りてられるのも後少しの間なんだ」
『よかろう、栞にでも財布にでもするがよい。我が主人よ』
「やれやれ、君も中々に強情だね」
◇◇◇◇◇
「トム、この栞はなに?」
バジリスクを栞に変えた物を
『それはあるひとがつくった特別な栞です、ジニー。貴方が本当に困ったときに力になってくれます』
「そうなの?まあでも、トムがそういうならそうなのね」
『ええ、ですから常に僕に挟んでおいて下さい』
ジニーはいぶかんしていでいたが、結局は僕への信頼が勝ったみたいだ。素直に僕の言う通り、栞を本に挟んで置いてくれた。
◇◇◇◇◇
『して、我が主人よ用とは何なのだ。まさか本当に本をどこまで読んだかわかるようにするために私を呼んだのではあるまいな』
「違うよ、蛇の王。うーん、いちいちこれでは呼びづらいな、何か名前はないのかい?バジリスク以外で」
『その昔にスリザリンがつけてくれたが、とうに忘れた。誰にも呼ばれなかったのでな』
「へえ、なら昔の『僕』はなんて呼んでいたんだい?」
『ただバジリスクと呼んだ』
「そうか…… なら、僕が新しい名前を君につけてもいいかい?」
『私はもう我が主人のものだ。好きにするがいい』
「そうだね、『ヨル』なんてどうだい?由来はヨルムンガンドからとったのと、僕は『
『……では私は今日よりヨルと名乗ろう』
「じゃあヨル、早速だけど頼みを聞いてくれ」
『なんなりと、我が主人よ』
「僕の魂と君の魂、半分ずつ交換して欲しいんだ」
ヴォルデモートのホークラックスの1つであるナギニは2つの魂を体に有しながら、自我を失わずに、高い知性としっかりとした個を持っていた。
しかも瀕死の状態にあったヴォルデモートはナギニから定期的に魂を貰っていたようだった。つまり、ナギニは魂をヴォルデモートに渡してもある程度の時間が経過すると魂が回復しているということだ。
ならばナギニよりも強力で、高い知能を持つ蛇の王、バジリスクならばもっと魂を供給してくれるのではないだろうか?
しかし、ヨルを僕のホークラックスにするには殺人をしなければならないので、それはできない。
だから僕はお互いの魂を交換するというギリギリのラインをついた。分霊させるのではなく、降霊させる。
やってみると実際ヨルの魂は大きく、僕とヨルは一心同体となることで1日に1時間程度なら僕は実体化できるほど力を得た。
『……我が主人よ、非礼を詫びよう。貴方は本当にかつての『闇の帝王』とは違うのだな」
「おや、信じていなかったのかい?」
僕と魂を共有したことで、僕と『僕』が違う存在だということに気がついたみたいだ。同時に、僕の中にもヨルの思想がある程度流れ込んでくる。
『かの者は人の心に取り入るのが得意であった。警戒するのは当然だ』
「それもそうか。でも分かったと思うけど『僕』と僕は非常によく似た他人だよ」
『うむ、そのようだ。して我が主人よ、これよりどうするのだ。いつまでも魂のままというわけにはいくまい』
ヨルが中々鋭い指摘をした。
いつまでもジニーの体を使って活動していたのでは色々と限界があるし、ヨルにしたって体がバカでかいからそこまで自由には動けない。
しかし、僕の体を実体化するより前にやらなくてはならないことがある。
「そうだね、とりあえず僕の杖を作らなければならないかな」
杖がなければ、実体化したところで何も出来ない。
『杖を買うのではなく作るのか…… かつてのスリザリン達もそうしていた』
「そうなのかい?まあ確かに、昔は杖を売る店なんてなかったかもね」
『スリザリンは私の羽と暴れ柳の枝で杖を作っていた。そのときの暴れ柳はもうないが…… あの暴れ柳は野生だった。スネイプにしっかりと栄養管理されている校庭の暴れ柳の方がいきがいい。加えて私もあの頃より強くなっている。さらに私と魂でつながっている我が主人ならば、より強力なものができよう』
「暴れ柳もバジリスクもこの世界に10もない貴重な物だし、どちらも、特にバジリスクの羽はとるのも命がけだからこの世に2つとない杖ができるだろうね」
『それだけではない。忠誠を誓い、魂を共有している私の羽を芯に使うのであれば、何があろうとも杖が我が主人以外に忠誠を誓うことはない』
「僕のための一点物か。なんかいいね、こういうの。僕とヨルの友情の証みたいだ」
僕達は早速暴れ柳の枝を失敬しに行った。蛇の王バジリスクの前では流石の暴れ柳も大人しく、僕が開心術で枝を一本貰えるか聞いみたところ、返事はなかったけど、素直に一本の枝を差し出してきた。
その後、『必要の部屋』で杖作りに必要な物がそろった部屋を用意して、僕の知識とヨルの記憶を頼りに杖を作った。もっとも、1日に1時間しか作業出来ないから半月ほどかかったけどね。
32cm、右利き用、芯にはバジリスクの羽、本体は暴れ柳の枝、気高く力強い。
僕のために作られた、僕のための杖。できてから初めて振ってみると、周りにあった物が全て石化した後に石から黄金となった。
その後にヨルと一緒に、何となく暴れ柳のところに行って2人で感謝の言葉と共に、スネイプ教授から失敬した高級な肥料を送っておいた。枝をブルンブルン降っていたから、多分喜んでくれたんだと思う。
◇◇◇◇◇
「ヨル、悪いけど今からネコを襲ってもらいたい」
『今度は私をネコ退治に使うのか、我が主人よ。勿論構わないとも』
僕の計画の第一歩を頼むと、ヨルは快く答えてくれた。蛇の王にこんな雑用みたいなことにさせて良いのか、と思ってたけど彼は気にしないみたいだ。
「使う、なんて言い方よしてくれ。僕と君は友人だ」
『何度も言うが、スリザリンの後継者に忠誠を尽くさなければ『破れぬ誓い』によって私は死ぬのだよ。私に死ねというのか』
「わかってはいるんだけどね、性分なんだよ。許してくれ」
『許すも何もない、私に命令すればよいのだ。それで襲うのはどのネコだ』
「それでも僕は命令じゃなくて、お願いという立場をとるよ。狙うのはミセス・ノリスという名前のネコだよ」
『我が主人は中々に強情だな。だがよかろう、そのミセス・ノリスとかいうネコの亡骸を我が主人に献上しよう』
「いやいや、殺さないでくれ。石化にとどめておいて欲しいんだ。今から水のベールで君の目を包む、その上から見れば死なずに石化するから」
『把握した、では行ってくる。栞から元に戻してくれ』
「わかった『フィニート 終われ』、それと『網膜水の呪い』、それから『プロテゴ・ホリビリス 恐ろしきものから守れ』、最後に『ポータス ポートキー作成』。これで君の目を見ても石化で止まるし、万が一誰かに見つかって攻撃されても盾の呪文が君を守ってくれる。危なくなったらポートキーで戻っておいで、ポートキーならホグワーツでも使えるからね」
『……我が主人よ、少しばかり過保護すぎだ。私はその辺のがらがら蛇ではないのだぞ』
「なに、僕もやることがあってね。何かきみに起きてもすぐに手助けできないからさ」
『ほう、では帰ったらお互いの成果の発表と行こう。と言っても私がやるのはネコの退治だがね』
「僕もそんなに変わらないさ。今から少しばかり厨房に行くだけだよ」
◇◇◇◇◇
「やあ、働いてるかい?」
「はい、精一杯努めさせていただいてます。本日はどのようなご用件でしょうか、なんなりとお申し付け下さい」
「今日はちょっと君たちに教わりたいことがあってきたんだよ」
「私どもの知識でよいならいくらでも」
「ありがとう、君の名前は?」
「おお!感謝など私めにはもったいない!私の名前はサーラでございます。御坊ちゃま」
「それじゃあサーラ、君達の使う杖なしでの魔法を僕に教えてくれないかな?」
◇◇◇◇◇
『待っていだぞ、我が主人よ』
「ただいまヨル。今日のことを話す前に『変身呪文』かけちゃうね」
『むう、この栞姿には何度なっても慣れぬものだ…… それはそうと我が主人よ、ネコはしっかりと石にしておいたぞ』
「ありがとう、ヨル。今かけておいた呪文をとくね『フィニート・インターカーテム 呪文よ終われ』。ふぅ、流石に3つかけた呪文を一回で消すのは疲れるね」
『それで我が主人よ、成果のほどはあったのか』
「予想以上にね、これで全て上手くいくよ」
『それはなによりだ。早く我が主人には肉体を持ってもらいたいものだ』
「苦労をかけるね」
『……我が主人よ、何度も言うが私に礼を言う必要はないのだぞ』
「性分なんだよ」
『やれやれ、相変わらず我が主人は頑固な方だ』
◇◇◇◇◇
「ねえトム、貴方ミセス・ノリスが石になったことについてなにが知ってる?『秘密の部屋』ってなんなの?」
『どうやら昔にも同じ様なことがあった様ですよ』
「本当?その時はどうなったの」
『死人が1名出ましたが、犯人はアズカバン送りになった様ですね』
「そうなの… 犯人は誰で、どうやって『秘密の部屋』を開いたのかしら」
『それについては私にはなんとも言えませんね、私は所詮与えられた知識、基本的にはホグワーツの本の内容しか知りませんので』
「時々忘れそうになるけど、あなた生きてないのよね……」
『そうですよ、ジニー。私はあくまで『カンニングノート』です』
「それじゃあ早速だけど『魔法薬学』と『変身呪文』と『闇の魔術に対する防衛術』のレポート手伝ってくれる?カンニングノートさん」
『構いませんよ、ジニー。レポートで大切なのは内容もですが先生の性格を把握するのが何より大事なことです。レポートを提出させるということは、先生方は生徒に求める事があるというとです。そして大きく分けてそれは2つあり、1つはその箇所が非常に大事な場合。もう1つはその箇所は教科書では不十分であり、本や参考書で調べて欲しいという場合です。
まず『変身呪文』の先生であるマクゴナガル教授は非常に有能であり、ベテランです。それ故に授業の形態がほぼ確立されているため、1年やそこらで大きく変わることはありません。なのでこの時期に過去の、特にレイブンクローの先輩方が借りていた本を参考にするとよいでしょう。
次に『魔法薬学』のスネイプ教授は間違いなく過去のレポートと範囲が被ってくる箇所を選ばないでしょう。ですがこっそりとスリザリン生には有用な本や参考書を教えているはずです。最近のスリザリン生が借りている本を探しましょう。
最後に『闇の魔術に対する防衛術』のロックハート教授は闇の魔術についてよりも彼について書いた方がいいでしょう。なので彼の本のみを参考にしましょう』
「ありがとう、トム」
『構いませんよ、ジニー。代わりと言ってはなんですが、よろしければ1つお願いを聞いていただけませんか?』
「いつもお世話になってるもの、私にできることなら何でも言ってちょうだい」
『私の存在する目的は知識を生徒に教えることです。ゆえにもっと知識を溜め込みたいのです。ロックハート教授に頼んで禁書の棚の閲覧許可をもらえませんか?』
「それはいいけど、どの本がいいの?」
「『吸魂鬼』についてです」
◇◇◇◇◇
それから、僕は『吸魂鬼』についての研究をし、ヨルは原作通りに生徒達を石にしていった。違う点といえば、僕がジニーを操っていないため、ジニーは体調を崩したり、自分の行動がわからなくなり悩む、という事がなかったことくらいだ。
一度ハリーに拾われた時は、過去のハグリッドの映像を見せたが、僕が『トム・リドルの日記』であることは明かさなかった。あくまで、『とある生徒が作ったカンニングノート』とした。その後は自分でジニーの元に帰った。
そして今、僕の計画は最終段階へと進んでいた。
『妖精式武装解除』と『妖精式浮遊呪文』それと『妖精式姿くらまし』を覚えた僕はホグワーツ内でも好きに『姿くらまし』することができるし、魔法を使っても『妖精呪文』なら『臭い』や『直前呪文』をはじめとしたあらゆる検査魔法に引っかからない。
そうして僕は、フラメル邸へと侵入して、そこでゴブレット2つ分『命の水』を失敬した。『賢者の石』ならともかく、これ位の盗みなら気がつかれる事はない。
◇◇◇◇◇
「始めるよ、ヨル、覚悟は決まった?」
『いつでもよいぞ、我が主人』
「危険だと判断したら噛み砕いて破壊してくれ」
今僕たちがいるのは『必要の部屋』、その中でも隠したいものを隠す部屋だ。目の前にあるのはヴォルデモートのホークラックスの1つ、レイブンクローの髪飾り。
今から行うのは至難の技、ホークラックスを破壊するのではなく、僕の中に取り組む。
「『エクスペクト・ディメンタス 吸魂鬼よ来れ』!」
これが僕が開発したオリジナル呪文。辛い思い出を糧とし、『吸魂鬼』の技である『吸魂鬼のキス』を擬似的に行う、魂吸引の魔法。
「「「「キャアアアアアアアァォァァアアアアア!!!!!」」」」
髪飾りがこの世のものとは思えない色んな女性の声を上げながら、あらゆる呪文を放ってくる!
「ヨル!」
『任せよ、我が主人』
飛んでくる呪文をヨルが間に割って入ることで妨害する。バジリスクの鱗はあらゆる呪文を通さない。
魂を吸い込んでいくと少しずつ声が小さくなっていき、やがて消えた。
「意外とあっけなかったね」
『我が主人の常識外の魔法があればこそだ、誇るがよい』
「ヨルの鱗も大したものだよ、回復呪文をかけるまでもなさそうだね」
『あれだけ直前に保護呪文をかけていれば無傷なのも当然だ』
「何にせよ、これで僕の実体化はほぼ完了だ」
『後はあの小娘を『秘密の部屋』に招待すれば終わりか』
◇◇◇◇◇
「ジニー!」
「やあ、ハリー」
「君は『カンニングノート』の中で見たトム・リドル?助けてくれ!ジニーが死にそうなんだ」
「へえ」
「早くしないとバジリスクが来る、トム!……トム? 僕の杖を返してくれないか?」
「バジリスクは来ないよ、僕の命令がない限りはね」
「トム、まさか君が」
「『秘密の部屋』を開いたのは僕だよ。今も昔も、ね」
「何でそんなことを…」
「昔はただ単に興味本位で、かな。そして今は君だよ、ハリー・ポッター。幼い君がいかにして『闇の帝王』を打ち破ったのか興味がある」
「君はヴォルデモートよりも古い人間だろ?なんでそんなこと──」
「ああ、そのことなら今から僕が説明するよ。簡単なことさ」
僕は杖を一振りして空中に文字をつくり出す。
Tom Marvolo Riddle
そしてさっともう一振りして文字を並び替える。
I am Lord Voldemort
「生き残りの男の子と闇の帝王、どちらが優秀な学生か比べようじゃないか」
◇◇◇◇◇
その後はまあ原作通りに進んだ。違う点といえばバジリスクのヨルは一見死んだように見えるが、僕が擬似的なホークラックスの役割を果たしているために本当の意味では死んでいない点だ。
飽くまで擬似的なホークラックスだから、この後とある処置を施さないと死んじゃうんだけど。
「バカな…バジリスクがやられるなんて……」
僕が呆然とした顔をしていると、ハリーはハッと思いついたかのようにジニーの隣に落ちている
そして僕は思いっきり苦しむ演技をしながら『妖精式姿くらまし』でヨルと一緒に消えた。
残るのは『ヴォルデモートのホークラックスの残骸』であるレイブンクローの髪飾りと、成長したハリー、バジリスクの毒を吸収したゴドリックグリフィンドールの剣。
この件でダンブルドアはホークラックスの存在を確信し、それを破壊する武器を手に入れ、ハリーはヴォルデモートの存在を深く意識する。
ジニーは僕があらかじめ用意しておいた『命の水』で魂を回復させておいたので一切の害はない。そしてこの一連事件の裏に僕がいたことは知らない。これからも『トム・リドルの日記』を大事にするだろう。
『妖精式姿現し』でジニーの部屋に戻った僕はもう1つの『命の水』をヨルに飲ませた。しっかり回復させた後で、僕達はそれぞれ日記と栞に戻った。
というわけでオリ主の実体化が安定してきました
そして恒例イベントの杖とペットの選別もできましたね!
他の作品と違うところといえばオリバンダーの店に行ってないことやダイアゴン横丁で購入してないこと位ですね、些細なことです
レイブンクローの髪飾りにかけられていた防御魔法は完全にオリジナルです。書籍版ではクラップかゴイルに焼かれていて、映画だとハリーに簡単に壊されてますね
本当は『血統クラブ』でジニー(憑依状態)VSセドリックやジニーがハリーとロックハートの2人をすきになり、悩みを打ち明けるなどの話を入れたかったです。もしかしたら次回はジニー視点でもう一度『秘密の部屋』かもしれません