ハリー・ポッターと二人の『闇の帝王』   作:ドラ夫

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08 最強の個体

【必要の部屋】

「やっと全ての準備が整った。かれこれ1年と半年だよ」

 

『むう、やるなら早くしよう、我が主人よ。私はあまり“それ”は好かん』

 

「おいおい、これから長い付き合いになるんだ、ケンカはよしてくれ。それより、これから2週間、僕は全くの無防備だ。ないとは思うけど、侵入者が来たら全て石にしてくれ」

 

『承知した、我が主人よ。命にかけて貴方を守ろう』

 

「それと、僕が魔法の制御をしくじったら、すぐさま僕を石にしてくれ。でなければ最悪、死ぬことになる。キミも僕も」

 

『・・・我が主人がそこまでする価値が“それ”にあるのか』

 

「これは譲れないよ。僕が僕になったときから決めてたことなんだ」

 

『決心はかたいか… ならば私は私の役目を果たすとしよう』

 

「僕のワガママのためにありがとう、ヨル。それじゃあ僕の魂9ヨルの魂1にするよ」

 

『うむ』

 

「それじゃあ…行くよ!『妖精王の豪炎』よ、その力を示せ!」

 

 オリジナル魔法『妖精王の豪炎』は『悪霊の火』より強力だがより扱いの難しい魔法。『悪霊の火』は生者を憎む。その憎しみに心が囚われないように耐えることで操ることができる。

 一方『妖精王の豪炎』はイタズラをしたくなる欲に耐える。加えて『楽しい気持ち』を保ち続けなければならない

 これから2週間の間僕は“これ”に『妖精王の豪炎』をぶつけ続けなければならない。そのために僕の周りには僕が錬金した劣化版『命の水』や『吸魂呪文』で少しずつもらった魂が入った小瓶などの魂回復用マジックアイテム、それと2週間後に必要となる酒と血が所狭しと並んでいる。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

「はあ、はあ……さ、流石にちょっと疲れたね」

 

『我が主人よ、2週間経ったぞ』

 

「ほ、本当かい?困ったな、もう魂回復用マジックアイテムはないんだけど……」

 

『……やはり理論が違ったのではないか』

 

「そんなはずはない……と言いたいんだけど、流石に不安になってきたね」

 

『その魔法をそれ以上続ければ死ぬぞ、我が主人よ』

 

「そうなんだけどね、1年半かかったんだ。 僕は諦めきれないんだよ」

 

『・・・1000年だ』

 

「え?」

 

『私はもう1000年以上貴方を待ったのだぞ。1年半位なんだというのだ』

 

「ヨル・・・ そうだね、僕がどうかしてたよ。命あっての──」

 

ピシッ

 

「ッ!?きた!きたよ、ヨル!やっぱり僕は間違ってなかった!」

 

『流石だな、我が主人よ。さて、ヒビが大きくなってきたな ……でてくるぞ、気をつけろ我が主人』

 

「もし敵対したなら、間違いなく今までで最強の敵だ。万が一があったら僕が時間を稼ぐ。その間に僕ごと石にするんだ、いいね?」

 

ピシッ…ピシピシピシッ……パリンッ!

 

 “それ”が完全に壊れる。否!壊れたのではない、割れたのだ!本体が出てくるために!

 

「…ウクライナ・アイアンベリー種」

 

 その正体はドラゴン!

 

 それもドラゴンの中でも最も巨大な種族である『ウクライナ・アイアンベリー種』しかも雄より強い雌である。その強さのほどは、目が見えない弱った状態でさえ、グリンゴッツの最深部を守れるほどだ。

 さらにこの個体は孵化のための火に現存する火の中で最も強力な『妖精王の豪炎』を用いた、紛れもなくこの地球上最強のドラゴンなのだ!

 

「とりあえず僕は『開心術』での対話を試みるから、ヨルは手筈通りにエサの用意をして」

 

『心得た』

 

『やあ、お誕生日おめでとう』

 

『・・・』

 

『あー、僕は今君を孵化させた人間なんだけど、卵の中にいた時の記憶とかあるかな?』

 

『・・・』

 

『その、とりあえず『エデンの白葡萄のブランデー』と『金の鶏の血』を用意したんだけど… ドラゴンは孵化したての時ブランデーと鶏の血を飲むって聞いたから』

 

『・・・』

 

『いや、あの、嫌ならいいんだけど』

 

『…む…わよ』

 

『え?』

 

『だから、飲むって言ってんのよ!』

 

『飲んでくれるかい!?よかったあ、何か間違えたかと思ったよ』

 

『・・・ありがと』

 

『え?何か言ったかい?』

 

『何にも言ってないわよ! ……あ、これ美味しい』

 

『それはよかった!孵化した直後に飲むものがその後の成長に大きく関わるって聞いたから、この世で最高級の物を用意したよ。お口に合ったようでなによりだ』

 

『・・・これ、手に入れるのに苦労したんじゃないの?』

 

『正直言うと少しね、でも君のためなら苦じゃないさ』

 

『そ、そうなの。ふーん、まあ、悪い気はしないわね』

 

『あ、そうそう。僕の友達を紹介するよ、『蛇の王』バジリスクのヨルだ』

 

『バジリスク!? あんた、なんで死なないの?』

 

『僕はシャイでね、人の目を見てお話ししないからさ』

 

『……あんた、冗談の才能ないわよ』

 

『そうかい?とにかく、ヨルは『開心術』がまだ使えないから会話するのはもう少し先になるね』

 

『“まだ”?バジリスクって魔法は使えないんじゃないの?』

 

『ヨルはただのバジリスクじゃないんだよ。言うより見た方が早いね』

 

「悪いんだけどヨル、人間になってくれるかい?」

 

『どんな会話の流れでそうなったのかはわからないが、お安い御用だ、我が主人よ』

 

 そう、ヨルは世界で唯一の蛇の『動物もどき』なのだ。

 

「ふむ、やはり人間の身体は慣れないな。足での移動はなんとも不便だ!」

 

「ありがとうヨル、ちょっと紹介したかっただけだからもう元の姿に戻ってくれていいよ」

 

『我が主人には悪いが、やはり私は人間より蛇の方が合っているよ』

 

『さ、これでわかった?ヨルは世にも珍しい人間に変身する『動物もどき』なんだよ』

 

『・・・』

 

『おーい?』

 

『……あなた、何者?』

 

『僕かい?そうだな……『闇の帝王』にして、『蛇の王の友達』そして今日から、『最強のドラゴンの友達』さ』

 

『ふん!そうやって丸め込もうったってそうはいかないわよ!』

 

『え、そんなつもりじゃないんだけどな、困ったな……』

 

『あ、ちょっと!そんな悲しい顔するんじゃないわよ……』

 

『そんな顔してたかい?それはごめんよ』

 

『あー……もう!友達でいいわよ!今日から私達友達ね、これでいいんでしょ!』

 

『本当かい!?今日はいい日だ!そうと決まればブランデーで乾杯しよう!さ、ヨルと──あー、しまったな。君の名前を考えてなかった』

 

『あきれた…… こんなに準備しておいてそんなことも忘れてたの?』

 

『ごめんごめん、それじゃあ、クロなんてどうだい?(ヤミ)(ヨル)(クロ)で3人揃って仲間だ!』

 

『クロ……クロかあ。お揃いかぁ、フフ。それでいいわ!私は今日からクロね!もう決まりよ』

 

『それじゃあグラス──は持てないからこの平皿になっちゃうけど。よし、3人、いや1人と2匹?ドラゴンてなんて数えるんだ? ま、まあいいや。1人と1匹と1頭の出会いを祝して、乾杯!』

 

「『乾杯!』」

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

「トム、このブックカバーはなに?」

 

『これはドラゴンの皮でできたブックカバーです。この本の持ち主以外がその本を読めなくしてくれます』

 

「へえ、便利ね」

 

『ええ、ですのでジニー。このブックカバーを常に僕に付けていてください』

 

「わかったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あの小娘はなんなのよ!』

 

『うーん、難しいな。僕にとってはなくてはならない人かな』

 

『なっ!?』

 

『実は僕は誰かに魂を分けて貰わなくては生きていけない体なんだよ。だからジニー、さっきの娘ね。それからヨルに少しずつ魂を貰ってるのさ』

 

『・・・あげるわよ』

 

『え?』

 

『だから、私も魂を分けてあげるわよ!嬉しいでしょ!』

 

『本当かい?勿論嬉しいよ!ありがとうクロ』

 

『ふん!それから、『動物もどき』にもして貰えないかしら?』

 

『いいけど、少し時間がかかるよ』

 

『かまわないわ。でも、なるべく早くしてよね』

 

『僕にとっては勿論嬉しい事だけど、ドラゴンって誇りある種族だろ?いいのかい、人間になって』

 

『別に永遠に人間になるわけじゃないんでしょ?』

 

『まあね。でもドラゴンはずっとドラゴンでいたいのかと思ったよ』

 

『・・・だって、貴方は人間じゃない』

 

『え?』

 

『………なんでもないわよ、バカ』

 

『まあ、なんにせよ、『動物もどき』になるのはいいことだ。ヨルとも会話できるようになるしね!いや、僕と魂で繋がればドラゴンのままでもパーセルマウスになれるのか?』

 

『・・・ねえ、お腹空いた』

 

『む、もう30分たったか。一旦必要の部屋に行こうか』

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 それから二ヶ月ほどたち、クロは僕と魂で繋がった後、『動物もどき』となった。

 今はクロとヨルの2人で必要の部屋にて親睦を深めてもらってる。この後2人、いや、1匹と1頭には一緒にやって貰わなければならないことがあるからね。仲良くなってもらわないと。

 一方僕はというと『妖精王の豪炎』を使った際に受けたダメージが回復しきっていなかった。あの魔法は魔力と『特別な意識』両方を使うから、尋常じゃなく疲れるんだ。

 だから今は魂回復のために日記の状態でなければならない。その間に日記の状態の方がやりやすい事をしておこうと思う。

 

 まずは『忍びの地図』の強化版を作った。僕の日記の一部に書き込まれたそれは『忍びの地図』に『臭い』を混ぜたもので、その気になれば誰がどの魔法を使ったかを調べられる。

 それと誰が、どの呪文か、を設定すると、特定の人物の1日を記録できるし、設定された呪文が使われれば使用者が登録される。

 

 それともう1つは、コリン・クリービー、ジャスティン・フィンチ=フレッチリー、ペネロピー・クリアウォーター。つまり僕の指示で石化させた人の勉強を陰ながらサポートした。

 あの一件で勉強が遅れてしまったのは完全に僕に責任がある。その辺はキッチリとしなければならない。

 それからペティグリューが今どこで何をしているのかをシリウスと相談し合った。

 ダンブルドア校長はヴォルデモートのためにハリーを狙ってるとおっしゃってるらしいけど、ペティグリュー視点では僕、つまりヴォルデモートは復活してると思ってるし、命を狙われてるとも思ってるはずだ。

 僕の許しを得るためにハリーを狙ってる可能性もあるけど、シリウスとルーピン先生、ダンブルドア校長が目を光らせる中に飛び込んでくる勇気が彼にあるのだろうか。

 

 シリウスはあの臆病者のことだから、ただ逃げてるだけだと言っていた。しかし、僕はどうにも嫌な予感がしていた。あいつは運の良さと、強い人間の側につく才能はピカイチなのだ。

 しかしこちらから奴を見つけ出すのは中々難しい。というよりこの世界から1匹のネズミを見つけ出すなど不可能に近い。

 結局僕が日記の状態でできる事はそう多くはなかった。今は回復に専念するときだろう

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

「トム、教えて欲しい呪文があるの」

 

『おや、久々に呪文の相談ですか。勿論構いませんよ。それが私の存在意義なのですから。それで何の呪文ですか?

 

「吸魂鬼を退治する魔法よ!ハリーの役にたてるチャンスなの。一年生の頃、禁書の棚から吸魂鬼についての本借りてきてたわよね?」

 

『よく覚えていましたね、ジニー。確かに私は吸魂鬼についての本を貴方に借りてきてもらいましたし、対処する呪文も知っています。でも、難しいですよ?』

 

「愚問ね、トム。私はもうちょっと難しい程度じゃ諦めないのよ。本当は1人で習得したかったくらいなんだから!でも我慢するわ。ハリーのクィディッチの試合が近いのよ」

 

『そういうことでしたか。ならば早く練習に取り掛かりましょう。まずイメージするのは──』


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