アイドルマスターxGE「神を喰らいしアイドル」 作:HiRO12
最近このあたりに書くことが減ってきましたね、無理やり書かなくてもいいかなーと思いつつ書かないと寂しいかなーと思いつつ、何か浮かんだら書く方向で行こうかと
第十一話前篇「ヨハネス・フォン・シックザール」
春香と千早はツバキに言われたように支部長室の前にいた。思いもつかない緊張感が千早にのしかかる。対して春香はいつもどおりにしている。
軽く衣服を整え直し、春香が千早を見る。それに千早がアイコンタクトと頷きで示すと、春香は支部長室の部屋をノックする。
「天海春香と如月千早。雨宮ツバキ教官の指示により、来ました」
「入りたまえ」
中からは壮年な男性の声が聞こえる。その声に春香はノブに手をかけ、扉を開く。
中に居たのは少しウェーブかかったヘアスタイルに金色の髪が目を引く壮年の男性。そしてその隣には見慣れたサカキ博士がいて二人に向かって手を振っている。
それに会釈で返すと、金髪の男性が話し始める。
「改めて自己紹介させてもらうよ。私はヨハネス・フォン・シックザール。このフェンリル極東支部の支部長を努めさせてもらっている。君たちのことはペイラー。おっと、サカキ博士から報告は受けている。この極東支部に着任早々、目覚ましい進化を遂げている新型GOD EATERだとね」
そういって春香と千早に手を差し出してくる。握り返したその手はガッシリとした感覚に包まれる。
「天海春香です。お話はサカキ博士やリンドウさんよりかねがね。こちらこそお願い致します」
「如月千早です。若輩者ではありますが、この極東地域を護るため、精進を重ねたいと思っています。これからの指導方針、よろしくお願いいたします」
その二人の言葉にヨハネスは頷き、薄くではあるが微笑む。人当たりのいい、紳士的な雰囲気を感じる人物だ。
「早速質問なのですがシックザール支部長。コウタ君やサカキ博士から話を聞いている「エイジス計画」について、詳しく聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」
「は、春香。いきなり聞くのは…」
話もそこそこに切り込んだ春香を千早が少し窘めようとするが、シックザール支部長は手を振り千早を止める。
「何、責任者である私から聞かねば信頼できないのだろう。天海君は行動派だと聞いている。自分の目や耳で見たものを信じるタイプなのだろうな。では話に入ろう」
「そう言っていただけるなら…ありがとうございます。支部長」
「その前に、私が不在の間この極東支部のGOD EATER達と共に力を尽くしてくれたことに礼を言いたい。サカキ博士はどうも奔放なところがあってね。君たちがしっかりしてくれるなら私も安心できる」
「おいおいひどいなぁヨハン。だが実際に彼女達の腕は保証するよ。新型なことに溺れず努力も怠らない。ツバキ君の教育もあって、早速ヴァジュラを撤退にまで追い込んでるからね。最も、痛手もそれなりに受けたようだが」
「君は相変わらずだな、スターゲイザー。ヴァジュラ、この極東地域に出没するアラガミの登竜門的存在だ。最も他の支部ではオウガテイルやコクーンメイデン、ザイゴートを倒せれば充分戦力級なんだがね」
その言葉にさすがに春香や千早も目を丸くする。オウガテイルやコクーンメイデン、そしてザイゴート。いずれも春香や千早がこの数ヶ月で屠ってきたアラガミたちだ。それで充分登竜門だというのにこの極東地域ではあろうことかヴァジュラで一人前という。
「おっと、話が横道にそれてしまったね、エイジス計画。それについてはまずはこれを見てほしい」
ヨハネスがサカキに顎で示すとサカキは微笑んだ後に電気を消し、モニターをつなげる。そのモニターには何やら建設中のドームのような物が見える。
「ここが、我々が建設途中の「エイジス」。ちなみにこのエイジスは地図で言うとこの辺り…、旧日本海溝付近にアラガミの脅威から完全に守られたいわゆる「楽園」を作るという計画。そのためと、居住区を維持するためののアラガミのコアの収取と極東地域を護るためのアラガミの撃退が君たちの任務になる」
サカキがモニターを操作すると、内部の映像に変わり建設予定の他の設備なども、支部長自らが指し棒で示してくれる。
千早は真剣な顔でそれを目にし、時々うなずき示す。春香は目線だけで追いかけて何かを見ている。
「…天海君、何か、疑問があるかな?」
「いえ、ただ…、今でも居住区の壁は頻繁に突破されてますよね?それなのに、完全に守られた鉄壁のドームなんて、できるのかと思いまして」
「春香…。でもそれは確かに気になります。支部長、そのあたりはどうお考えで?」
その問にヨハネスは軽く髪をいじりながら苦笑する。彼もこのあたりはどうしたものかと悩んでいるのだろう。
「ソレを言われると、毎度のことながら頭が痛い。そのためにも君たちGOD EATERの働きが必要なのだ。しかしこの計画が成就すれば当面の間人類は滅びから免れられる。いずれはこれを各地域に広めていきたい。そうすればこの極東だけではなく、全ての地域に護りが施されることになる」
答えになっていない気もするが、アラガミ防壁とGOD EATER。二重の防壁を敷こうと支部長は考えているのだろう。少なくとも、この悩み苦しみながらも進もうとしている姿勢に嫌悪は二人とも感じない。
「すまないね、サカキ博士からも聞いたとは思うが、アラガミは絶滅させることはほぼ不可能といってもいい。歯がゆい状況をどうにかするために、私も精一杯尽力させてもらっている。情けない私を許してくれたまえ」
そういって支部長は自ら頭を下げる。千早はともかくさすがの春香もここまでされては何も言えない。
「あ、頭をあげて下さい!シックザール支部長!、支部長が尽力を尽くしていることはここの設備や皆さんを見ればわかります」
「すまないね、如月君。天海君も、どうかわかってほしい。君たちの助けになれることは精一杯尽くさせてもらうつもりだ。ペイラーや雨宮教官ともどもにね」
「ええ、すいません。私もいきなり不躾な質問ばかりして」
「なに、疑問は解決扠せ無いと進めない。その気持はわかっているつもりだ。私も元技術者として、潰せるものを1つずつ潰してやってきた。最も、ペイラーに敵わないとわかって、廃業したんだがね」
「本当に廃業しちゃったのかい、ヨハン?」
春香と千早もその言葉には驚く。この二人は先程までの掛け合いからただの上司と部下ではないとは感じていたが、そこまでのつながりがあったとは。
「ふっ、いずれにせよ、ペイラーがいるから安心して事務に集中できるのも又事実だ」
「そう言ってもらえるなら何よりだねぇ。おっと、大人の話に付き合わせてばかりなのも悪いね、ヨハン。後話しておくことは?」
「私としては特には。最後に、新型GOD EATERの君たちは、大事な戦力の起点となることも多い。つらい仕事も多くなるだろう。悩みや愚痴は悩まず私達大人に話してくれたまえ」
「そうそう。一人で溜め込んでもろくなことにはならないからね、そこはちゃんと意識シておくだけでも違うもんだよ。大人に話しにくいならリンドウ君やタツミ君でもかまわない」
「「はい!、ありがとうございます!!」」
その言葉に少し救われたように思いつつ、春香と千早は返事をする。そして二人は退席するのだった。
「思ったよりも良い人だったわね、春香?どうしたの?」
千早と春香は微笑みながらも隣を歩く。その間も春香はずっと何かを悩んでいるようだった。
「うーん、私も今考えまとめてるところなんだけど、とりあえずリンドウさんに話しておかないと駄目かなって思って」
「今朝言ってた、支部長のこと?あれぐらいなら気にしなくてもいいんじゃないかしら?」
春香の言葉に千早はそういう。少なくとも千早にとってはシックザール支部長は信頼できる人と感じていた。
「私達にとってはそうかもしれない。でもリンドウさんにはリンドウさんの考えがあるとおもう、それに、傍から見て良さそうな人ほど、胸の奥は何を考えてるかわからない人も多いからね」
「…なるほど、そういえば、765プロの皆に心を開くまでは、私もそうだったわね…」
「うん、だからとりあえずリンドウさんに何かミッションに付き合ってもらおうかなと思ってね」
「あら、ミッション?普通に話してもいいんじゃないかしら?」
「…まぁ色々あるんだよ。リンドウさんの部屋いこっか」
「ええ」
二人がそう会話を交わしつつ歩いていき、メインロビーに行くと、大型モニターの前にリンドウとサクヤがいた。二人が見ているモニターには何やらニュースが流れている
「今日未明、フェンリルに対する抗議デモが行われました。外部居住区生活者を中心とした団体に寄るものです。世界各地の支部前で同時に行われ、フェンリルに対して、主に食料供給の増加と防衛の強化、雇用枠の拡大を訴えたもので、参加者は二時間ほどデモ行進をした後、取り押さえや混乱もなく解散した模様です。続きまして今年の食料盗難事件が…」
「今年もかぁ、あいっかわらずってやつだなぁ」
「仕方ないわよ。彼らも100%わかってもらえるとは思ってないわ。でも自分たちの考えをちゃんと伝えないと流されるだけってこともわかってるもの」
「まぁそうだわな。って…よう、お前たち。最近頑張ってるらしいじゃねえか、隊長として鼻が高いぞ?」
そういってリンドウがこちらに気づいたのかタバコをあげながら声をかけてくる。
「そうね、防衛班とも任務行ってるみたいだし、エリックやコウタ君もいってたわ。とても頼れる二人だって」
サクヤも相乗りして声をかけてくる。二人は軽くうなずきで返しながら話しかける。
「こういうデモ、居住区でも見ました。私達がコウタさんに出会ったその日に」
「あーお前さんたちも見たか。どうにかしてやりたいんだが、むやみに受け入れるとこっちの首も締まりかねないのが辛いところだよなぁ。受け入れには限りがある。コウタの家族にも悪いとは思ってるんだがな」
「そうね、彼がGOD EATERになったのも家族のためだし、配給の不便はだいぶ少なくなったってこの前話してたわ。少しずつ、やっていくしかないのよね」
「そうですね、私達も可能な限り協力はしていきたいです。成り行きとは言えそれが力を持ったものの責任でもあると思いますので」
その千早の言葉にリンドウは苦笑いを返す。
「如月、お前さんの気持ちは嬉しい。だがそう重く考えすぎるな。やれることをやっていきゃぁいい。結果ってのはその歩いた道に自然とついてくるもんだ」
リンドウが微笑みながら千早の頭を撫でる。大きく温かい手が千早の頭を包み込み、自然と頬が緩む。そんな自分の変化が千早は嫌ではなかった
「むぅ。千早ちゃん!浮気はだめですよ!浮気は!!」
その千早の横から春香が飛びつき千早の腰にしがみつく。
「ひゃあ!?、な、何言ってるのよ春香!、それよりミッション誘うんでしょう!?」
「っと、そうでしたそうでした。リンドウさん、サクヤさん、よかったら何かミッション行きませんか?久しぶりにお二人とミッションに行きたいです」
その言葉にリンドウとサクヤは一瞬顔を見合わせるがすぐに頷く。
「オーケィ、お兄さんもちょっと暇してたんだ。サクヤとデートばっかってのもお前らに悪いしな。お前たちがどれほど成長したか確かめて見ましょうかね」
「何言ってるのよリンドウ。まったく。でもいいわ、行きましょう?、フォーメーションの確認にもなるしね」
四人はそうして軽く準備を済ませる。そしてジープに乗っていくのだった。
はい、以上になります。前篇はサックリ気味に行きます。後篇は軽いミッションとお話部分が多くなります。このあたりからもう内容に食い込んだ話しになりつつあるのでどっちかいうと戦闘よりお話部分のほうが多くなりそうですね。次回もお楽しみにー