八月のある日、俺は銀座にある駅で親友を待っていた。
相手は伊丹耀司。
俺と同じ陸上自衛隊所属の自衛官で、階級は俺と同じ三等陸尉。
歳は俺より上だが、伊丹自身そこまで気にしてないので、敬語とかは使ってない。
流石に、人前では使ってはいるが………
「しかし、おっせーな」
俺、橘真司はスマホで時間を確認しながら呟く。
一緒に休みを取り、同人誌即売会に行く約束をしてるのにアイツはまだ来ない。
寝坊か?
こうなりゃ、先に行った方がいいかもしれんな。
「んがっ!?」
すると近くで誰かが倒れる音と、聞き覚えのある声が聞こえた。
見ると、そこには伊丹が柱にぶつかり倒れていた。
蛙の死骸に電気を流した様にピクピクと動いている。
「おい、大丈夫か?」
「あ、ああ、橘か」
額を赤くし、伊丹はアハハって苦笑気味に笑う。
「は?エルフに魔法使い、ゴスロリ少女を遠い意識の中で見たって…………本格的に頭ヤバイんじゃないか?」
「お前……それが年上に対する言い方か?」
「なんだ?ご要望とあらば、いつでも敬語使いますよ。伊丹三等陸尉殿」
「………いや、やっぱなしでいい」
そんな会話をしながら二人でスマホを弄りながら今日の同人誌即売会に出て来るサークルをチェックする。
「お、ここも出してるんだ!」
「久しぶりにあのサークルも出すんだ!こりゃ買いだな」
「この時間なら今からでも間に合うだろう」
窓を飛ぶドラゴンを横目に、俺と伊丹はスマホとにらめっこをする。
…………………ん?ドラゴン?
伊丹も気付いたらしくエスカレーターを上がった所で俺達は歩みを止めた。
「今……何か………」
「ああ、不思議なものが空を飛んでたような気がするな」
そして、俺達は有り得ない光景を窓から見た。
ドラゴンに乗った中世の騎士というかローマの兵士の様な恰好をした奴等が民間人を襲っている光景を。
「おかしい……有り得ない……」
「平穏が壊れるのはよくあることだが、こんな壊れ方……冗談じゃねぇな……」
そう言うと俺と伊丹は同時に走り出した。
「すみません!」
「通してください!」
階段を駆け下り、駅の外へ出る。
「まずいぞ、橘」
「ああ、まずいな。このままだと」
「「同人誌即売会が中止になっちまう!」」
同時にそう叫び、俺達は民間人の避難誘導を行う。
被害を最小限に留めれば、中止は免れるかもしれない。
そう思い、避難誘導をする。
民間人は皇居前まで避難しているか、このままだと新たな犠牲者が出る。
そうなる前に、民間人を皇居内に居れるべきだ。
そう考え、伊丹は皇宮警察に声を掛ける。
「外に居る民間人を皇居内に避難させるんだ!」
「なんなんだ君は!?」
「急がないと皇居前が血の海になるぞ!」
俺達がそう叫ぶと、警官は狼狽えるが、すぐに鳴り響いた電話を取り、頷くと「了解しました」と言った。
「国民を、最優先にと」
上からの許可が出たらしく、民間人は皇居内へと避難させられた。
俺と伊丹は自衛官と言う立場から警官たちと一緒になり、皇居の門前で主力が来るのを待った。
警察隊もやってき、盾で防御をしつつ、ガス銃を構え、主力を迎え撃とうとしていた。
主力の軍勢がやって来て、警官隊にも俺達にも緊張が走る。
その時、上空から、AH-1S、コブラと呼ばれる対地・対戦車用攻撃ヘリが遠くからプロペラを力強く回し、空に居るドラゴンを撃ち落した。
それに加え、12.7mm重機関銃M2や小銃を装備した自衛官により謎の軍勢の主力部隊は一気に陣形が崩れ、そこに警官隊が催涙弾を撃ち込み、敵を捕獲し、この事件は一先ず終わりを告げた。
これじゃ、即売会も中止だな。
あ~あ、同人誌買えなかったなぁ~…………………
それから数日後、俺と伊丹は防衛省に出向き、何故か表彰された。
「今回、この様な事態に対して彼等は避難誘導と人命救助に奔走し、数多くの人民の命を救いました。銀座の英雄、二重橋の英雄と呼ばれた彼等の活躍は日本国民すべての誇りであります」
挨拶が終わると一斉に拍手をされる。
「それでは、賞詞の授与に参ります。三等陸尉、伊丹耀司!」
「はい!」
「続いて、三等陸尉、橘真司!」
「はい!」
こうして、俺達は今回の一件の功績を称えられ、伊丹は現場での指揮官能力も称えられ
、二等陸尉に望まぬ昇進をした。