伊丹が自分の体にロープを付け、端を高機動車に繋げるとそのまま井戸へと降りて行く。
暫くすると、ロープの動きが止まり、静かになる。
「引き上げてくれ!」
井戸から伊丹の声が聞こえ、俺はドライバーに腕を上げ指示を出し、高機動車を動かさせる。
「ゆっくり!ゆっくりだ!」
ロープは徐々に引っ張られ、そして伊丹が一人の少女を背負って現れた。
だが、俺達は伊丹の背負ってる少女の姿を見て驚いた。
何故ならその少女は耳が長かった。
まるでゲームや小説に出て来るエルフにそっくりだった。
「人命救助!急げ!……いや、人って言うかエルフ何だけど」
どっちでもいいだろ。
エルフ少女を二人の女性隊員、黒川と栗林に任せ俺達は帰投準備を始める。
伊丹は半長靴を脱ぎ中の水を抜いてると、倉田が騒ぎ出す。
「隊長、副隊長!エルフっすよ!それも金髪の!特地って凄いっすね!希望出てきたな~!」
「お前、エルフ萌えか?」
「騒ぐのはいいが程々にしとけよ。まだ警戒態勢中だ」
「失礼します」
するとそこに黒川がやってくる。
「あの子はどう?」
「体温は回復して来てます。命の危機は脱しました」
「そりゃよかった」
「で、どうするんです、隊長」
俺は伊丹に顔を向け、話す。
ちなみに、伊丹に敬語を使ってるのはいくら親しい中とは言え、流石に部下や他の隊員の前で階級が下の者が階級が上の者にため口はまずいからだ。
「そうだな~……取り敢えず、僕に濡れてない半長靴を頂戴」
濡れた半長靴を手に伊丹が言うと、黒川は、はっ?っといった表情になる。
「集落は全滅しちゃってるし、ほっとくわけには行かないでしょ。保護ってことにして連れ帰りましょう」
濡れた半長靴を履き直し、伊丹がそう決める。
「隊長ならそう仰ると思ってました」
「人道的でしょ?」
「さぁ、どうでしょうか?」
「え?」
「二尉が特殊な趣味をお持ちだとか、あの子がエルフだからとか、色々と理由を申し上げては失礼になるかと」
既にその発言が失礼な気もするが、女性からしてみればそう思っても仕方ないだろう。
エルフ少女を車両に乗せ、コダ村へと戻る。
「以上、これよりコダ村経由でアルヌス駐屯地へと帰還する」
無線を使い提示報告をすると、運転している倉田が不安そうに痛みに声を掛ける。
「あの~、隊長。猫耳娘に会う前に、ドラゴンが来たりしませんよね?」
「言うなって。本当に来たらどうする」
その発言自体がすでにフラグな気がする。
コダ村に着くと、伊丹は手帳を手に村長と会話をする。
『なんと、集落が全滅した!?』
『大きな龍 いた 森 村 焼けた』
片言で単語だけをいい、伊丹は村長にスマホで撮った写真を見せる。
『……炎龍』
『炎龍 火 吹く 人 沢山焼けた それと 女の子 一人 助けた』
そう言い、伊丹は高機動車に乗せたエルフの少女を村長に見せる。
『生き残ったのはこの娘一人か。痛ましい』
『この子 村で 保護………』
『エルフを保護は出来ん。それに、我らもこの村から逃げ出さねばならん』
『村……捨てる?』
『そうだ。エルフや人の味を覚えた炎龍は、また村や町を襲ってくるのだ』
そこから村長はすぐに村の人間に事情を離し、村人全員が逃げ出す準備を始めていた。
俺達、自衛官は避難の際、怪我人が出ないように動いている。
村人の殆どが馬車に荷物を積め、移動の準備が出来た。
村人たちの馬車は一列に並び、移動を開始する。
その時、一台の馬車の車軸が折れ、馬車が道に倒れてしまった。
「伊丹、俺は現場に向かうから、お前は村長から出動の要請を引き出してくれ」
「分かった」
倒れた馬車の所へ向かうと、黒川が倒れている女の子を診ていた。
「どうしたんだ?」
「馬車が倒れた時に巻き込まれたみたいです」
状況を黒川から聞いていると、俺の隣に銀髪のショートカットで、白と水色のローブを着た少女が座り、女の子を診る。
なんだ、この子は?
「……危険な状態」
その子は、女の子の様子を一目診てそう判断した。
「……黒川、この子は危険なのか?」
「恐らく脳震盪を起こしています。肋骨にも恐らくヒビが入ってる可能性も」
なら、安静にしたうえで治療をしないとな。
そう思った時、倒れて興奮していた馬が急に立ち上がり、前足を持ち上げた。
そして、その前足が勢いよく少女目掛けて振り下ろされそうになった。
「まずっ!」
俺は咄嗟に少女を抱き寄せ、少女の頭を守るように抱きしめる。
すると背後で64式7.62mm小銃の発砲音が三発聞こえると同時に、馬は力を失ったように地面に倒れた。
振り向くと、おやっさんが64式7.62mm小銃を構えていた。
「すみません、おやっさん。助かりました」
おやっさんに礼を言い、俺は抱きしめた少女を見る。
『君、大丈夫か?怪我はしてないか?』
特地の言語で少女に尋ねると、少女は少し呆然とした後ゆっくりと頷いた。
『なら、良かった』
そう言い、俺は少女を離し避難誘導の続きを行う。
避難準備が終わり始めると、倉田が口を開く。
「あの人達、まさかずっと俺達が面倒見るんですか?この辺には領主とか貴族とかいないんですか?」
普通なら領主辺りが面倒を見るのが普通だろうが、それは無理だ。
「村長から聞いたが、ここら一帯の領主は、この間、アルヌスの丘に出陣して以来、誰も戻ってきていないそうだ」
その言葉が何を意味してるのか、倉田は察し、黙る。
警告を無視し、攻撃を仕掛けてきたからとは言え、この状況を作り出したのは紛れもなく、俺達自衛隊の所為だ。
なら、なるべくは俺達の方で面倒を見るのが当たり前だよな。
レレイ登場したけど全く喋れていない。
オリ主は特地の言語はある程度理解しており、簡単な日常会話程度ならすることが出来ます。