それにしても、一期の放送から約5年も立つんですね…時間が立つのは早いもんです。
はい、一話どうぞ。脈略なんて気にしない。
ここは、愛知県紀乃川市鴇野町。とてものどかで、のんびりとした町だ。…と思う。
「ほら、なにボーっとしてるの?坂なんだから危ないよ?」
「っと、ごめんベッキー。ありがと」
「どういたしまして」
少し考え事をしていたが、彼女の声で思考の海から戻って来た。
彼女はレベッカ・アンダーソン。ベッキーと言うのは彼女の愛称である。
本日は3月の登校最終日。つまり、今日が終業式であり、明日から春休みという素晴らしい状況なのである。
「さて、と。シンクはまだ寝てんのかな?」
「流石に準備くらいはしてると思うけど…おーい、シンクー?はやくしないと遅刻しちゃうわよー?」
すぐに、「うん、わかってるー」との返答がした。ちゃんと起きてたのか。
「おはよう、ベッキー、春人」
二階のウッドデッキからシンクが出てきた。
あ、春人は俺のことな。如月春人。中学一年生絶賛満喫中(あと数日で終了)
「おっすシンク」
「おはよう、シンク。ところで、やっぱり今日もアレやるの?」
「もちろん!」
アレ、と言うのはシンクの日課である。
スクールバッグを上に投げ、ウッドデッキから跳び、華麗なムーンサルトを決め、そして投げたスクールバッグを右に突き出した手で取るという、常人には真似できないアクロバティックなことをしてみせた。確か、エクストリームキャッチとか言ってたっけ。
「にしても、よくそんなんできるよな」
「そうかな?皆出来ると思うんだけど…」
「いや、相当運動神経よくないと出来ないからね、それ」
そう言いながら、ベッキーは自転車を押し始め、シンクはガードレールの上を歩き出す。
「でも、春人だって凄いことしてると僕は思うよ。車椅子で凄い速さで移動するんだもん」
「あ、それはあたしも思う。100mの平均タイムより速いんだっけ?」
「ソンナコトオレハシラナイナー」
あ、会話で分かると思うが、俺は車椅子を使っている。幼い頃に事故にあい、その影響で足が動かなくなっている。
基本、その事を知った人は可哀想な目で見てきたり、気を使ったりしてくるのだが、シンクやベッキーを初めとした人達は他の人と変わらないように接してくれる。気を使われるのは嫌なので、気にせずに話してくれる二人はとても優しい、大切な友達だ。恥ずかしいので口に出して言うことはないが。
「そういえば、二人は春休み中何処かに出掛けるの?」
「うーん、僕は久々に里帰りでもしようかなって」
「確かお前の実家って、イギリスだっけ?」
「うん、コーンウォールの方。向こうは沢山練習できる場所があるしね」
シンクの言う練習と言うのは、アスレチックのことだ。
シンクは『アイアンアスレチック』という大会で準優勝しており、次こそは優勝すると意気込んでいる。
「そっか。優勝するために頑張らないとね」
「うん。だからバリバリ練習するよ!」
「ま、その為には七海師匠に勝たなきゃ行けないな。頑張れよ」
そして、シンクには高槻七海という師匠がいる。とても活発で体を動かすことが好きな女の子で、俺たちより二つ年上である。正直、あの人が年上だと今でも信じることが出来ない。子供っぽいし。
「それで、春人はどうするの?」
「俺はまだ何も決まってない。いつも通り本読んだり機械弄りすると思う」
「あー、また何か作るの?」
「物作りは良いけど、ちゃんと片付けなさいよ?」
「分かってるって」
片付けするとは一言も言っていないが。機械は友達。
所変わって、こちらは学校の校庭。現在終業式の真っ最中なのだが、シンクは途中で抜けて空港に行くだろうと予想し、見送るためにこちらも早めに抜け出し、待ち伏せしている。と思ったら、案の定シンクの教室の窓が開いた。
「あれ、春人ー?そんなとこで何やってんのー?」
「お前を見送ろうと思ってなー。お前こそ、いい加減そこ歩くのやめろよー!」
「いいじゃないか、ショートカット出来るんだし、怪我しないんだしさ」
いや、確かにお前はそれで怪我したことないけどさ。一々ムーンサルトしたりエクストリームキャッチするから見ててハラハラするんだよ。結局窓際の排水路を歩き初め、降りる度にやっている。
「ほっ!」
そして、最後のムーンサルトも決める…と思ったら、俺の側を何かが通り過ぎていった。
「え!?」
「…犬?」
よく見ると、シンクの着地地点に、スカーフを巻き、その中に剣らしきものを入れている犬がいた。…シンクの着地地点?
「おい、そこの犬!危ないぞ!」
言葉が通じないと分かっていても、そう叫ばずにはいられなかった。そして同時に車椅子を漕ぎ出す。その時、犬は剣を咥え、地面に突き刺した。
何を、と言おうとしたが、口に出すことはなかった。何故なら、巨大な魔法陣のようなものが突如現れたからである。そして魔法陣に穴が開いた。それはつまり穴に入れば落ちるということであり、未だ空中にいるシンクは必ず落ちてしまうということである。…やばくない?
「え!?えぇぇぇぇぇ!?」
「シ、シンクーーーー!」
車椅子を漕ぐスピードを上げ、シンクを救出しようと試みる。そしてそのまま俺も穴に落ち、何とかシンクの手を掴み、そのまま校庭の土を掴もうとする。…が、
スカッ
「予想より落下速度早いぃぃぃぃ!」
「春人の馬鹿ぁぁぁぁ!」
穴の周囲の地面を掴むことは叶わず、俺とシンク+1匹はそのまま落ちていった。
車椅子のまま落下中の人の手を掴むため頭が車輪に当たる可能性があるが非常時なのでそんなこと言ってられない。
改善点、感想などがあれば教えて頂けるとありがたいです。