お手柔らかにお願いします
第1話
これはある一人の錬金術師の話。
マグノリアという広い大陸にはあまり居ない錬金術師の話。
彼は様々な名で呼ばれた。闇ギルド殲滅のスペシャリスト。
錬金術狂いのイカれた魔導士。
これはそんな男の話。喜劇とも悲劇とも言えるそんな男の話。
その部屋は間取りとしては広い方なのだがひどく物が散らかっていて、実際はそれより狭く感じた。
ホルマリン漬けにされた生物の標本やあちこちに魔方陣のようなものが刻まれていた。
偉く不気味で薄暗く一般人が見ると悲鳴を挙げそうな様だな、と実際にそうなった女は思った。
毎度毎度片付けてもいつの間にかこんな有り様にする部屋の主に何度掛けたか分からない言葉を女は掛けた。
「先生、何度言えば分かるんですか。研究者だから一般人と同じことが出来ないのは科学者のたちの悪い言い訳だって、先生から教わったんですけど。」
「バカを言うな、確かに私はそう言ったがこれはこれで片付いているのだ。私は私が覚えやすい所に物をおいているだけだ。」
「こんな所に錬成陣なんて書いて...先生は錬成陣無しで錬金術が使えるんですから必要ないんじゃないですか?これ消すの私なんですけど」
「バカめ、何でもそれに頼っていては腕も鈍るのだ。それにな、錬金術とはそう甘いものではない。」
男はそう言って再び無言になり手元の試験管を弄りだした。
女はその男の姿を眺めため息を吐いた。
「それよりもな、いいのか?錬金術師になるなんて言った日には私はお前の父親に何をされるかわかったものではないのだ。さっさと家に帰って魔導士ごっこでもしているといい。」
「何度言われようと私、先生の元から離れたりしませんよ?
それに魔導士になるって言ったってあまり父の反応変わらないと思いますけど。」
「ふん、本気で言っているのか分からんが私も錬金術が凡骨どもになんと言われているかぐらいは知っている。
魔法に対する冒涜だの命に対する侮辱だのと、下らんことを。」
男は不機嫌そうにそう言うと立ち上がり部屋を出た。
「先生どこに行かれるんですか?」
「寝る」
「仕事の依頼、来てますよ」
「知ったことか、私は眠い、故に寝る。それの何処がおかしい。」
「今月、また新しい実験器具買ったせいで食費もままなりません。仕事しないと。」
男はがさがさとこれまた不機嫌そうに髪を掻いた。
「ちっ! で、依頼人は誰で報酬はいくらだ?」
「
「あの猪ゴリラめ、この前作ってやったばかりではないか。
早速次を欲しがるとは。これだからあの女は録に男も出来んのだ。」
「誰が猪ゴリラだって?」
そこには笑顔の紅い悪魔がいた。なぜだか髪は重力に反して舞い上がり紅いオーラも出ていた。
「あ、あああ、ススススカーレッド!? 来ていたのか!!
来ているなら来ているとなぜ言わん!?そそ、それになんの事かな?私は猪ゴリラなんて一言も言っていないぞ?幻聴やもしれん。こ、この薬を飲むと良い、そんな症状も解決されるるるるるるるる!!!??」
頭を割らんばかりの力で持ち上げられた。痛い痛い痛い!!!痛いではないか!!
「分かった分かった!!私が悪かった!!謝る故に許せ、スカーレッド!!」
「ふん、それにエルザと呼べと毎回言っているのがまだ分からんか。」
ようやく離したか、私の頭は貴様の様にチタンで出来てはおらんのだ。このゴリラ女め、いつか報いをうけさせて
「聞こえているぞ?」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」
何時もの日常だ、そう助手である女ルーシィ・ハートフィリアは思う。
何時からか、彼女は錬金術を学びだした。その理由は後で語るとして今は師を助けねば
「エ、エルザ...その辺にしといてあげて?
先生も、あんまり挑発しないで下さい。」
「ルーシィに免じてこのくらいで済まそう。ああ、なんて私は心が広い女だ。」
何処がだ、私は思ったが言わない、錬金術師とは学ぶ生き物だからだ。
「それで。またか、スカーレッド。お前の鎧やら剣を作るのには時間が掛かるのだ。そう間隔を空けずに来られても困る。」
「だからエルザと呼べと、...まあ、そこは良いとしてだ。
今回も材料は揃えよう。報酬だって幾らか増やしても構わん。
それならば良かろう?」
「私にも私の研究があるのだ。それにな、何度も言っているが私は鍛冶屋じゃない。」
「其処らの鍛冶屋顔負けの技術があるのだ、かまわんだろう
ならば、だ。フェアリーテイルに入らんか?
私のパートナーとして働くと良い、実力はあるのだ。それが良い、そうするべきだ。」
「結局勧誘ではないか。何度も言うが時期じゃない
それにな、私は言っているのだ、あの爺に。
只見せろと。それさえすれば入ってやっても構わんと。」
何を師が見たいのかルーシィには分からないがよっぽどのものなんだなと思った。あれだけギルドに入るのを拒んだ師がそれ見たさに入っても良いと言うのだ。
「その事だがな、特別に許可が降りたのだ、本来はマスターしか見られんのだがな。お前を入れるために私がどれ程交渉したことか。」
「おおおおお!?本当か!!?本当なのだな!!
さすがスカーレッドだ!!愛してるぞ!!」
「きゅ、急に抱きついてくるな...
そ、それにああああ、愛してるなどと...」
攻めるのは得意であったが攻められるのは苦手な女であった。
「先生!!離れて下さい!!
エルザ嫌がってるでしょ!!」
そう頬を膨らませエルザの至福の時は助手によって破られた。
「おお、すまんな。スカーレッド。気分が高まったゆえにな、いやぁ、私もまだ若輩者ということか。」
「い、いや...べ、別に嫌ではない、嫌なものか(ボソッ)」
モジモジとする紅髪の騎士がそこにはあった。
「それでは支度をせねば。今日は徹夜だな!!」
そう言うと男はスキップをして何処かに行ってしまった
「いやぁ、遂に奴もフェアリーテイルの一員か。これで何時でも一緒だな。いやーめでたいことだ。そう思うだろう?ルーシィ?」
「良いもん、どうせ入ったって今の暮らしが変わるわけじゃない。先生の研究好きは止められないんだから。だからエルザもこの程度で先生を奪えると思わないでよね。」
「いいぞ、勝負だ。どちらがアイツの心を掴むかのな。」
これを期に彼の物語は始まる。理の錬金術師と呼ばれる男、
ルーク・エインワーズの物語