「ほぉ、これが」
ルーク・エインワーズは興味深いと言わんばかりに笑みを浮かべた。そこには少女が水晶の中に祈るような姿で保存されていた。隣にいた妖精の尻尾の現マスターであるマカロ・ドレアーはそんなルークとは対象的に苦々しい表情であった。これは本来ギルドの者しか、そしてその中でもマスターとなる者にしか見れないものであったからである。そんなマカロフにルークは笑顔を隠さず告げた。
「そんな顔をするな、ドレアー。心配せずとも他言などはせんよ。」
「ふん、そんなことは心配しておらんわい。」
「はははは!こんなものをお前たちは代々受け継いできたのか!全くもって度しがたい。」
そう言うとルークは水晶を周りをまわったり触ったり見たりを繰り返した。本来なら様々な器具も持ち込みたい所だったがマカロフに付けられた条件としてその身一つで来いというものがありそれは出来なかった。
「そも、何故おぬしはルーメンイストワールの存在を知っていた?誰かから聞いたのか?」
「はは!これはルーメンイストワールとお前たちは呼ぶのか。まあ、名称なぞどうでも良い。質問に答えるのなら聞いたわけでは無い。」
「では、何故気付いた?ルーメンイストワールは完全に外界から遮断され魔力の欠片も漏れはないはず」
「まあ、そこいらの魔導士には分かるまいよ。これは私が錬金術師であったから気付けたことだ。」
そう言うとルークは両の手のひらを合わせた。パンとこぎみ良い音がしたと同時にルークの周りから稲妻にも似た光が何条も現れた。おもむろに水晶に両手を伸ばしたルークはしかし、触れることは叶わなかった。先程まで老人の様に細い腕であったものに握り絞められたのだ。その力はおおよそ見た目どうりとはいかなかった。
「.....おぬし、今何をするつもりであった?」
「はは!!私程度の技術で壊れる様なものでもあるまい?それはお前の方がよっぽど知っていることだろうよ」
「それでも、じゃ。おぬしは今これを破壊しようと試みた。そんな暴挙をただ見とるわけがあるまい」
「ふふ、まあ良いさ。実物をこの目で見れた。今はそれで我慢するとしよう。何だったか、私がマスターとなればこれを好き勝手しても良いのだったかな?」
「そうじゃな、マスターとなれればの話じゃ。そのためにはギルドの皆からの信頼が必要不可欠じゃ。...万が一家の連中に手を出したら...その時が貴様の最後となること忘れんじゃねーぞ」
「おお、怖い怖い。聖天大魔導の一人にそんなことを言われたとあっては俺も迂闊に動けんな」
心底愉快そうに、凡人ならば萎縮するようなマカロフの脅しに対してルークの態度はいつもどうり平静であった。
二人は時間にして30秒の間にらみ合った後にマカロフはため息をついた。
「そうため息ばかりつくものではないよ、ドレアー。いやマスターと呼ぶべきか?ちゃんと条件は飲む」
そうルーメンイストワールを見るにあたってマカロフはルークに条件を幾つか突き付けた。
一つ、妖精の尻尾の不利益になることはしない
二つ、ルーメンイストワールのことは他言しない、ギルドを抜ける際はその記憶を消す」
この二つだ。
「さぁ、帰るとするか。これ以上ここにいたところで得られる物は何も無い。」
ルークはそう言って来た道を引き返し始めた。
マカロフはルークが妖精の尻尾に来たときのことを思い出して頭を痛めた。そうして思うのだ。これは特大の問題児を抱えたものだ、と。
妖精の尻尾side
「皆!!大変だ!!エルザが帰ってきた!!それも見たこと無い男と一緒だ!!」
「そんなばかな!!?あのエルザに男が!?ありえねぇよ!!」
「エルザに先を越された、だと!?」
「見た目はいいがあのエルザだぞ!!?相手の男は化け物か!!」
「ほぅ、皆そんなに私と殺り逢いたいと?いいだろう、受けてたつぞ」
「「「「すいまっせんしたぁぁぁぁぁぁ!!」」」」
全員見事な土下座だった。
そこに白衣にボサボサの黒髪の男と金髪の女が到着すると二人は奇しくも同じ言葉を言った
「「チェンジで」」
「そんなものはない」
無慈悲な宣告であった。
「つうかエルザ、そいつらは誰だよ?」
グレイ・フルバスターは火中の人物に対しての質問を、エルザに投げ掛けた。
「この二人は新たに妖精の尻尾の仲間となる者たちだ。
男の方はルーク・エインワーズ、錬金術師だ。私の武器や鎧は大体こいつに作って貰ったものだ。女の方はルーシィ・ハートフィリア、その弟子だ。」
エルザはそう言うと二人に目線を向けた。
「宜しく。」
「ルーシィ・ハートフィリアです。一応精霊魔法も使えます。先生はこういった挨拶が苦手で見ての通り取っつきにくい人ですけど私共々宜しくお願いしますね」
「何を余計なことを言っている、バカ弟子め。」
「先生こそ、それじゃあ自己紹介になってませんよ。私は先生が心配だから言ってるんですよ?」
「それが余計だというのだ、お前に心配されるほど落ちぶれてはおらん」
ルークとルーシィの口喧嘩は止まらず終いにはエルザからの拳骨で互いに渋々といった風で幕を閉じた
「はぁ、まったく、先が思いやられるな。」
「それよりエルザ、そいつら使えるのかよ?」
「錬金術師なんて胡散臭いよなぁ」
「女の方もなんだってわざわざ錬金術なんて」
「男も女も魔力自体は大して高くねぇしこりぁエルザ、期待するだけ無駄だぜ」
「それは」
「それに錬金術といやぁ、魔法擬きで有名じゃねーか。魔導士の真似事しかできねぇ野郎に家のギルドは務まらねーよ」
ぶちっ!と音がした。魔法擬き、この言葉はルークにとっては禁句だった。それを知っていたルーシィはそそくさと端の方に退避していた。程なくするとルークの白衣ははためき始め魔力も先程までとは比べることは出来ない程上昇しだした。周りの魔導士たちも先程までの無気力そうな様子からはうって変わった様に唖然としていた。
「.......くくくく.......ははははは!.......ふっはっはっはっはっは!!!!!」
「魔法擬き!!魔法擬きか!!貴様らのような猿人類がぁ!!錬金術を!!魔法ごときの真似事と一緒にするか!!!よかろう!!そのできの悪いその脳髄を!!ましな形に作り変えてやろう!!」
そう高らかに告げたルークは両手を広げ声を高々と挙げた
「さぁ!!死にたい奴からかかってくるといい!!」