ヴァルキリードライヴ 7人の戦乙女と小さき勇者 作:ダーク・リベリオン
少女たちが暮らす島、人工島ビクニ
外界から彼女たちを守るためにこの島はある
しかし、そんなビクニだろうと流石に自然には敵わない
日差しが照りつける夏の暑さには
生徒たちの殆どはここ最近続く暑い日のせいでバテバテになり
涼める場所である拠点や自室にこもりがちな日々が続いていた
「ありがとうございます筆頭。おかげで助かりました」
「いえ、これくらいのこと筆頭として当然です。では」
5期生筆頭である小春は他の生徒たちをよそにいつものように他の5期生の生徒たちの手助けをしていた
「……今日も一段と暑いわね」
しかし端から見れば平然としている小春といえどやはりこの暑さは応えるものだった
そんなことを思いつつ小春が花壇の近くを通りかかろうとした時である
「うん?…あれは」
ふと小春の目にあるものが映った
「はい。お花さん、いっぱいお水飲んでくださいね〜♪」
それはジョウロで花に水を与えてあげているちひろの姿だった
微笑みながら語りかけるようにお水をあげる姿を見た小春は気晴らしもかねちひろに声をかける
「ちひろくん」
「あっ、小春さん。こんにちは」
「えぇ、こんにちは。」
丁重な挨拶をされ、関心しながら小春もまた挨拶を返すのだった
「花に水をあげてらっしゃるんですね」
「はい。お花さんが元気になれるようにお水をあげてあげようと思いまして」
その言葉に小春もちひろの優しさを感じずにはいられなかった
「感心しますね」
「ありがとうございます」
互いに頬笑みを見せ合う二人
「そういえば今日は倫花さんと乱花さんは一緒じゃないんですか?」
「はい。今日は僕一人です。倫花お姉ちゃんはまだ熟睡中で、乱花お姉ちゃんはなんだか頼んでいた物が届いたって言うんでそれを取りに」
「…珍しいこともあるんですね、だから1人なんですね」
「はい、ですので一人で、それにお花さんたちもこの暑さで参ってると思ったので少しでも元気になってほしいと思って」
えへへと愛らしい笑みを浮かべながらちひろはそう告げた
ちひろの優しさと思いやり、それらを目の当たりにして小春はちひろに感服していた
「ちひろくん。私にも花に水やりをさせてください」
「あっ、わかりました……んしょ、はい。小春さん」
「ありがとうございます」
小春はちひろからジョウロを受け取り、彼と一緒に花に水やりを始めた
2人の水やりのおかげで花壇の花全てに水をやり終えた
「お花さんたち元気になったかな〜?」
「えぇ、きっと元気になってるはずですよ」
「よかった〜♪」
水で潤った花壇の花を見てちひろは安堵し、ちひろと小春は互いに笑みを浮かべた
「あっ…///」ぐう〜
「っ?」
そんな時、ちひろのお腹がなった
小春が腕時計を確認すると時刻はもう昼になっていた
「ちひろくん。よければ一緒にお食事しませんか?」
「えっ?いいんですか?」
「えぇ、まだ時間もありますし。あっ、ポイントのことは心配しないでください。こちらで持ちますので」
「えぇ!?そ、そんな悪いですよ!?」
小春からの誘いまではよかったが、小春が食事代を持つと言い出したため、ちひろはあたふたする
「いいんですよ遠慮なさらずに。それにあなたとは一度ゆっくり話しがしてみたいと思ってましたから」
「はっ、はぁ〜」
遠慮しようとしたが、小春に言いくるめられ、申し訳なさそうな顔を浮かべながら、彼女と共に拠点に行くことになった
そして拠点につくとそこには
「特上うな重追加なのだ~♪」モグモグ
「あっ、満腹丸さんだ」
「あら、本当ですね」
クラスメイトである満腹丸がテーブルにずらりと並んでいる料理を食べまくっていた
「こんにちは満腹丸さん」
「うん?あっ、ちーちゃんなのだ!」
「はい。今日もすごいですね」
ずらりと並んでいる料理を見てちひろは想っていたことを口にした
「ところでちーちゃんたちは何しに来たのだ?」
「僕たちもお昼です」
「そうなのだ~?じゃああまったら満腹丸ちゃんによこすのだ~♪」
「あはははは」
満腹丸のその申し出に少し困惑気味なちひろだった
そして食事を終えた二人は冷たい飲み物を飲みながら一息ついていた
ちなみに満腹丸は尚も食事中
「……ちひろくん」
「はい?」
ストローでジュースをからんからんという音をたてながらかき回していた小春が唐突にちひろに声をかけた
「以前から聞いてみたかったのですが、あなたはビクニ…いえ、他の人工島ですら例をみない異例の存在。君はそのことについてどう思っているのですか?人と違う存在になってしまったことを?」
ビクニに来ると知った時、初めて出会った時から思っていたことを尋ねる
「あなたの経歴は以前書類を拝見して知っていました。正直言って私はあなたが不憫でなりません。まだそんなにも幼いのに、私たちと同じようにウィルスに感染してしまって普通のこのこのように生きることができずに倫花さんや乱花さんとともにこの島に来る他なかったんですから」
「…っ」
ちひろは今まで決してウィルスに感染してからの思いを口には出さなかったが
正直、小春の言った通りであった
何もなかった日常がウィルスに感染してから大きく崩れ去り
仲良く接してくれていた学校の友達や付近に住む人たちからは普段はいつもと変わらないように装ってはいるものの
そのじつは陰ながらに自分や倫花と乱花をまるで化け物を見るかのように冷たい視線を送っていた
それらが自分らにとってどれほど辛いことだったか…挙げ句の果てには最愛の父と母とも離れ離れになってしまった
しかしそれでもめげてはいけない、治療を直していつかは元のような生活を送れるようにすると心に誓ってからは
一度たりとも弱音を言うまいと心にきめ、裏さや悲しみを押し殺し、誰にも思いを打ち明けなかった
そんな自分の思いを察して共感してくれる小春の気持ちが嬉しかった
「確かに小春さんの言う通りです。辛かったあの日々のことを忘れたことは一度たりともありません。でも、だからってそれを言い訳に逃げていたら前に進むことなんかできない、僕は絶対に治療を成功させてお姉ちゃんたちと一緒に家に帰ってみせますよ」
意気込みを入れたちひろはミルクを飲み、一息
「強いんですねちひろくん」
「そんなことないですよ」
楽しそうにニッコリと笑いながら2人は楽しいひと時を過ごした
「ではちひろくん。私はそろそろ行きますね。やらねばならない仕事がまだありますので」
「はい、お仕事頑張ってくださいね!」
「えぇ、では失礼します」
小春はそう言うとちひろに背を向けて次なる目的の場所に向かう
「また今度お話ししてくださいねー」
ちひろが自分に手を振っていたので、小春も手を振りそれに応えた
ちひろと別れた小春はしばらく歩いた後、ふと立ち止まった
「………まっすぐな目をしてましたね」
自分の思いを伝えていたちひろのあの顔を思い出しながら小春はつぶやいた
「彼のような存在を守ることもまた筆頭としての務め……気を引き締めていかなければ」
今回の件で小春は自分のなすべきことを改めて確認しながら再び歩きだしたのだった