END WORLD SURVIVOR   作:キノコ狩り

1 / 7
~ 0 章 ~
第一話


グロテスクな表現がありますので苦手な方は読むのをお控え下さい。

 

 

 この世界には善と悪にわけられる。

 

 

 だがときに、善の行いの結果、悪に靡(なび)き、悪の行いの結果、善に靡くという、真逆の結果を作り出してしまう結果も。可能性的に存在する。

 終わりの始まりと言うのは、そういった語学理論上の産物。

 

 この物語は、生きるために力を求める人々の世界救済の物語。

 

 2032年、とある研究所の一室。

 

 そこは、薄暗い部屋の中で、誰かが秘密裏に行っていた研究が終わりを迎えようとしていた。

 

「妃佐子(ひさこ)……本当にありがとう。君の協力に心から感謝する……」

 

 その一室には、黄色い防護服を着た一人の科学者と、密閉された大きな容器の中に一人の女がいた。

 

「あなたの人類を救いたいという思いはこの世界の闇を照らす大きな光となるわ。だから、私はあなたの背中を最後まで見届けたい」

 

「妃佐子……」

 本当にこれで良いのか、自分が愛した者をこの様な形で失ってしまうかもしれない。

 

 だが、他に適役者がいない……

愛する人が入っている容器に触れる。

 

 ひんやりと機械のように冷たい感触が指先に伝わる。手が震えていた。頭の中と同じだ。理性と意思の狭間で震えている。

 女は、科学者がもつ底なしの恐怖を全て包み込むかのように、容器越しに科学者の手に触れる。

 

「もう決めたの、だから、お願い……」

 その瞳は覚悟を決めたという強い瞳だった。笑った時も、怒った時も、泣いている時も。

 この強い瞳に幾度となく救われてきた。

 

 そして今も……

 

科学者は、赤いスイッチを震える手で押す。

「……HMU(ヒューム)ウィルス投与! 開始!」

 

 時は遡り。

 

 ーー現在。

 

 2050年12月の月曜日、俺達学生にとっては一週間の中で最悪のモチベーションで学校に行かなければならない日。

 風が強く、防寒対策として着用しているマフラーやセーターは、追い風に翻り、露出した肌に真冬の風が容赦なく突き刺さる。

 

 18年前、日本には大きな人工島が2つ程作られた。そこでは最新の技術でいつも快適に過ごせる気候が保たれている……というのを噂で聞いた程度だが俺達学生にはそんなところは関係無い。

 日本の冬はこんなにも寒かったのか。友達のすべりすぎるギャグを半永久的に聞かされている気分だ。

 

 そんな中、黒い髪を風に揺られながら零乃才羽(ぜろのさいは)は今日も上がらないテンションで学校に行く。細い体で息を切らしながら旧型のモーター付き自転車をこぎ、面倒くさい坂を登り、某コンビニに着くといつも決まって待っている奴がいる。

「ウィー……」

 

「お、サイハ! 今日は早いな!」

 

 このいつも明るすぎてこっちが干からびそうなくらいの声の持ち主は峰山秀(みねやましゅう)少し茶色い髪で体育会系っぽい体つき、幼い頃からの腐れ縁で高校まで一緒に通っている。いわゆる幼なじみという奴だ。

 

 高校生活3年。この3年目も毎日全く変わりばえのない通学路を自転車で通っている。

 

 学校に行く途中、ふとシュウが

「昨日のゾンビ。あそこで回るのやめなかったら、絶対ラウンド100いってたんじゃないか?」

 

 いつものゲームの話か。とサイハは思いつつ

「いやどっちにしろ終わってただろ、誰もパワー上げてなかったじゃねェか」

 

 こういったどうでもいいような会話が、サイハたちの日常だ。つまらない会話をして、のんびり帰る。

 

 こういう人生に2人とも満足していたのかもしれない。先生共は、やれ就職だ。やれ勉強だと、毎日毎日懲りずに俺達に向かって言ってくる。

 

 誰になんと言われようが、動き出すのは自分なんだ。

誰からも指図を受けない。動く時は自分の意思で動く。

 

 この言葉をモットーに毎日のんびり生活していた。そういう日常。

 

 これがサイハたちの日常。ずっと続いて欲しかった日常。

 

 だがその日常は、なんの前触れもなく、非日常へと変化していく。

「あーあ、ゾンビがはびこる世界だったら、俺達結構生き延びるんだろうな……」

 

 そうシュウが言った瞬間ーー

 

 

『ドッゴオオオオオオオォオオォォォオオオンンンンンンッ!!』

 

 

 まるで天が割れた様な凄まじい轟音が響く。

 

 雷が落ちた。快晴なのにだ。しかも学校付近に。そんなことは意に介さないのか、二人ともか弱い少女みたく昇天寸前まで驚いていた。

 

「あ、焦ったァあああ!! 晴れてんのにいきなり過ぎだろ……ビビったァ……ま、ビビってはないけどな……」

 

「一体どっちなんだよサイハ……」

 

 この時はこんな戯れ言を言っていたサイハたちを、未来のサイハたちがみたらなんというだろう。

 

 戯れ言を言っている内に、学校に着いた。とくに何も変わったことはなく、いつも五月蝿い先生共の挨拶、三年間で作り上げてきた友達の数々……校長が花壇の花に水を撒いた跡。普段通りの学校だ。

 

 廊下を歩いていると他生徒からさっきの雷の話がちらほら聞こえてくる。

 

「おい……学校にさっき落ちたよな?」

「眩しかったぁ~何でよりによって避雷針さけて校舎内に…」

 ちらほらちらほらとまぁ噂が広がっている。やはりここら辺に落ちていたのだ。

 

サイハたちは気にもせず教室がある三階へと登って行く。

 

 サイハたちが三階まで登ると、シュウは自分の教室の前に人だかりができていることに気づき、すっと目を見据える。

(……ん? なんだ……? ここからじゃよく見えないな……)

 教室の方へ向かっていくと、人だかりの原因がいた。

 

「あぁあああ!! お腹痛いぃぃい!!」

「おいおい、外山ぁ、たこ焼き食いすぎたんやね? はっはっはっは!!」

 

 何やら腹を壊したのか。外山が腹が痛くて叫んでいるみたいだ。

 

 トヤマはシュウと同じクラスメイトだ。少しからかい概のある奴。いわゆるいじられ役というものだった。いつものように同じクラスの誰かからいじられているのだ。

 だが、トヤマの様子がおかしい。

 

腹の痛みには限度がある。あいつの叫びは明らかに腹が痛くて叫ぶ域を超えていた。流石におかしいと思ったサイハが人だかりを掻い潜りトヤマに寄る。

 

「おい、トヤマ大丈夫か?」

「あぁ、ヤバい、吐きそうやわ」

 

 いつもはトヤマ相手にこんな善人染みたことはしない。

 だがこの光景は明らかに。

 

 何かがおかしかったーー

 

外山の首が下にガクンと落ちた。サイハの頭に一抹の不安が過ぎる。

 

「!? なぁ、トヤマ? オイ、トヤマ!!」

返事が返ってこない、ただのしかばねのようだ。じゃない、本当に何も言ってこない。本当にしかばねになってしまったのか?

 

 気になってトヤマの顔を覗き込む。するとサイハの目に映るのはとんでもなく歪んだトヤマの顔だった。

 

『ぐぢゅり』

 トヤマの歯の間から奇妙な音が漏れる。サイハの予感は的中していた。

 ムクリと、外山は何事も無かったかのように、いきなり立ち上がる。

 

「と、外山?もう、大丈……「グォォォォオinveゔぇあqmydyあ"あ"あ"いえすイエスYesいぇす位絵姿いええええええああああス!!!」

 

 人間の言葉ではない。母音もクソもないような有象無象の雄叫びと共にトヤマ? はサイハに向かい、腕を思い切り振り下ろしてくる。

 

「サイハ!!」

 シュウが間一髪の所で飛び込んでくる。サイハを突き飛ばしギリギリの所で腕をかわす。

 先程サイハがいた所にコンマ一秒遅れてブンッ! と人の腕では鳴らない威勢の良い音が教室内に響く。

 

『バカアアァアンン!!』

 廊下を覆っているタイルが勢いよく砕け散った。それを見ていた周りの生徒達の血の気が引く。

 

 シュウは外山に戦慄しながらもサイハの無事を確認する。

 

「……っ!! 大丈夫かサイハ!?」

「くっそッ....すまねぇシュウ!」

 

「……いいんだ、それより……トヤマは……」

「あぁ、全くわかんねェ。なにがどうなって……!」

 ノロノロ……と形容出来そうなゆっくりとした動作でトヤマは。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 トヤマの人間離れの咆哮は付近の生徒達の鼓膜をビリビリと震わせ、たちまち学校を覆い尽くす。同時刻。学校の至るところで叫び声が聞こえてくる。

 

 恐怖へのカウントダウンが終わる。そしてーー

 

 ーーこれから始まる『オワリ』の幕が上がった。




どうも、キノコ狩りです。
勢いで投稿してみました。感想頂けたら幸いです!
どれも参考にしていきたいと思います!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。