ふむ、サント・アンヌ号も出航してしまったし、これからどうしようか。クチバシティの探索も終わっていないし、クチバシティの東にある11番道路へも行っていない。やることが沢山だ。
とは言え、まずは船長からもらった秘伝マシンを使ってみることにしよう。船長はブルーバッジがないと戦闘以外では使えないと言っていたが、覚えさせるくらいはできるはず。
さてさて、そうなるとどのポケモンに覚えさせるかだが……う~ん、これは悩むな。居合切りと言うくらいだし、きっとすごく強い技なのだろう。しかもあの船長曰く、何匹のポケモンでも覚えさせることができるらしい。それなら全てのポケモンに覚えさせて良いかもしれない。
まぁ、とりあえずデブチュウに覚えさせようか。最近、ハラマキとアカヘルが強すぎるせいで、デブチュウが弱く見えるし。
デブチュウが現在覚えている技は“でんきショック”、“でんじは”、“でんこうせっか”、スピードスター“と言った感じ。技は4つまでしか覚えさせられないため、この中から一つ忘れさせなければならない。とりあえず電気ポケモンと言う特徴を残すためにも“でんきショック”と“でんじは”は残しておいてあげよう。となると、“でんこうせっか”か“スピードスター”になるわけだが……う~ん、どうしようか。
技の威力は“スピードスター”の方が強い。ただ“でんこうせっか”は必ず先制攻撃ができると言う素敵な効果を持った技だ。
……よし、決めた。“スピードスター”を忘れさせよう。きっと“いあいぎり”は“スピードスターより強いだろうから。
そうと決まれば後は覚えさせるだけだ。
ほれ、出てこいデブチュウ。
「ピッカ!」
おおー、相変わらず良い太り具合だ。うむ、どうかそのままのメタボ体型でいてくれ。あまり痩せちゃダメだぞ。
さてさて、デブチュウが可愛いのは良いんだ。そんなことは知っている。それよりも秘伝マシンを使ってあげないと。
喜べデブチュウ。これでお前もきっと強くなるぞ。
とりあえず、先程もらった秘伝マシンを取り出してみた。
う~ん、此処からどうやって覚えさせれば良いんだろう。ポケモンの後ろとかに読み取り口とか……まぁ、ないか。
どう使って良いのか分からなかったから、とりあえずピカチュウに秘伝マシンを持たせてみた。
「ピカァ?」
秘伝マシンを両手で持ちながら、首を傾げられた。
ダメか。これじゃあ覚えないのか。いや、じゃあどうすれば良いんだよ。取扱説明書くらい付けてほしかった。
「ん~……よし、ほれデブチュウ。口を開けるんだ」
デブチュウから秘伝マシンを返してもらい、今度はそれをデブチュウに咥えさせてみた。
「ビ、ビガァ……」
今度はどうだ? ほら、なんかこう……ビビっとくるものはないか? なるほど、ダメかですか。そうですか。
むぅ、これは困ったな。どうすれば良いのか本当に分からない。仕方無い、とりあえず今は違うことをするとしよう。実験みたいなことさせてごめんなデブチュウ。お疲れ様、ゆっくり休んでくれ。
さてさて、それじゃあ気を取り直してクチバシティの散策を始めようかね。秘伝マシンはまた今度にしよう。
それからぽてぽてとクチバシティの中を散策。秘伝マシンの件は残念であったが、その代わりに色々と収穫があった。
まず釣り好き兄弟の兄とか言う人物から“ボロのつりざお”をもらった。名前はアレだが、この釣竿を使うと、水がある場所でポケモンを釣ることができるすごいアイテムらしい。水タイプのポケモンはアカヘルの1匹のみ。しかし、これでアカヘル以外の水ポケモンを捕まえることができるだろう。
その後、うきうき気分で釣りをしてみた。
50匹ほどポケモンを釣り上げたが、全てコイキングだった。
もしかしたら場所が悪かっただけで違うポケモンも釣れるかもしれないが、釣竿はパソコンの中で眠っていてもらうことに。二度と使うか。
まぁ、ただでもらった物なんだ。文句を言えるような立場ではないだろう。
そんな言い訳を自分にしつつ、また散策を再開。
その次に訪れた家では、オニスズメとカモネギを交換してほしいと言っている男性と出会った。オニスズメは持っているし、カモネギなんて言うポケモンは見たことも聞いたこともない。此処は是非とも交換してもらいたいところ。
男性の話を聞いた後、急いでポケモンセンターへ行って、パソコンからオニスズメを取り出し、また男性の家へ。
そしてオニスズメを持ってきたことを男性へ伝えると、喜んで交換してくれると言ってくれた。そう言えば急いでいたせいで、オニスズメの状態を見ていなかったと思い、様子を確認すると麻痺状態で瀕死直前だった。……うむ、これは黙っておこう。
その後、何の問題もなく交換が終了。“おしょう”なんて言う名前の付けられたカモネギが新しい仲間になった。
さて、オニスズメの状態を見られる前にさっさと逃げようじゃないか。しかし、オニスズメなんぞ、何処にでもいると思うんだが、どうしてあの男性は交換して欲しかったのやら……
因みに、男性から交換してもらったおしょうのレベルは15と高くない。だからパソコンへ預けてしまおうとも思ったが、せっかく交換してもらったのだし、とりあえずパーティーへ入れておくことに。皆仲良くするんだぞ。
また、おしょうの容姿だが、カモネギと言う名前の通り、カモがネギを持っているポケモンだった。でも目つきがちょっと凛々しくて素敵。ポケモン図鑑で確認したところ、どうやらネギではなく何かの植物の茎らしいが、どう見てもネギなんだよなぁ……このまま鍋に入れたら美味しくいただけそうだ。
そして、その次が今回で一番の収穫だったと思う。
おしょうが仲間になり、釣竿で沈んでいたテンションもやや上昇。そんな気分で訪れたのがポケモンだいすきクラブと看板に書かれた建物だった。
その名前はどうかと思ったが、まぁ、入るだけ入ってみようと思い中へ入ると、ポケモンを連れた幾人かが雑談をしていた。
――あたしの可愛いパウワウ! 抱きしめるとキューって鳴くの!
それは断末魔の叫びじゃないだろうか。
――なにを言っている! うちのピカチュウの方がその倍は可愛いぞ!
まぁ、ピカチュウは可愛いよな。この世界でもペットとして人気はありそうだ。
ポケモンだいすきクラブの中はそんな感じで、やれ自分のポケモンのどこが可愛いだのなんだのを話す場らしい。俺だって自分のポケモンへそれなりの愛情を持っているが、此処の人たちほどの気持ちではない。だから、このだいすきクラブの人たちは素直に尊敬できる。
しかし、俺のポケモンたちは俺のことをどう思ってくれているんだろうな? 嫌われていなきゃ良いが。
「ほっほほ、よく来たな。わしはポケモンだいすきクラブの会長じゃ」
そんな言葉をソファーに座った老人が俺にかけてきた。
ああ、クラブと言うくらいだしやっぱり会長とかがいるのか。
「飼っとるポケモンは100匹を超えとるぞ!」
マジかよ。それはすごいな。
オーキドの爺さんはこの会長にポケモン図鑑を頼んだ方が良かったんじゃないだろうか。
「で……君はわしのポケモン自慢を聞きに来たのかね?」
いや、そんなことはないんだが……まぁ、聞いてあげるくらいなら良いか。此処で機嫌を良くしておけば、珍しいポケモンを見せてくれるかもしれない。
「はい」
「そうか! それでは始めるぞ!」
俺が聞くと答えた瞬間、会長の顔がパーっと明るくなり、嬉しそうにポケモン自慢を始めてくれた。
「あのな、わしのギャロップなんじゃがな……」
ああ、ダメだ。これは長くなりそうだ。
他人の自慢話でも自分のためになるようなことなら良いが、今回は本当に何の役にも立たないよなぁ。ただ、聞いていないと思われるのもアレだ。適当に頷いたりしておこう。
「……本当に……でな。もう可愛くて……」
そう言えば、ポケモンをペットにしている人間は多かったが、ポケモンを売っている店はまだ見たことがないな。一応、アカヘルは500円で買ったわけだが、そう言う取引ってどうなのだろうか? ポケモンの売買はそれなりの儲けになりそうな気もするが。
「さらにな……もう、すごすぎ……たまらん……くう」
ああ、でもポケモンの繁殖方法が確立されないとそれも難しいか。一々捕まえて売っているようじゃ安定しないだろうし。
しかし、ポケモンはどうやって繁殖しているんだろうな? ニドランのように雄と雌で分かれているポケモンはいたし、デブチュウのようなポケモンに雌雄があっても不思議ではない。しかし、いつか見たコイルやビリリダマなんかに雌雄があるとは思えない。
「はー! ……抱きしめて、寝るときも……」
う~ん、やはりポケモンと言う生物がよく分からんな。サント・アンヌ号の食堂にいたコックは――今日は牛フィレ肉のステーキだよ。なんて言っていたから、一応、この世界にもポケモンと人間以外の動物はいるらしい。
まぁ、牛ポケモンの肉と言う可能性もあるから、そこはなんとも言えないか。
「ありゃ、もうこんな時間かちょっと喋りすぎたわい」
もうアレか? ポケモンってのは生物とは別の分類と考えた方が良いのだろうか? 生物を構成している最小の単位は細胞だと思ったが、ポケモンはどうなのだろう。
ニビシティで見た博物館にポケモンの化石があったことから、少なくとも骨はあるはず。
「わしの話を聞いてくれたお礼として君にはこれをあげよう」
じゃあ、代謝系はどうだろうか。ポケモンが何かを食べている場面に遭遇していないが、ポケモンだって生きているのだし、何かを食べているとは思う。フシギダネやナゾノクサのような植物ポケモンだって、光合成をするためにもどうしても水は必要だ。
う~ん、分からんな。
「あれ? おーい、ちょっと聞いてる?」
「ああ、聞いてるよ。ポケモンは難しいな」
うん? なんだもう自慢話は終わりで良いのか? 思ったよりも短いんだな。
「……ま、まぁ、いいか。ほれ、これを君にあげるよ」
なんとも微妙な表情をしていたが、そう言って会長がチケットのような物をくれた。
はて、これはなんですか? サント・アンヌ号のチケットとかならいらないんだが。
「自転車の引換券じゃよ。それを使えばタダで自転車と交換できる! わしにはオニドリルがいるから、行きたいところへひとっ飛びじゃ」
え……マジで? 自転車ってあの100万円する自転車?
それをこんな簡単に?
「わしは自転車などいらん。君が好きに使ってくれ」
「お、おお……ありがとう。ありがとう。これは嬉しいよ」
自転車のことはすっかり諦めていたからなかなか嬉しい。それにもしお金に困った時は、自転車を売れば良いだろう。この世界で何かを売る場合、どうやら買い値の半分で売れるらしいから、自転車は50万円で売れるはず。
ちょっと話を聞いただけだと言うのに……いや、本当にありがとう。
その後、もう何度か会長にお礼を言ってからポケモンだいすきクラブを後にした。
ふむ、まさかこんなこともあるとはねぇ……人生わからないものだ。さてさて、そんじゃ先へ進むとしましょうか。