そのポケモンの世界で俺は   作:puc119

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第30話

 

 

 さて、エレベータのカギも手に入り、先程のロケット団員曰く、これでボスのところまで行けるそうだが……そもそも俺って何をしに此処へ来たんだろうな? ゲームセンターにいたロケット団員が気になり、そこからは流れで此処まで来てしまったけれど、よくよく考えればなかなかにぶっ飛んだことをしている。

 此方はただの子供。そんなただの子供が、ノリと勢いだけでマフィアの本部へ殴り込みとか明らかにおかしい。てか、子供じゃなくても頭おかしい。

 

 そんなことができているのは、俺のポケモンたちのおかげだが……どうだろうか? そろそろやめておいた方が良いんじゃないかって気もする。いくら相手が頭の足りていない集団だとしても一応、マフィアなのだし。

 しかし、此処まで来たらもう引きたくないと言うのもまた事実。そうだとすると、此処で引かないための理由が欲しくなる。理由もなく動き回れるほど、俺は真っ直ぐな人間ではないのだし。

 

 とりあえず、俺はロケット団に恨みなどない。鬱陶しいとは思うものの、経験値とお金をもらえる有り難い奴らだ。他の人がロケット団に迷惑しているから、俺が代わりに嫌がらせをすると言うのも流石に筋が通らないだろう。

 じゃあ、開き直ってロケット団の奴らとポケモンバトルをしたいと言う理由も良いかもしれないが、正直ポケモンバトルには其処まで興味がないんだよなぁ。こんな時ばかりは、この自分の面倒臭い性格が鬱陶しい。

 

 ふむ、そうなると……ああ、そうか。シルフスコープがあるじゃないか。あのガラガラの御霊をどうにかしてやりたいのは事実。そして、そのためにはシルフスコープが必要なはず。んで、そのシルフスコープはどうやらロケット団が持っている、と。

 うむ、漸く理由ができた。ここはちょいとシルフスコープとやらをいただこうじゃないか。ロケット団の奴らだって盗んだモノだそうだし、使った後は俺が責任を持って返そう。

 

 なんて言い訳を、クルクルと回りながら考えてみる。そんな言い訳をしなくたってやることは変わらないだろうけれど、気持ちってのは大切なんだ。

 しっかし、ホントこの床はなんなんだろうな……

 

 

「侵入者発見!」

 

 そんな回転床エリアを抜けると、ロケット団員と遭遇。経験値とお金は有り難いが、できれば見たことのないようなポケモンを使ってほしい。ロケット団員ったら、皆使ってくるポケモンが似ているんだ。支給されたポケモンなんだろうか?

 

 さて、それじゃ頼んだよアカヘル。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、くそっ。お前みたいな子供が此処へ来た目的はなんだ!」

 

 とりあえず回転床エリア後のロケット団員との戦闘に勝利。“れいとうビーム”を使えるようになったアカヘルはかなり強い。

 また、“れいとうビーム”だけど、どうやら飛んでいるポケモン……多分、飛行タイプ的な奴らに効果が抜群らしい。まだズバットでしか確認できていないが、間違いではないだろう。そうなると、デブチュウの立場がますます悪くなるわけで……い、いや、まぁ、良いんだ。デブチュウ可愛いし。アイツはいてくれるだけ良い。あのふくよかな身体を見ているだけで癒される。あと、ほら。水タイプならまだデブチュウも活躍できる。

 

「シルフスコープってのを探しているんだよ。持ってるんだろ? お前らが」

「……俺は知らねえよ!」

 

 そうかい。そりゃあ、残念だ。

 う~ん、やはり幹部的存在じゃないと、何処にあるのか知らないってことか? しかし、今まで出会ってきた奴らはドイツもコイツも下っ端っぽいんだよなぁ。まぁ、ボスと会ってみるのが一番良いか。

 

 

「侵入者ってのはお前かっ!」

 

 あら、また新しい奴か。そろそろ“れいとうビーム”が撃てる回数も怪しいから一度回復しておきたいところなんだが……

 まぁ、撃てなくなったらハラマキやクリボーに頑張ってもらおう。

 

 

 

 

 そんな予想通り、そのロケット団員と戦っている途中で、“れいとうビーム”が使えなくなってしまった。ただ、アカヘルのレベルも34となってくれたし順調順調。

 

「な、なんでこんな子供に……」

 

 それにしても、こいつらの使うポケモンは弱いな。使っているポケモンがあまり強くないってのもあるだろうけれど、そもそもレベルが低すぎる。その辺の草むらへ行き、野生のポケモンと千回くらい戦うだけでレベルは上がると言うのに、どうしてそれをやらないのだろうか? それとも、俺がおかしいのか? 実は普通はそんな簡単にレベルが上がらないとか。いやいや、まさか、そんな……ねぇ?

 

「わ、わかった。言う……ボスに会いたいなら、エレベータに乗るんだな」

 

 だから、聞いてもないのにそう言うこと喋るなって。俺なら大丈夫だって。ちゃんと一人で会いに行けるから。なんで、こう言う時は無駄に親切なんだよ。反応に困るからやめてくれ。

 

 ――俺は絶対喋らないぞ! 的なことを言ってくれた方がよっぽど有り難い。

 

 よくまぁ、こんなんで組織が成り立っているものだ……もしかしたら、此処のボスはかなり優秀なのかもしれない。少なくとも、俺じゃあコイツらをまとめ切れる気がしない。

 

 ホント、なんだかなぁ……

 

 そのロケット団を倒し、少し進むとエレベータらしきものが見えた。アレに乗ればいよいよロケット団のボスと会えるのか。

 ……うん、多少は緊張してきたかもしれない。今までの空気が抜けすぎていたってこともあるのだろうけれど。

 

 エレベータの中へ入ると、地下1、2、4階を選べるようだった。現在いるのは地下2階。多分、ボスがいるのは地下4階だろうが……とりあえず地下1階へ行ってみようか。できれば一度、ポケモンセンターへ行っておきたいし。

 

 そんな考えをしてから地下1階を選択。

 そして、地下1階へ着くと直ぐにロケット団員に見つかった。あら、出待ちですか。

 

「んな! どうしてエレベータから子供が!」

 

 どうやら、このロケット団員まで連絡はいっていなかったらしい。大丈夫か? お前、ハブられてるぞ?

 

 そんなちょっと可哀想なロケット団員だったが、ハラマキが切り裂き問題なく勝利。ハラマキさんはホント頼りになる。

 

 さて、此処は地下一階の何処なのだろうか? できれば出口に近いと助かる。またあの回転床エリアを抜けるのも面倒だし。

 しかし、ゲートみたいなもので通路が塞がれているため、その部屋から出られそうになかった。う~ん、此方はハズレだったか。

 

 なんて思っていたが――

 

「マ、マズイ! 今の騒ぎでゲートが開いてしまった」

 

 ゲートが開いた。なるほど、此処はアジトへ入って直ぐの塞がれていたあの場所だったのか。

 

 ……いやいや。流石にちょっと待てって。

 

 

「……閉めろよ」

「えっ? だ、だって、もう開いちゃったし……」

 

 だから閉めろって。俺が言うのもおかしいが。これじゃあ、ボスのところまで直通になっちゃうでしょうが。それはマズイだろ。

 

「そ、それに俺、閉め方知らない……」

 

 なんなのコイツ。じゃあ何のために此処にいたんだよ。

 いや、有り難いよ? 有り難いけどさ……

 

 はぁ……ポケモンセンター行ってきます。直ぐ帰ってくるからちょっと待っててくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アジトから抜け、自転車を飛ばしポケモンセンターへ直行。其処で回復してもらい、またロケット団のアジトへ。

 俺がポケモンセンターへ行っている間に、もしかしたら色々と対策をしてくれたんじゃないかと期待したが、特に変わった様子はなかった。例のゲートも開きっぱなしだ。お前らにはがっかりだ。それで良いのかロケット団……

 

 はぁ、もうサクッとボスに会ってこようか。俺はもう疲れた。精神的に。

 

 そんなことで、エレベータへ乗り地下4階へ。

 地下4階へ到着すると、ゲートの前に2人のロケット団員の姿。多分だが、ボスがいるのはあのゲートの先だろう。

 

「あー! お前はお月見山で俺の邪魔した奴じゃないか!」

 

 あら、一度あったことのある奴だったか。悪いけど俺は覚えてないぞ。だってお前ら皆姿が似てるし。もう少し特徴があれば覚えられるんだが。

 

 さてさて、漸くゴールも見えてきた。もう一踏ん張りだな。頼んだよアカヘル。

 

 

 

 

「すみません、ボス。力及びませんでした……」

 

 そんな二人のロケット団員を倒すとゲートが開き先へ進めるように。

 それにしても、このゲートはどう言う仕組みなんだろうか。このゲートさえ開けなければ、俺とボスを会わせなくて済むのに……まぁ、今回は有り難く前へ進ませてもらおうか。

 

 そのゲートの先は、他の部屋と比べて幾分立派な部屋となっていた。それは、いかにもお偉い方がいそうな場所。

 

 そして、そんな部屋の中には一人の男性。その服装はロケット団員が着ているような、あのダサいものではなく、スーツのようなもの。年齢は……俺と同じくらいと言ったところか。多分40数歳だろう。

 

 

「あんたが、ロケット団のボスか?」

「ああ、そうだよ。このロケット団でリーダーをやっているサカキだ。子供の侵入者がいるとは聞いていたが……まさか、本当に君みたいな子供だとは思わなかったよ」

 

 ふむ。今までの奴らとは違い、どうやら多少は会話ができるらしい。流石はボスと言ったところか。

 いや、まぁ、これが普通なんだけどさ。

 

「それで……君のような子供がロケット団のアジトへ何の用だ?」

「ちょいとシルフスコープってやつが欲しいんだ。持ってるんだろ?」

 

 正直、お前らに興味はない。悪いことをしている奴らが許せないと思えるほど、俺は出来た人間じゃないんだ。

 俺に関わらないのなら別に何をやっていようが気にしない。俺はそう言う人間だ。

 

「まぁ、持っているとも。だがな、それを簡単に渡すとでも?」

 

 そう言ってからサカキはモンスターボールを手に取った。

 結局、相手が誰だろうが、やることは変わらないらしい。多分、それがこのポケモンの世界って奴なんだろう。

 

「それに……」

「うん?」

 

 む、なんだか、このサカキって奴、やたらと喋るな。今までの奴らなんて、問答無用でポケモンバトルだったのに。

 

「私は君のような子供が嫌いなんだ。悪いが、私に歯向かうのなら痛い目にあってもらう!」

 

 ……子供が嫌い、ねぇ。

 

 そう言えば、俺も子供って奴はあまり好きではなかったな。

 

 ――いや、そうじゃないか。きっとただ俺は羨ましかったんだろう。子供が。

 色の消えたあの世界となってしまってから、子供と言う存在が随分と眩しく感じた。夢とか希望とかそんなものに溢れているあの存在……それが嫌で、羨ましかった。自分はもうあの世界へ戻ることはできないと思っていたから。

 

 

「ああ、それなら安心してくれ」

 

 

 しっかし、お前らは何かある度に、子供、子供と鬱陶しい。

 

 

「……何が言いたいのかね?」

 

 

 こんな姿になってから気づいたが……子供ってのも案外悪くはないんだぜ?

 

 

「俺も四十路を超えた人間だ」

 

 

 それじゃ見せつけてやれ、アカヘル。

 

 

 

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