「よーし、全部俺に任せとけ爺さん。レッド! 残念だけど、お前に出番はねーぜ。そうだ、姉ちゃんからタウンマップを借りていこう。お前には貸さないように言っておくから、来ても無駄だからな!」
爺さんの言葉を受け、グリーンが直ぐに元気な声を出した。
ふむ。タウンマップが何か知らんが、なるほど、とりあえずお前の家に行けば良いのか。生意気な性格ではあるけれど、グリーンってば意外と親切なのね。
「じゃあな。爺さん、レッド」
そう言って、グリーンは意気揚々と研究所を出て行った。元気な奴だ。俺も見習った方が良いんかねぇ?
さて、これで漸くこの世界の目標ができた。
つまり、全てのポケモンを捕まえれば良いってことなのだろう。それは俺の夢ではないわけだが……まぁ、たまには他人のために頑張ってみるのも悪くはない。
でも、ポケモンってどうやって捕まえれば良いんだ? ポッポくらいなら、素手でも捕まえられそうではあるけれど。
「全く、アイツは……レッドよ」
「うん? どったの?」
爺さんもグリーンには手を焼いていそうだ。
「これからお前さんは色々な街へ行くと思うが、街にはジムと呼ばれるものがある。ジムはポケモンバトルの腕試しができる場所じゃ。ポケモンを集める序でに、ジムへ行ってみるのもいいと思うぞ」
ジム、ねぇ。正直、ポケモンバトルにはそれほど興味はないが……まぁ、暇だったら行ってみるのも良いかもしれない。ただ、初心者の俺がそのジムとやらへ行ってもとは思う。
「了解。時間があったら行ってみるわ。そんじゃ、そろそろ俺も行くよ」
「ああ、グリーンのことも合わせて頼んだ。世界中に住むポケモンたちがレッドのことを待っておるぞー」
さらりと、面倒なことを押し付けないでほしい。グリーンは知らん。
さて、行くか。
オーキド研究所を出たあとは、グリーンに言われたので、とりあえずグリーンの家に向かった。
グリーンの家は俺の家と違い、平屋建てらしく、中には女の子が一人いただけだった。年齢的に考えると、グリーンの姉と言ったところだろうか。
「あら、レッドじゃない。オーキドのお爺ちゃんにお仕事頼まれたんだって? 大変ねー」
おろ、グリーンから聞いたのかな? 話の早いことだ。
「これあげるから使って。自分のいる場所や、街の名前を知りたい時、そのタウンマップを使うと便利よ」
だなんて言って、女の子から地図のような物を受け取った。まさか、いきなりもらえるとは思わなかった。
「随分と太っ腹なんだな」
「私は太ってない!」
そう言う意味じゃない。
しかし、これは有り難い。素直に感謝しよう。
「ありがとう。助かる」
「ん。別に私は使わないからいいよ。グリーンのことお願いね。あの子ったらすぐムチャしちゃうから」
また頼まれてしまった。
全く、グリーンも世話のかかる奴だなぁ。まぁ、グリーンみたく小さな子供が一人旅なぞ、大変なこと。此処は大人として、少しくらいは見てやるのも良いかもしれない。
そのくらいしか、大人っぽいことはできないのだし。
地図ももらい、いよいよ準備が整った。
これでもう、マサラタウンに用事はないわけだが……まぁ、やっぱり挨拶くらいはしておいた方が良いよな。次、いつ帰ってこられるのか分からないのだし。
「おかえり、レッド。どうしたの? 休んでいく?」
「いや、大丈夫。元気だから」
自分の家により、母親へ挨拶。
俺にはこの母親との思い出なんて何もない。けれども、きっとこの母親は違うはずなんだ。今までこのレッドと暮らしてきた思い出があるはず。
俺がポケモンに詳しくないってのもあるが、この世界のことはよく分からない。
夢か現か。
ゲームかリアルか。
「多分だけど、これからはなかなか帰ってこられなくなると思う」
「……うん」
それでも、通したい筋ってものは変わらない。この世界で……この、色や夢、希望とか理想なんて言う、まとめて俺が忘れてしまったモノが残るこの世界で頑張ろうと決めた。
それなら、それなりにやるってものだろう。
「でも、きっと帰ってくるから。ちゃんと元気に帰ってくるから」
「……うん」
きっと、この世界でも失敗ばかりするだろう。
ただ、もういいじゃないか。こんな歳食ったおっさんに失うものは何もない。ひたすらに、我武者羅におっさんなりの悪あがきって奴をこの世界に見せつけてやろう。
「心配するなとは言えないけれど、待っていてくれると嬉しい」
「……うん。わかった。ふふっ、大きくなったわね、レッド」
歳食ったおっさんが夢を見て何が悪い。
枯れ果てたおっさんが成長を望んで何が悪い。
もう一度、前へ進ませてもらおう。
「だから、いってきます」
「いってらっしゃい」
随分と時間はかかってしまったが、これでチュートリアルは終了。
此処からが漸く俺の物語の本編スタートだ。
マサラタウンを出発し、とりあえずまたトキワシティまで戻ってきた。
母親との挨拶を終えたあと、もう一度爺さんの所へ行き、ポケモンの捕まえ方を聞いてみることに。詳しくはわからなかったが、どうやらモンスターボールを投げればポケモンを捕まえることができるらしい。んで、そのモンスターボールってのはフレンドリィショップに売っているんだと。
そんなわけで、とりあえずモンスターボールをいくつか買ってみたが……はて、どうするか。誰か見本でも見せてくれる人がいると助かるんだがなぁ。
そんなことを考えつつ、トキワシティの西へ延びていた道を進んでみることに。タウンマップによると、此処は22番道路らしい。この先にはポケモンリーグとやらがあるっぽいが……なんだろうな。ポケモンリーグって。
ポケモンリーグとやらが気になったため、とりあえず行ってみることに。それにしても、このタウンマップは有り難いな。街の数もかなり多いみたいだし、コレがなければ大変だっただろう。
そして、草むらを押し退けながら進み、漸く道っぽい所へ出た時だった。
「あーっ! レッドじゃねーか。ポケモンリーグに行くんだったらやめとけ。バッジを持ってねーと、見張りのおっさんが通してくれねーよ」
グリーンが現れた。さっき別れたばかりだが、相変わらず元気なようで何よりだ。これなら爺さんも安心だろう。
しかし、そうか。バッジってのがないとポケモンリーグへはいけないのか。
いや、バッジってなんだよ。
「……それよりさ、お前のポケモン少しは強くなったかよ?」
「無茶言うな。なるわけがないだろ。研究所を出てまだ全然時間が経ってないんだから」
何を言っているんだコイツは。
もしかして、グリーンって思っている以上に残念な子供なのだろうか? ホント、世話のかかるや奴だ。
「あー……そ、そうか。ま、まぁ、とりあえず勝負だ!」
マジかよ、容赦ないな。
でも、前回は俺が圧勝できたのだし、アレからハラマキも強くなった。負ける要素はないか。
「いけっ! ポッポ!」
なんて元気の良いグリーンの声。
あら、グリーンってば、いつの間にかポッポを捕まえたのか。俺なんてまだ捕まえてないのに。むぅ、これは俺も頑張らないとだな。
さて、ポッポのレベルは…………9だと?
「おい、ちょっと待てグリーン」
「な、なんだよぉ」
レベル9? 9? いや、流石におかしいだろ。俺のハラマキですらまだレベルは7。そうだと言うのに、あのポッポがレベル9はおかしい。
てか、あの短時間をどう頑張れば此処までレベルが上がるんだよ。
「お前、どうやってレベル上げたんだ?」
「そ、そんなの教えるわけないだろ! 俺が天才だからだよ!」
なんだよ。教えてくれたって良いじゃないか。ほら、お互い協力し合いながら旅を進めようぜ。俺からは何も協力しないが。
とは言え……いや、困ったな。これ勝てるのか? 運良くポッポに勝つことができても、どうせゼニガメもいるよなぁ。
まぁ、やるだけやってみるか。
「よし、行ってこいハラマキ。容赦はいらん。鳥畜生に格の違いを見せてやれ」
その後、HPをかなり削られはしたものの、どうにかポッポに勝つことができた。そして、ポッポを倒したところで経験値をもらえ、ハラマキのレベルは7から8へ。
倒したポッポのレベルが高かったと言うのもあるだろうが、その経験値はかなり多い。もしかしたら、草むらのポケモンと戦うより人との戦いの方が多く経験値をもらえるのかもしれない。
と、まぁ、ポッポを倒し、ハラマキのレベルが上がったのも良いのだが、次のゼニガメは流石に倒すことができなかった。てか、ゼニガメのレベルも8となかなか高い。ホント、どうやって育てたのやら。
「やりー! 俺って天才?」
勝負に勝ち、グリーンはそんな言葉を落した。
なにコイツ。すごいムカつくんだが。
「って、あれ? レッド、お前お金持ってないのかよ!」
仕様が無いだろ。フレンドリィショップで色々買ってたら、有り金が全部消えたんだ。フシギダネ。
ああ、そっか。バトルに負けたらお金を払わなきゃいけなかったんだっけ? そりゃあ悪いな。
むぅ、ハラマキも負けてしまったし、早くポケモンセンターへ行かないと。苦労かけて悪いなハラマキ。俺ももっとちゃんとしたポケモントレーナーになれるよう頑張るよ。
そんな俺だけど、ついてきてくれると嬉しい。