広西大洗奮闘記   作:いのかしら

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どうも井の頭線通勤快速です。

人間関係は、友人だけじゃない。


広西大洗奮闘記 40 あくまで予測

 戦車道の授業後、真っ先に華は生徒会室に駆け戻った。そして一言告げて会長室に入る。

「小山先輩、只今戻りました。」

小山は資料を片手に顔をこちらに向けた。

「お疲れ様。手続きは問題ないわ。それじゃ早速、練習の様子を聞きたいんだけど……」

「麻子さんがもうすぐ来ますから、それと共にした方がいいでしょう。」

「じゃあその前に。」

「どうしました?」

「これ見てくれる?」

小山から手渡されたのはB5の片面刷り、そんな単純なビラだ。だがその一番上には、

「赤峰光……」

「内容見てくれる?」

「……つまり反生徒会と。」

「生徒会そのものかはともかく、今の運営体制と方針には反対みたいね。」

「しかし……これは住民からの支持はつきそうですね。」

「私たちから見たら……不可能と分かるんだけど……有権者に住民を含めているこの学園艦の運営体制だと……」

「向こうに有利ですね、こちらが情報を開示でもしない限り。」

「しかしそれをすれば、何故そのような情報を隠匿していたかが問題となります。」

「しかも安定がもたらされる前に情報を開示すれば学園艦の混乱は間違いありません。それを考えて会長さんはこの事を伏せさせたのでしょう。」

「ええ、それを辞める気は毛頭ありません。」

背後のノックが二人の意識をそちらに向かわせる。

「はい?」

「冷泉だ。」

「どうぞ。」

「失礼する。」

真っ先に二人のところに来た冷泉に、小山は少し姿勢を正した姿を見せた。

「さて、本題に入りましょう。今回参加して頂いた戦車道はどんな雰囲気だった?」

「そうですね……率直に言えば悪いです。」

「特に目立ったのはアヒルさんチームだな。無論カモさんも良くなかったが、それよりも酷い。」

「まぁカモさんは生徒の様子を探りながらでしょうしそうだとは思いましたが、アヒルさんチームですか……」

「そしてそれよりも酷かったのが秋山さんだ。」

「秋山さん⁉︎」

「何せあの西住さんからきつめの口調で注意されたくらいだからな。」

「……なるほど。」

「カバさんチームはエルヴィンさんがどうやらおかしかったようだ。西住さんが何度か聞き返していた。ちなみに西住さんはいつも通りだったな。」

「ウサギさんチームも問題なしです。他の方も特には……」

「……配給の影響、と断言するには影響が大きすぎますね。」

「……やはり何かしらの動きがあり、それに戦車道の人たちの一部が関与しているとみていいだろうな。」

「ちょっと聞きますが……エルヴィンさんだけ、ですか。」

「ああ、それは確実だ。おりょうさんの操縦も左衛門佐さんの砲撃もほぼ変わりはなかったからな。」

「……エルヴィンさんと……アヒルさんか。」

「あの、前者は分かりませんが、後者はこれがヒントかも……」

「ん?赤峰さんの?」

「ここの部分です。」

「そういえばそんなものもあったな。」

華が指差したのは、ビラの中程に書かれていた文だ。

『学園予算の分配による学園の魅力の多角化を行い、再度の廃校要請を回避するための実績を生み出します!』

「これの『学園の魅力の多角化』、という所に部として現在正式な活動日程が取れていないバレー部が含まれるのでは?」

「なるほど。確かに彼女らからしたら部の復興は願っても無いことだ。あそこまで混乱していたのも頷けるな。」

「しかしそうなると、残りの二人は何でしょうか?」

「……エルヴィンさんは分からないが、秋山さんなら心当たりがある。」

「何でしょう?」

「前も言ったと思うが、秋山さんは風紀委員に呼び出されたことがある。そこで何かしらの心を乱されることを言われたか、昨日の車輌清掃に来なかったのが彼女曰く勉強のことなのでその関連で何かあったか。考えられるのはその2択だ。」

「後者、ですかね?」

「いや、私は前に秋山さんが風紀委員に呼び出された時期なども考えると前者も捨てがたいと思う。仲間を疑いたくはないが、この際仕方ないだろう。」

「しかし、何かを考えるにしても情報が足りません。予測等は立てられますが、それらはあくまで予測です。真実とは限らない。」

「しかもエルヴィンさん相手には予測すらも立て辛いと思います。」

「何か確信を導く手立てはないものでしょうか……」

「方法が無いわけじゃない。」

「えっ?」

「だがそれはある一人の不信感を招くことだが。そしてその人は、敵にするべきじゃない。」

 

 

「まぁ、戦車道の報告は受けるまでもないわね。」

「はい……ですが、申し訳ありません。」

縮こまって優花里が机の前で頭を下げる。

「別にあなたは『私たちから頼んで協力して貰っている』だけ。あなたが罪悪感を抱く理由はないわ。」

「……はい。」

「それで、これからヤボクの下に入ってもらうんだけど、ヤボクいる?」

「はい、ここっす。」

「それじゃ、例の場所に秋山さんを案内して。あと仕事の説明も。」

「ほい。じゃ、よろしくお願いするっす。」

「は、はい。」

やはり優花里はこのアンツィオにぴったり合いそうなノリに慣れない。ゴモヨに礼してヤボクに連れられて校舎内を歩き回って辿り着いたのは、幾つもの移り変わる画像が見える部屋だった。

「ここは?」

「監視室っす。今回の件に伴って完全にウチの管轄となってるっす。」

「ここで何をすればいいでありますか?」

「放課後の生徒の監視っすね。とはいっても実質生徒会だけっすけど。」

「生徒会、ですか。」

「そっす。まぁ、そんな変なことはないっすけどね。放課後にシフト通りに来て、このメモ以外のことがあれば上に報告、といった程度っすね。昨日なら冷泉麻子が来たとか。それ以外は本当に疑わしいの以外は別に言わなくていいっす。生徒会に反抗しそうな人間を見つけるためっすけど前の一件が功を奏したようで。」

メモにあるのは配給など午後の定時に行われる事を纏めたものだ。

「そんで、秋山さんっすけど、シフトは一応こんな感じで組んでいるので、まぁこんなご時世っすし用もないと思うんでお願いするっす。」

「週に5時間でありますか……」

「みんなそんなもんっす。人によっちゃ3時間こなしてから夜間の見廻り行く奴もいるっすから。」

「……皆さん大変なのでありますね。」

「見廻り専任は自衛武器の使用訓練も毎日ありやすから、どこも似たようなもんす。それで、ゴモヨ委員長からまた潜入の仕事があるまではここに居るようにとの御達しなんで、よろしくっす。」

「は、はい。よろしくお願いするであります!」

画面の方を向いていた優花里は上司と見定めたその人物に敬礼を返す。

「ウチら店舗運営補佐はやってる店がなくなっちまってんで、あとは幾つかの場所の監視任務もあるんすが、秋山さんはここをお願いするっす。」

「分かりました。」

「それと、少しこちらに来て頂いていいっすか?」

「はい?」

優花里はヤボクの案内される先、その部屋の画面から離れた奥へ進む。部屋のものは画面に集中していたり、少し仲間内で話をしている程度でこちらを気にする素振りはない。

「どうしました?」

「これは今回の監視の件には関係ないことで私が個人的に思うことなんすけど……」

背後を一回気にする。

「……今回のこの補給停止、秋山さんはどう考えているっすか?」

「どう、とは?」

「本当に我々の世界でネットが完全に切られ、寄港も補給も出来ずに一月近く漂流したまま国際社会からほっとかれることが可能か、ということっす。」

「……」

「……私は風紀委員の一員すし、反発したりする気は毛頭ないっすが、今の上はそこへの注視を怠っている気がするっす。秋山さん、あの台湾からの帰還を生で見て、香港行きの情報を掴んだ方として、何か分かっていることはあるっすか?」

「……」

答えに躊躇する。優花里にとって自身の考えは一寸の狂いもなく断定しきれるものではないが、疑えないのもまた事実。だが、彼女は信頼に値するか、と言われると否である。仕事上の関係に過ぎない。そして下手に不安は煽るべきじゃない。

「……そこまでは……」

「そうっすか……潜入までは無理っすけど情報の分析から判断するしかないっすね……それじゃ、シフト通りに仕事お願いするっす。時間取っちゃってすまないっす。」

ヤボクは画面の方に戻った。ただ髪型だけでない壁を感じつつも、シフト外であった彼女はちょっと告げてその場を離れた。




次回予告

干し芋の逆襲!
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