広西大洗奮闘記   作:いのかしら

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どうも井の頭線通勤快速です。
みぽりん誕生日おめでとうございます!


広西大洗奮闘記 45 我らの相手

 69の階段がそれぞれ音を出す、二人分。そして辿り着いた先の挨拶は簡単だ。

「……『マリが入院したそうですが?』」

「『飯原麻里は大洗学園艦総合病院で順調に回復しています。』」

「どうぞ。」

予め伝えておけば前みたいな手間は省ける。見張りの者は鍵と扉を開けて律儀に礼をするとゴモヨを奥へ案内した。やはり床が光を反射している。案内させた先で、見張りの者は鐘を鳴らし3人を呼び出した。それぞれの個室からぞろぞろと吐き出され、牢の向こう側に並ぶ。

「おや、確かあなた方に呼び出されるのは朝だと伺っていましたが?」

「その前に一度来ても文句はないでしょう。風紀委員長と副委員長が。」

「ではお二人揃って何の用です?」

「そうね、元々当日まで待たせる計画だったけど、流石にちょっとやって貰うわ。」

「何を?」

「これ。」

ゴモヨは見張りの者が握る鉄の棒を指差す。

「……なるほど。流石に訓練無しでは使えないですし。」

「本来なら捕らえている人間に渡すべきものじゃないけど、この状況だからね。マニュアルなら風紀委員の大体が持ってるから、指導を受けといてちょうだい。あと訓練後はちゃんと見張りに返すこと。」

「はいはい。」

「……まぁいいわ。しっかりやってちょうだい。」

「それで例の件はいつになるんです?」

「そうね……一週間以内のあなた方が予測がつかない日、とでも行っておこうかしら。」

「それってアレでしたっけ?来週の火曜日にあるということは月曜日に分かるので、その連鎖で予測がつかない日、ということは不可能という問題でしたっけ?」

「いや、そんな理屈抜きでそんな日は来ないさ。何故って、毎日今日こそ解放されると思っておけば、予測がつかないなんてことはないからな。」

「そういうことよ。それで、お詫びは何がいいかしら?」

「そうですね。まぁ、解放される日までには考えておきますよ。」

「じゃあ、準備もあるしここで失礼するわ。ここなら声も漏れないし訓練はしっかりやってちょうだい。」

「分かりました。」

ゴモヨが手を振りながらその場を立ち去るとパゾ美がそれに続き、それを見張りが追う。そして再び138の高い音を鳴らして太陽の下に立ち、思わず手で目の上を覆った。

 

 風紀委員室の自身の机につくと、机の上の書類に目を通す。それは監視対象となっている者に関する情報、まぁ何もないとあるだけだが、とそれ以外にサインのなされた一枚だ。その一枚の内容を見ると、どうやら本丸は中立を守るようだ。それは安心だ。個人のみといえど、その個人が学園艦にもたらす影響は計り知れない。近くの棚の特定のファイルの口を開き、中にそれを滑り込ませる。席に戻るとひょっこりとヤボクが正面に現れた。

「どうしたの、ヤボク?」

「一つだけ報告っす。生徒会が新たに動き出したみたいっすね。タイをを対象とする新たな計画案を策定しているみたいっす。」

「……香港が時間かかっているから、可能性をばら撒こうとしているのね。そういえば、タイって学園艦持ってたかしら?」

「確か国立だか王立だかの学園艦がタイ湾にいたはずっす。確かチュラロンコン学園っしたっけ?」

「妥当な名前ね。まぁ、運営経験あるなら狙い目なのかしら?」

「まだ生徒会も詳しく決めてないみたいなんで判明次第報告するっす。」

「よろしく。それにしても生徒会もこの時期になって他の候補を考え始めるとは、余裕こいてるわね。食糧も大分減ってるでしょうに。」

「まぁ、角谷会長を信頼しているとか何かじゃないっすか?」

「信頼は重要よ。だけど信頼だけじゃ運営は回らないわ。どちらかと言うと信仰の方が近いかもしれないけど。」

「……まぁ、引き続き調査は続けておくっす。情報は処理できれば幾らあっても困らないっすから。」

 

 机の上には一つの山とそれから取り残された丘がある。丘の方は小山が読み、ペンを取ることで標高が下がっていく。最後の一枚、筆記用具の供給調整に関する資料を手に取る。大概は現在の供給量で食糧が尽きるまでなんとか持ちそうだ、ただ一つ、チョークを除いては。

優先的に折れにくいチョークを供給したところ、その系統の備蓄が尽きかけているとのこと。それが尽きれば折れやすいチョークを使うことになる。即ち消費量が増える。そして折れやすいものなんてそう備蓄していない。供給量はもうギリギリのラインである。これ以上の削減が教師からの反発を導くことは想像に難くない。

だがもう夜も遅いうえ隣も就寝準備を始めている。明日に回すのがいいだろう。それは山の上に乗せず丘のあった場に戻し、山の上には重石を置く。華も片が付いたようなので、椅子を片付け倉庫から布団を引っ張り出し、床を確認した上で折られた布団を3倍に拡張する。人数分敷き終わると、水道へ足を運び身支度を整える。すでにシャワーは浴びているので、終わり次第布団に入り寝るだけだ。あくびをしながら一つ伸びをして布団に突っ伏す。

疲れた。会長が帰って来るまでは私は実質的なトップとして全力でここを混乱無しに存続させなければならない。会長はこの心理的苦悩をずっとこの一年受け続けていたというのか。こういう時は寝るのが一番、早く寝てしまおうと這い上がって明かりを消し、布団を被って目を閉じた。

このあと耳につく電子音がレム睡眠に入る前に聞こえたのは、小山にとって幸いだっただろう。身を起こすと隣の部屋の緊急無線まで向かい会話ボタンを少し力を入れて押し込む。

「はい、こちら生徒会です。」

「小山副会長はいらっしゃいますか!」

「私が小山ですが。」

「こちら船舶科の大橋です。角谷会長の乗っていらっしゃる船と無線が繋がりました。」

「ほ、本当に、本当ですか!」

思わず手をついて台の方に身を乗り出す。

「ええ、間違いありません。乗員含め皆無事だそうです。」

「今でも繋がってますか?」

「天候の悪化はなさそうですし、恐らくこのまま繋がり続けるかと。」

「す、直ぐに艦橋に向かいます!」

「分かりました。お待ちしております。」

小山は耳のイヤホンを外しボタンを押し直すと、上着を一枚羽織って、横たわる人々を避けながら生徒会長室から足を踏み出す。隣も暗く、ただ一ヶ所灯された光のみが目立つ。

「丹波さん。」

「あ、副会長。どうなさいました、こんな時間に?」

「会長が帰って来たわ。」

「え、本当ですか!それで結果は!」

丹波は読んでいた書籍を顔の方に風を送りながら閉じる。

「まだ分からない。けど直ぐに報告するから、ちょっと起きててくれる?」

「勿論です。」

丹波の返事を確認すると壁にかかった自転車の鍵のうち一番右を取り、ピンも取れる、いや飛ぶ。人に落ちなくて本当に良かったと丹波は起きている者が一人になったその部屋で少しずらした場所にピンを刺した。

 

 自転車に跨り、夜の街を駆ける。街灯はまばら、あとは自転車の光のみだ。風紀委員の居そうなところは避けるが急ぐ。目標は艦橋。辿り着くと艦橋の下に自転車を停め、そばの階段を駆け上る。階段の上で船舶科の船員に呼び止められると、膝に手をついて息を整えてから操舵室に案内される。

「はぁ……すいません、小山です。」

「副会長、こちらです。」

大橋が無線士の肩を叩き、変わるよう手で合図する。その者から無線機のちょっときつめのヘッドホンを借り頭にはめて、無線を繋いでもらう。

「もしもし聞こえますか?」

「はい、こちら輸送船B。」

「こちら大洗女子学園生徒会副会長の小山です。」

「小山副会長ですか。角谷会長に変わりましょうか?」

「すみません。よろしくお願いします。」

間が空いたので、船舶科にペンと紙を手元に用意して貰う、そこに何行も書くことになるだろうことを願い。

「小山か。」

「会長!ご無事ですか!」

「まぁ、何とかね。」

聴きたかった声。部分的な安心をもたらす。

「……香港との交渉は……」

「残念だが、香港とは失敗した。」

「……そうですか。」

「だが、別の場所との交渉に成功したよ!」

「!えっ、本当ですか!良かった……本当に良かった……それで別の場所って何処ですか?マカオですか?それとも仏領インドシナですか?」

「いや、そのどちらでもない。我々の相手は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中国国民党中央執行委員会西南執行部と中国国民党国民政府西南政務委員会だ。」

「はい?え、今中国国民党と仰いました?」

「言ったよ。」

「中華民国からは断られたんじゃ……」

「うーん……細かく言うと長くなるけど、簡単に言うと軍閥。」

「軍……閥?そ、そんな所と組んで大丈夫なのですか?」

「南京の国民党政権にも帰順するからね。」

「はぁ……それで、どのような条件で交渉されたのですか?」

交渉結果を紙に記載すると、1枚ではとても足りず何枚も追加の紙を必要とした。

「……実際良いものなのでしょうか、これは。」

「多分ましな方だよ。我々としてはこれ以上引き伸ばしてもジリ貧だからね。交渉してここまで持って行けただけでも成功さ。詳しくは戻ったらしよう。」

「いつ頃戻られますか?」

「明日の昼前らしいね、船舶科の二人の話によると。それでさ、小山にお願いがあるんだけど……」




そういえばこの小説、みぽりんの誕生日触れてない。
ガルパンファンとして何ということをしてしまったんだ……

次回予告

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