休載……休載したはずなのに……今作の主人公、会長の誕生日が今日だと知ったら……さらに評価バーが赤色になっていたら……新作を書かざるを得ない!
短時間で書いたので短めです。
朝日は大分前に上っている。するべきは間も無く訪れる下船の時間までに準備を整えることだけ、だと思っていた。
「そろそろ着くよー。起きてよー。」
「……あと5分。」
「それ3回目。」
「無理。いくら会長さんから頼まれてもそれは無理だ。まだ30分あるだろう。」
「それでも着替えたり朝飯食べてもらわなきゃいけないから、早く起きて。布団も片付けなきゃいけないし。」
「断る。」
このぐうたら娘を連れてきたのは思ったよりも間違いだったのかもしれない、と角谷は今更ながら後悔していた。この者の友人にして覚悟の元になっている者は、毎朝この苦労を味わっているのだろうか。
「ならば……」
仕方なく強行手段に出ることにした。まずは掴んでいる掛け布団を奪い取ろうとするが、離しそうなそぶりはない。次は端に周り、敷き布団を掴んで思いっきり持ち上げる。すると麻子はゴロゴロと床の上を転がった。敷き布団をどっかに取っ払うと、掛け布団をかけた姿で震えている。
「床冷たいだろう。」
「……」
「いい加減頼むよ。通訳が寝起きじゃ困るからさ。」
「……」
動かない。流石に角谷にも怒りというものが芽生え始めた。声じゃ無理だ。ならば一つ手段がある。角谷は麻子の腰のあたりに腕を入れ、もう片手で支えながら力を込め、布団ごと彼女の肩に乗っけた。
「よっ……と。いやー、やったらいけるもんだね。」
「……えっ?」
「行くよー。」
しばし呆然としていたようだが、間も無く背中から手で叩かれるような感触が伝わってきた。
「待てえぇぇぇ!」
「待てない。」
「降ろせえぇぇぇ!」
「無理。」
何か喚いているが、操舵室に運ぶまで気にしないことにした。操舵室についたら床に降ろす。
「冷泉くん、やっと起きたか。」
「いや、寝ているところを持って来ました。」
「……」
「着替えて朝ごはん。早く。」
「……はい。」
目が覚めたようで渋々行動を始めた。辺りを見ると、船舶科の者が一人しかいないことに気づく。
「古賀ちゃん。三川ちゃんは?」
「入港の為の信号旗揚げに行ってます。」
「そう。」
「入港の許可が得られ次第着きますので、準備整えてくださいね。この様子だと定刻通りに着けると思います。」
「りょーかい。」
角谷は自身の荷物の近くの椅子に腰を落ち着ける。
「角谷くん、そろそろだな。」
「まぁ、今回は大丈夫じゃないですか?学園の同意も得られていることですし。」
「そうだな。」
「南京とさえ何とかなれば、どうにかなりますよ。」
「まぁ、頑張ってくれよ。」
「勿論です。」
外からもう一人の船舶科の者が双眼鏡をぶら下げて帰って来た。
「お疲れー。」
「どうだった?」
「信号旗。チャーリー、間を空けてユニフォーム、ウィスキー、2。入港を許可する、ようこそ、とのこと。」
「……ようこそ、か。」
「よし、行くよ。」
輸送船は速度を少し上げて向こうに見える港の方へ近づく。
投錨。そしてロープが岸に固定される。梯子が下され、それをたどって降りて行く。最後の者が船内の鍵を固定し、段の下で合流する。
「大丈夫?」
「船内各部異常有りません。」
「ありがとう。」
「ここからどうするんだ?」
「確か……」
「あれか?」
見ると右手から馬車が駆けて来ている。それは角谷らの前で鞭打たれて止まった。
「……是角谷先生一行嗎?
(角谷さん御一行ですか?)」
「是那樣。
(そうです。)」
「陳閣下是等。引導。
(陳閣下がお待ちです。ご案内します。)」
御者は何かの書面を麻子に見せた。
「……何だって?」
「案内してくださるようだ。これは陳さんから、という証明書のようだ。」
確かに御者の様子もそれを示している。
「じゃ乗って。」
「失禮。
(失礼します。)」
通訳の麻子を先頭に乗り込もうとすると、御者が制する仕草を見せた。
「各位船员正在船内受到请好像等的指示。
(船員の皆さんは船内にてお待ちいただくよう、とのお達しを受けております。)」
「……船員は船で待て、だと。」
「だって。じゃあ三川ちゃんと古賀ちゃんは船に戻っておいて。数日後には松阪先生が帰ることになるから、そうしたら学園艦までお願いね。食糧はあるね?」
「勿論です。分かりました!」
2人はすぐに馬車から離れ、船の方へ戻る。馬が頭を振って唸る。前に麻子と松阪、後ろに角谷が座る。御者は一礼して鞭を振るい、馬車を走らせた。
街の様子を眺めつつ着いた先は、以前と同じ建物だ。下車を勧められ、降りて入口に向かうと、その先には前の方々が列を連ねて待っていた。
「Hello, Annzu.
(こんにちは、杏。)」
「Hello, Mr. Cheng. Nice to meet you.
(こんにちは、チェンさん。よろしく。)」
その正面にいた者と和かに握手を交わす。
「I also expect to be able to hold a meeting meaningfully this time.
(今回も有意義な会議が出来ることを期待していますよ。)」
「Me too. Who is that person?
(私もです。そちらの方は?)」
陳は麻子の方を指して聞く。
「She is my secretary.
(彼女は私の秘書だ。)」
「我是冷泉麻子。是不周到者,不過,請多關照。
(冷泉麻子という。不束者だが、よろしく頼む。)」
「!我是陳伯南。是這個廣東的首位。請多關照。
(私は陳伯南だ。この広東のトップだ。よろしく。)」
麻子が広東語で挨拶すると、一瞬驚いたようだったが、しっかり広東語で返してきた。
「Because the last time was in distress, and I had come with her, I made her come this time.
(前回は遭難して来たから連れてこれなかったけど、今回は来てもらったよ。)」
「The proposal seems to tend to go forward. Now, I'll decide about your reach right away. There is no time until we go to Nanjin so much.
(これで話が進み易くなりそうだ。さて早速あなた方の範囲について決めてしまおう。南京に行くまでに時間もあまり無いしな。)」
「I agree.
(そうですね。)」
一歩踏み出そうとした時、前にいた陳がふと足を止めた。
「Did you end negotiations with France?
(フランスには断りを入れてくれたか?)」
「…………o, of course…….」
(も、勿論です。)」
「It's no problem then. Come this.
(それなら構わない。こっちだ。)」
角谷は再び、そして他の者たちは初めて、あの時のコの字型に机が置かれた部屋に案内された。
この後は予告通り休載します。ご理解をお願いします。
再開時をお楽しみに。