広西大洗奮闘記   作:いのかしら

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どうもお久しぶりです。井の頭線通勤快速です。

やっと用が一区切りつきましたので、予定より前ですが更新します。

これからは前と同様日曜日の20時に更新して行きますので、今後とも過去に飛ばされつつ頑張る大洗の皆さんの様子をお楽しみください。


広西大洗奮闘記 55 蓋

 学園の校舎に差し込む陽の光も赤みが増してきた。校舎に居た3グループのうち、片方は仕事を終えて帰宅の途に着いた。明日の選挙の準備を行っていた選挙管理委員会である。入り口の案内から受付、順路、記入台、投票箱。その有権者の一連の行動の為の設備の設置は先ほど終わりを迎えた。

もう一つは生徒会。彼らも移設先の決定後の行動に向けた準備を進めていた。仮説住宅の港への移動。島上陸後の探査機器、またはその代用の徴発。靴と服の回収キャンペーンの企画、輸送船の手配など人数が増えた分仕事も増え、とても落ち着いてはいられない。

そしてそのトップの小山はさらに落ち着いてはいられない理由があった。それは最後のグループが校舎に居るのと同じである。

今日の昼間、最後の世論調査が発表された。支持は峠に傾いてはいるが、赤峰候補にも結構な数の支持者がいる。仮に向こうが赤峰候補を押して蜂起しそれが長期化する事態となったら、学園都市の内部の分断は避けられないものとなる。そしてその蜂起は、来るなら今夜か明日である。

そもそも我々は何としてもこれを鎮圧せねばならない。分断も、禍根も、今後への一切の障害を残してはいけない。今後の総動員体制の維持の為。

「小山副会長。」

「はい?」

一旦手を止めていた時、用がある一人が席の前を訪れた。

「服の徴収に関してですが、女物ばかりになりますが大丈夫なんでしょうか?」

「向こうで金になれば何でも構いません。」

「では基本軍には卸さない方向で。」

「靴は運動靴系なら軍に卸します。ある程度の値段にはなると……いいですが。」

「分かりました。あともう一件、淡水化設備の移動に関してなんですが、島に運ぶかそれとも今年一杯は学園艦内に残すか決めてほしいとのことです。」

「あぁ〜……その件ですか……。正直向こうで動かせる動力が無いので、それが出来るまでは艦内に残すことになるかと思います。」

「では島内開発の者たちの水はどうしましょうか?流石に輸送船で運ぶのは手間と燃料がかさみすぎるので。」

「雨水の保持施設を優先させてください。あとその為の手配を。」

「はい!艦内で利用可能なもの及び工具を徴発します!」

「あと初期派遣人員も決まったら伝えるように言ってください。」

「分かりました。失礼します。」

持っていたメモ帳にさっと一言書いて、その者は隣へ戻っていった。しかし2ヶ所に分かれて人が住むことになると、双方に生活できるだけの設備を手配しなくてはいけない。この物資がカツカツの学園艦であるが、それをやらねばならない。タンクなどがあれば良いのだが。

小山は再び自身の担当する業務に手を付けた。今度は残された学園艦の方を年末まで活動可能にする為の仕事である。学生や住人の皆さんにはこの学園艦にて仕事と生活を行なってもらわなければならないのだから。

年末までの食糧必要量は、計算ではこれまで使ってきた備蓄食糧の80%である。もっともこれは最低量であるうえ、島内開発を行う者たちには更に配らなければならなくなるかもしれない。それを買う先は、協定的に考えて広東からしかない。

食糧に変えるに値するもの。それをこの学園艦は必要としている。

新たに徴発し得るものについて小山が思い悩んでいると、今度は別の者が席の前を訪れていた。

「はい?……」

「小山副会長。」

「矢暮さん……ということは。」

「はい。各配給所周辺に旧風紀委員の者らが集まっていることが確認されたっす。」

「そう……ですか。」

「それと、こちらの見張り一人と連絡が取れなくなったっす。向こうに捕えられたと見るべきかと。」

「……こちらに来るのは確実ですか?」

「はい。狙いが生徒会なのは間違いないっすから。いずれにしても、打って出る力のない我々は心臓であるここを守る他ないっす。」

「そうですか……分かりました。では大洗女子学園生徒会長代理として命じます。何としてもこの学園校舎を守り抜きなさい!直ぐに配置に着くように!」

「了解したっす!」

背筋を伸ばしてヤボクが答えると、生徒会長室から駆け去った。

「誰か手の空いている人!」

小山は立ち上がり辺りに呼びかけるが、周りの者は一瞬顔を上げ、首を横に一度振って下げる。

「……ちょっと出ます。」

席を離れ扉を二つ開け放つと、待機している風紀委員の脇を通り抜け、近くの階段を2段飛ばして上がる。目当ては戦車道の者らがいる教室だ。取手に指をかけ、力強く横にずらす。

「五十鈴さん。」

「はい?」

「皆さんいますか?」

「えっと、今阪口さんがお手洗いに。小山先輩がいらっしゃったとなると……」

「はい。今夜、来ます。燃料は今ある分使って、直ぐに移動させて待機させます。」

「分かりました。では直ぐに。」

「待ってください。私から指示します。」

 暫くして阪口が部屋に戻った時に目にしたのは、床に座りながら前に立った小山の方を見ている戦車道の仲間らの姿だった。

 

 

「Mr. Cheng. Is it really good?

(チェンさん。本当によろしいのですか?)」

夕刻に学園都市に提供される島について協議を終えた後、角谷は会議室にて正面の男に声をかけた。

「What isn't good?

(何か良くないことが?)」

「I'm surprised to use wider land than I expected.

(予想よりも多くの土地を利用できるので驚きました。)」

「Don't worry. It's because I could know the height of the technology you have from your baggage again. If you cooperate in our development and continuation, we have no loss.

(構わんよ。君たちの荷物から君たちの持つ技術の高さが再確認できたからな。こちらの発展と存続に協力してくれるなら損はない。)」

「Anti-Japanese and communist competition and development in Hǎinán Dǎo. Of course. I want you to suppress power of the Communists who raises an anti-Japan openly and squarely too.

(対日、対共戦協力と、海南島開発ですか。勿論です。我々からしても反日を堂々と唱える共産党の勢力は抑えて欲しいですし。)」

話す2人の後ろには大洗側の松阪、麻子、広東側の黄光鋭、李伯豪が並んで追う。

「May you cooperate in a war with Japan as a Japanese?

(しかし日本の者として、日本との戦いに協力して良いのかね?)」

「When allying oneself with you, I have my heart set already. And we're stranger to that country.

(あなた方と手を結ぶ時に既に心に決めています。それに我々はあの国とは縁がないですから。)」

「It is the fact that you have come from the future. I can't help believing also to consider your school ship.

(君たちが未来から来たという話か。学園艦のことも考えると、信じざるを得んな。)」

「I'm thankful for your understanding. Then, by calling landing 3 days later.

(ご理解感謝します。では上陸は3日後からということで。)」

「Yes. I ask as the agreement. Hǎinán Dǎo has been developed by a Qióngyá business bureau, but the result isn't good. I'd like to ask your help to get power.

(そうだ。協定通り頼むぞ。海南島の開発は瓊崖実業局を中心に行われているが、結果は芳しくない。力をつける為にあなた方の力を借りたいのだ。)」

「We'll do our best to a name of our school. We need "powerful Guǎngdōng" as our guardian.

(我が学園の名にかけて、全力を尽くしましょう。学園の保護者として『力強い広東』が必要ですので。)」

 陳から差し出された右手を角谷は握り返した。その手を外すと、反対側を向く。

「松阪先生。」

「どうした?」

「指定された島についての書類と地図、お持ちですね?」

「ああ、あるぞ。これらを持って帰って渡せば良いんだな?」

「14日から移設可能とも伝えてください。」

「分かった。まさか今日のうちに帰れるとは思わなかったが。」

「Mr. Matsusaka and two people of an accompaniment return for a report to a school ship as I spoke a short while ago.

(先程お話ししたように、松阪先生と随行の二人は学園への報告の為帰ります。)」

「I see. I'll make them arrange a carriage to the harbor.

(分かっている。港までの馬車を手配させてある。)」

「Thank you.

(ありがとうございます。)」

「We'll go to Nanjin tomorrow morning, too. I have also reserved the same room at a hotel as the front today, so I make you show the way.

(我々も明日の朝には南京に向かう。今日も前と同じホテルを取ってあるから、そちらに案内させよう。)」

「OK.

(分かりました。)」

「See you next time.

(また会おう。)」

「Good bye.

(ええ、また。)」

角谷は麻子と一歩先に出て、たどり着いた入り口の前に用意された馬車に乗り込み、松阪と広東側の者たちに手を振った。李が御者に一言伝え、鞭打たれ馬は地を蹴る。

「……取り敢えずはよし、かな。」

「どうだろうか。ここまで広州湾周辺に学園都市を拡げられたとなると、確実に対日本、対南京政府の戦争時の広州への蓋と見なされるのは確実だぞ。」

「そんなの万山群島をもらった時から決まってることさ。だからこそ軍事駐屯権の放棄に関してはそのままにしたんだし。」

「……確実に3年以内に戦争になると。」

「そ。ウチらは島内の衣食住の完備で手一杯だろうしね。」

「そして軍備に関れるかは西住さん達が参加してくれるかどうか、と。」

「やってくれると良いんだけどねぇ。」

「あとは海南島開発か。」

「うまくいったら分け前もらえないかとね。あとはこの土地に会う農業とかについての経験も得たいから。あとはさっきチェンさんにいった通りさ。」

「……そうか。」

地面からの振動を伝えながら、馬車は道を曲がった。




次回予告

目指すは建業、建康、金陵、江寧、天京
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