広西大洗奮闘記   作:いのかしら

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どうも井の頭線通勤快速です。

そろそろ夏も終わりが近づいて来ました。


広西大洗奮闘記 80 花瓶

さてこちら、生徒会長室。2012年にいれば戦車道の砲手の道を切り開いていただろう方は、今日も業務に勤しんでいた。高3生の復職により業務は分散されたものの、配給とか人員配置とか業務もそこそこある為、以前ほどではないが暇ではない。

 

私五十鈴華の所属は動員人員管理班。多種ある生徒会の仕事の中でも忙しい部類に入ります。もっとも仕事が少なめな班は手が空くと忙しい所へ引っ張られますから、不公平がある訳ではありませんが。

この日も明日の魚を捌く為、また服製作の為の人員を選んで、夕方の掲示に向けてペンで紙に書き込みます。正直ペンもプリンター用のインクも切れつつあるので、班ごとの言い争いの種になることもあります。しかし授業がなくなって鉛筆やシャーペンの芯が売れなくなってこちらに回って来やすいのもあり、大体はこれらを代用して収まっています。鉛筆なら向こうからも調達可能でしょう、おそらく。

人員を選ぶといっても、候補者のリストの中からまずは今日やっている方を除き、それ以外の中で前日体調が悪そうだったとか怪我したなど作業するに支障のありそうな方を除いて、残りから選抜します。この時あまり作業が上手くない方も上手い方も関係なく混ぜます。上手い方ばかり選抜すれば、休もうと手を抜く奴ばかり現れますし、上手くない方ばかり選抜すれば、単純に作業効率が落ちるからです。回収した布に限りある被服科の作業ならいざ知らず、毎日大量の魚を捌かねばならないのならば効率は高くあって欲しいのです。

で、朝から何とか両方選抜を終えて配給所での掲示用のものを作成し終えるますと、もう既に午後の2時半を回っています。時間が掛かり過ぎだと思われるかもしれませんが、班の人員の一部は被服科の作業を見回って皆の労働意欲の確認を行っていますから仕方ありません。勿論抜き打ちでですよ。

さて今日はこの後は配給の仕事がある訳なのですが、出発までのあと1時間ほどで何が出来るか。次のことも考えて物資総合管理の手伝いに行っても良いのですが、明日また人員を選ぶ準備をしておくという手もありますね。

 

他に仕事があればそれに充てようかと、両手の指を組んで前に伸ばしてから、席から立って辺りを見渡す。こちらで仕事をしているのは少数である外部折衷班のみ。

「五十鈴さん?」

後ろから声を掛けられ振り返ると、小山副会長が窓を背にこちらへ手招きしている。

「どうしました?」

「今手空いてますか?」

「えっ、はい。ついさっき明日の動員人員も決まりましたので、配給に行くまで手は空いてますが。」

「でしたら一つお願いしたいことがあるんですけど……」

「戦車道の関連ですか?」

「そうじゃなくてですね……これ見てもらえます?」

副会長に指さされた紙箱の中には、奥に多様な色、手前に濃淡混じる緑。

「花、ですか?」

「そうです。農業科が山の木を切っているじゃないですか。そして一部の土は結構栄養ありそうだから、島に客土したいらしいんですよ。そうすると一部生えている草や花を抜かなきゃいけないから、その花を何かに使ってださい、とこっちにくれたんです。

華道選択者に回すという手もあるんですけど、この前視察団の歓迎手伝ったもらったばかりですし、感謝も兼ねて生徒会として住民の皆さんの生活に文字通り花を添えたいんですよ。

花瓶は有りますけど、花の取り合わせとかは私たちだとよく分からないので、配給の時間までに簡単に生けて貰えますか?」

「良いんですか?他の仕事に回らなくて?」

「開発班は下で次の派遣の準備ですし、他も人員は足りてますから、配給まで手伝いが必要な所はないでしょう。物資班も明々後日の売却の準備を手伝っていますし。」

「花瓶を置く場所は配給所ですか?」

「そうです。」

確かに何か一仕事為すには時間が足りないし、其の仕事が無いと云われれば、目の前の事をするしかない。

「分かりました。私のもので宜しければ。」

華は花と花瓶を自分の机の上に移した。箱を傾かせて、それらと正面から向き合う。配給所で花瓶に刺して人から見られるなら、左右180度から見られても格好が付くようにしなければならない。

花は菊にサフラン、ブバルティア、ナスタチウムなど。色も赤やオレンジ、紫など多彩である。テーマは安定感。今の生徒会が住民の皆さんに伝えて然るべきものである。

濃い色の花は瓶の淵に近い方に、そして上の方に飾る花は色が薄く、小さい花にする。花の茎や花そのものを傷めないようゆっくりと一本ずつ刺していく。もっともこれには花を刺すのが一月半ぶりという理由もある。

刺しながら時々瓶を左右両側から眺め、自身の方を外に向けた時どこからも眺めが良いように調整する。一箇所から良くとも他からどう見ても穴があるなら、安定感は示せない。

手を付けてから約40分、現在時刻15時20分。やっと納得出来る花を生けられた。出来ればこれを完璧なものへと導きたいが、その時間はない。

「小山先輩。」

「はい?」

会長の席で書類に目を通していた小山を呼ぶ。机に軽く書類を置いた小山が席を立って近づいて来た。

「こんな感じで宜しいでしょうか?」

「ええ、とても綺麗ですし、見てて落ち着きます。では後で学園の配給所を担当する人に渡しておいてください。」

「はい。では私もそろそろ準備を。」

この日、学園の配給所に置かれた花瓶に、生徒会の担当の者が気を遣ったのか、『五十鈴華作』という札を置いた。元々戦車道にて優勝に導いた砲手として名を知られてはいたが、これによって一層名を知られることになる。

配給の中身は半分以上が捌かれた魚の身になった。燃料の確保により操業に余裕が生まれたこともあるが、なによりこの操業が無ければ食糧が尽きていたのだ。最早次の購入で命を伸ばせなければ致命的だと言っても過言ではない。誰も口にしないが、この世界を訪れてから数度目の絶望要塞に向き合わねばならないことは、手を見ながら覚えざるを得なかった。

 

 

こうして大洗学園艦が浮かんでいる間にも、歴史は刻々と進む。イタリアによるエチオピア侵攻は10月6日に遺恨の地アドワを、15日に旧都アクスムを占領。11日に国際連盟による経済制裁の発動が決定され、翌月の18日に発動された。しかしその間の21日にドイツが連盟から脱退を宣言し、元々加盟していないアメリカと貿易が可能だった為、率直に言えば効果はあまり無い。

我々の関連で重要なことは11月9日、上海で日本海軍一等水兵中山秀雄が射殺された中山水兵射殺事件の勃発である。射殺された場所は租界と中国人街の境の路上であり、上海の租界内には多くの日本人が住み、それを狙った暴動も怒っていた為、日本はこれに対し犯人の逮捕及び排日活動の取り締まりを強く要求した。

これは全国代表大会前の為大洗の受け入れの結果に影響があるかと思われたが、幸い結果には影響はなかった。蔣介石が両広への懐柔を優先したとも取れるし、角谷杏を中国人とする以上、日本への必要以上の刺激を避けたとも取れる。

いずれにせよ中国国内に於ける排日運動は蔣介石の意向に関わらず激化しており、大洗も大陸と交流するには注意が必要だ。

 

また両広の蔣介石への態度の大転換は、日本の反蔣介石的な李宗仁や陳済棠への軍事支援などの政策に対しても大きな影響を与えたが、角杏に関しては実質的な権限は皆無と見なされ、特に注意は注がれなかった。

この後日本は両広に対する航空機など一切の軍備の売却を取りやめ、国内では蔣介石政権の基盤が幣制改革などで強化される中、対支一撃論が勢いを増すことになる。




次回予告

イタリア番外編、の予定

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HOI2AARWIKI別館にて、今作にも出てくる広西軍閥によるAARが始まりました。
AARとはゲームプレイをストーリー形式に纏めたものと考えてください。
ただし指導者は李宗仁……のような女性?
相方は大同団結して南京政府移籍したはずの汪兆銘……のような男?
果たしてこの奇妙な地方軍閥は中華で生き残ることができるのか!
乞うご期待!

は〜つ・おぶ・愛あん チチデカピングーンバツ
http://starlit.daynight.jp/hoiaar/?%A4%CF%A1%C1%A4%C4%A1%A6%A4%AA%A4%D6%A1%A6%B0%A6%A4%A2%A4%F3%20%A5%C1%A5%C1%A5%C7%A5%AB%A5%D4%A5%F3%A5%B0%A1%BC%A5%F3%A5%D0%A5%C4

ネットネタなどが多いので苦手な方は注意。
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