ちゃんぽん。
長崎発祥のその食べ物は、元々は中華料理店の料理長が留学生達の為に安くて栄養価のある料理を作ってあげよう……と思ってできたのがこの料理である。
今回響が食べるのは長崎ちゃんぽん、太い麺に数多くの具材が色とりどりに咲き誇る麺料理で、その独特の風味と食感は響の食欲を否が応でも引き上げる。
「ちゃんぽんって普段食べる機会がないし地元のしか食べたことなかったから、こんな感じのがあるなんて知らなかったぞ……」
「へっ、勉強不足だな765プロ」
「うがうがー!自分には我那覇響っていうちゃんとした名前があるんだぞー!」
「いやお前もさっき俺の名前を散々間違ってたからな!?人の事言えねえからな!?」
「だってそっちはそういういじられキャラでしょー」
「なっ!?そ、それを言うならお前だってバラエティじゃいじられまくってんじゃねえか!今週の響いじめとか何とか言われてるし!」
「なにおう!?」
「何だよ!?」
「「ぐぬぬ〜〜!!」」
一見完璧なクール系キャラに見えても、実は子供っぽく熱くなりやすい性格の二人はこういうどうでも良い所で張り合ってしまうのだった。
とはいえこうやっていがみ合っていてはせっかくのご飯も冷めてしまうという事で、二人は野菜たっぷりのちゃんぽんを食べる事にした。
「はふっ、ずるるるるっ……」
「はぐはぐ、むしゃぅ」
豪快にちゃんぽんの真ん中に鎮座するもやしとキャベツの王冠を書き込むと、濃厚なのにヘルシーという奇妙な歯ざわりが彼等を襲う。
合間にエビやコーンを食べることでこってりした味わいの中にもアクセントが生まれ決して飽きさせることの無い最強の布陣がそこにはあった。
「うーまーいーぞー!!」
「本当だな、太めの麺と濃厚なスープが舌の上でワルツしてやがるぜッ!」
「………それは黒井社長の影響なの?」
「えっ?…………あっ!!」
言われるまで自分の恥ずかしい台詞に気づかなかった冬馬は顔を真っ赤にした。
それは決して熱いちゃんぽんを食べたせいだけではないのは明白だった。
無意識のうちに言ってしまった事に言い訳でもするかの様に、ボソボソと冬馬は語り始める。
「……いや……だってよ。黒井のおっさんの意味不明な台詞を常日頃から聞いてたらちょっとは影響されるっつーの…」
「うーん、765プロの皆んなは挨拶や喋り方が特徴的な人が多いけど、自分は特にそういうのはないぞー…」
「お前も大概だけどな」
ボソッとツッコミを入れつつ、冬馬は話を続けた。
「お前が何に悩んでるか知らねえがよ、俺から見たお前はくよくよ悩む前に先ず行動するタイプだと思ってたけどな」
「行動……?」
「お前がこの前半ベソかきながらスタジオでペットを探してる時あったろ、あん時お前は『どうやって許してもらうか』よりも『とにかく謝りに行く』って行動を取った。
それは中々出来ねえ事だ、少なくとも俺は素直に謝ろうとしても意地はっちまうかも知れねえ」
……天ヶ瀬冬馬は自分の芸能事務所が悪事を働いていたと知ればその被害に遭った所に謝罪するような真っ直ぐな人間なのだが、彼はまだその事に気付いてはいない。
だが、響は今の話で自分の気持ちに整理がついたのか、それとも何か吹っ切れたのか。
そこには先ほどまでの曇り空は広がっておらず、いつの間にか響の顔には、いつもの彼女らしい太陽のような笑顔が戻っていた。
「うん……うん、そうだよね。自分、動物達が逃げたら直ぐ追いかけるぞ。家族が居なくなったら心配だからなー…。
にーにもそれと同じくらい心配だったのかな……。」
「……お前の家族事情は知らねえがよ、俺は母親がいねえんだ。だから言いたい事は言える内に言っといた方が良いと思うぜ」
「……ありがとね、あまとう」
「おう……ってあまとう言うんじゃねえよ!」
結局最後までツッコミを入れ続ける事になった冬馬だが、彼も彼でスッキリしたのかそのまま爽やかな顔つきで店から出て行こうとする。
ーーよっしゃ、俺もあいつらとの時間を大切にしねえとな。何か土産でも買っとくか……。
ーーん?何か大切な事を忘れてるような気が……。
「ああっ…すまねぇ、店員さん。お会計を…」
「……ちょっと見直したけどやっぱりあまとうはあまとうだぞ……」
「うるせえよ!」
ちなみに響は財布を家に置いて散歩していた所を半ば強引に食事に誘われたので食事代は全て冬馬が払う事になった。
なんと言うか、色々と残念な奴である。
お久しぶりです。
響回と銘打っておきながらあまとうの出番が多めなのはご愛嬌。…ア二マス7話みたいな感じ?