千早回はもう少しだけお待ちを…。
ほくほくの誕生日なので、折角だし書こう!と思いまして…。
チャオ☆
全国のエンジェルちゃんにエンジェル君達からの熱烈な応援を受けて、一昨日の俺のバレンタイン兼誕生日イベントは大成功だったね!
でもさすがに疲れちゃって、昨日は筋肉痛で動けなかったよ…。ははは、体力はある方だと思ってたんだけどね。
そんなこんなでエンジェルちゃん達と最高のバースデイを過ごした訳だけど…バレンタインやら誕生日やら、とにかくプレゼントをたくさん貰っちゃったよ。
俺はプレゼントを貰うのは嬉しいけど、お返しができないのがちょっとだけ残念だよね…。でもその分、テレビやステージではキラキラ輝いてみせるから、それが俺のお礼って事で。
だけど毎年、食べきれない量のプレゼントが届くもんだから困っちゃうよ。
一応、黒井社長にビターチョコレートをお裾分けしてるんだけど、冬馬や翔太の分もあるわけだし…、毎年どうするか悩むんだよね。
贅沢な悩みと言われれば、それまでなんだけど。
ーーでも、今年のバレンタインはちょっとだけ違ったんだ。
「おい貴様等、このチョコレートの山をどうするつもりだ」
「どうするって……食べるに決まってるだろ。せっかくファンから貰ったもんなんだしよ、それに勿体ねえだろ」
「冬馬よ、お前のそのプロ根性を私は高く買っているぞ。
だが現実をよく見てみろ、これだけの量を我々だけで食べられると思うのか?」
ーーそりゃあまあ……。
社長の言いたいことは分かる。
皆連日チョコレート続きで飽き飽きしてるし、それに健康にも良くないし。いい加減別の物も食べたい。
誰か他の人にあげようという案もあったんだけど、そもそも961プロに所属してるアイドルはジュピターだけじゃない訳で、皆それぞれチョコに頭を悩ませてるからお裾分けできないし。
ーーかといって、友達にあげるのも気が引ける。一回、男友達にあげた事があるんだけど、「嫌味かよ!」と言って受け取ってくれなかった。
となると後はもうスタッフさんにあげるしかないんだけど…。
そんな懸念を抱いていると、それを吹き飛ばすかのような快活な声で社長は言った。
「レッツ☆クッキング」
「まずはチョコレート食パンを作る。冷蔵庫の中に入れておけばまぁ5日は持つだろう」
「黒井のおっさんのエプロン姿似合わねえ…」
「まあまあ冬馬くん、黒ちゃんに失礼でしょ?」
ーー翔太、黒ちゃんって呼び方も十分失礼だと思うけど、もしかしてツッコミ所なのかな…?
それにしても社長、料理出来たんだ。意外な人に意外な特技があるものだね。
「いや、私が料理を始めたのはつい最近だ。前にこの世の物とは思えん美味さのもやし……ゲフンゲフン!」
「?」
「……とにかく、食べ物の夢を見てな。
これは神からのお告げだと確信し、料理を始めたという訳だ」
「動機は微妙だけど行動力がすごいね」
気のせいかな、さっき社長からもやしって聞こえたような…。
…いや、ありえないよね、まさかね。
僕の中で社長が食べなさそうな物ランキング第一位だからね、もやしは。
ちなみに第二位と第三位は定食屋の料理とコンビニフード。第四位がお子様ランチで…って、この話はいいか。
……あれ?そういえば冬馬も料理出来るんじゃなかったっけ?俺がそう問いかけると、
「いや、俺ん家は父子家庭だからよ。自炊ならともかくお菓子作りなんざやった事もねえな」
「中々面白い物だぞ。さっきの湯煎の様子も見ていて様になっていたし、やっておいて損はない」
「……おっさんそんなキャラだっけ?」
「まさかお菓子作りまでしてるとは…」
「黒井社長ならぬ甘井社長だね…」
「妙なあだ名をつけるんじゃない!」
そんな問答の間にも、社長は慣れた手つきでチョコレートを溶かす。湯煎する時もお湯が入らないように細心の注意を払って、丁寧に崩していく。
完璧主義の社長らしいや。そう思ったところで、社長が袋を取り出した。
………ビスケットにパン?
「少々汚いが、チョコレートにつけて食べるといい。甘さを軽減するためだ」
「なるほど、確かにチョコ単体で食べるよりはいいよね」
「あとはマシュマロやイチゴなども中々美味いぞ。要するに、全部まとめてチョコレートフォンデュにして食べるのが一番手っ取り早い」
社長が鍋をドカンと置くと、甘い香りが漂ってきた。社長は自慢げに蓋を開けると、そこにはとろけたチョコレート。
「どうだ、驚いたろう!」と言いたげな様子であるのは、僕の目からでも分かった。でもね社長、俺はそのチョコレートじゃなくあなたのその可愛らしくデザインされたオレンジの鍋つかみにびっくりしたよ。
「じゃあ早速ーー」
「待てぃ貴様等!!その前にやる事があるだろうがぁ!」
「ど、どうしたの黒ちゃん、そんなに怒って」
「食事の前はいただきますだろうがあああああ!!」
……社長のキャラが本気で分からなくなってきた。
「イチゴうめぇな!チョコレートの甘味とイチゴの酸味が程よい感じだ!お互いがお互いを潰し合うんじゃねえ、新しい次元へと引き立ててやがるぜ!」
「冬馬くんもキャラがおかしくなってるよ…?
でも美味しいね、僕はパンにつけるのが一番好きかなぁ」
社長のチョコレートフォンデュは好評だった。かく言う俺も、マシュマロウィズチョコの魅力には勝てず、ただひたすらほうばっていた。
マシュマロの柔らかさとチョコの甘味が絶妙にマッチして、ほっぺをとろけさせる機能を持った新兵器を食べているみたいだよ。
そんな兵器の製造者は、今もなおエプロン姿でチョコレートを溶かしている。
「黒井社長は食べないんですか?こんなにいっぱいあるんだから、一口くらい…」
「私が甘いものが嫌いという事はお前達がよく知っているだろう」
まあ社長ならそう言うよね。でも……ほんの少しだけ残念だな。
社長にも、たまにはこんな風に人と食事するのを楽しさを知ってほしいのに。
「それと北斗、勘違いするなよ。これはお前への誕生日プレゼントなどではないからな!この大量のチョコレートを消費したかっただけの事よ!誤解をするなよ!」
「社長……?」
混乱している俺の耳元へ、翔太がボソッと囁いた。
「ああ見えて社長、北斗くんに誕生日プレゼントを作ろうと思ってたんだけど結局上手くいかなくって、それでチョコパーティを開こうって言ったんだよ」
「………」
はは、社長め。道理でチョコを溶かすのが美味いわけだ。
心配しなくても俺はプレゼントは何でも嬉しいってのに…。素直になれないエンジェルくんめ。
ーー来年は期待してますよ、社長?
書いていて何だか北斗くんが社長に片思いっぽくなりましたが、あの社長がデレればこんな感じになる…はず。