俺、技術屋だよな?   作:かんせつ

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第十話 取り戻した風景

 8月19日

 

《鎮守府・提督室》

 

「提督。第一水雷戦隊、帰投したぜ。」

 

「おう、お疲れ様。補給と休養を十分に取ってくれ。」

 

「あぁ、了解だ。」

 

「提督、大本営から指令書が届きました。」

 

霧島が指令書を持ってきた。そして天龍以下第一水雷戦隊・龍田・暁・響・雷・電は提督室から出て行った。よかった・・・今日は晴れだ・・・。俺はそう思いながら第一水雷戦隊を見送った。

 

「そうか・・・して、指令書は?」

 

「これです。」

 

「はぁ・・・ほう?」

 

俺は霧島から渡された指令書の束を見ている。いつも通り、保身派の考えが丸見えな物だった。だが、一枚だけ違ったものがあった。

 

「どうされたのですか?」

 

「どうやら新型艦が生まれたようだ。」

 

「新型艦、ですか・・・。」

 

「それで実習をかねて激戦区のウチに寄越すようだ。」

 

「新しい仲間が増えるのですね。新造艦で言えばつい最近、五航戦の姉妹が着任しましたよね?」

 

「あぁ、今度の艦種は駆逐か・・・確か第三水雷戦隊が五隻編成だったな。そこへ編入しよう。」

 

「神通のとこですね。して、到着は?」

 

「明日の朝、こちらへ来るようだ。」

 

「わかりました。神通へは私が伝えておきます。」

 

「確か今三水戦は哨戒中だったな。報告の時にでも俺が伝えておこう。」

 

「わかりました。」

 

「しっかし新造艦を建造後すぐに最前線に送るとは・・・。こら、どういった演習をすればいいかわからないからウチに送ったんだろうよ。」

 

「大変ですね、その子も・・・。」

 

「あんな人間の欲望が渦巻く大本営から離れられて、逆に良かったかもな。」

 

「え?」

 

「ここに来ればあんな汚ねぇモンには指1本触れさせないさ。必ず俺が守ってみせる。」

 

「提督・・・。」

 

「さて、霧島。出撃中の艦隊は偵察第一・第二艦隊だったな。」

 

俺は湿っぽい空気を変えるべく、話題を切り替える。

 

「はい。ですが敵棲地発見の報告は届いていません。」

 

「届かなくて良いけどな。ま、上は急かすだろうけどな・・・。」

 

「そうですね・・・敵拠点が掴めていない今、後手に回るしかないですからね・・・。」

 

これでも湿っぽい空気か・・・。

 

「そうだな。さて、明日は新造艦が来るから歓迎会の用意をしないとな。霧島、頼めるか?」

 

「はい、了解です。では、失礼しますね。」

 

出て行く霧島を見て俺は一息つく。

 

「やっと・・・変えれた・・・。」

 

俺はそのまま今日の執務を再開した。

 

 

 

《提督室》

 

「提督、技術部妖精が来ました。」

 

「どうした?」

 

「新しい兵装を思いついたんだ。」

 

「そうか、是非とも見せてくれ。」

 

「これさ!!」

 

「これは・・・ガトリング砲か?」

 

「流石提督、一目で見てわかるとは・・・そう、ガトリング砲だ。主に鎮守府の対空戦闘を想定しています。」

 

「ふむ・・・ガトリングは確かに連射数で単装砲での戦闘よりは有利と言える。だが、機械での操縦は難しくなるぞ?」

 

「確かに・・・でも手数で押し切れるのでは?」

 

「元々ガトリングは制圧戦向けで弾の消費が激しい。それにウチの迎撃兵装は直接的な人的被害を無くす為、基本遠隔からのコンピューター操作だ。状況が掴み辛いコンピューター操作では十分に性能は生かせないと思う。それにメンテナンスや機構の複雑さを考えたら連装機銃の方がいろいろな面で有利だと俺は思うが?」

 

「確かに・・・提督の言う通りだ。コストのことも考えなければ。ありがたい意見、頂戴します。直ちに再検討してきます!!」

 

そう言い残して技術妖精は提督室を去っていった。

 

「ふぅ・・・この頃の舞鶴直属の技研は伸び代が良いな。内容自体はまだまだだが、良い線を行っている。将来が期待できるな。」

 

「しかし・・・提督は根っからの技術屋ですね。話していた時の顔は嬉々としていましたよ?」

 

「根っからの技術屋ってのは自覚はあるんだが、どうしても顔は変えれないか・・・。」

 

「まぁそこは提督次第ですよ。それにしてもウチはかなりの規模になってきましたね。まさか半島一つを鎮守府にするとは・・・。そしてそれを上に了承させるあなたは一体どれだけの功績を残しているんですか?」

 

「土地に関しては敵の攻撃で廃墟と化した無人の土地を使ったまで。そして功績に関しては俺が言うのもなんだが数え切れないぞ。それに大本営技研最高顧問が直接指揮を執ってんだ。そりゃぁ土地さえあれば大本営すら越える規模になるさ。あぁ、そうそう。大本営に技術実験用の施設追加予算が降りたぞ。」

 

「えぇぇ・・・。まだ大きくなるんですか?」

 

「これ以上は大きくしないさ。今度は質だ。技術に終点は無いからな。どこまでも伸びるさ。」

 

「提督・・・程々にしてくださいね・・・?」

 

「あぁ、わかっている。それにしてもある意味では迎撃兵装はお役目無しだな。配備したというのにまったく出番が来ないから上が返せとうるさい。ま、誘導弾は模擬弾を使用しての艦娘の演習にはもってこいだがな。」

 

「あれは演習ではなく的です。受けるこっちの身にもなってください。」

 

「それだけの結果が出れば十分だ。逆に言えば敵も同じような思いになると考えれば防衛には十分ということだ。」

 

「確かに。一度全兵装を展開した時の鎮守府はまさに要塞でしたからね。ただでさえ単装砲だけでも万を超える数が設置され、誘導弾・迎撃機を初めとした各種兵装の全開放はまさに圧巻、その言葉に尽きますよ。」

 

「そう言われれば設計した俺も鼻が高いよ。さて、執務に戻るとしよう。」

 

「了解です。」

 

俺と霧島はいつも通り戻ってくる艦娘たちを温かく迎えながら執務をこなして一日を過ごした。




今日の天気は快晴。指令書ありがとう!!)by蒼一
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