俺、技術屋だよな?   作:かんせつ

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第十一話 新造艦 着任

 8月20日

 

《舞鶴鎮守府・リニア駅出口》

 

「ここが・・・舞鶴鎮守府・・・。」

 

私・特型駆逐艦一番艦・吹雪は通常時用のリニア駅から外へ出ると、自分が着任する鎮守府の様子に驚愕を隠せないでいた。最近、大規模作戦に伴って鎮守府の大規模改修を行い、ほぼ半島一つを鎮守府にしたと聞いたことがある。だが、実際に見てみたらその規模は予想以上のものだった。今も忙しそうに鎮守府所属の妖精たちが働いており、頭上には偵察機が編隊を組んで飛んでいる。だが今の私の状況は・・・。

 

「どうしよう・・・迷子になっちゃった・・・。」

 

絶賛迷子である・・・。

 

「どうしよう・・・着任時間までは残り30分しかない・・・。あ、すみませ~ん。申し訳ありませんが鎮守府本館・提督室までの道のりを教えてもらえませんか?」

 

私は目に映った艦娘と思われる人に駆け寄って案内を頼んだ。

 

「ん、見ない顔だね。もしや提督が言っていた、新しい艦娘さん?」

 

「はい。吹雪と言います!!」

 

「私は第三水雷戦隊所属の睦月です。桐生提督の命によりあなたを迎えに上がりました!!」

 

私の敬礼に目の前の艦娘・睦月ちゃんも敬礼で応えてくれた。どうやら出迎えの人だったようで一安心した。

 

「でもよかった~。」

 

「え?」

 

「特型駆逐艦て聞いていたので恐い人かなって思っていたので・・・。」

 

「私も大本営をも越えた一大鎮守府には恐い人ばかりと思っていました。」

 

「「フフッ!!」」

 

どうやら私の杞憂は杞憂で終わってくれたみたいだった。

 

「提督のところに案内するね、こっちだよ。」

 

睦月ちゃんの案内の下、司令官のところに向かうこととなった。でも・・・司令官ってどんな人かな・・・。

 

《鎮守府・倉庫区》

 

「すごい・・・どれだけの物資があるんですか・・・?」

 

「うんっとね・・・確か鎮守府だけで野菜と魚だけの生活をしたとしても三年は持つって提督は言っていたかな?それに弾薬とかも全艦出撃を毎日したとしても二年は余裕で持つって言っていたよ。」

 

「もう一大国家って感じですね・・・。」

 

「そうだね~。私もここに戻ってきた時(・・・・・・)の鎮守府はまだ改修途中だったけどビックリしたよ~。」

 

「戻ってきた時・・・?」

 

「ここにいる艦娘のほとんどの人はね、提督に助けてもらったの。」

 

「どういうことですか?」

 

「正確に言うとね、私は一回轟沈したことがあるの・・・。でもね、提督のおかげで戻ってくることができたの。」

 

「確か大本営で噂されているKS計画ですか?」

 

「そう、『轟沈した艦を蘇らせる神の如き計画』・・・そう提督は言っていたよ。でも提督はその計画自体に嫌悪感を持っているように見えるの・・・。」

 

「どうしてですか・・・?」

 

「多分私の・・・ここにいる艦娘・妖精全員の考えだと思うけど、この計画を逆手に取ったら恐ろしい事が浮かぶの・・・。」

 

「恐ろしい・・・事?」

 

「何度も轟沈しては助けられる・・・私たちにとっては地獄の轟沈無限ループがありえるということなの・・・。」

 

「それは!?」

 

「今の桐生提督が着任してからは一艦たりとも轟沈艦は出していない。提督の指揮は轟沈回避、私たちの命を最優先とした指揮なの。だから私たちは安心して出撃できるの。桐生提督はそうだけど、他の提督はどうかわからない。現に、ここの前提督は最悪だった・・・。あ、ごめんね。嫌な話してしまって・・・。」

 

「いえいえ、深く追求した私が悪いんです。睦月ちゃんは悪くないですよ。」

 

「じゃぁ、早く提督のところに行こうか!!」

 

暗い雰囲気とは一転して睦月ちゃんは元気よく歩き出した。私も遅れないように着いて行く。

 

 

 

《提督室前》

 

「うぅぅ・・・緊張するよ~。」

 

「大丈夫、提督は恐くないって。じゃぁ、行くよ?提督、睦月です。本日着任の駆逐艦吹雪をお連れしました!!」

 

「ふ、吹雪です!!」

 

私は格好良く入っていく睦月ちゃんに続いて提督室へ入る。だが・・・。

 

「こら、響!!吹雪が来ただろう?早く降りてくれ・・・。」

 

一瞬部屋を間違えたと思うほどのカオスが展開されていた・・・。一人は膝の上を堪能していおり、もう一人はそれに説教のようなものをしている。そして座っている人物を引っ張る子とそれを止めようとする子。傍らでは眼鏡をかけた大人の艦娘が呆れたように見守っていて隣の睦月ちゃんを見てみると苦笑いだった・・・。

 

「こら、響!!あなたは何時も何時も・・・。」

 

「む~・・・仕方が無い・・・。」

 

そう言って響と呼ばれた子は本当に渋々という感じで目の前の提督と思われる人物の膝から離れ、響ちゃんと同じくらいの子三人と共に提督室を後にした。

 

「あ、えぇっと・・・。」

 

「見苦しいものを見せてすまなかったな。俺がここの提督、桐生蒼一だ。よろしく。」

 

「は、はい。吹雪です!!よろしくお願いします!!」

 

「うん、元気が良くていいな。なぁ、霧島?」

 

「今更立て直そうとしても無駄ですよ?」

 

「それを言わんでよろしい・・・。」

 

「あははは・・・。」

 

「さて、吹雪。君には第三水雷戦隊、隣にいる睦月と同じ艦隊に所属してもらう。睦月、引き続き吹雪を案内してあげてくれ。」

 

「了解です!!」

 

「吹雪、何か聞きたいことはあるかい?」

 

「いえ、大丈夫です!!」

 

「よし、では直ちに第三水雷戦隊に向かいたまえ。」

 

「はい!!わかりました!!」

 

そう言い吹雪は睦月に連れられて提督室を後にした。

 

「さて、霧島。歓迎会の準備はどうなっている?」

 

「すでに注文は済ませています。後は時間が来るのを待つだけです。」

 

「そうか。さて、第三水雷戦隊の初出撃は明日だな。着任早々出撃となるからと言ってシフトは動かせんしな。」

 

「そうですね。では神通を呼びましょうか?」

 

「いや、今頃三水戦で自己紹介が始まっているところだろう。今呼べば邪魔になってしまうだろう。」

 

「了解です。」

 

「それよりもいかんな。」

 

「何がですか?」

 

「鎮守府の防御を固くしたから敵が攻め込んで来れないのはいい。だが、そのせいで最近危機感が薄れているように見える。」

 

「確かに・・・鎮守府の大規模改修でウチは自給までできるようになり、防御も固い。意識が薄れるのも仕方がありませんね。だからといって攻め込まれたくはありませんが。」

 

「その通りだ。まさに矛盾だな・・・。」

 

「さて、どうしましょうか?」

 

「そうだな、新型艦も加わったことだし、少し反攻作戦を執るか。そのためにも偵察をしっかりしておかないとな。案外、やることは多いな。」

 

「そうですね。守りも磐石になってきましたし、攻め時ですかね。」

 

「あぁ、みんなにはがんばってもらおう。さて、執務に戻ろうか。」

 

「わかりました。」

 

俺と霧島は帰ってくる遠征・哨戒艦隊を慰労しながら吹雪の歓迎会までに執務を終わらせた。

 

 

 

《鎮守府・食堂》

 

「さて、今日新たに我が鎮守府に仲間が加わった。既に知っている者もいると思うがこの場で正式に紹介する。駆逐艦吹雪だ。ほれ!!」

 

「えっ、えぇぇぇ!?」

 

俺は言いたいことを言ってそのまま吹雪にマイクを投げ渡す。当然吹雪は状況がわからずパニックに陥るが隣にいた睦月と夕立がなんとか落ち着かせる。

 

「えぇっと・・・紹介に預かりました吹雪です。よ、よろしくお願いします!!」

 

「よし、それでは、新たな仲間に乾杯!!」

 

「乾杯!!」

 

吹雪の一言を聞くや俺は大声で乾杯の音頭を取る。

 

「さて、ここはどうだい?吹雪。」

 

俺は歓迎会開始から少し時間を置いてから吹雪のところを訪れた。

 

「ここを鎮守府とは思えないですね。ですが雰囲気はまさに精鋭ですね!!」

 

「そう言われると俺も嬉しいよ。着任早々で悪いが明日の哨戒班に三水戦が入っているから出撃となる。神通、三水戦旗艦として色々と教えてやってくれ。」

 

「わかりました。」

 

「では期待しているぞ。」

 

「は、はい!!」

 

ちと、プレッシャーだったかな?おかげで吹雪がガッチガチになっているように見えるのだが・・・。まぁ、どの艦隊も精鋭、三水戦も例に漏れず精鋭揃いだ。大抵の事は跳ね返してくれるだろう。だから吹雪、がんばれよ。




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