俺、技術屋だよな?   作:かんせつ

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第十二話 駆逐艦吹雪と言う子

 8月21日

 

《発令所》

 

『第三水雷戦隊の出撃準備完了。正面カタパルトより出撃します。』

 

「わかった。第三水雷戦隊、出撃!!」

 

『了解。第三水雷戦隊旗艦神通、出撃します!!』

 

『第三水雷戦隊の出撃を確認。司令部より三水戦へ通達。当艦隊は予定通り、哨戒行動に移ってください。』

 

『了解です。』

 

「さて・・・何も来ないと良いんだが・・・。」

 

 

 

『こちら第三水雷戦隊。司令部、応答願います!!』

 

「どうした、神通!?」

 

『哨戒中に敵艦隊と会敵!!敵艦数はおよそ20。援軍をお願いします!!』

 

「わかった。大淀!!すぐに第一機動部隊に緊急召集をかけろ!!」

 

「了解です!!」

 

緊急招集のサイレンが鳴り大淀のアナウンスですぐさま正面カタパルトに集合する。

 

『第一機動部隊、集合完了です!!』

 

「直ちに第一機動部隊は出撃。アウトレンジからの爆撃で三水戦の撤退時間を稼げ!!」

 

『こちら赤城、了解です。一航戦赤城、出撃します!!』

 

『第一機動部隊の出撃を確認。司令部から第一機動部隊へ。目標座標はワカサ―G―11。至急急行されたし!!』

 

『了解!!』

 

「三水戦へ通達。当艦隊は撤退行動を取りつつ援軍到着まで時間稼ぎを。」

 

『神通、了解です。』

 

「とは言え、分が悪いな・・・。特に吹雪は実戦経験無しだ。頼むぞ・・・。」

 

 

 

《若狭湾沖》

 

深海棲艦と戦い始めてどのくらい時間が経っただろうか・・・。哨戒中、突然敵と会敵し、神通さんは数を見て不利と判断して即座にその海域から離脱しようとした。だけど敵の待ち伏せにあい、現在交戦中だ。異形の敵は躊躇無くこちらへ攻撃してくる。

 

「これが・・・戦い・・・?」

 

実戦はおろか演習すらまともにしてもらえなかった私は何もできていなかった。三水戦のみんなが奮戦するも私が足を引っ張っているせいで退却すらできないでいた。

 

「ゴァァァッ!!」

 

「キャァァ!?」

 

「吹雪ちゃん!!撃って!!」

 

「お願い、当たってください!!」

 

私は向かってくる敵に向けて連装砲を構えて発射する。

 

ドウンッ!!・・・シュンッ

 

「え・・・?」

 

「ゴァァァァ!!」

 

私が発射した弾は敵にあたることなく横を通り過ぎていく。そして敵は止まることなく私へ迫る。私はその時死を覚悟した。まさに目の前の怪物は死、そのものだった。

 

ブゥンッ!! ドガガガガッ!!

 

「・・・?」

 

いきなり敵が爆散したのだ。私は襲い掛かってきた敵を銃撃した航空機を追って上を見上げた。そこには空を埋め尽くすほどの航空機が飛んでいたのだ。そして無線に声が聞こえた。

 

『第三水雷戦隊のみなさん、下がってください。ここからは私たち第一航空戦隊が参ります!!』

 

「よかった、間に合ったんですね・・・。みんな、撤退よ!!」

 

神通さんを先頭にして私たち三水戦は鎮守府へ撤退する。その間に航空隊は激しい攻撃を繰り返して敵を次々と殲滅していく。

 

「これが・・・一航戦の力・・・。」

 

いつの間にか私たちを追っていた敵艦隊も待ち伏せをしていた敵艦隊も数えれるほどに減り、撤退していくのが見えた。

 

『提督、敵艦隊の撤退を確認。追撃戦に入りますか?』

 

『いや、追撃は不要だ。すでに鎮守府から偵察機を飛ばしている。撤退する敵を泳がせて敵棲地を探る。第一機動部隊はご苦労だった。鎮守府に帰投してくれ。』

 

『了解しました。』

 

その声が聞こえて私は力が抜けたような気がした。

 

 

 

《発令所》

 

「なんとか・・・間に合ったな。赤城たちはよくやってくれた。」

 

「えぇ、それに敵と遭遇ということは近くに敵棲地がある可能性が高い。見つかってくれればいいのですが・・・。」

 

「あぁ、見つかり次第直ちに反攻作戦に移る。」

 

「提督、第三水雷戦隊の帰還を確認しました。駆逐艦吹雪が気を失っているようです。それと川内と那珂が中破。他三艦は小破です。」

 

「無事に帰ってきてくれただけでも十分な戦果だ。すぐにドックへ向かうように伝えてくれ。」

 

「了解です。続いて第一機動部隊の旗艦を確認。損傷艦はいません。」

 

「わかった。さて・・・これは(・・・)どういうことかね・・・。」

 

俺は額に浮かぶ汗を拭い安堵したのもつかの間、すぐさま気を入れ直す。

 

 

 

《提督室》

 

『どうしたの?また予算追加?』

 

「今日の用件はそれではない。先日建造された新型艦についてだ。」

 

『確か吹雪って子だったっけ。アンタの鎮守府に配属されたって話よね。それがどうしたの?』

 

「実戦経験が無いのはわかる。だが、どうして演習すらしてないんだ?」

 

『それがえn・・・上が匙を投げたのよ・・・。』

 

「はぁ!?」

 

『吹雪はね、知識力は十分なんだけど・・・運動能力が最低水準以下なのよ。』

 

「たったそれだけでか!?」

 

『たったそれだけで、よ。それがわかるや、上は早々に役に立たないと判断して嫌がらせを含めてアンタのところに送ったとわけ。私が知った時には既に転属命令が出ていたからね。いつも通り保身派の考えだでしょうね。』

 

「クズ共がっ・・・。奴らの狙いはサルベージ技術の使用だろうな。」

 

『多分そうでしょうね。それに、あの娘(・・・)の時みたいにアンタがいたわけでもないしね・・・。ま、アンタのところに配属されたのは幸運だったわね。アンタのところは表裏共に要塞だからね。』

 

「そうか・・・わかった。忙しい時にすまなかったな。」

 

『いや、いいわ。それよりも、吹雪を頼むわよ。』

 

「もちろんだ。」

 

俺は携帯を閉じてため息をつく。そしてすぐに俺は懐かしきデータを探し始めた。そして没頭していくうちに日を跨いで、いつの間にか外には光が見えていた。どうやらまた、悪い癖が出たようだ。艦隊指揮は霧島に委任していたから大丈夫だと思うが・・・しまったな・・・。さて、外の空気でも吸うか・・・。

 

「ほっほっほっ・・・。」

 

俺が外に出た時、日の出直後で薄暗いというのに声が聞こえたのだ。その方向を見ると声の主は吹雪だった。どうやらこんな朝早くからランニングしているようだ。昨日はあんなことがあったというのに・・・。

 

「さて・・・君はどこまで伸びるかな?」

 

俺はそう呟いて今日の算段を立てるため提督室へと踵を返した。

 

 

 

 8月22日

 

《提督室》

 

俺は教官組である妙高型姉妹と利根型姉妹の報告を聞いていた。

 

「以上が今日の授業結果です。」

 

「いつもご苦労。して、吹雪はどうだった?」

 

「知識はあるんですが・・・。」

 

「運動能力が・・・やはり難しいかと・・・。」

 

「根性はあるんじゃがのう・・・。」

 

「確かに、あるようだな。」

 

「えぇ・・・というかよくご存知で。」

 

「あははは・・・今朝徹夜明けにランニングしているのを見かけてな・・・。」

 

「おかげで私は大変でしたけど、ね?」

 

「いやぁ、面目ない・・・。お疲れ様、下がっていい。霧島、川内型姉妹を呼んでくれ。」

 

「了解しました。」

 

 

 

霧島に呼ぶように頼んで数分後すぐに提督室のドアがノックされる。

 

「第三水雷戦隊川内・神通・那珂、参りました。」

 

「わざわざ呼び出してすまなかったな。君たちを呼んだのは他でもない。吹雪のことだ。」

 

「やはり・・・。」

 

「君たちも見て何か思ったことはあるかい?」

 

「そうだね・・・根性はあるみたいだよ。」

 

「やはりそうか・・・。それで、これを実行してくれ。」

 

俺は今朝プリントした資料を神通に渡す。

 

「これは・・・特訓方法ですか。どうして提督が?」

 

「昔、ちょっとあってな。そん時のデータが使えると思って。」

 

「ちょっとって・・・この精度はちょっとじゃありませんよ。ですが、ありがとうございます。これで吹雪ちゃんは。」

 

「あぁ、次の出撃までに間に合わせてくれ。」

 

「はい!!」

 

蒼一が渡した資料には『特殊艦訓練方法』と書かれてあった。

 

 

 

 8月25日

 

《提督室》

 

「ふぅ・・・。」

 

俺は執務を止めて一息ついていた。すると提督室のドアがノックされる。

 

「提督~いる~?」

 

「北上か、どうした?」

 

「いやぁ、ずいぶんと懐かしいもの引っ張り出したようじゃん?」

 

「あぁ、アレか。確かに懐かしいものだ。にしても、わざわざ提督室に来てまで言う事か?」

 

「そりゃそうさ。それに、こんなことがあってさ。」

 

 

 

 8月23日

 

《鎮守府・広場》

 

「ね~北上さん。吹雪ちゃんに魚雷の撃ち方を教えてあげてよ。」

 

私が大井っちと歩いていたらライブをしていたはずの那珂ちゃんに突然話しかけられた。頼み事は後ろにいる同じ三水戦の吹雪って子に魚雷について教えてくれとのこと。

 

「あぁ、いい「見ればわかるでしょ。今忙しいのよ。行きましょ、北上さん。」えぇ?痛いよ大井っち・・・。」

 

私は大井っちに強く引っ張られてその場を後にした。

 

 

 

《鎮守府・寮》

 

「ふ~終わった終わったぁ。」

 

夜、私は提督に頼まれたおつかいを終えて寮へ帰るところだった。その寮の前の広場に二人の人影があった。どうやら例の駆逐艦の子が特訓をしているようだ。

 

「あれは・・・。」

 

あの特訓方法は見たことがある・・・というか自分もやった特訓だった。今の私は軽巡洋艦の発展型・重雷装艦という特殊な艦種だ。名前どおり雷巡は雷装特化の艦種で雷撃能力はどの艦の追従も許さないほどだ。だけど改装直後の私は期待されていた結果を実現することができないでいた。多数の魚雷を積んだ重装備のせいでバランスが取れず機動力を欠いていたのだ。成績は軽巡時代とは違って最悪でいつも悩んでいた。そんな時だった。そう、それが彼との最初の出会いであり、私が変われた瞬間だった。




ちょっと二人の過去話をば
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