俺、技術屋だよな?   作:かんせつ

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第十七話 新たなる作戦 名を・・・

 9月4日

 

《ブリーフィングルーム》

 

俺は新しい作戦を発表するため、みんなを集めていた。

 

「先日、CL作戦が失敗したのは知っての通りだ。敵の統率力、新型艦を甘く見ていた俺の責任だからみんなは気にしなくて良い。」

 

「ですが、昨日の集中砲撃でも敵に損傷は見えなかったと聞いていますが。」

 

霧島が手を挙げて発言する。

 

「確かに霧島の言う通り、敵の障壁は固く、突破は難しい。だが、諦めるのはまだ早い。今日の昼に新しい戦力が鎮守府に加わる。それにまだ策はある。」

 

俺はスクリーンに一つの画像を出す。

 

「コイツは先週竣工した艦艇。名を艦娘母艦・神威。君たちの戦線拡大を目的とした艦艇だ。主兵装には15.5センチ三連装砲を4基。他にも対空連装機銃、対艦誘導弾発射機8基、対空誘導弾発射機8基を搭載している。艦娘母艦とあるように出撃用カタパルトを後部に六人、一艦隊分設置してある。それに船内には休憩室も完備。一日は不自由なく暮らせる半水上基地だ。」

 

「これが敵障壁を突破するための鍵なんですか?」

 

「いや、今回は母艦としてではなく、別の目的で使用する。敵を撃滅する策はこれだ。」

 

俺はパソコンを操作しスクリーンの映像を3Dモデルに切り替える。

 

「これは現在作成中の艦娘用大型新兵装、陽電子砲だ。」

 

「?」

 

俺の発言にみんな頭にはハテナマークが浮かんだのだろう。ここからでもその様子がわかる。それは仕方が無いことだ。何せ彼女たちは戦闘に必要な知識と最低限の常識しか教えてもらっていないからな・・・。

 

「言わば砲弾の種類が鋼鉄ではなく電気の弾だ。俗に言う光学兵器だな。消費する電力は大きいが、膨大なエネルギーを一極集中して打ち出すことが可能だ。これで敵障壁を破壊し、あわよくば敵自体を殲滅するというものだ。これを古の戦いにあった遠くの的を矢で射たと言われている矢島の戦いから取り、作戦名をヤシマ作戦と呼称する。」

 

「おぉぉ・・・。」

 

俺の作戦を聞いて集まっている艦娘全員が感嘆の声をあげる。

 

「本作戦はまだ肝心の陽電子砲が完成していないのと必要な電力を溜める必要があるため、直ちに開始することはできない。だから今は作戦内容の漏洩を防ぐため、近づく敵偵察隊の撃破にあたってくれ。戦いに何があるかはわからん。よって細心の注意を払って相対してくれ。以上、質問は?・・・無いようだな。解散!!」

 

みんなが出て行くのを見て俺も会議室を後にする。すると俺の隣に誰かが立つ。

 

「しっかし、良くもまぁこんな作戦を思いついたねぇ?」

 

「北上か。こんなとは失礼だな。今この鎮守府だけで唯一実現可能な作戦だ。」

 

「敵の射程を上回る距離からの超長距離狙撃・・・。陽電子砲だっけ?これも良く思いついたもんだよ。まるで子供の『ぼくのかんがえたさいきょうのぶき』だよ。」

 

「うっせぇ。技術は発想が大事なんだ。年齢なんて関係ねぇんだよ。」

 

「年齢ねぇ・・・。」

 

北上と談笑しながら歩いていると懐の携帯が鳴る。何かあったようだ。

 

『提督。艦娘母艦・神威が到着しました。』

 

「わかった。神威は舞鶴港に向かわせて待機だ。すぐに俺も向かう。」

 

『了解しました。』

 

「北上、俺は神威のところへ向かう。お前は部屋に戻っていな。」

 

「りょーかーい。」

 

俺は北上と別れてすぐに舞鶴港へ向かった。

 

 

 

《舞鶴港》

 

「これが神威か・・・。想像以上にでかいな。つーか空母だな、これ。」

 

「あ、桐生博士。お待ちしておりました。」

 

俺が神威を見て感慨に浸っていると横から妖精が一人歩み寄った。襟元に付けているバッチでこの神威の艦長であることがわかる。しっかし大本営は不足している人員を妖精だけで補っているのは・・・まぁ、下手なヤツが来ないから良いか・・・。つーかウチも人間は俺だけじゃねぇか・・・。

 

「演習航行はどうだった?」

 

「問題ありません。しかし、純粋な戦闘艦ではないので特筆するとすれば対空戦闘が厳しいかと・・・。」

 

「それが母艦の宿命だろう。それに実戦では艦娘もいるから少しはカバーできるだろう。」

 

「わかりました。この後は如何いたしましょう?」

 

「神威はここで待機。船員はシフトを組んで休憩を取るといい。一晩かけて航行してきているからな。」

 

「ありがとうございます。直ちにシフトを組んできます!!」

 

パタパタと服を揺らしながら艦長妖精は船へ走っていく。さて、次に行きますか。

 

 

 

《工廠棟》

 

俺がいつも以上に騒がしい工廠を訪れるとすぐに妖精がやってきた。

 

「あ、提督。お疲れ様です。ご用件は陽電子砲関連の事ですか?」

 

「あぁ、その通りだ。どのくらい完成しているかい?」

 

「まだ、3割弱ですね・・・。ですがこのペースでは明後日には完成できそうです。」

 

「精密機器だから遅いのはわかる・・・それに、作戦決行日は決めていないから慎重に安全第一でがんばってくれ。」

 

「了解です。」

 

「通電用と弾幕用のダミー艦艇はどの程度揃っている?」

 

「通電用は主機と船体のみなので5割方完成しています。弾幕用も通電用と同じ船体に火砲を積むだけですので4割方完成しています。発電機と海面通電用特殊ケーブルは必須数は完成しています。変圧機も揃っています。機材が完了次第、艦娘母艦神威の改装に入ります。」

 

「防弾盾はどうだ?」

 

「予想強度では35.6センチ連装砲の一撃目は十分耐え切れます。」

 

「わかった。くれぐれも危険が無い様にがんばってくれ。」

 

「はい!!」

 

「あ、提督。いらしていたんですね。」

 

「夕張か。どうだ、この兵装は。」

 

「艦娘用大型兵装。・・・大型という規模ではないですよね?これ。」

 

「まぁ、十分なエネルギーを撃ち出すためには加速器や砲身を大きくしなければならないからな。致し方ないことだ。」

 

「機械で補えないところを艦娘で補う、良くもまぁ、考えれたものね。それにしても、これを考え出す提督の頭はどうなっているの?一度で良いから解剖してみたいわ。」

 

「物騒なことを言うな。そういえば夕張、艦娘に兵装として誘導弾発射機を装備できるのはどこぐらいまでだ?」

 

「戦艦と重巡、後は一部の軽巡くらいですね。ですが、発射機を装備した場合、戦艦などの背中に主砲を持つ人は主砲の数を減らさないと装備できませんね。」

 

「やはりか・・・誘導弾は専用の船舶を用意する必要がある、か。一応で発射用の艦艇も用意する方向でよかったな。」

 

「それよりもさ、この射突型杭って装備、白兵戦闘にしか使えないよね?それなのになんで製作したの?」

 

「・・・念のためだ。」

 

「・・・そう。わかったわ。」

 

「それじゃぁ、俺は執務があるから失礼する。」

 

「えぇ、がんばって。」

 

俺は暗い雰囲気から逃げるように工廠を後にした。

 

 

 

 9月6日

 

《提督室》

 

「理論上、直進を妨げるものは地球の自転・磁場・重力か・・・。それは照準器で調整可能だ。目標は主力の周囲にいる随従艦隊より高い位置にいるから敵には妨げる術は無い、か。後は・・・砲手が問題か・・・。ほとんどをコンピューターが修正するが、手動操作になった場合を考えると金剛型の照準を担っている霧島が適任かね・・・。」

 

俺はパソコンを操作しながら作戦の最終確認を行っていた。既に陽電子砲も各機材も完成し艦隊も哨戒には出さず待機を命令している。

 

「さて、実行に移さねばならんな。」

 

俺は提督室の通信機を取り艦隊指揮をしている司令室に繋ぐ。

 

「全艦娘をブリーフィングルームに召集。段階を移すぞ。」

 

《ブリーフィングルーム》

 

「みんなもなぜ集まったかは見当がついていると思う。先日提唱したヤシマ作戦、その下準備が先ほど完了した。これ以上、敵勢力に先日与えた被害が回復するのは好ましくない。よって直ちに作戦を開始することにした。」

 

俺は手元のパソコンを操作し作戦海域をスクリーンに映し出す。

 

「まずは戦線をケル諸島沖で展開することは知っての通りだ。機甲棲姫だが、知っての通り障壁が固く、攻撃射程も広い。だが、攻撃中は障壁が展開できないと判明している。この作戦はアウトレンジからの狙撃でこの機甲棲姫を無力化することが目的だ。よって君たち及び新たに加わった神威には扇状に展開し敵棲地全域への陽動砲撃を行ってもらう。作戦時は各艦隊ごとに展開してもらう。各砲撃位置は追って通知する。そして肝心の陽電子砲の砲手だが、霧島!!」

 

「はい!!」

 

「君に砲手を担当してもらう。そして彼女及び陽電子砲の護衛には特殊防弾盾を使用。護衛する艦隊は最上・鈴谷・木曾・夕張・時雨・吹雪、以上六名に務めてもらう。」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

「作戦開始は明日1200とする。以降は別命あるまで現艦隊ごとに待機、これから配る作戦要綱を各自覚えるように。護衛艦隊は各々の艦隊ではなく、この艦隊で待機してくれ。質問は?・・・無いようだな。以上、解散!!」

 

俺は艦隊ごとに退出していく艦娘たちを見送り、俺も自分の持ち場へと戻った。




作戦名が聞いたことがあるって?なぁに、気のせいさ・・・。
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