第一話 技術研究部部長桐生蒼一
6月26日
《大本営技術研究部第一課・研究室》
「ん・・・あ~終わったぁ・・・。」
だらしない声を上げて俺は長時間のデスクワークで縮こまった背中を伸ばす。
「お疲れ様っす、先輩。」
そう言いながら俺にコーヒーを渡してくれたのは俺の部下であり後輩にあたる白鳥幸也だ。
「おう、サンキュー。」
俺はありがたくコーヒーを受け取りその苦い液体を一口含む。
「さってと、一応報告書も書き終えたし今日はこれで終了だ。これから明日の確認をする。」
俺の言葉に職場全体の視線が俺に向けられる。
「明日、6月27日は当初の予定通り艤装実験及び兵装実験を行う。本テスト項目は実戦配備予定の兵装一種と試験段階の兵装一種の運用テストだ。実験開始は予定通り1500開始とする。質問はないか?・・・無いようだな。ではこれにて解散、お疲れさん!!」
「お疲れ様でした!!」
俺は確認を終えると職場のみんなに仕事終了の合図をする。それを聞くや皆思い思いに行動する。
「あ、先輩。神代一佐から連絡が入ってますよ。」
「りょーかい。それじゃ、俺も上がるわ。お疲れさん。」
俺はそういい残して研究室を出てアイツの元へと向かった。
《大本営戦術作戦部第一課・神代一佐執務室》
「おう、来たぞ~。」
俺は気楽に執務室へと入る。
「来たわね。もう仕事は終わったの?」
「知ってて呼んだんだろうが。」
俺と真那は軽口を叩きながら会話を続ける。
「まぁね。さて、飯でもどう?」
「そうだな。今日は積もる話もあるしな。さて、どこで食うか?」
「ここでいいでしょ。私たちの積もる話は機密情報駄々漏れだからね。」
という事になり俺と真那は部屋に食堂の料理を部屋まで運んでもらって夕食となった。
「そう言えば蒼一、明日の実験は上手くいきそう?」
「五分五分・・・いや、正直今回ばかりは自信無いな。」
「何せ初の新口径主砲だもんね。」
「それも55センチ。しかも連装砲ときたモンだ。加えて対艦ミサイルランチャーも配備を見越しての実験だ。おかげでこっちは連日頭が痛ぇよ。」
「それをなんとかするのが技術屋でしょう?」
「それでも限界はあるだろ。まだ51センチも試験段階だというのにお前ときたら・・・。」
「はいはい、悪うござんした。でも上の一部がうるさくてね。できるだけ安心感を得たいんでしょうよ。おかげでお父さんたちは頭を抱えているわ。蒼一にも迷惑をかけているしね。」
「まぁ、そう思ってくれてんなら助かるよ。それにしても作戦部長は大変だな。今回の新装備発注も次の作戦を見越してだろ?」
「あぁ、『第四次四国奪還作戦』・・・今回も大きな犠牲が出るでしょうね・・・。」
「四国奪還・・・今度は呉泊が指揮を執るのか?」
「・・・
「舞鶴だと!?」
「その様子だと知ってるようね。」
「そりゃそうだ。つーかウチの部署でも噂になっているぞ。『艦娘の反乱』ってな・・・。」
「そこまで・・・いや当然でしょう・・・大事だからね。なにせ・・・一大鎮守府の反乱だもんね。」
「やはり本当だったか・・・。でもどうしてそんなことが・・・。」
「原因は半年前に舞鶴に着任した提督よ。なんでも運営費用の横領を初めとして、第三次四国奪還作戦時の指揮系統問題云々に加えて・・・艦娘への暴行及び強姦だそうよ・・・。」
「ちっ・・・。」
部屋の雰囲気は悪くなる一方だった。ったく・・・飯食うのになんでこんな雰囲気にならないといけねぇんだ・・・。
「んで、今の状況は?」
「一応燃料弾薬等の補給物資は一応送っているんだけど・・・提督がいないからかなり無茶な、というか意固地になっているようでね。何度も新しく提督を派遣しても艦砲を向けられて追い返される始末でさ・・・おかげで運営状況は把握できていない。それに無茶な運営で物資の消費がかなり激しくてさ、丁度四国奪還もあるからそれに伴って舞鶴を一時的に排除してしまおうって動きが一部、上であるようなのよ。」
「ったく上の連中はとことん自己保身に走るな・・・。それで本部以下、他の鎮守府・泊地の艦娘はこの動きは?」
「各場所の提督・司令以外には知らされていないわ。だけど、大本営でこれだけ広まってるんだし、薄々は気づいているでしょうね。」
「状況は芳しくないな・・・。それで、その話を聞かせたんだ、何かさせる気だろう?」
「流石は大本営の
「いい加減その裏ってヤツやめろよな・・・。」
「ならいっそ表に出てくる?お父さんはともかく、山口さんに橘さんまで愚痴っているわ。」
「俺は技術屋だ。提督はできんよ。」
「よく言うわ。アンタが提案した作戦行動はほとんど成功しているのよ?ただでさえ指揮能力がある人間が少ない時代に兵装情報を熟知、加えて指揮能力があるアンタはまさに宝の持ち腐れよ。」
「そうは言ってもねぇ・・・。」
「そこでだ。すでに上から許可・・・というかアンタに半分だが異動命令が出るわ。」
「はぁ!?まさか異動場所って・・・。」
「舞鶴よ。」
「おいおい・・・どこからの命令だ?」
「九条元帥を初めとして山口海将補と橘海将の連名だな。」
「あ、こらアカンわ・・・つーか全員、愚痴り組じゃねぇか!!」
「さぁ?なんででしょうねぇ。こりゃほぼ決定事項よ。一応、舞鶴は規模で言えば全拠点最大だから一応今までの研究もしようと思えばできるわ。」
「いや、俺は研究の事を心配しているのもあるが、それよりも俺の身が・・・。」
「ま、そこはアンタの腕の見せ所でしょう。大本営じゃアンタの印象はバッチリ。だから後は何とかして信頼関係を戻せれば上手くいくわ。」
「それが一番の問題だろうが・・・。」
「ま、気楽に行けばいいわ。はい、これが異動指令書。」
そう言って真那は俺に一枚の紙を渡す。ってこれがあるってことは・・・。
「おめぇ・・・最初からこれを渡すつもりだったな?」
「ゲッ・・・それは気のせいなんじゃない?」
「語尾が上がってるぞ、ったく・・・。それで、異動日は・・・7月1日に舞鶴に着くようにか・・・。最終的な実験データの集計は白鳥に任せるか・・・。」
「まぁ、一応お父さんたちの配慮で実験は見れるようにしてくれたそうよ。」
「そんな配慮ができるなら最後までさせろよな・・・。つーか提督として異動ってこたぁ、お前さんの下に就くわけだから降格じゃねぇか・・・。」
「いや、それに関しては大丈夫よ。技術部顧問というのを新しくアンタに用意してくれるから引き続き技研
のトップに変わりはないわ。それに今の階級でも私たちで言えば私と同じ一佐クラス。他の鎮守府よりも上よ。」
「まずは指揮をとれる状況にしないといけないんだけどな・・・。」
「まぁ、そうね。それで、これが舞鶴の・・・
そう言い真那は一つの資料の束を差し出してくる。その資料に目を通したのだが、見ていく内に前提督の無能さに苛立ちを覚えるほどだった。
「・・・なるほどね。上が俺をここへやる訳だ。」
「やっぱりアンタもそう思う?」
「そりゃぁ、あの計画の発案者だからな。いやでもわかるさ。」
「『KS計画』ね・・・ある意味じゃ、大本営じゃできない計画だもんね。逆に今の舞鶴にはピッタリ。こりゃぁ、今回の異動はかなりの任務になるわね。まぁ、がんばりたまえ親友よ。」
「へいへい・・・。」
その後も俺たちは暗い話だけでなく思い出話など明るい話に華を咲かせたが、明日の実験の事もあり頃合で終了となった。
~第三次四国奪還作戦報告書~
1月 第三次四国奪還作戦開始
同月 淡路島奪還
同月 淡路島仮設泊地建設
2月 四国本土奪還開始
3月 淡路仮設泊地強襲
同月 淡路仮設泊地及び淡路島陥落
4月 第三次四国奪還作戦破棄
―最終損害状況―
小破艦 7隻
高雄 愛宕 暁 響 時雨 村雨 夕立
中破艦13隻
隼鷹 千歳 千代田 古鷹 最上 利根 天龍 神通 大淀 如月 初春 不知火 霞
大破艦 4隻
霧島 扶桑 飛龍 北上
轟沈艦41隻
金剛 比叡 榛名 山城 伊勢 日向 赤城 加賀 蒼龍 飛鷹 加古 青葉 那智 摩耶 鈴谷 龍田 多摩 球磨 大井 木曾 川内 那珂 睦月 皐月 文月 長月 菊月 三日月 望月 雷 電 若葉 初霜 陽炎 朝潮 荒潮 黒潮 島風 伊168 伊19 伊58
嫁艦が沈んでいる提督のみなさん、申し訳ありません。我が嫁艦も苦渋ながら沈めております・・・。
ちょっと変更で通称愚痴り組の階級を変更+一人削除しました。どうやら自衛隊階級の場合、将には大中小の区別は無く将と将補だけらしいです。