《甘味処間宮》
「う~ん、これはおいしいわね。まさにレディの味よ。」
「これはいいものだ。」
「ほら電、口に餡子が付いているわよ。」
「はわわわ雷ちゃん、どこなのです?」
私たち第六駆逐隊は遠征任務を終えて間宮さんの甘味処で一息ついていた。全員間宮特製饅頭を食べている。
「ねぇ、みんな!!私たちも和菓子を作ってみない?」
どうやらまた、姉の『れでぃとしての発言』が始まった・・・。
「いいわねぇ。でも、何を作るの?」
「そうねぇ、ケーキはどう?」
「シンプルねぇ。それってれでぃなの?」
「むむむ・・・それもそうね。何が良いかしら・・・。間宮さん、レディにふさわしい和菓子は無いかしら?」
「そうねぇ・・・作るのは良いとして、誰に作ってあげるのかしら?そこを考えたら良いわよ。」
「なるほど・・・作る人かぁ。誰が良いかしら?」
「そりゃぁもちろん、私たちを助けてくれた司令官「それだ!!」響・・・?」
それしかない。それ以外ありえない!!
「間宮さん。司令官の好きな和菓子って知ってる?」
「え、えぇっと提督は羊羹、特に芋羊羹が好きだったわねぇ。」
「作り方を教えて!!」
「えぇとぉ・・・響ちゃん、どうしたの?」
「司令官が絡むとこの子はいつもこうなの・・・。こら響、はしたないわよ。」
「はわわわ、響ちゃんのテンションがおかしいなのです・・・。」
「それで!!作り方は!?」
「サツマイモとお砂糖でできるわ。ちょうど材料が残っているからここで作ったらどう?」
「ぜひ!!」
「じゃぁ、こっちへおいで。」
「うん!!」
私は元気良く厨房へと向かう。後ろの三人が何か言っていたが気にしない。
「まずは下ごしらえよ。サツマイモをザク切りにするの。」
「むむむ・・・これでどうだ?」
「うん。響ちゃん上手ね。」
「こ、これは!?」
「えぇっと、暁ちゃんはもうちょっと大きさを揃えたらどうかしら?」
「雷は?」
「そうねぇ、雷ちゃんも上手よ。」
「い、電はどうなのです・・・?」
「電ちゃんも上手よ。もっと自身を持ちなさいな。」
「はい!!なのです。」
「次は水に一時間ほど浸けてアクを抜くの。」
「長いな・・・。」
「和菓子はゆっくりと作るものよ。急いでも良いものは作れないわ。」
「は~い・・・。」
~一時間後~
「うあ~まだ~?」
「えい!!」
「うわぁぁ!?雷ちゃん、ズルイです~。」
「・・・。」
アク抜きのため一時間を過ごした四人は各々反応を見せいた。暁はだらけ、雷と電は遊びだす。ただ、響だけはずっと芋の入ったボウルをじっと見ていた。
「みんな~、一時間経ったわよ。」
「次はどうするの?」
「次は蒸し器で芋を蒸すの。じゃぁ、この蒸し器に浸してある芋を移して頂戴。」
私は間宮さんの言うとおりに芋をすくって蒸し器へといれる。そして移し終わると火を付けて蒸す。また待たなければならないが、提督のためだ。私はどれだけでも待っていよう。
少し経ち、間宮さんが蒸した芋にくしを刺して蒸し上がりを確認している。どうやら蒸し上がったようだ。
「次は蒸かし芋を裏ごしして潰すの。これからの作業は四人分に分けれるからそれぞれがんばってね。」
そういい間宮さんは器を人数分出し、それぞれに蒸しあがった芋をいれる。しかし、私たちは料理をしたことが無い。よって裏ごしなどということは知らないのである。
「あのう・・・私、裏ごしというのを知らないのです・・・。」
「あら、そうだったの。裏ごしって言うのはね、このザルをボウルの上に置いて、その上に芋を乗せて木のヘラで潰すように押すの。ザルの細かい網目で綺麗にこされていくの。やってみればわかるわ。」
一通り教わって私たちはそれぞれ鍋の前に立つ。そして各々芋を潰して、それをザルに移して裏ごししていく。地味な作業だが、司令官のためだ。私は司令官のためなら!!
「できた!!」
「うん、上手ね。それじゃ、みんなそれぞれ鍋に移して。それからお砂糖を混ぜながら焦がさないように弱火で練り上げるの。」
私たちはそれぞれ鍋の前に立ち、芋を焦がさないように細心の注意を払って砂糖を混ぜ練っていく。
「むぅ・・・。」
かなり難しい・・・。何時焦げるのかわからない状況で私は必死に芋を練っていく。司令官のため、司令官のため・・・。
「これでどう!?」
「うん、バッチリよ。他のみんなもできているわね。じゃぁ、最後の段階に移すわよ。」
そう言って間宮さんは鉄製の入れ物を用意する。
「これにラップを敷いて型に詰めるの。これで羊羹の形を作るのよ。」
間宮さんに促されてそれぞれ型に練った芋を押すように詰めていく。
「終わったわ。」
「じゃぁ、粗熱を取って冷蔵庫で冷やすの。粗熱が取れるまで少しの辛抱ね。」
「え~また~?」
言いだしっぺの姉がだらけるように言う。しっかし、どうしてうちの姉はこうなのだろうか・・・。
「え~い。」
「あぁ、雷ちゃん!!やったのですね?お返しなのです。」
そして妹二人は遊びだす始末。
「はぁ・・・。」
私はため息をつきながら目の前に三人を見ていた。
~二時間後~
「みんな~羊羹が冷えたわよ~。」
間宮さんの声で再び四人は厨房に揃う。
「最後に、冷えた羊羹を食べやすいように切って完成よ。くれぐれも包丁で指を切らないようにね。」
私たちは自分の羊羹を慎重に切っていく。そして私たちは切り終えて、間宮さんが用意してくれた容器に入れて提督室へと向かった。
《提督室》
「しれ~か~ん。入るわよ~。」
「んあ?・・・ゲッ!?その声は・・・。」
「ふんぬ!!」
私は司令官の返事を聞く前に提督室のドアを普通に(盛大に)開けて突撃する。
「司令官!!大好きな芋羊羹を作ってきたの。食べて!!」
世話焼きの雷を筆頭にそれぞれ作ってきた羊羹を見せる。
「お・・・おぉ。今日はまともだ・・・良かった。」
なぜか司令官が感動しているが、それは大好きな芋羊羹を見たからだろう。
「まずは雷のを食べて!!」
「あ、あぁ・・・ムグ・・・うん、美味いな。」
「でしょ?この雷様にかかれば羊羹なんて簡単よ。」
「次は暁の番よ。」
「ムグ・・・、甘いな。砂糖を結構入れたようだな。」
「う、うるさい!!暁にはこれがちょうど良いの!!」
「つ、次は電のです。」
「ムグ・・・、うん。よく練られているな。美味いよ。」
「あ、ありがとうなのです!!」
「最後は、ひ・・・響のを。」
「めずらしいな。あの響が緊張しているなんて。」
「し、仕方ないんだ。料理など、初めてしたから・・・。」
「大丈夫さ。ムグ・・・ちゃんと練られているし、甘さもちょうど良い。うん、美味いよ。」
「良かった。」
「それにしても、お前らがまともなことをするようになるとは・・・嬉しいよ。」
「隙あり!!」
「おわっ!?響ぃ!!」
私は司令官の油断した一瞬の隙を狙ってその膝に収まる。
「響!!ズル・・・うらやましいわよ!!」
「あわわわ・・・私もなのです!!」
「は、はしたないわよ!!」
私の行動に釣られて他の三人も司令官に突撃する。
「結局こうなるのかよ・・・まぁ、今日ぐらいはいいか。」
「「「「し、司令官!?」」」」
司令官がいきなり私たちを大きな腕で包み込んだのだ。
「ま、ありがとさん。また頼むぜ。」
「「「「うん!!」」」」
やはり司令官は変わっている。人間には父親というものがいるらしい。だけど生憎、私は人間ではないから父親というものは当然いない。だが、一つだけ知っていることがある。父親というものは温かいということだ。確かに司令官は温かい。だけど、司令官には父親という言葉は当てはまらないような気がする。司令官の温かさは別の温かさだと、なぜか私はそう断言できる気がする。まぁ、今はそんなことは考えず、司令官の温かさを堪能するとしよう。
「Хорошо!!」
提督の好物が芋羊羹なのは私が好きだからです。