9月20日
《提督室》
「以上が本日の交戦結果です。」
「
「はい・・・。」
俺は神通の報告を聞きながら一人欠けている三水戦のメンバー、吹雪のことを考えていた。ここ数日、吹雪の損傷が多いのだ。
「しかし、吹雪は一体どうしたんだ?ここ数日被弾と損傷が多いが。何か戦闘であったのか?」
「ここ数日、なぜか吹雪ちゃんが前に出すぎて被弾しているんです。」
「前に出る・・・。」
「ふぅむ・・・。何か心当たりはありそうか?」
「・・・もしかしたら、一気に練度を上げようとしているのかもしれません。」
「練度をか?」
「はい。先日、睦月ちゃんが改装を受けた後、吹雪ちゃんに聞かれたんです。『どうやったら練度が上がるんですか?』と。」
「練度・・・。」
「後、この頃トレーニングの数が増えたような気が・・・。」
神通に続いて吹雪と一緒にいることが多い睦月が答える。
「・・・わかった。この件は俺が何とかしておこう。みんなは下がって休憩していてくれ。」
「わかりました。」
三水戦の五人が提督室を出て行くのを見送って俺は吹雪のことについて改めて考えていた。
練度・・・先日・・・改装・・・なるほど。そういうことかな?だったら解決は早いほうがいい。
俺は結論を導き出すとすぐに行動に移した。
《食堂》
「はぁ・・・。」
私は入梁を終えて食堂で今日何度目かわからない溜息をつく。現在食堂は食事の時間ではないので私と給仕の妖精さん以外誰もいない。今日もダメだったなぁ・・・。どうやったら二人に追いつけるのだろうか・・・。今日も失敗して二人の足手まといになっちゃったし・・・もう、私は二人と一緒にはいれないかもしれない・・・。
「明日は、上手くいくといいなぁ・・・ヒャア!?」
独り言を呟いているといきなり右頬に冷たいものが当たったのだ。
「司令官・・・。」
後ろを向くと私に冷たいものを当てたのは司令官だった。証拠に左手に缶コーヒーを持っていた。私は一瞬、近頃のことで叱られるのかと思った。だけどその考えはすぐに消え去った。今の司令官の服装はワイシャツにストレートと司令官とは思えないラフな服装だったからだ。(まぁ、普段であろうと作戦中であろうと今の姿に白衣と司令官の服装ではないのだが・・・)
「よっ、息抜きにデートでも?」
はい!?この人は一体何を言っているのだろうか。当然の事だろう。開口一番の台詞がデートの誘いとは・・・。いつの間にか司令官は私の後ろから隣に移動していた。
「いやいやいや!!司令官、何を言っているんですか!?」
「何って、デートの誘いだろう?」
至極まともな返答が返ってきた。いや、それは判っているんですが、何故そうなるかが・・・。
「私、司令官の部下ですよ?それに・・・人じゃないし・・・。」
「ノープロブレム。」
「ひゃい!?」
机に置いていた右手を司令官の手に押さえられたのだ。
「愛に地位も種族も関係ないさ。」
そう言って司令官は一気に近づいた。え!?これってまさか・・・いや、そんな!?
「え、ちょ・・・。」
私の制止も意味無く、司令官はゆっくりと顔を近づけてくる。私は近づくにつれ耐え切れず目を瞑ってしまう・・・。
「ひゃっ!?」
またも冷たいものが当たった。今度は唇だ。恐る恐る目を開けてみると目の前にはさっきまで近づいていた司令官の代わりに缶コーヒーを私の口に当てている司令官の姿があった。
「え・・・?」
「ははっ。見事引っかかったな?ほれ。」
司令官は私に缶コーヒーを渡してくれた。そして司令官はテーブルを挟んで向かい側に座る。
「ゆっくり飲むといい。少し落ち着くといい。」
「慌てさせた本人が言うんですか・・・。」
私はそういいつつ頂いた缶コーヒーを開け、ゆっくりと飲んだ。
数分後、飲み終えた私を見て司令官は頷いた。
「さて、行こうか。」
「行くって、どこにですか?」
「デートだよ。忘れたか?」
それはホントだったの!?
そう思いつつ私は先に動き出した司令官を追って食堂を出た。
《農園区》
「ふぅ・・・。」
私は手に持った雑草を集めているところに置き、縮んだ背中を伸ばすために立って背伸びをする。あれ?私はなんでこんなことをしているんだろう・・・。当然のことを思いながら手を見る。手には土がこびりついている。
「土の・・・匂い?」
今まで嗅いだことが無い匂いがした。よくよく考えたら私は海ばかりで土という物は触ったことが無かった。
「もうへたばったのかい?給料分は働いてもらうぞ。」
後ろから声がかかる。私と同じように座って雑草を取っている司令官からだ。
「給料って?さっきの缶コーヒーですか?」
私がそう言うといかにもその通りと笑う司令官だった。
「はぁ・・・デートって言ったのに。司令官はもっとマジメな人だと思っていました。」
「大人はさ、ずるいくらいが丁度いいんだ。」
そう言って司令官は作業を再開した。私も屈んで草を取ろうと屈む。すると目の前に雑草と言われた草とは違った紐のような草があった。
「司令官、これも雑草ですか?」
「いや、違うな。でもそれは引っこ抜いても大丈夫なやつだ。思い切り引っ張ってみろ。」
「はぁ。」
私は言われたとおりその紐みたいな草を引っ張ってみる。案外力が要る。そしてやっと抜けたかと思うと草の先には紫色の物体がくっついていた。
「これは・・・?」
「サツマイモ、ジャガイモの仲間だ。どうだ?実際の野菜の姿を見て。」
「意外です。聞いたことはありますが、本当に土の下に野菜があるなんて。でもどうして司令官が?」
「俺の趣味さ。何かを作る、何かを育てるってのはいいぞ?色んなことが見えるし、わかってくる。」
「辛いことも、ですよね?」
「辛いことは嫌いかい?」
「嫌、ですね・・・。」
「じゃぁ、楽しいことはあるかい?」
「楽しいこと・・・。」
「友だちはいるだろ?」
「そう、ですが・・・。」
「夕立や睦月とは違って旗艦まで務めたのに改装ができてない自分が一緒にいることはできないかもしれないってか?」
「そ、それは・・・。」
「大丈夫。吹雪はちゃんとがんばっているよ。それはよくわかっている。」
「ですが・・・。」
「艦娘には人と同じ、個性と言うものがある。それは人の特徴を表していて、大切な失ってはならないものだ。俺から今の吹雪を見たら、今の吹雪は着任当時とまったく別人だ。」
「別人、ですか?」
「あぁ。最初は楽しそうにトレーニングをしていた。だが、今は友だちと離れたくないからトレーニング量を増やし、戦闘では無謀な行動をしている。違うかい?」
「そう、ですね・・・。」
「それは駆逐艦吹雪・・・いや、吹雪という女の子としては違うと俺は思う。」
「私として・・・。」
「君は守りたいものはあるかい?」
「守りたいもの・・・。」
司令官の言葉で頭に友だちである睦月ちゃんと夕立ちゃんの笑顔が浮かんだ。
「あります。」
「そうか、それはよかった。ならば、もう悩む必要は無いんじゃないかい?」
「はい!!ありがとうございます。」
「俺はできない、君にはできることがある。自分の守りたいものを守ってくれ。」
「・・・司令官?」
「さて、雑草取りもこの辺にして、サツマイモを収穫しようか。今日は焼き芋大会でもするかな。」
そう言って司令官はサツマイモをどんどん引き抜いていく。私も負けじと草を引っ張って芋を引っこ抜いていった。
《広場》
「ほれ、焼けたぞ~。」
そう言って司令官は火の中から焼き芋を取り出し、みんなに渡していく。
「ムグ、これはおいしいです。」
「ウーン、初めてだけどおいしいネー。」
「上々ね。」
「芋を作るなら焼酎の方がいいのにねぇ。」
「加古~・・・。」
「あ、熱いっぽい!?」
「夕立ちゃん落ち着いて。落としちゃうよ。」
みんな思い思いに焼き芋を食べている。それを見て改めてこうしてみんなといるのが楽しいと思った。戦い続ければ誰かが欠けてしまうかもしれない。そんなことは嫌だ。だから私も戦う。みんなの笑顔を守りたいから。
「っ!?」
そう思っているといきなり体が熱くなる感覚がした。
「どうやら、最後の問題は解決したようだな。」
「司令官?」
「結局のところ、お前の改装が遅かったのはお前の気持ちがしっかりしていなかったからだ。ほれ、すぐに工廠に行って来るといい。」
「はい!!」
《工廠》
「吹雪ちゃん、いい?」
「うん、開けていいよ。」
私が夕立ちゃんに言うとカーテンが開かれた。その先には興味のまなざしでこちらを見るみんなの姿があった。
「おーー。」
みんなからは感嘆の声が聞けてよかった。
「さて吹雪。制服の方はどうする?」
「そうですね、あまり着てないので、少しカスタマイズしてもらうぐらいで十分です。」
「そうか。ならすぐに済みそうだな。」
「はい!!」
私は全力で司令官に笑みを送る。
「良かったね、吹雪ちゃん。」
「これで三人全員が改ニになったね。」
「うん、ありがとう。二人とも。」
私は良い友達を持って幸せだなと思う。
やべぇ・・・俺死んじまうよ。だって今回どう考えたって加〇さんの話じゃねぇか!!死亡フラグバリバリじゃねぇか!!オワタ\(^o^)/ by蒼一