俺、技術屋だよな?   作:かんせつ

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第二十八話 北上の想い

 9月26日

 

《鎮守府正面海域》

 

『北上!!今すぐ止まれ!!やめろ!!』

 

あらら、もうバレちゃった?私は観念して口を開く。

 

「私が一度真剣に走ったら途中では止まらないこは知っているでしょ?それに、敵の障壁を破るには多角的な火力じゃなくて一極集中の火力が必要なことも。」

 

『確かにそれはそうだ。だが今お前がしようとしているのは「確かに私だって成功できるなんて確証は無い。でも、やらないとわかんないでしょ?」だがっ・・・。』

 

私の反論に提督は言葉が詰まる。そんなことをしていると敵が見えてくる。そして敵の砲撃が飛んでくる。今砲撃に当たれば終わりだ。だから私は蛇行して砲撃を避けながらさらに肉薄する。

 

『北上!!つまらん意地は張るな!!』

 

また、提督の怒声が聞こえる。

 

「でも、もう・・・遅いよ。」

 

いつの間にか敵の大きさが米粒くらいだったのが、今では人と確認できるくらいになっていた。自然と足が震え、頭に何かが浮かぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《過去》

 

私は研修期を終えて、ついに前線へ配備されることになった。場所は舞鶴、日本海側の最重要拠点といわれている場所だ。そして転属前日、なぜか桐生先生の悪友である神代一佐に呼ばれたのだ。

 

「北上、入ります。」

 

「ごめんね。転属前日に。だが、どうしてもあなたと話がしたくてね。まぁ、座ってちょうだい。」

 

真那さんに促され、私は部屋の来賓用ソファに座る。

 

「話とは・・・?」

 

「話というのはね、蒼一について。」

 

「先生のことですか?」

 

「あぁ。蒼一と長い間いたあなたには知ってて欲しいことなの。」

 

「・・・?」

 

「あなたは蒼一の目が暗いのは知っているわね?」

 

「はい。いつも笑顔ですが目だけは曇っていますね。それが・・・?」

 

「その曇っている理由・・・蒼一があぁなってしまった理由。話す前に、呼んでおいてなんだけどさっきは知っていて欲しいと言ったけど、別にあなたがこの話を聞く義務は無いわ。ただの私の願望なだけ。生半可な気持ちでは耐えられないからね・・・。どうする?」

 

「・・教えてください。先生の目には・・・心から笑って欲しいんです。」

 

「わかった。まず、蒼一には当然家族がいた。父、母、そして一人の妹。」

 

そう言って真那さんは話し始めた。

 

「蒼一と俺は子供のころからの馴染みでね、生まれも同じ九州よ。子供のころはよく遊んでいたものよ。その時の蒼一の目はちゃんと心から笑っていたわ。私たちが生まれてちょっとしてから深海棲艦は出現してはじめた。そして私たちは順当に成長し、日本を守るため、というか親の影響が大きかったのかしらね、大本営を目指してここに来たの。そして学ぶことを学び、大本営に無事就任し、私は作戦課に、蒼一は技研に入った。私たちの道は順風満帆だった。各々頭角を現して、異常なペースで出世していった。だけど・・・。」

 

そう区切ると真那さんは一息ついた。

 

「そう言えば、桐生と言ったら蒼一以外の名前を聞いたことないかしら?」

 

「桐生・・・確か、私たち艦娘の生みの親、桐生純一ですか?」

 

「えぇ、その桐生純一よ。そして・・・蒼一の父親なの。」

 

「えぇ!?」

 

「だから蒼一の技術は逸脱しているんでしょうね。それで話を戻すけど、私たちが大本営に就任した時はまだ蒼一のお父さんも現役だった。だけど、どんどん進む自分の技術を見た周りから拍車をかけるように急かされ、身体が耐え切れなくなって過労で倒れ、そのまま亡くなってしまった。そして蒼一お母さんもそれを知って後を追うように亡くなってしまったの。」

 

「そんなことが・・・。」

 

「そして蒼一は九州に残した妹だけしか血の繋がった(・・・・・・)家族はいなくなってしまった。」

 

「ならその妹さんなら!!」

 

私は単純なことを言う。だが、言ってから気づく。私が気づくくらいだ。既に試しているはず・・・。だが私の反応を見て真那さんの顔は暗くなった。それを見て察してしまう。

 

「まさか・・・。」

 

「そう・・・妹も五年前に亡くなったの。それも・・・深海棲艦の攻撃で・・・。」

 

「そんな・・・。」

 

「そして蒼一の目は曇った。晴れることの無い暗雲にね・・・。」

 

「・・・どうして、私にそんな事を?」

 

「蒼一の雲を唯一払えると思ったから。だけど、遅すぎたわね・・・。」

 

「そう、ですね・・・。」

 

「それともう一つある。曇った目の奥にあるものよ。」

 

「目の奥・・・ですか?」

 

「単純に言えば、復讐心よ。それも矛先は深海棲艦だけだったら良かったのに大本営上層部、私たちは保身派って呼んでいる自己保身欲の塊みたいなやつらにまで向けているの。妹さんが亡くなった時に、佐世保鎮守府は妹さんが住んでいる地域を囮に使ったらしいの。それも住民への避難勧告無しに。おかげで周辺に済んでいた人はほとんどが深海棲艦の攻撃で亡くなっているの。」

 

「そんなことって!?」

 

「えぇ、当然罰せられたわ。だけどその佐世保鎮守府の司令官は保身派の直系、当然刑も緩くなって今じゃ普通に生活するどころか司令官としての返り咲きを狙っていると聞いているわ。とんだクソ野郎よ。そして妹さんが亡くなった原因を知った蒼一は変わってしまった。」

 

「だから同じ人間にまで・・・。」

 

「だから蒼一の目を晴らすにはとてつもない労力がいる。だからできるだけ手伝ってくれる人が必要だったの。変わった時の蒼一を止めるのには苦労したわ。首謀者目掛けて特攻までしようとしていたからね。だけど、月日も経って、今は落ち着きつつあるわ。だけど・・・。」

 

「?」

 

「アイツの奥底にはとんでもないことが浮かんでいるの。それは無謀にもほどがあることよ。」

 

「・・・それは・・・?」

 

「蒼一――が――に――ということ。」

 

「それは!?確か不可能だったはずでは!?」

 

「表向きにはね・・・本当は条件次第では可能らしいのよ。そしてそれを知ったのは皮肉にも、廃墟と化した家に辛うじて残っていた遺品を整理していた時に見つけた蒼一のお父さんの隠し書類からだそうよ。」

 

「ならばもう実行しているのでは?」

 

「いや、何とか抑えているみたい。一応、未体験の恐怖があるんのか・・・多分違うわね。人間に本当に対抗できるのは同じ人間だからかしらね。話はこれくらいね。ごめんなさいね。めでたい時に・・・。」

 

「いいえ、桐生先生について知れたんです。では、先生の事、よろしくお願いします。」

 

「えぇ、もちろんよ。」

 

 

 

《現代》

 

私が決意したのはその話を聞いたときからだった。提督を何が何でも憎しみから解放して、一緒に他愛もないことで笑う。それが私の夢だった。それは提督が桐生蒼一でいるからこそできることでそれ以外ではできないのだ。でも、君と笑う明日のために私は・・・。

 

「提督・・・ごめんね・・・。」

 

その言葉を言えたかどうかは判らない。だってもう、私は・・・。

 

『北上ぃぃぃぃ!!』

 

君のそんな声が最期だなんて・・・悔しいな・・・。




フラグ回収開始です。やっと前話までにあった―の答えがわかるはずです。でもさらに―は増える・・・(今回の―はまた別の単語です)。
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